爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第238話 ガムド達一行の到着

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 紙に子供の名前を何通りも書いてついてに満足のいく物が完成した。周りを見渡せば、紙が散乱しているのに気づいた。とりあえず、片付けなければ。僕はゴミを屑入れに入れているとシェラ達がようやく屋敷に到着したということをマグ姉が伝えにやってきた。僕はさっと完成した紙を隠したのだが、残念ながらマグ姉には見られてしまった。

 「見てないふりをしてあげるから、早く居間の方に行きましょう。皆が待っているわよ。知らない女性達もね」

 最後の言葉にやや重みを感じたが、別にやましい気持ちなんてないんだぞ。僕は片付けを後にして、僕はマグ姉と共に居間に向かった。居間にいたのは、ガムド夫妻とティア、ハトリとクイチとオコト、そしてシェラとシラーだ。自警団は屋外にて待機にしてあるようだ。とりあえず、自警団に解散を告げに行かなければ。一ヶ月以上、僕の側を離れること無く、さらに休みもなかったのだ。僕は屋敷を出ると、自警団が整然と待機をしていた。

 「自警団の諸君。長い間の警護、よくやり遂げてくれた。君たちのおかげで僕は無事、村に帰還することが出来た。お礼を言う。これからはしばらく君たちに休暇を与えようと思う。しばし、体を休め、再び職務に励んで欲しい。あとで自警団の本部に酒を持って行かせるから存分に骨を休めてくれ。それと子供がいるから静かに解散してくれよ」

 僕がそう言うと、自警団の何人かは笑っていたが、すぐに真面目な顔をして敬礼をし、隊列を組んで本部に向かって行進していった。僕はその後ろ姿を見て、自警団の頼もしさを改めて強く思った。あれならば、皆安心して夜も眠れるというものだ。

 僕は再び屋敷に戻った。先程の到着組の他に、マグ姉、リード、クレイが参加して、居間は大人数で窮屈になっていた。といっても、この屋敷には大きな部屋というのがない。どうしたものかな。と思っていると、ミヤと久しぶりの再会をしたのだ。シラーがミヤに駆け寄り、ミヤがご苦労さまでしたね、とシラーに声をかけていた。

 「ロッシュ。ようやく戻ってきたのね。待ち望んでいたものがついに完成したのよ。これから見に来てちょうだい」

 ミヤが相変わらずの口調で周りを見ずに話すと、面倒になることが多い。僕が、到着組と話をしなければならないから、今は無理だと伝えると、ミヤはフッと笑った。

 「こんな大人数で話すのなら、尚更、一緒に行きましょ。そこなら、広い場所があるからお話に適していると思うの」

 さっきから何の話をしているんだ? いまいち、話が見えてこないのだが。すると、シラーが近寄ってきて、ミヤが魔の森で僕との家を作るって話をしていたのを思い出させてもらった。どうやら、その家のことではないか、というのだ。シラー自身も実際に見たわけではないから確信はないみたいだが、ミヤの顔を見る限りでは間違いなさそうである。

 僕はミヤに安全かどうか聞くと、ちょっと面倒くさそうな顔をした。やはり考えていなかったのか。僕はハヤブサに頼み、フェンリル達を護衛につけてもらうことにした。場所は、魔牛牧場の近くというので安全な場所ではあるが、用心だけはしておかなければな。僕は、ガムド達に話し合いの場所を移動する旨を伝えると簡単に了承してくれた。

 リードとクレイにはエリスの面倒を見てもらうことにしてマグ姉だけを連れて向かうことにした。シェラは家に戻った途端、自室に戻ってしまったのだ。ああなっては、しばらくは引きこもってしまうだろうな。僕がシェラの後ろ姿を見ながら考えていると、ガムドたちが移動できる準備が出来たと言うので、ミヤの案内で出発することにした。

 外を出ると、いよいよ春が間近に迫っている空気と感じた。魔の森に向かいながらも、途に積もった雪は殆どが解け、足が取られる心配が無くなっていたのだ。もっとも、雪解け水が土に吸収されず、方々で水たまりとなり、歩いている途も泥濘がひどく、慎重に歩かざるを得なかった。そういえば、サノケッソの街は雪が多いな。途に何かしらの工夫をしているのだろうか。僕はガムドに聞くことにした。

 「それでしたら、木材を敷いていますよ。よく乾かした木材は滅多には腐りませんし、交換も容易です。木材が豊富な我が地方ならではのやり方だとは思いますが。村で実践されるのでしたら、サノケッソの街から職人を呼びましょう。きっと、お役に立てると思います」

 そんな職人がいるのか。確かに面白そうだな。この泥濘から開放されるのならばやってみる価値はありそうだ。僕はガムドの提案を了承して、村でいくつか実践してみることにした。ガムドは非常に満足気に列に戻っていった。その直後に、ティアが僕の方に向かってやってきた。

 「ロッシュ様。少しお聞きしたことがあるんですが」

 ティアから聞きたいことか。学校設立のことか? 僕は頷き、話の続きを促した。

 「ロッシュ様と私って婚約しているんですか?」

 僕は一瞬足が止まりそうになった。その話はとても繊細だ。思いつきで話すと碌なことがないだろう。まずは、情報収集だ。僕としてはティアの意志を尊重してやりたいのだ。ガムドが僕の言葉を勝手に勘違いしたということにすれば話は簡単に済むのだが、ガムドは元子爵で貴族だ。口約束とは言え、それを反故とすれば僕への心象は最悪となる。ガムドの必要性はいうまでもない。だからこそ、難しい問題になってしまったのだ。

 僕はどこから聞き出したのかとか、さり気なくティアの気持ちを聞き出そうとしたりした。

 「母からサノケッソの街を出発する時に教えてもらいました。私はまだ心の整理が付いていませんけど、母の話では婚約の話はロッシュ様からしてくださったと聞きました。ロッシュ様は、私とそういう関係になりたいと思ってくださっているということですか?」

 「その通りだ。僕はティアのことを気に入っている。将来的に! そういう関係になれたら僕は嬉しいと思って、ついガムドに言ってしまったのだ。もちろん、ティアはまだ若い。いろいろと経験もしたいだろう。僕と婚約すれば、足枷になるかも知れない。だから、今は気にせず、自由に考えてくれればいいんだぞ」

 「嬉しいです。ロッシュ様にそう言ってくださるのは。私、決めました。ロッシュ様の婚約者になります!! だから、今後とも宜しくお願いします」

 そういって、ティアは列に戻っていった。僕は呆然とティアの姿を見ていた。きっと、僕の話を半分しか聞いてないんだろうなぁ。でもまぁ、いいっか。ティアは、成人前だが活発でいい子だ。将来はきっと素敵な女性となるだろう。そんな女性と婚約できるのだ。文句があるわけがない。ただ、そうなると勝手に決めたことを妻達とゴードンに伝えねばならないことに胃が痛くなる。僕がお腹をさすっていると、横からすっと薬包みが出てきた。マグ姉だ。

 「話は聞こえてきたんだけど、なんとなく経緯とかわかった気がするわ。貴族同士の婚約は親の口約束で決まることが多いからね。しかも、何年も前の話でお互いにしっかりと覚えているのだから意外とたちが悪いのよね。今回はいい勉強だと思って、これからはその辺の貴族と婚約しないようにね」

 マグ姉は妻ながらに達観したものを言うことがある。確かに、マグ姉は王室出身だから事情には詳しいとは思うけど、嫉妬とかはないだろうか?

 「あるわけないじゃない。ロッシュはもはや立派な王様なんだから、もっと妻が居てもいいとおもうわ。ただ、考えなしに増やされるのが心配なだけ。でも、ロッシュが他の女に目が移っているのはちょっとだけ焼いちゃうかもね」

 時々見せるマグ姉の甘えた姿は本当にかわいい。抱きしめたくなる気持ちを我慢して、手を握るだけにした。そうすると、前を歩いていたはずのミヤがいつの間にか横に立ち、僕の手を握ってきたのだ。こういうのには目敏いんだよな。結局、僕は集団の先頭に立って皆を誘導することになってしまった。

 魔の森に入ってからは、フェンリル達が護衛に付いてくれた。さすがにガムドはフェンリルの巨大さに驚いていたが、女性陣は意外にもフェンリルの姿に動じることがなく、むしろ触ろうとするくらいだった。この世界は女性の方が肝が太い気がするな。

 ついに、目的の場所に到着した。分からないけど、間違いない。だって、そこには西洋にありそうな城がそびえているのだから。
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