284 / 408
第283話 村に到着
しおりを挟む
オコトとミコトが加わり、僕達は村に向かって馬車を走らせていた。二人が目が覚めてから、しきりに周りを見て、不思議そうな顔をしていた。うん、変だよね。聞かれたくないが、オコトが聞いてきた。
「ロッシュ殿。荷車に布団が敷かれているのはなぜなのですか? ロッシュ殿の夜は知っているつもりですが、まさか荷車の中でも? さすがに危険ではありませんか?」
シェラがなぜか爆笑しているのが癪に障る。僕はシェラが昼寝したいがために持ち込んだものと説明したのに不思議と納得してくれない。僕の普段の行いのせいなのか。
そういえば、長老が別れ際に二人は実の娘ではないと言っていたが……
「ああ、長老はそのことをいっていましたか。だったら、もう隠す必要はないでしょうね」
オコトとミコトが顔を合わせ、何か言葉を言うと、僕の目の前には見たことのない二人がいた。今までは壮年の魅力的な女性だったが、目の前にいるのは二十歳そこそこの美しい女性だ。あの恐ろしいほどの妖艶さは鳴りを潜めたが、十分に魅力あふれる女性達だ。しかし、何が起こったというのだ!!
「オコトとミコトの姿が変わったぞ。一体何があったというのだ!?」
僕はミヤ達に目を遣り、ミコトとオコトを見るように促したが、反応がかなり薄い。むしろ、ミヤなんかは僕を訝しむような目を向けてくる。
「ロッシュ。一体、何を言っているの? あれだけ休んだのに、まだ疲れが抜けていないのね。せっかく、布団が敷いてあるんですから休んでいくといいわ」
どういうことだ? 僕だけ勘違いしているっとことか? 僕が知っているオコトの外見をミヤに説明して、ここにいるオコトと違うことを訴えた。しかし、ミヤから返ってきた答えは僕を驚かせるものだった。
「ロッシュがそんなに失礼だとは思わなかったわ。オコトをどうやって見たら壮年に見えるのよ。オコトは童顔だから十代にだって見えてもおかしくないくらいだと思うわよ」
僕だけが見間違えていた? シェラは? シラーは? 二人共、ミヤと同じ意見だった。こうなったら、失礼なことを言うことを覚悟でオコトに聞いた。
「ふふっ。私達の外見が変わったと言っていロッシュ殿は決して悪くありませんよ。実は外見を変える幻覚の術を使っていましたから。ただ、ここにいる人でロッシュ殿にしか効果がなかったことに驚いています。私達はこの幻覚の術を作り上げるのに何年もかけたのですが。まだまだ修行が足りなかったということでしょう」
オコトの話を聞いて、ミヤ達は驚いている感じだった。なんとか、僕の疑いは晴れたが一方で僕の能力に疑いがかかった。ミヤが本気で僕に修行したほうがいいのではないかとシェラとシラーに相談していた。修行という言葉に興味がないわけではないが、なんとなく遠慮したい気分だ。そんな修行の言葉にオコトとミコトが物凄く食いついていた。
まさか、術があったとはなぁ。そういえば、二人は一人として育てられたと聞いたが、その意味がよく分からないな。オコトに聞いてみた。
「細かいことは里を抜けたといは言え、里に迷惑がかかるので言うことは出来ないですが、私とミコトは諜報を主任務として教育が施されました。諜報において、休んでいる時が最も危険になりやすいのです。そのため、二人で行動すれば、交互に休めるので危険を回避することが出来るのです。ただ、そのためには疑わられるような仕草の違いには注意を払わなければなりません」
なるほど。忍びの里らしい理由だな。そんなふうに育てられるものは多いのだろうか?
「そんなことはないですよ。やはり、外見が似ている事が必要ですから双子でなければなりません。里には双子は私達だけでしたから珍しいことだと思いますよ」
なかなか面白い話が聞けたな。まぁ、これからは二人は屋敷にいるのだ。食事をしながら話でも聞きたいものだな。そういえば、オコトは勝手に屋敷を飛び出してきたんだよな。エリス達にどうやって説明をしてやればいいだろうか。
さて、そろそろ村に到着する頃だな。村の景色は、僕が出発したときから大きく変わっていた。雪は完全になくなり、村人が畑で汗を流しているのが方々で見ることが出来た。川も淀みなく流れている。水量は思ったより多かったが堤防がしっかりと流れを受け止めていて、崩れる様子は一切なさそうだ。といっても、一度は点検をしておかねばならないな。
僕を見つけた村人は手を振って、歓迎してくれていた。僕も手を振って応えると、仕事にすぐに戻っていった。やはり、僕にとってはここの村人は家族のようなものだな。手を振っただけで全ての挨拶が終わってしまうのは、きっと村人との間だけだろうな。
そんなに時間は経ってないはずだが、懐かしさを感じる屋敷が見えてきた。自警団が先に僕達の到着を伝えていたためか、エリス達が屋敷のテラスでお茶を飲んで僕達の到着を待っていてくれたみたいだ。エリス達の横には子供用のベッドが置かれていた。僕は馭者席から飛び降り、馬を木に繋ぎ止めた。そして、エリス達のところに向かった。僕が近づくと、エリスとリードが立ち上がった。
「今、帰ったぞ。二人共元気していたか」
僕はベッドで寝ているホムデュムとサヤサの顔を見つめ、元気そうな顔を見てホッとした。エリスがニコっと笑って、おかえりなさい、と言ってくれた。リードも続けて言ってくれた。リードのお腹も見ないうちに随分と大きくなっていた。エリスにマグ姉がいないことを聞いた。
「マーガレットさんなら、薬局に行っていますよ。ロッシュ様がお戻りになることは知っているはずですから、そろそろ帰ってくると思って……ほら、戻ってきましたよ」
エリスが指差す方向を見ると、弟子らしい者数人を連れて、屋敷に向かってやってきた。遠目でも分かる。なんだか、怒っている様子だ。僕は逃げ出したい気持ちにもなったが、マグ姉の姿をもっと見ていたいと思ってつい、逃げるタイミングを逸してしまった。マグ姉が僕の近くに来ると、屋敷に入りさない、と厳しい口調で言われた。その時、マグ姉はちらっとオコトとミコトを見ていた。
あまり驚いている様子はないから、やはり僕だけなのだろうか。僕が屋敷に入るなり、居間に連れて行かれ、正座をさせられた。こんな仕打ちが出来るのは、公国ではマグ姉だけではないだろうか。それでもなんとなく従ってしまう自分がいた。
「さあ、ロッシュ。なぜ、こんな風に怒られるか分かっているわね?」
僕は知らないふりをして惚けていたが、マグ姉には通じなかった。
「なんで北部諸侯と戦争なんてしているのよ。ロッシュは、絶対に失われてはいけない命なのよ。それを軽々しく戦地に飛び込むなんて。信じられないわ。だいたい……」
マグ姉の説教は長かった。しかし、疑問が出てくる。なぜ、マグ姉がそこまで詳しいかだ。情報はマグ姉には伝わらないはずだ。別に情報を遮断しているわけではないが、
「マグ姉。いくつか間違っているが、戦争は王国とだよ。北部諸侯連合は、公国の傘下に入って元領民の移動が始まっているところなんだ」
マグ姉は首を傾げている。王国? 連合? と言った感じで全く分かっていなかったようだ。どうやら、僕が連合に向け出発した辺りまでの情報しかないようだ。それをマグ姉が自分の頭で話を作っているという感じかな。僕は、一部始終をエリス達を混じえて説明をした。経緯を聞いていくうちに、マグ姉は自分の勘違いに気付き、少し恥ずかしそうな顔に変わっていった。
「ロッシュ。なんか、勘違いしていたみたいね。あなたがそんな向こう見ずな性格をしているとは思っていないわよ。そう、北部諸侯連合を助けるために。もちろん、その侯爵というのは気に入らないけど、公国のために頑張っていたのね。でもね、もう一つあるの」
そう言って、マグ姉はオコトとミコトを指差した。
「また、新しい女性を連れてきちゃったの? オコトさんが急に消えたと思っていたら、また新しい家政婦にでもするつもり?」
マグ姉もオコトを認識できていないぞ。やはり、僕だけではなかったか。それにしても、マグ姉の勘は大したものだな。
「マグ姉、その通りだ。彼女たちには屋敷で家政婦をやってもらうつもりだ。改めて、挨拶をしたらどうだ? ミコトとオコト」
ミコトとオコトが前に出てきて、エリス達に一礼した。マグ姉は、オコト……? と呟いた。オコトが挨拶をするようだ。
「ふふっ。皆さん、勝手に抜け出してしまって申し訳ありませんでした。里の掟があったため、仕方ないとは言え、ご迷惑をおかけしました。ロッシュ殿の慈悲によって、命を救われましたが、里を追放となってしまったのです。行く宛もない私達をロッシュ殿は仕事を与えてくれました。また、この屋敷で家政婦として頑張らせてもらいます。よろしくお願いますね」
オコトが頭を下げると、ミコトも一緒に頭を下げた。確かに、家政婦として働いていたオコトしか知らないことを話すものだから、オコトであることと思っても、マグ姉は納得できていなかった。エリスもそうらしい。リードはどうやら術の効果はなかったようだ。
「よく分からないわ。だって、オコト……外見が全然違うわよ」
その説明はなかなか苦労したが、なんとか納得してくれた。というよりも、オコトしか知らないことを聞かされれば信じざるを得ないと言ったほうがいいだろう。マグ姉がしつこく疑うものだから、マグ姉の秘密がいくつか暴かれることになってしまった。三つ目の秘密を暴露されそうになった時に、マグ姉も降参したようだ。
秘密については、マグ姉が気付かなくなったときにでも話そう。オコトとミコトは無事、屋敷の家政婦として再び認められることになった。しかし、ここで問題が。彼女たちの見分け方だ。二人共、所作一つとってもそっくりなのだ。外見だけでもちょっとの違いがあればいいのだが……。見分け方について相談していると、ミコトがハサミを借りたいといい出してきた。エリスがすぐに手渡すと、間髪入れずに長い髪をバッサリと切ってしまった。
「これで見分けがつきますよね。私、長い髪ってあまり好きではなかったんですよ」
僕は、ミコトの決断に驚くばかりだった。けど、よく見ると短い髪もとても似合っていたな。ミコトの思い切った行動によって、見分けがつかない問題はあっさりと解決したのだった。
「ロッシュ殿。荷車に布団が敷かれているのはなぜなのですか? ロッシュ殿の夜は知っているつもりですが、まさか荷車の中でも? さすがに危険ではありませんか?」
シェラがなぜか爆笑しているのが癪に障る。僕はシェラが昼寝したいがために持ち込んだものと説明したのに不思議と納得してくれない。僕の普段の行いのせいなのか。
そういえば、長老が別れ際に二人は実の娘ではないと言っていたが……
「ああ、長老はそのことをいっていましたか。だったら、もう隠す必要はないでしょうね」
オコトとミコトが顔を合わせ、何か言葉を言うと、僕の目の前には見たことのない二人がいた。今までは壮年の魅力的な女性だったが、目の前にいるのは二十歳そこそこの美しい女性だ。あの恐ろしいほどの妖艶さは鳴りを潜めたが、十分に魅力あふれる女性達だ。しかし、何が起こったというのだ!!
「オコトとミコトの姿が変わったぞ。一体何があったというのだ!?」
僕はミヤ達に目を遣り、ミコトとオコトを見るように促したが、反応がかなり薄い。むしろ、ミヤなんかは僕を訝しむような目を向けてくる。
「ロッシュ。一体、何を言っているの? あれだけ休んだのに、まだ疲れが抜けていないのね。せっかく、布団が敷いてあるんですから休んでいくといいわ」
どういうことだ? 僕だけ勘違いしているっとことか? 僕が知っているオコトの外見をミヤに説明して、ここにいるオコトと違うことを訴えた。しかし、ミヤから返ってきた答えは僕を驚かせるものだった。
「ロッシュがそんなに失礼だとは思わなかったわ。オコトをどうやって見たら壮年に見えるのよ。オコトは童顔だから十代にだって見えてもおかしくないくらいだと思うわよ」
僕だけが見間違えていた? シェラは? シラーは? 二人共、ミヤと同じ意見だった。こうなったら、失礼なことを言うことを覚悟でオコトに聞いた。
「ふふっ。私達の外見が変わったと言っていロッシュ殿は決して悪くありませんよ。実は外見を変える幻覚の術を使っていましたから。ただ、ここにいる人でロッシュ殿にしか効果がなかったことに驚いています。私達はこの幻覚の術を作り上げるのに何年もかけたのですが。まだまだ修行が足りなかったということでしょう」
オコトの話を聞いて、ミヤ達は驚いている感じだった。なんとか、僕の疑いは晴れたが一方で僕の能力に疑いがかかった。ミヤが本気で僕に修行したほうがいいのではないかとシェラとシラーに相談していた。修行という言葉に興味がないわけではないが、なんとなく遠慮したい気分だ。そんな修行の言葉にオコトとミコトが物凄く食いついていた。
まさか、術があったとはなぁ。そういえば、二人は一人として育てられたと聞いたが、その意味がよく分からないな。オコトに聞いてみた。
「細かいことは里を抜けたといは言え、里に迷惑がかかるので言うことは出来ないですが、私とミコトは諜報を主任務として教育が施されました。諜報において、休んでいる時が最も危険になりやすいのです。そのため、二人で行動すれば、交互に休めるので危険を回避することが出来るのです。ただ、そのためには疑わられるような仕草の違いには注意を払わなければなりません」
なるほど。忍びの里らしい理由だな。そんなふうに育てられるものは多いのだろうか?
「そんなことはないですよ。やはり、外見が似ている事が必要ですから双子でなければなりません。里には双子は私達だけでしたから珍しいことだと思いますよ」
なかなか面白い話が聞けたな。まぁ、これからは二人は屋敷にいるのだ。食事をしながら話でも聞きたいものだな。そういえば、オコトは勝手に屋敷を飛び出してきたんだよな。エリス達にどうやって説明をしてやればいいだろうか。
さて、そろそろ村に到着する頃だな。村の景色は、僕が出発したときから大きく変わっていた。雪は完全になくなり、村人が畑で汗を流しているのが方々で見ることが出来た。川も淀みなく流れている。水量は思ったより多かったが堤防がしっかりと流れを受け止めていて、崩れる様子は一切なさそうだ。といっても、一度は点検をしておかねばならないな。
僕を見つけた村人は手を振って、歓迎してくれていた。僕も手を振って応えると、仕事にすぐに戻っていった。やはり、僕にとってはここの村人は家族のようなものだな。手を振っただけで全ての挨拶が終わってしまうのは、きっと村人との間だけだろうな。
そんなに時間は経ってないはずだが、懐かしさを感じる屋敷が見えてきた。自警団が先に僕達の到着を伝えていたためか、エリス達が屋敷のテラスでお茶を飲んで僕達の到着を待っていてくれたみたいだ。エリス達の横には子供用のベッドが置かれていた。僕は馭者席から飛び降り、馬を木に繋ぎ止めた。そして、エリス達のところに向かった。僕が近づくと、エリスとリードが立ち上がった。
「今、帰ったぞ。二人共元気していたか」
僕はベッドで寝ているホムデュムとサヤサの顔を見つめ、元気そうな顔を見てホッとした。エリスがニコっと笑って、おかえりなさい、と言ってくれた。リードも続けて言ってくれた。リードのお腹も見ないうちに随分と大きくなっていた。エリスにマグ姉がいないことを聞いた。
「マーガレットさんなら、薬局に行っていますよ。ロッシュ様がお戻りになることは知っているはずですから、そろそろ帰ってくると思って……ほら、戻ってきましたよ」
エリスが指差す方向を見ると、弟子らしい者数人を連れて、屋敷に向かってやってきた。遠目でも分かる。なんだか、怒っている様子だ。僕は逃げ出したい気持ちにもなったが、マグ姉の姿をもっと見ていたいと思ってつい、逃げるタイミングを逸してしまった。マグ姉が僕の近くに来ると、屋敷に入りさない、と厳しい口調で言われた。その時、マグ姉はちらっとオコトとミコトを見ていた。
あまり驚いている様子はないから、やはり僕だけなのだろうか。僕が屋敷に入るなり、居間に連れて行かれ、正座をさせられた。こんな仕打ちが出来るのは、公国ではマグ姉だけではないだろうか。それでもなんとなく従ってしまう自分がいた。
「さあ、ロッシュ。なぜ、こんな風に怒られるか分かっているわね?」
僕は知らないふりをして惚けていたが、マグ姉には通じなかった。
「なんで北部諸侯と戦争なんてしているのよ。ロッシュは、絶対に失われてはいけない命なのよ。それを軽々しく戦地に飛び込むなんて。信じられないわ。だいたい……」
マグ姉の説教は長かった。しかし、疑問が出てくる。なぜ、マグ姉がそこまで詳しいかだ。情報はマグ姉には伝わらないはずだ。別に情報を遮断しているわけではないが、
「マグ姉。いくつか間違っているが、戦争は王国とだよ。北部諸侯連合は、公国の傘下に入って元領民の移動が始まっているところなんだ」
マグ姉は首を傾げている。王国? 連合? と言った感じで全く分かっていなかったようだ。どうやら、僕が連合に向け出発した辺りまでの情報しかないようだ。それをマグ姉が自分の頭で話を作っているという感じかな。僕は、一部始終をエリス達を混じえて説明をした。経緯を聞いていくうちに、マグ姉は自分の勘違いに気付き、少し恥ずかしそうな顔に変わっていった。
「ロッシュ。なんか、勘違いしていたみたいね。あなたがそんな向こう見ずな性格をしているとは思っていないわよ。そう、北部諸侯連合を助けるために。もちろん、その侯爵というのは気に入らないけど、公国のために頑張っていたのね。でもね、もう一つあるの」
そう言って、マグ姉はオコトとミコトを指差した。
「また、新しい女性を連れてきちゃったの? オコトさんが急に消えたと思っていたら、また新しい家政婦にでもするつもり?」
マグ姉もオコトを認識できていないぞ。やはり、僕だけではなかったか。それにしても、マグ姉の勘は大したものだな。
「マグ姉、その通りだ。彼女たちには屋敷で家政婦をやってもらうつもりだ。改めて、挨拶をしたらどうだ? ミコトとオコト」
ミコトとオコトが前に出てきて、エリス達に一礼した。マグ姉は、オコト……? と呟いた。オコトが挨拶をするようだ。
「ふふっ。皆さん、勝手に抜け出してしまって申し訳ありませんでした。里の掟があったため、仕方ないとは言え、ご迷惑をおかけしました。ロッシュ殿の慈悲によって、命を救われましたが、里を追放となってしまったのです。行く宛もない私達をロッシュ殿は仕事を与えてくれました。また、この屋敷で家政婦として頑張らせてもらいます。よろしくお願いますね」
オコトが頭を下げると、ミコトも一緒に頭を下げた。確かに、家政婦として働いていたオコトしか知らないことを話すものだから、オコトであることと思っても、マグ姉は納得できていなかった。エリスもそうらしい。リードはどうやら術の効果はなかったようだ。
「よく分からないわ。だって、オコト……外見が全然違うわよ」
その説明はなかなか苦労したが、なんとか納得してくれた。というよりも、オコトしか知らないことを聞かされれば信じざるを得ないと言ったほうがいいだろう。マグ姉がしつこく疑うものだから、マグ姉の秘密がいくつか暴かれることになってしまった。三つ目の秘密を暴露されそうになった時に、マグ姉も降参したようだ。
秘密については、マグ姉が気付かなくなったときにでも話そう。オコトとミコトは無事、屋敷の家政婦として再び認められることになった。しかし、ここで問題が。彼女たちの見分け方だ。二人共、所作一つとってもそっくりなのだ。外見だけでもちょっとの違いがあればいいのだが……。見分け方について相談していると、ミコトがハサミを借りたいといい出してきた。エリスがすぐに手渡すと、間髪入れずに長い髪をバッサリと切ってしまった。
「これで見分けがつきますよね。私、長い髪ってあまり好きではなかったんですよ」
僕は、ミコトの決断に驚くばかりだった。けど、よく見ると短い髪もとても似合っていたな。ミコトの思い切った行動によって、見分けがつかない問題はあっさりと解決したのだった。
5
お気に入りに追加
2,668
あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる