爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第261話 砦建設相談

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 今後の王国軍の動き次第では、僕は北部諸侯の独立を支援するために動くことに決めた。

 支援といえば、食料、さらに必要となる物は北部諸侯に送るつもりだ。ここにはサリルがいる。必要な物資の調達はサリルに任せておけば問題ないだろう。しかし、大きな問題がある。北部諸侯達の意志が不明な点だ。それを確認する必要がある。そのためには北部諸侯との交渉をしなければならない。僕はガムドに王国と北部諸侯の戦力比較をお願いした。

 ガムドは様々な条件下で二つの勢力がぶつかったときの話をし始めた。王国軍についての現状を十分に把握していないと前置きしながら、王国軍が有している兵力は15万人ほど。しかし、今はもっと多いかも知れないらしいが。その中で北部諸侯を攻略するために使える兵力は多くとも五万人。一方、北部諸侯の兵力は4万人。戦争は兵力が拮抗している場合、守備側に有利に働くことがある。

 しかし、王国は北部諸侯の食料を握っているという特殊な関係性を持っている。そのため、王国軍は北部諸侯達の食料がなくなるまで長期戦の構えを取っていれば、自然と勝利を治められるというのだ。そうなると、北部諸侯が勝利をするためには短期決戦の野戦を展開しなければならない。守備側が有利であるという立場を捨ててだ。兵力は拮抗することが予想されるので、所持している兵器の性能や将軍の優劣で決まるという。

 「北部諸侯と王国が戦闘になれば、一週間以内に勝敗は必ず決するでしょう」

 北部諸侯の体力は一週間であることがわかった。戦争が分かってから一週間で支援物資を集められる体制を整えておかなければならない。それに支援することを開戦直後に北部諸侯に伝えておく準備をしておかなければならない。そうしなければ、早々に降伏しかねないからな。それに現時点で、こちらから交渉を持ちかけてもよい結果が得られないだろう。

 北部諸侯のために、今やっておかなければならないことは、北部諸侯の中でこちらに友好的な人物を模索すること。食料や物資の備蓄を北の街に集積しておくこと。さらに後続の物資を村やラエルの街に備蓄しておくこと。物資輸送のための荷車を確保しておくこと。これらが必要となってくる。

 さらに、砦建設を早急に開始しなければならない。これによって、公国の国力を北部諸侯に示さなければならない。僕はガムド達に砦建設を命じた。すると、ガムドが提案してきた。

 「砦建設について提案があります。この砦については北部諸侯の耳にも入りましょう。我らの国力を示めせるほど大きなものにすれば、北部諸侯との交渉もこちらに有利な条件で進めることが出来ましょう」

 なるほど。ガムドの言う通りだ。北部諸侯がどれほど公国について情報を有しているかは分からないが、強大な砦を築くことが出来れば、こちらを頼りやすくなるだろう。

 「ガムドのいうことに一理あるな。その案で話を進めていこう」

 僕がそう言うと皆が一様に頷いた。僕はサリルに物資の調達を頼み、戦に間に合うように用意するように指示を出した。そして、ハトリを呼び出した。ハトリは天井裏から降りてきた。どうやら、この屋敷は埃が溜まっているようでハトリがホコリまみれになっていた。登場はカッコよかったのだが、咳き込みすぎて様になっていない。

 「ハトリ、里でも頼んだことだが北部諸侯達の意志を判断できる材料が欲しい。公国に友好的な人物、北部諸侯達の食料備蓄状態などを調べてくれ。それと王国軍の動きをこまめに情報を渡してくれ。特に兵力だ。ハトリがもたらされる情報で我々の行動が決まる。よろしく頼むぞ」

 ハトリは了解した、というと屋敷を出ていった。どこかに潜んでいる連絡役に伝えているのだろう。僕がハトリの後ろ姿を見ていると、ガムドが話しかけてきた。

 「最悪の場合、王国との交戦することを考えると、ここにいる兵力では心許ないですな」

 その通りだ。ここにいる第二軍はグルドの元部下が主力となって、ガムドの元部下が合流しただけで兵力は六千人ほどだ。王国軍の兵力が未知数である以上、多いに越したことはないだろう。一応、ライルには北への援軍については準備するように指示は出してあるから、援軍の要請をすれば一週間もすれば到着するだろう。それでもギリギリだな。ハトリの情報が早く入ればよいが。

 あとは武器だ。未だ編成が終わったばかりで武器はグルドが以前から配備しているもののままなのだ。武器は村に多く備蓄されている。持ってきてもらうとしても一週間はかかってしまうだろう。この一週間だけは王国軍に動いてほしくはないな。僕はサリルに武器の調達と食料などの物資の調達を村に打診するように指示を出した。村にはゴードンがいるのだ、すぐに持ってきてくれるだろう。

 僕はミヤとシラーにも王国との戦いに発展するかも知れない事を告げた。ミヤが僕に戦いに出るの? と聞いてきた。ミヤの関心は常にそこだ。僕の身を一番に考えてくれる。僕は頷くと、わかったわ、と答えた。

 「ロッシュが戦いにでることは止めはしないわ。けど、私は全力でロッシュを守るだけよ。村からシェラを呼んだほうが良さそうね。それに眷属達も呼びましょう。王国って人数だけは多いからね」

 僕はミヤにありがとう、と告げると笑顔になった。これで今できる準備は終わらせることが出来た。あとは砦を作るだけだ。再び、ガムドとグルドに顔を合わせて、砦建設のための会議を始めることにした。すでに砦の設計図は出来上がっていて、南方の砦を基礎に考えられているようだ。

 南方の砦は山岳地帯を利用したものだ。そのため、一面の壁を作れば、それだけで強固な砦を築くことが出来た。しかし、ここには山や崖がない。どうしてもやり方を変えなければならない。幸い、大きな河川が流れているのでそれを利用しない手はない。

 僕が考えた方法を設計図を指差しながら、ガムドたちに説明していく。

 「今回の砦は南方とは考え方を変えたいと思っている。壁による防御陣を築くのは同様だが、河川を利用し壁に近寄れないような構造を作ろうと思う。公国の武器は遠距離攻撃に特化していると言ってもいい。河川で敵の接近を防ぎ、遠距離攻撃により敵の戦力を挫く。僕はそういう砦を作りたいと考えている」

 さらに、と僕は話を続けた。

 「先程も言ったが、この砦は公国の国力を示すものでなければならない。そのためにも砦と街を一体となったものを作りたいと思っている。僕がここに来て思ったことは砦と街の距離が離れすぎている。これだと物資の運搬に支障が出てしまう可能性が高い。そこで街機能を砦に取り込もうと思っているのだが」

 僕の案について、ガムド達は一々頷いていて聞いていた。その中でガムドが質問をしてきた。

 「ロッシュ公の案は。面白いものですな。その案の砦が出来たら、さぞかし攻略には苦戦しそうですな。しかし、いくつか質問があるのですが……」

 ガムドが言うには、主に河川の利用についてだ。敵の接近を防ぐためには十分な水深と川幅を必要とする。しかし、使おうとしている河川は下流になるため、川幅は異常に広いが、水深はかなり浅い。この時期は雪解け水があるが夏場は底が見れるほど水が減ってしまう。そうすれば、川を使った意味がなくなるというのだ。

 「ガムドの言うことは最もだ。だから、渡河することが難しいほどの堀を作ろうと思う。十分な深さと幅を備えておき、年中水を貯めておけるような構造にしておけば、ガムドの心配はなくなるだろう。しかも、その堀を砦の中に配置すれば水路としても使うことができる」

 ガムド達との話を勧めていくうちに壮大な街が出来上がってしまった。要塞都市とでも言えばいいだろうか。分厚い外壁で街を取り囲み、その外には深い堀がめぐらされ、内側には数万人は居住できるほどの空間を確保し、堀で水路を街中をめぐらしたものだ。一層のこと、雪解け水を利用して上水道の整備をやってしまったほうがいいな。農業用の水資源としても使えるので、春の作付けにも役に立つだろう。

 僕達は設計図を書き直すことにし、その日は夜更けまで砦ではなく城塞都市の建設の会議が続けられた。
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