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第257話 北の街へ出発準備
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エルフの里で手に入れたゴムノキの苗は、手に入れた翌日には魔の森の畑に移植されることになった。僕達が視察の旅で村を開けている間に、すっかりと麦は収穫されており今はきれいに耕された畑が広がっているだけの場所となっているのだ。そこに、100本の苗がきれいに植えられていく。そのうちの半分に土壌回復剤を投与してみることにした。果樹では見事に成長が促進した実績があるが、今回も同じとは限らないだろう。
この貴重な苗を枯らすわけにはいかないので、半分ということにした。結果はすぐに現われることになった。樹木の苗は、すぐに根付くことはない。野菜と比較してということだが。しかし、復活剤を投与した苗は定植してから数時間で大地に吸い寄せられるように根を下ろしてしまった。数日もすれば、また違った姿を見せてくれるだろうと期待できるほど成長が早い。
だが、復活剤を投与していない方に改めて投与するということはするつもりはない。やはり、初期の生育が早いということは反動がでかいものだ。その反動で枯れてしまうことも十分にある。そのため、この苗を管理するものには、常に様子を見ることを頼み、肥料の与える量やタイミングを教え、その通りに実践してもらうことにした。これは、村に植えた果樹から得た教訓をもとにしてある。あとは、様子を見て判断するしかないだろう。
そろそろ北の街サノケッソに出発しなければならないだろう。ガムドがグルドと合流し、情報を共有している頃だろう。早ければ、すでに砦建設が始まっているかも知れない。僕も急ぎ、建設現場に向かい砦を囲む外壁の建設を手伝わなければならない。未だ、忍びの里からは王国軍の動きについての情報が入ってこない。王国軍が北の街に攻撃を仕掛けてこなければいいのだが。
僕は出発する前にいくつか片付けなければならない用件がある。まずは、冷凍車を牽引するための魔獣を確保することだ。その仕事をククルに任せるべく、僕はククルを呼び出した。ククルは現在、魔獣研究所から離れ、魔の森の畑近く、フェンリルの住処の側にある住居で暮らしている。そのため、僕の呼び出しに対してすぐに屋敷にやってくることが出来るのだ。
「ロッシュ様。呼び出しの応じやってまいりました。なんでも魔獣の確保をしたいということですが」
「その通りだ。今回は従順な!! 魔獣をお願いしたい。冷凍車の牽引を嫌がらないものがいい。あとは、牽引に必要な力とスタミナが備わっていれば文句はないな。どうだ? 用意できそうか?」
「もちろん、フェンリルのハヤブサの息子をお貸しして頂けるのでしたら、用意は難しいことではないと思います。ロッシュ様のおっしゃる要件で当てはまる魔獣ですと、牛型のボナコン、馬型のバイコーン、犬型のケルベロス、蛇型のバジリスク辺りがいいかと思いますが、どれにいたしましょうか?」
用意できるのは有り難いが、どれにいたしましょうか? と言われても答えようがないぞ。特に蛇が牽引するって想像が出来ないんだけど。山岳地帯でも山肌を簡単に上っていけるだって? それは凄いことだが、物流の経路に山肌は存在しない。却下だ。普通に考えると、馬型か牛型がいいな。犬型って言われると犬ぞりを想像してしまう。どうしても大型の荷車を牽引できるような想像が出来ない。
僕があれこれといっていると、ククルはあからさまにため息をした。僕の魔獣への知識が薄いためだろう。ククルが説明するには、全てが一頭で十分に牽引する力はあるというのだ。牛型魔獣はそれは大きく、象ほどの大きさがあるため、更に大きな荷車でも容易に運ぶことができるそうだ。その代わり、速度はかなり遅いようだ。しばしば止まるそうで、安定性には欠ける。
馬型の持ち味は早さだ。大きな荷車でも牽引できる力があり、一番理想的な牽引役を務めることができる。しかし、欠点は上手く止まれないことだ。持ち前の角でとにかく突撃したくなるらしく、停車場に丈夫な物をいれておかなければ全てを壊してしまうらしい。
最後に犬型だ。牽引する力や早さは前者に劣るものの、とにかく従順な性格を有しており、現在牽引の主力である馬にもっとも似ていると思われる。
なるほど、三者とも一長一短があるということか。蛇についてはやはり話を聞いても、導入する気にはなれなかった。やはり、馬との互換性の高い犬型のケルベロスがもっとも受け入れやすいだろう。顔が三つあるというのはご愛嬌だろう。従順なら可愛く見えるはずだ。きっと。しばらくは魔獣を比較的見慣れている村人が使ったほうがいいだろうな。こういうのは急いで使うとろくなことがないからな。
まずは数を集めてもらい、僕が北の街から戻ってきてから使役魔法と魔石の埋め込みを施すつもりだ。
次に造船についてだ。船大工のテドを呼び出すことにした。
「ロッシュ公。船のことで相談があるとかで」
僕は、前に作ってもらった船について色々と問題点があることを指摘し、改善を求めるつもりだ。テドの作る船は基本的に物資を運ぶための構造をしている。そのため、長期航海をも想定しているのか船室が無駄に立派なのだ。今は日帰りができるほど近い場所での漁業が主となるため、船室は必要ないのだ。むしろ、魚を保管しておくための倉を多く確保してもらいたいと思っている。
「わかりました。すぐに変更しよう。ただ、一隻だけはほぼ完成してしまっているから、変更するとなると壊さなくてはならないな。一隻目とは双子船となっているから、全く同じ形のものなんだが。そちらはどうするつもりだ」
流石に仕事が早いな。もう二隻目が完成してしまっているとは。僕は船着き場に停留しておける船数を聞き、余裕があることがわかったので、一隻目と二隻目は当面は漁業に従事させ、後続の船が出来次第、物資運搬用に切り替えていくことにした。
「しかし、そうなると航路が出来るまで船着き場で埃をかぶってしまうことになって勿体なくないか? オレ達からすれば仕事を与えてくれるのは有り難いんだが」
そう。確かに新村から三村まで航路を繋げようと思うとどうしても海底の地形の知識が必要となってくる。チカカから聞いた話では一年は必要とするらしい。しかし、僕には秘策があるのだ。上手くいくかどうかは神頼みだが。
「まぁ、その辺りはいずれ分かる時が来るだろう。それよりも造船を急いで欲しい。こちらも物流を整え始めているので、漁獲量が増えてもらわなくては困るのだ。よろしく頼むぞ」
「ああ、もちろんだとも」
そういって、テドは急いで新村の船工房に戻っていった。あとは、学校設立についてだな。しばらくすれば、ラエルの街に公爵家出身のスータン達三千人が到着するはずだろう。その者達の受け入れの準備や学校設立のための準備を進めてもらわなければならない。僕はラエルの街の責任者であるゴーダを呼び出した。
「ゴーダです。お呼び出しのため、参上致しました。スータン以下三千名の受け入れについてという話でよろしいでしょうか。ラエルの街ではすでに住居づくりが始まっておりまして、約半分については完成しております。もう半分は、春の作付け以降となり、夏前には何とか完成させたいと考えております。酷でしょうが、それまでは住居に定員いっぱいで入ってもらうことになるでしょう」
さすがはゴーダだ。受け入れ業務は慣れたものだな。住居が間に合わないのは仕方がないことだ。スータンもその辺りは理解してくれるだろう。そうなると、学校設立の話のみだな。
「ゴーダにも話していたと思うが、未成年向けの学校設立を進めたいと思っている。スータンたちのなかには高等学校を卒業したものもいるほど学歴豊かなのだ。その者たちには学校設立の際には教師として仕事を任せたいと思っている。その事前準備として、スータンたちには教科書の作成を任せいと思っているのだ」
そう、僕が頼みたいの教材だ。以前、マリーヌに書かせていた教材は専ら文字を練習するためのものだ。絵を多く使いわかりやすさに重点を置いている。一方、スータンに任せるのは、初等教育と中等教育に用いる教材を現段階から作ってもらいたいのだ。こう言っては何だが、スータンたちは公爵家を追放された者たちだ。かなり年齢を重ねている者たちばかりなのだ。そういう者たちだからこそ、蓄えられた知識は豊富で教師としては適任だが老い先が短いのだ。
なるべく多くの書を残してもらうべく、ラエルの街に着いたと同時にでも書を作ってもらいたい。この成果は今後公国にとって貴重な財産となるだろう。ゴーダにもその旨を伝え、スータンにも伝え、すぐに書を作れる環境を作ってもらうことにした。
これで、僕は北の街に向けて出発できる準備が整ったのだった。
この貴重な苗を枯らすわけにはいかないので、半分ということにした。結果はすぐに現われることになった。樹木の苗は、すぐに根付くことはない。野菜と比較してということだが。しかし、復活剤を投与した苗は定植してから数時間で大地に吸い寄せられるように根を下ろしてしまった。数日もすれば、また違った姿を見せてくれるだろうと期待できるほど成長が早い。
だが、復活剤を投与していない方に改めて投与するということはするつもりはない。やはり、初期の生育が早いということは反動がでかいものだ。その反動で枯れてしまうことも十分にある。そのため、この苗を管理するものには、常に様子を見ることを頼み、肥料の与える量やタイミングを教え、その通りに実践してもらうことにした。これは、村に植えた果樹から得た教訓をもとにしてある。あとは、様子を見て判断するしかないだろう。
そろそろ北の街サノケッソに出発しなければならないだろう。ガムドがグルドと合流し、情報を共有している頃だろう。早ければ、すでに砦建設が始まっているかも知れない。僕も急ぎ、建設現場に向かい砦を囲む外壁の建設を手伝わなければならない。未だ、忍びの里からは王国軍の動きについての情報が入ってこない。王国軍が北の街に攻撃を仕掛けてこなければいいのだが。
僕は出発する前にいくつか片付けなければならない用件がある。まずは、冷凍車を牽引するための魔獣を確保することだ。その仕事をククルに任せるべく、僕はククルを呼び出した。ククルは現在、魔獣研究所から離れ、魔の森の畑近く、フェンリルの住処の側にある住居で暮らしている。そのため、僕の呼び出しに対してすぐに屋敷にやってくることが出来るのだ。
「ロッシュ様。呼び出しの応じやってまいりました。なんでも魔獣の確保をしたいということですが」
「その通りだ。今回は従順な!! 魔獣をお願いしたい。冷凍車の牽引を嫌がらないものがいい。あとは、牽引に必要な力とスタミナが備わっていれば文句はないな。どうだ? 用意できそうか?」
「もちろん、フェンリルのハヤブサの息子をお貸しして頂けるのでしたら、用意は難しいことではないと思います。ロッシュ様のおっしゃる要件で当てはまる魔獣ですと、牛型のボナコン、馬型のバイコーン、犬型のケルベロス、蛇型のバジリスク辺りがいいかと思いますが、どれにいたしましょうか?」
用意できるのは有り難いが、どれにいたしましょうか? と言われても答えようがないぞ。特に蛇が牽引するって想像が出来ないんだけど。山岳地帯でも山肌を簡単に上っていけるだって? それは凄いことだが、物流の経路に山肌は存在しない。却下だ。普通に考えると、馬型か牛型がいいな。犬型って言われると犬ぞりを想像してしまう。どうしても大型の荷車を牽引できるような想像が出来ない。
僕があれこれといっていると、ククルはあからさまにため息をした。僕の魔獣への知識が薄いためだろう。ククルが説明するには、全てが一頭で十分に牽引する力はあるというのだ。牛型魔獣はそれは大きく、象ほどの大きさがあるため、更に大きな荷車でも容易に運ぶことができるそうだ。その代わり、速度はかなり遅いようだ。しばしば止まるそうで、安定性には欠ける。
馬型の持ち味は早さだ。大きな荷車でも牽引できる力があり、一番理想的な牽引役を務めることができる。しかし、欠点は上手く止まれないことだ。持ち前の角でとにかく突撃したくなるらしく、停車場に丈夫な物をいれておかなければ全てを壊してしまうらしい。
最後に犬型だ。牽引する力や早さは前者に劣るものの、とにかく従順な性格を有しており、現在牽引の主力である馬にもっとも似ていると思われる。
なるほど、三者とも一長一短があるということか。蛇についてはやはり話を聞いても、導入する気にはなれなかった。やはり、馬との互換性の高い犬型のケルベロスがもっとも受け入れやすいだろう。顔が三つあるというのはご愛嬌だろう。従順なら可愛く見えるはずだ。きっと。しばらくは魔獣を比較的見慣れている村人が使ったほうがいいだろうな。こういうのは急いで使うとろくなことがないからな。
まずは数を集めてもらい、僕が北の街から戻ってきてから使役魔法と魔石の埋め込みを施すつもりだ。
次に造船についてだ。船大工のテドを呼び出すことにした。
「ロッシュ公。船のことで相談があるとかで」
僕は、前に作ってもらった船について色々と問題点があることを指摘し、改善を求めるつもりだ。テドの作る船は基本的に物資を運ぶための構造をしている。そのため、長期航海をも想定しているのか船室が無駄に立派なのだ。今は日帰りができるほど近い場所での漁業が主となるため、船室は必要ないのだ。むしろ、魚を保管しておくための倉を多く確保してもらいたいと思っている。
「わかりました。すぐに変更しよう。ただ、一隻だけはほぼ完成してしまっているから、変更するとなると壊さなくてはならないな。一隻目とは双子船となっているから、全く同じ形のものなんだが。そちらはどうするつもりだ」
流石に仕事が早いな。もう二隻目が完成してしまっているとは。僕は船着き場に停留しておける船数を聞き、余裕があることがわかったので、一隻目と二隻目は当面は漁業に従事させ、後続の船が出来次第、物資運搬用に切り替えていくことにした。
「しかし、そうなると航路が出来るまで船着き場で埃をかぶってしまうことになって勿体なくないか? オレ達からすれば仕事を与えてくれるのは有り難いんだが」
そう。確かに新村から三村まで航路を繋げようと思うとどうしても海底の地形の知識が必要となってくる。チカカから聞いた話では一年は必要とするらしい。しかし、僕には秘策があるのだ。上手くいくかどうかは神頼みだが。
「まぁ、その辺りはいずれ分かる時が来るだろう。それよりも造船を急いで欲しい。こちらも物流を整え始めているので、漁獲量が増えてもらわなくては困るのだ。よろしく頼むぞ」
「ああ、もちろんだとも」
そういって、テドは急いで新村の船工房に戻っていった。あとは、学校設立についてだな。しばらくすれば、ラエルの街に公爵家出身のスータン達三千人が到着するはずだろう。その者達の受け入れの準備や学校設立のための準備を進めてもらわなければならない。僕はラエルの街の責任者であるゴーダを呼び出した。
「ゴーダです。お呼び出しのため、参上致しました。スータン以下三千名の受け入れについてという話でよろしいでしょうか。ラエルの街ではすでに住居づくりが始まっておりまして、約半分については完成しております。もう半分は、春の作付け以降となり、夏前には何とか完成させたいと考えております。酷でしょうが、それまでは住居に定員いっぱいで入ってもらうことになるでしょう」
さすがはゴーダだ。受け入れ業務は慣れたものだな。住居が間に合わないのは仕方がないことだ。スータンもその辺りは理解してくれるだろう。そうなると、学校設立の話のみだな。
「ゴーダにも話していたと思うが、未成年向けの学校設立を進めたいと思っている。スータンたちのなかには高等学校を卒業したものもいるほど学歴豊かなのだ。その者たちには学校設立の際には教師として仕事を任せたいと思っている。その事前準備として、スータンたちには教科書の作成を任せいと思っているのだ」
そう、僕が頼みたいの教材だ。以前、マリーヌに書かせていた教材は専ら文字を練習するためのものだ。絵を多く使いわかりやすさに重点を置いている。一方、スータンに任せるのは、初等教育と中等教育に用いる教材を現段階から作ってもらいたいのだ。こう言っては何だが、スータンたちは公爵家を追放された者たちだ。かなり年齢を重ねている者たちばかりなのだ。そういう者たちだからこそ、蓄えられた知識は豊富で教師としては適任だが老い先が短いのだ。
なるべく多くの書を残してもらうべく、ラエルの街に着いたと同時にでも書を作ってもらいたい。この成果は今後公国にとって貴重な財産となるだろう。ゴーダにもその旨を伝え、スータンにも伝え、すぐに書を作れる環境を作ってもらうことにした。
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