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第265話 侯爵家の屋敷にて①
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僕は、北部諸侯連合の本部に向かうべく準備を始めた。重要なのは同行者だ。ガムドとサリルは絶対に連れて行かなければならない。今回の話し合いでは王国軍への対応と食料支援についてになるはずだ。僕では十分に話を詰めることは出来ないだろう。そうなると、僕を含めて三人への護衛を付けなければならない。僕にはミヤがいるから十分だが、二人にはグルドと数名の衛兵を付けるか。
僕はガムドとサリルに同行することを命じた。二人はすぐに王国軍の動きを調査した資料や物資の備蓄状況を記した資料をまとめ始めた。この二人であれば、すぐに準備を終わらせることが出来るだろう。僕はミヤに護衛を頼むと共に、いざという時は全員を護衛することを頼んだ。
「無茶なことをいうわね。でも、多分大丈夫よ。シラーが近くまで来ているはずだから、その何とかって場所に着く頃には合流できると思うわ。だけど、一応言っておくわよ。私達はロッシュを一番に守るからね。それはロッシュが何を言おうと変わらないことだから。それだけは忘れないでね」
やっぱり、ミヤのこの言葉はすごく嬉しくなる。ずっと、僕を考えてくれているからだ。僕はミヤを皆がいる前で強く抱きしめた。ミヤは恥ずかしそうにしていたけど抵抗することなく僕を受け入れてくれた。ミヤがいれば何が会っても、きっと大丈夫だ。なぜだが、ミヤといるとそんな気がしてくる。
ガムドとサリルには一足先に都市建設現場に向かうことを告げ、ロドリ子爵とガットン伯爵と共にサリルの屋敷を後にした。僕はロドリ子爵の横に並び、侯爵の人となりを聞くことにした。なにやら言いにくそうな顔をしながら、重い口を開いた。
「侯爵は我々を導いてくれたお方です。あのお方がいなければ、我々は路頭に迷っていたかも知れません。先の大戦でも果敢に敵軍を打ち破り、敵方にも名の知れた将軍でした。王国への忠誠心は篤く、正直、独立を考えるなんて思ってもいなかったのです」
ほお。ロドリ子爵の話を聞く限りでは、とても素晴らしい人物のように聞こえるが、普段の生活の様子なんかはどうなんだろうか。そのような人物ならさぞかし住民を大切にしているのだろうな。同じ領主として参考になることがあればよいが。
「普段の生活は、私にはよく分かりません。しかし、住民に対してはかなり厳しいお方です。特に金銭に関わること、今では食料ですが、それらに対しては厳罰を処しておりました。皆苦しいので、多少は御慈悲があってもと思ったのですが……いえ、これ以上は勘弁してください。主君を辱めることになるので」
「そうか、正直に話してくれた助かった。主君の悪口を外の者に言わないとは部下の鏡だな。まぁ、僕の目でしかと見定めさせてもらうことにしよう。僕自身、勉強できることがあるかも知れないからな」
「イルス公は変わっていらっしゃいますね。私はイルス公は王国初代王にも負けないほどの偉業を成し遂げていると思っています。にもかかわらず謙虚な姿勢を崩さず、他から学び取ろうとする姿勢はなかなかできるものではありません」
そういうものだろうか。僕にはロドリ子爵が買いかぶりすぎているのではないかと思わざるを得ない。それからも二人で北部諸侯連合について話をしながら建設現場に到着した。現場指揮をしていたグルドを呼び出し、北部諸侯連合の話をし、その本部に向かうので同行することを命ずると、力強く頷いた。グルドは僕の一言で自分の役割を理解し、その危険性を認識したのだろう。僕は更に同行するものを数名選ぶように指示した。
それからしばらくすると、ガムドとサリルが到着し、ガムドも準備が完了したようだ。僕の側にいるミヤを見てから、皆に出発することを告げた。建設現場から目的地までは、30キロメートルと結構な距離があったが、道が整備されているせいか思ったより近く感じた。その間にロドリ子爵から北部諸侯連合の構成について聞くことが出来た。構成している貴族は全部で10名。侯爵が一人、伯爵が一人、子爵が二人、男爵が三人、騎士爵が三人となっている。それぞれ自分の領土を有しており、侯爵が最も大きな領土と人口を有する。侯爵の領土は、北部諸侯連合の三割ほどで人口は15万人を数える。伯爵も負けずと広大な領土を有し、人口は10万人。子爵がそれぞれ五万人ほど。男爵はそれぞれ一万人。騎士爵はそれぞれ数千人、という感じになっている。
侯爵領と伯爵領は平地にあり、食料生産のほとんどが二つの領で賄われていた。今はほぼ生産できていないが。それ以外は森や山岳地帯に領土を保有しており、天然資源の殆どを有している。ただ、優良な鉱山開発権は侯爵が有しており、富が侯爵家に集中するように出来ている。
話を聞くと、元から北部諸侯というのは一つの国のように機能していたのだな。強大な侯爵家を維持することで王国と対等な関係を築いていたのだろう。その政治は素晴らしいと思うな。もっとも、集中した富を分配しなければ意味はないが。やはり、話を聞く限りでは侯爵という人物は政治力に長けた人物という感じだな。そんな人物ならこの局面を突破できるかも知れないな。
そんなことを考えている間に目的地に到着してしまった。これが、侯爵家の領都か。なるほど、公国のどの街と比べても勝てる気がしないな。町並みがずっと続いているのではないかと錯覚するほどの奥行きがあり、建物に統一感が見られ、洗練された印象を受けた。領都の入り口には屈強な兵が配備され、ガットン伯爵の姿を見るとすぐに侯爵の屋敷への案内役が呼ばれた。
未だ、侯爵の姿は見えないか。どうやら会うのは屋敷になりそうだが。本当に侯爵は僕達を歓迎しているのか疑わしくなってくるな。僕は、屋敷へ向かう間住民たちの様子を観察することにした。政治手腕が優れた領主であるから、住民の暮らしの水準はさぞ高いであろうと期待したからだ。
しかし、見る住民全てが生気を失いかけており、こちらに気付く様子もなく地べたに座り込んでいる姿がよく見られた。体調もあまり良くなさそうだ。おそらく食事をまともに食べていないせいだろう。目の前にいる屈強な兵士がいるから、その違いが更に強調されている感じだ。
確かに食事量が制限されているため、仕方ないとは思うが、それにしてもこの状態を放置するとはな。僕はロドリ子爵にどこの住民もこのような状態か、と問うと無言を貫いていただけだった。最後に、申し訳ありません、とだけ言ってきた。
ロドリ子爵の態度から、ここだけということがなんとなく分かった。僕は誰もいない方向を向いて小さな声で呟いた。
「ハトリ。ここの住民がどんな暮らしをしているか調べろ。それと侯爵の身辺を探れ。これは急ぎだ」
僕がそういうと、どこからともなく、承知しました、ということだけが聞こえた。僕が独り言を言っていたと思ったのかロドリ子爵が心配そうに声をかけてきてくれた。領都の真ん中に屋敷がある。まるで王城のような構えだった。といっても見たことはないけど。しかし、侯爵とはこれほどの力を持っているのか。
ここからはガットン伯爵が案内するようだ。勝手知ったると言った感じで数多ある部屋を無視して目的の部屋に真っ直ぐと向かっていった。調度品の数々も見事なものだ。若干、成金趣味と言った感じで僕は好きではないが、価値あるものであることは分かった。僕が調度品に見惚れているのだと勘違いしたガットン伯爵は偉そうに展示物の説明を始めようとしてきた。
僕はすぐに遮り、進むように命令した。さすがにムッとした様子だったが、特に逆らう様子もなく案内を続ける。重厚な扉を開けると、大きな部屋があった。シャンデリアのような豪華な照明がぶら下がり、その下には何人座れるか分からない程の長テーブルが置かれていた。その奥にここの屋敷の主、侯爵が鎮座していた。
僕が想像した侯爵像とは大きく異なっていた。政治手腕に優れ、戦場でも活躍する人物と言われていたので、豪傑な雰囲気を想像していたが、そこにいるのは醜悪な顔をした男がいた。無駄な脂肪を蓄え、とても知的な生命体とは思えなかった。
僕達は侯爵とはテーブルを挟んで反対側にいる。侯爵はこちらに出迎えに来ることなく、こちらが行く羽目になった。それだけでもかなり心証が悪い。外見も合わさると信頼することが難しいレベルだ。僕達は未だ立ったまま。ガットン伯爵だけ侯爵の後ろに立ち、何やら小声で話している。侯爵はにやけながら話を聞いていた。話が終わると、ガットン伯爵は尊大な雰囲気を醸し出し、僕達を見下すような格好になった。
侯爵は体を少し動かした。立ち上がるのかと思ったら、ただの座り直しただけのようだ。
「よく来たな。イルス辺境伯……ではなく公だったか。儂がドドガン侯爵だ。覚えておけ。食料支援に応じてくれたようだな。応じるつもりなら、最初から応じておけば良いものを。無駄な手間をかけさせられたわ。まぁ、儂からは何も渡せないが、礼だけはしておこう。大儀であったな。まぁ、食事を用意してあるから存分に食べていくがいい。都の味だ。田舎では食えぬものばかりだから舌にあうか分からぬがな」
さすがにここまでの無礼はないだろう。僕もすぐに話を反故にして帰りたくなってきたな。このような者たちと共闘することなど僕にはできなさそうだ。僕が踵を返そうとすると、ロドリ子爵が僕を必死な形相で止めようとした。
「ドドガン侯爵!! イルス公は我々の窮状を知って助けを差し伸べてくれたのです。そのお方に対して、今の言いようはあまりにも……」
「ふん。子爵風情が出しゃばりおって。まぁ、辺境伯。許してくれ。儂に悪気があったわけではない。お前の助けは本当にありがたいと思っているのだ。食事をして、今後について話し合おうではないか。特上の酒も用意してある。ガッドン、席まで案内しろ」
僕はロドリ子爵の必死な態度を見て、この北部諸侯連合の実態を見定めることにした。その特上の酒とやらを飲ませてもらうことにしよう。さて、どんな話が聞けるか楽しみだ。
僕はガムドとサリルに同行することを命じた。二人はすぐに王国軍の動きを調査した資料や物資の備蓄状況を記した資料をまとめ始めた。この二人であれば、すぐに準備を終わらせることが出来るだろう。僕はミヤに護衛を頼むと共に、いざという時は全員を護衛することを頼んだ。
「無茶なことをいうわね。でも、多分大丈夫よ。シラーが近くまで来ているはずだから、その何とかって場所に着く頃には合流できると思うわ。だけど、一応言っておくわよ。私達はロッシュを一番に守るからね。それはロッシュが何を言おうと変わらないことだから。それだけは忘れないでね」
やっぱり、ミヤのこの言葉はすごく嬉しくなる。ずっと、僕を考えてくれているからだ。僕はミヤを皆がいる前で強く抱きしめた。ミヤは恥ずかしそうにしていたけど抵抗することなく僕を受け入れてくれた。ミヤがいれば何が会っても、きっと大丈夫だ。なぜだが、ミヤといるとそんな気がしてくる。
ガムドとサリルには一足先に都市建設現場に向かうことを告げ、ロドリ子爵とガットン伯爵と共にサリルの屋敷を後にした。僕はロドリ子爵の横に並び、侯爵の人となりを聞くことにした。なにやら言いにくそうな顔をしながら、重い口を開いた。
「侯爵は我々を導いてくれたお方です。あのお方がいなければ、我々は路頭に迷っていたかも知れません。先の大戦でも果敢に敵軍を打ち破り、敵方にも名の知れた将軍でした。王国への忠誠心は篤く、正直、独立を考えるなんて思ってもいなかったのです」
ほお。ロドリ子爵の話を聞く限りでは、とても素晴らしい人物のように聞こえるが、普段の生活の様子なんかはどうなんだろうか。そのような人物ならさぞかし住民を大切にしているのだろうな。同じ領主として参考になることがあればよいが。
「普段の生活は、私にはよく分かりません。しかし、住民に対してはかなり厳しいお方です。特に金銭に関わること、今では食料ですが、それらに対しては厳罰を処しておりました。皆苦しいので、多少は御慈悲があってもと思ったのですが……いえ、これ以上は勘弁してください。主君を辱めることになるので」
「そうか、正直に話してくれた助かった。主君の悪口を外の者に言わないとは部下の鏡だな。まぁ、僕の目でしかと見定めさせてもらうことにしよう。僕自身、勉強できることがあるかも知れないからな」
「イルス公は変わっていらっしゃいますね。私はイルス公は王国初代王にも負けないほどの偉業を成し遂げていると思っています。にもかかわらず謙虚な姿勢を崩さず、他から学び取ろうとする姿勢はなかなかできるものではありません」
そういうものだろうか。僕にはロドリ子爵が買いかぶりすぎているのではないかと思わざるを得ない。それからも二人で北部諸侯連合について話をしながら建設現場に到着した。現場指揮をしていたグルドを呼び出し、北部諸侯連合の話をし、その本部に向かうので同行することを命ずると、力強く頷いた。グルドは僕の一言で自分の役割を理解し、その危険性を認識したのだろう。僕は更に同行するものを数名選ぶように指示した。
それからしばらくすると、ガムドとサリルが到着し、ガムドも準備が完了したようだ。僕の側にいるミヤを見てから、皆に出発することを告げた。建設現場から目的地までは、30キロメートルと結構な距離があったが、道が整備されているせいか思ったより近く感じた。その間にロドリ子爵から北部諸侯連合の構成について聞くことが出来た。構成している貴族は全部で10名。侯爵が一人、伯爵が一人、子爵が二人、男爵が三人、騎士爵が三人となっている。それぞれ自分の領土を有しており、侯爵が最も大きな領土と人口を有する。侯爵の領土は、北部諸侯連合の三割ほどで人口は15万人を数える。伯爵も負けずと広大な領土を有し、人口は10万人。子爵がそれぞれ五万人ほど。男爵はそれぞれ一万人。騎士爵はそれぞれ数千人、という感じになっている。
侯爵領と伯爵領は平地にあり、食料生産のほとんどが二つの領で賄われていた。今はほぼ生産できていないが。それ以外は森や山岳地帯に領土を保有しており、天然資源の殆どを有している。ただ、優良な鉱山開発権は侯爵が有しており、富が侯爵家に集中するように出来ている。
話を聞くと、元から北部諸侯というのは一つの国のように機能していたのだな。強大な侯爵家を維持することで王国と対等な関係を築いていたのだろう。その政治は素晴らしいと思うな。もっとも、集中した富を分配しなければ意味はないが。やはり、話を聞く限りでは侯爵という人物は政治力に長けた人物という感じだな。そんな人物ならこの局面を突破できるかも知れないな。
そんなことを考えている間に目的地に到着してしまった。これが、侯爵家の領都か。なるほど、公国のどの街と比べても勝てる気がしないな。町並みがずっと続いているのではないかと錯覚するほどの奥行きがあり、建物に統一感が見られ、洗練された印象を受けた。領都の入り口には屈強な兵が配備され、ガットン伯爵の姿を見るとすぐに侯爵の屋敷への案内役が呼ばれた。
未だ、侯爵の姿は見えないか。どうやら会うのは屋敷になりそうだが。本当に侯爵は僕達を歓迎しているのか疑わしくなってくるな。僕は、屋敷へ向かう間住民たちの様子を観察することにした。政治手腕が優れた領主であるから、住民の暮らしの水準はさぞ高いであろうと期待したからだ。
しかし、見る住民全てが生気を失いかけており、こちらに気付く様子もなく地べたに座り込んでいる姿がよく見られた。体調もあまり良くなさそうだ。おそらく食事をまともに食べていないせいだろう。目の前にいる屈強な兵士がいるから、その違いが更に強調されている感じだ。
確かに食事量が制限されているため、仕方ないとは思うが、それにしてもこの状態を放置するとはな。僕はロドリ子爵にどこの住民もこのような状態か、と問うと無言を貫いていただけだった。最後に、申し訳ありません、とだけ言ってきた。
ロドリ子爵の態度から、ここだけということがなんとなく分かった。僕は誰もいない方向を向いて小さな声で呟いた。
「ハトリ。ここの住民がどんな暮らしをしているか調べろ。それと侯爵の身辺を探れ。これは急ぎだ」
僕がそういうと、どこからともなく、承知しました、ということだけが聞こえた。僕が独り言を言っていたと思ったのかロドリ子爵が心配そうに声をかけてきてくれた。領都の真ん中に屋敷がある。まるで王城のような構えだった。といっても見たことはないけど。しかし、侯爵とはこれほどの力を持っているのか。
ここからはガットン伯爵が案内するようだ。勝手知ったると言った感じで数多ある部屋を無視して目的の部屋に真っ直ぐと向かっていった。調度品の数々も見事なものだ。若干、成金趣味と言った感じで僕は好きではないが、価値あるものであることは分かった。僕が調度品に見惚れているのだと勘違いしたガットン伯爵は偉そうに展示物の説明を始めようとしてきた。
僕はすぐに遮り、進むように命令した。さすがにムッとした様子だったが、特に逆らう様子もなく案内を続ける。重厚な扉を開けると、大きな部屋があった。シャンデリアのような豪華な照明がぶら下がり、その下には何人座れるか分からない程の長テーブルが置かれていた。その奥にここの屋敷の主、侯爵が鎮座していた。
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僕達は侯爵とはテーブルを挟んで反対側にいる。侯爵はこちらに出迎えに来ることなく、こちらが行く羽目になった。それだけでもかなり心証が悪い。外見も合わさると信頼することが難しいレベルだ。僕達は未だ立ったまま。ガットン伯爵だけ侯爵の後ろに立ち、何やら小声で話している。侯爵はにやけながら話を聞いていた。話が終わると、ガットン伯爵は尊大な雰囲気を醸し出し、僕達を見下すような格好になった。
侯爵は体を少し動かした。立ち上がるのかと思ったら、ただの座り直しただけのようだ。
「よく来たな。イルス辺境伯……ではなく公だったか。儂がドドガン侯爵だ。覚えておけ。食料支援に応じてくれたようだな。応じるつもりなら、最初から応じておけば良いものを。無駄な手間をかけさせられたわ。まぁ、儂からは何も渡せないが、礼だけはしておこう。大儀であったな。まぁ、食事を用意してあるから存分に食べていくがいい。都の味だ。田舎では食えぬものばかりだから舌にあうか分からぬがな」
さすがにここまでの無礼はないだろう。僕もすぐに話を反故にして帰りたくなってきたな。このような者たちと共闘することなど僕にはできなさそうだ。僕が踵を返そうとすると、ロドリ子爵が僕を必死な形相で止めようとした。
「ドドガン侯爵!! イルス公は我々の窮状を知って助けを差し伸べてくれたのです。そのお方に対して、今の言いようはあまりにも……」
「ふん。子爵風情が出しゃばりおって。まぁ、辺境伯。許してくれ。儂に悪気があったわけではない。お前の助けは本当にありがたいと思っているのだ。食事をして、今後について話し合おうではないか。特上の酒も用意してある。ガッドン、席まで案内しろ」
僕はロドリ子爵の必死な態度を見て、この北部諸侯連合の実態を見定めることにした。その特上の酒とやらを飲ませてもらうことにしよう。さて、どんな話が聞けるか楽しみだ。
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