爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第262話 城郭都市建設

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 僕達は砦作りを始めることにした。僕が指示を出したサリルはサノケッソの街に戻っていた。ミヤとシラーも行動を開始したようだ。ミヤは常に僕に張り付くように警護を始め、シラーは眷属たちを呼び寄せるために魔牛牧場へと戻っていった。砦建設の物資はグルド達が用意してくれたものを使うことになるが、砦の規模を考えると全く足りていない状況だ。

 追加の物資については、ガムドに頼みサノケッソの街から運搬してもらうことにした。グルドには砦を作る建築作業員達の指揮を頼むことにした。グルドの元部下たちも建築の技術が高いものが多く、精巧な建物を作ることを難しいが木材の加工程度なら簡単にすることができる。幸い、木材は上質なサノケッソ産の物がある。これらを建材に加工してもらっている間に、僕は堀を作ることから始めよう。

 僕とミヤは、砦建設をする予定地に向かうことにした。グルド領の領都、というか村から二キロメートルほど離れた場所に大河が流れている。川幅は増水したときは20メートルほどになりそうだ。今は数メートルしかないが、この川を掘にするためには、まずは川の中央を掘り下げることから始めてみるか。深さは5メートルもあれば十分だろう。砦の大きさは二キロメートル四方にする予定だ。

 僕は、土魔法で幅10メートル深さ5メートルの溝を二キロメートルに渡って掘り進めていく。掘った土はその脇に盛り固めていく。明らかに人工的な雰囲気になってしまったが、これで堤防も兼ねているので洪水対策にもなっているのだ。河川の水位が低いおかげで作業も簡単に終わらせることが出来た。しかし、これだけで終わらせるわけにはいかない。

 堀は外壁の外側にぐるりと一周と囲むように巡らせるつもりだ。前面だけでも砦としての機能を考えれば十分だが、砦内で水運を用いるために河川の水を内側に引き込んでおいたほうがいいだろう。壁を作ってからでは堀作りはなかなか難しそうだ。僕は周囲にも半円状になるように堀を作っていく。これで、砦予定地に約七キロメートルほどの堀が完成した。

 すでに河川とは開通させているため、徐々にではあるが水位が上がり始めていた。それでも貯まるまでに数日は必要になるだろう。元々の河川より数メートルは低いため、その部分は常に水が張っている状態になる。今はそれで十分だ。僕は堀の外側に立ち、内側にどのような砦を築くかを考えていた。

 堀の深さは十分すぎるな。覗き込んでみても、怖いくらいだ。これならば何千という兵が押し寄せても砦に一歩も近づくことが出来ないだろう。あとは、橋を作れば……しまった。橋を作る時間を考えていなかった。橋が出来なければ堀の内側に移動することが出来ない。困ったな。

 ちょっと無理矢理だが……僕は鞄から鉄をありったけの鉄を取り出した。僕は土魔法で鉄を橋になるように加工を始めた。やはり、鉄だと多くの魔力が必要となるな。完成したのが巨大なはしごだ。それを掘りにかければ終わりだ。なかなかいい出来だ。渡ってみると問題はなさそうだ。かなり怖かったけど。しかし、もうすこし補強しないと使用には耐えられそうにないな。

 さて、どうやって補強したらいいものか。このはしご状の橋では負荷がかかると中央部分が沈み込んでしまうな。それを引っ張り上げるような構造が必要になるな。アーチ状の鉄柵をくっつけてもみるか。そうすれば、中央部分は引っ張られて、沈み込みが緩和されるはずだ。

 実際に設置してみると、沈み込みが緩和したような気がした。僕だけの体重ではなんとも判断できないな。しかし、いい橋だな。何とかなく作ってみたが、凄い橋を作ってしまった気がする。幅は六メートルはあるからな。資材を運び込むには十分過ぎるな。

 とりあえず、今日は終わりだ。随分と魔力を消費してしまった。なるべく魔力回復薬は温存しておいたほうがいいだろう。僕はグルドの村に戻ることにした。グルドとその部下たちは砦で使うための建材の加工を総出で取り組まれていた。すでに建材として加工されている木材が山積みになっていて、グルド達の仕事の早さを伺うことが出来た。

 グルドを探すと、指揮をするために皆のところを回って歩いているのが見えた。僕はグルドがいる方にいくと、僕に気付き手を振ってきた。

 「グルド。順調そうだな。僕のほうは堀を完成することが出来たぞ。明日には砦の中に運び込みをすることが出来るだろう」

 僕がそう言ったが、グルドはなにやら考えたような顔をして砦予定地の様子を見たいと言うので、共に向かうことにした。グルドとしても明日の段取りを考えるのに実際の現場を見なければ気がすまないのだろう。さすが、名将と言われている男だな。

 僕達の目の前には、ぐるりと囲む掘と不相応な立派な橋があった。その橋を慎重な足取りでグルドが進んでいく。何度か掘の間を行ったり来たりして、ようやく戻ってきた。

 「なんて物を作ったんだ。こんなもの王国を探したって見つからないぞ。ロッシュ公は一体どこでこの橋の作り方を覚えたんだ?」

 僕にはこの橋の凄さがいまいちよく分かっていない。グルドが言うには、橋といえば木製と決まっており、橋桁があるのが当り前である。しかし、この橋には橋桁がなくアーチ状の構造物があるだけで、さらに鉄製だ。グルドの驚きはそれだけでなく、幅は精々馬車が一台通れる程が相場だが、ここにある橋はその倍以上の幅を持っている。

 「僕も初めて作ったんだが、思いの外上手くいったと自分でも驚いている。多分強度は問題ないとは思うが、自信は残念ながらない。だから、この橋は暫定的な物として使って、作り直すことも考えているぞ」

 「いや、これ以上の橋はなかなかないぞ。確かに初めてみるものだから、強度に不安があるな。明日からの運び込みも慎重にやらないといけないだろう。しかし、橋にも驚いたが、この砦は凄そうなものになりそうだな。完成が楽しみだ」

 僕も本当に楽しみだ。僕達はグルドの村に戻り、僕とミヤだけサノケッソの街に戻った。さすがに村には僕達が滞在できるような場所がなかったのだ。翌日も現場に直接向かい、作業の続きをしようとした。すでにグルド達は建材の運び込みを開始しており、数十人の人と大量の木材が乗っかっても橋は弛むことはなかった。強度の確保は何とか成功したようだな。

 この橋が使えるというのは大きな利点がある。幅をある程度自由に決めることができ、特に崖など橋桁を設置できない場所には最適な作りとなっている。もっとも大きな利点は僕の魔法で作れるということだろうか。

 さて、今日は、外壁を作る作業だ。堀を作る際に出た土を利用するつもりだ。さらに、鉄板を挟み込み、あらゆる攻撃に耐えうる仕様とさせているのだが、実際に使われたことがないため、鉄板を入れることが果たして意味のあることかどうかは誰にも分からない。

 今回も壁の上に人を配置できるように幅広にする。さらに、壁の中に鉄板で囲まれた部屋を作り、そこだけは外壁に小さな穴が作られている。この穴はクロスボウの矢が飛び出す場所だ。この鉄板に囲まれて部屋に兵をいれられるような仕組みになっている。これは、以前、砦を作った時にライルからの助言を参考に作られたものだ。これがあれば、敵からの攻撃に晒されることなく、攻撃を加えることができる。

 さらには外壁の天井部分に人が歩けるような通路を作り、いくつものバリスタを設置できる場所も作った。バリスタをあとで設置しようとすると、巨大さ故、どうしても通行の邪魔になることが多い。その点、今回はバリスタ用の場所を確保しているので、問題は解決済みだ。

 更に更に……と工夫は尽きないのだが、基本的には兵士たちの動きを考えながら外壁を作っていった。高さも10メートルほどとなり、一辺が二キロメートルとなる外壁の200m毎に物見櫓を作ってある。物見櫓はさらに10メートル高い。これほど高いところとなると、恐怖で足がすくんでしまう。僕は見ていないが、高いところが得意なものに登らせて一望させると、数km先まで肉眼で見ることが出来るらしい。

 この結果にグルドも大いに満足した様子で、僕の肩をガシガシ叩いて喜びを表現していた。僕もその時は嬉しかったからなんとも思わなかったが、あとで見たら肩が腫れ上がってしまっていた。砦建設中はグルドに近寄らないほうが良さそうだな。

 外壁が終わってしまうと、砦建設に関しては僕の仕事は殆どない。未だ、砦には一軒も建物が建っていないが、木材はガムドから休みなく送られてきており、食料や物資もサリルが送ってくるため、山のように積まれ始めていた。そういえば、食料は地下貯蔵庫を作って保管したほうがいいかも知れないな。砦が戦場となり、火災が発生した時に食料や物資が燃えてしまう危険性がある。それを回避するために地下保存が理想的だ。グルドも賛成してくれたので、砦の東側に地下貯蔵室を設けることにした。一万人程度食料や物資を保管するひつようがあるためかなり大きな空間になってしまったな。

 グルドもこれにも感激した様子で、僕の肩を叩きそうになったので十分な距離を取った。ちょっと、悔しそうな顔をしていたのは見間違いだろうか? そんな感じで、砦建設は着実に進もうとしていた。おそらく完成は一年は必要とするだろうが、砦としては一ヶ月もあれば機能できるほどになるだろう。なんとか、王国と事を構える前に最低限は完了するといいのだが。

 そんなことを考えていると、急ぎの報告がやってきた。その報告を聞いて、僕とグルドはお互いに目を合わせてしまった。なんと、北部諸侯からの使者がやってきたというのだ。このタイミングで、一体何のようなのだろうか。
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