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第227話 視察の旅 その31 ガムドとグルド
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僕は、グルドと部落長と酒を酌み交わしていた。グルドもそうだが、流浪してから一滴も酒を飲んでいなかったみたいで、テカッドなんか感涙しながら飲んでいた。スータンは酒の作り方に興味を持ったのか執拗に聞いてくるのに辟易してしまった。ワーモスは淡々と飲んでは、いちいちコップを見つめる仕草が気になるな。ある程度酒が回った頃、サリルからガムドが心配しているのではないかと言ってきたのだ。そういえば、何も言わずに森に入ってきてしまったのだったな。まだ、日が暮れるまでにはサノケッソの街に戻ることが出来るだろう。
三人の部落長に明日、サノケッソの街に来るように伝え、そのときに詳細な話をすることを決め、解散となった。もちろん、酒樽を置いていくことにしたので大いに喜んでくれた。僕は、シェラとシラーがいる建物に入ると、見知らぬ亜人の女性たちが数人、二人と飲んでいたのには驚いた。この亜人達は、ワーモスの妻と子どもたちのようだ。ワーモスに従って付いてきたところ、二人の酒につられて建物に入ってしまったみたいだ。
ワーモスの家族も酒が強いのか、シラーやシェラに負けず飲み比べに興じていた。こうなってしまっては、終わりが見えないことになってしまう。僕は二人に話しかけ、サノケッソの街に戻ることを告げると、素直に身支度を始めてくれた。僕が何者なのか気づいていなかった亜人だが、シェラたちの反応を見て、只者ではないと思ったのか、急に僕に土下座を始めたのには驚いた。僕は去り際だったが、亜人達に声をかけた。
「ワーモスは、公国に帰属することを決めてくれたようだ。明日、ワーモスはサノケッソの街に呼んでいるから、家族ならば付いてくるが良い。それなりのもてなしをさせてもらおう。それでは、明日」
僕とシェラ、シラー、それにサリルとグルドはサノケッソの街に戻ることにした。シラーは酔っているのか、それとも体が本調子ではないんか分からないが、少しふらついているように見える。僕は、ハヤブサにお願いをして、シラーを背中に乗せてもらうことにした。シラーはかなり抵抗したが、僕が絶対に乗ようにとすると諦めてくれた。シェラが少し羨ましそうにしていたが、シラーの活躍なくしては僕やグルドたちの命が危うかったのだ。少し位、良い思いをしてもいいだろう。
僕達は森の中を歩いていた。道中に、集落の状況を聞くために、サリルを近くに呼び話をしてもらうことにした。サリルは僕の近くに来ることが嬉しいのか、僕が呼んだら飛ぶように近付いてきた。僕はサリルが見知った情報から今後の予定について聞き出すことにした。
「私が見知った情報は……」
サリルの話から分かったことは、集落の規模や食糧事情だった。集落には約一万人ほどの人が生活しており、全てが三部落に所属している。スータンの部落は人口三千人ほどで、半分ほどが成人前の子供のようだ。やはり口減らしのため、追い出されたのでどうしても子供の比率が上がってしまうのだろう。あとは、年寄りが多く、若者はほとんどいないみたいだ。
テカッドの部落は人口六千五百人ほど。領民全てで流民となったため、男女比、老若比に偏りが見られることはなかった。テカッドから聞いていたとおり領民達は互いに助け合いの気持ちが強く、関係性がとても良いとのことだ。
ワーモスの部落は人口が200人ほど。二つの部落に比べれば人数は大幅に減る。二つの部落とは協調を取ることはなく、長だけが連絡を取り合っているだけの関係のようだ。食料も自前で調達し、他に配るということはないらしい。普通なら、そこで争いが起きてもおかしくないのだが森に食料が豊富にあることと争いでこの森をでなければならない事態を避けるために小さな争いも生じなかったみたいだ。
食料については、スータンとテカッドの二部落とワーモスの部落とで差が見られた。二部落は食料を共有しており、平等に分配をしていたみたいだが備蓄という点ではほとんどなく、その日暮しが続いていたみたいだ。スータンの部落は老人や子供が多いため、テカッドの部落にかなり依存していたことも伺えた。一方、ワーモスは、ずっとこの地に住んでいただけあって、食料の備蓄は豊富にあり、特に乾燥させた木の実や肉が多く保管されていたみたいだ。
なるほどな。サリルの話は非常に有用なものだ。サリルの情報を頭の中で整理しながら、三部落の人達の移動先について考え込んでいた。僕達が森から出て、サノケッソの街が見えてくると遠くの方で人がしきりに動いているのが見えてきたのだ。どうやら、軍が出動している様子だ。何か、あったのか!!
僕は急ぎサノケッソの街に入り口にたどり着くと、ちょうどその軍とぶつかる形で対峙することになった。馬に乗った者がこちらに近付いてきて、馬から降りて僕に目の前に立った。ガムドだった。
「ロッシュ公。よくぞ無事で。ロッシュ公が西に向かって街を出た後、消息がわからなくなったので、もしかしたらグルドに掴まったと思い、威力偵察をするために軍を出させてもらいました。しかし、無事で何より。グルドへの連絡もつかずに、少人数の兵がサノケッソの街周辺に出没しているという怪しい動きの噂もあります。ロッシュ公も十分に警戒を。それで、今まで何処に行かれていたのですか?」
僕とガムドが話をしていると、罰が悪そうに後ろからグルドが現れた。
「そんなに心配しなくてもいいぞ。オレならここだ」
これには、ガムドも驚きが隠しきれなかったみたいで、すかさず剣の柄に手をかけていた。僕は簡単にだが、ガムドに説明をして、とりあえず落ち着いてもらうことにした。ガムドは、軍の出動は必要ないと判断して、副官に命令をし、軍の解散を指示を出した。
「すみません。ここで説明されても話を理解することが出来ません。屋敷に戻ってから整理をさせてもらえないでしょうか。グルドも付いてくるが良い」
未だにガムドとグルドとの間に確執があるようで、なかなか以前の関係になることはなさそうだ。グルドも特に何か言うことはなく、ガムドの指示に素直に従っていた。僕はガムドの頼みに頷いて、皆とガムドの屋敷へと向かっていった。
僕達は酒を酌み交わしながら、出来事の詳細を話すサリルの言葉に耳を傾けていた。酒好きのガムドが一滴も喉に通さずに腕を組みながら、真剣な表情で話を聞いていた。僕はただこの後に出される夕飯のことだけを考えていた。グルドは一体何を考えているのだろか。ガムドに遠慮をすることなく、目の前の酒を旨そうに飲んでいるだけだった。話がようやく終わり、ガムドがしばらく考えた後に言葉がを発した。
「正直、未だに信じられません。私が長年悩んでいた問題が、ロッシュ公がたった一日で解決してしまったのですから。私としては、この地の不安が取り除かれたので安心して、この地を去ることが出来るので良いのですが……まさか、グルドがロッシュ公の下に付くとは」
未だガムドが呆然とした様子で僕に話しかけてきていた。僕もどう返して良いものか考えていると、酒ばかり飲んでいたグルドがようやく手を止め、ガムドに向かって話しかけた。それは、とても優しい口調であったことに驚いてしまった。
「ガムド。今まで済まなかった。オレはロッシュ公と会ってな、この人のために人生を捧げようと思ってしまったのだ。この気持ち、お前なら分かってくれるだろう。オレはロッシュ公に亡き兄上の面影を見た。それだけでオレが命をかける理由は十分だ。これからはガムドの下について槍働きをすることになるだろう。お前がロッシュ公の足を引っ張るようだったら、オレは容赦なくお前を突き落とすからな。覚悟しておけよ」
「ロッシュ公に父の面影……グルド伯父も失礼なことを言うようになったものですな。一体、何歳離れているとお思いか。しかし、なるほど。分からないでもないですな」
ガムドとグルドは僕を見ながら大笑いをしていた。どうやら、二人の関係はいい方向に向かっているようだ。ただ、ガムドの父に似ているとしきりに言われても僕からすれば、ただ気持ち悪いだけなのだが、水を差すようなので黙っておくことにしよう。グイッと酒を飲みながら、ガムドとグルドの軍談義を聞くことにした。
いよいよ明日は三人の部落長との面会になる。一体、どんな話になるのか。
三人の部落長に明日、サノケッソの街に来るように伝え、そのときに詳細な話をすることを決め、解散となった。もちろん、酒樽を置いていくことにしたので大いに喜んでくれた。僕は、シェラとシラーがいる建物に入ると、見知らぬ亜人の女性たちが数人、二人と飲んでいたのには驚いた。この亜人達は、ワーモスの妻と子どもたちのようだ。ワーモスに従って付いてきたところ、二人の酒につられて建物に入ってしまったみたいだ。
ワーモスの家族も酒が強いのか、シラーやシェラに負けず飲み比べに興じていた。こうなってしまっては、終わりが見えないことになってしまう。僕は二人に話しかけ、サノケッソの街に戻ることを告げると、素直に身支度を始めてくれた。僕が何者なのか気づいていなかった亜人だが、シェラたちの反応を見て、只者ではないと思ったのか、急に僕に土下座を始めたのには驚いた。僕は去り際だったが、亜人達に声をかけた。
「ワーモスは、公国に帰属することを決めてくれたようだ。明日、ワーモスはサノケッソの街に呼んでいるから、家族ならば付いてくるが良い。それなりのもてなしをさせてもらおう。それでは、明日」
僕とシェラ、シラー、それにサリルとグルドはサノケッソの街に戻ることにした。シラーは酔っているのか、それとも体が本調子ではないんか分からないが、少しふらついているように見える。僕は、ハヤブサにお願いをして、シラーを背中に乗せてもらうことにした。シラーはかなり抵抗したが、僕が絶対に乗ようにとすると諦めてくれた。シェラが少し羨ましそうにしていたが、シラーの活躍なくしては僕やグルドたちの命が危うかったのだ。少し位、良い思いをしてもいいだろう。
僕達は森の中を歩いていた。道中に、集落の状況を聞くために、サリルを近くに呼び話をしてもらうことにした。サリルは僕の近くに来ることが嬉しいのか、僕が呼んだら飛ぶように近付いてきた。僕はサリルが見知った情報から今後の予定について聞き出すことにした。
「私が見知った情報は……」
サリルの話から分かったことは、集落の規模や食糧事情だった。集落には約一万人ほどの人が生活しており、全てが三部落に所属している。スータンの部落は人口三千人ほどで、半分ほどが成人前の子供のようだ。やはり口減らしのため、追い出されたのでどうしても子供の比率が上がってしまうのだろう。あとは、年寄りが多く、若者はほとんどいないみたいだ。
テカッドの部落は人口六千五百人ほど。領民全てで流民となったため、男女比、老若比に偏りが見られることはなかった。テカッドから聞いていたとおり領民達は互いに助け合いの気持ちが強く、関係性がとても良いとのことだ。
ワーモスの部落は人口が200人ほど。二つの部落に比べれば人数は大幅に減る。二つの部落とは協調を取ることはなく、長だけが連絡を取り合っているだけの関係のようだ。食料も自前で調達し、他に配るということはないらしい。普通なら、そこで争いが起きてもおかしくないのだが森に食料が豊富にあることと争いでこの森をでなければならない事態を避けるために小さな争いも生じなかったみたいだ。
食料については、スータンとテカッドの二部落とワーモスの部落とで差が見られた。二部落は食料を共有しており、平等に分配をしていたみたいだが備蓄という点ではほとんどなく、その日暮しが続いていたみたいだ。スータンの部落は老人や子供が多いため、テカッドの部落にかなり依存していたことも伺えた。一方、ワーモスは、ずっとこの地に住んでいただけあって、食料の備蓄は豊富にあり、特に乾燥させた木の実や肉が多く保管されていたみたいだ。
なるほどな。サリルの話は非常に有用なものだ。サリルの情報を頭の中で整理しながら、三部落の人達の移動先について考え込んでいた。僕達が森から出て、サノケッソの街が見えてくると遠くの方で人がしきりに動いているのが見えてきたのだ。どうやら、軍が出動している様子だ。何か、あったのか!!
僕は急ぎサノケッソの街に入り口にたどり着くと、ちょうどその軍とぶつかる形で対峙することになった。馬に乗った者がこちらに近付いてきて、馬から降りて僕に目の前に立った。ガムドだった。
「ロッシュ公。よくぞ無事で。ロッシュ公が西に向かって街を出た後、消息がわからなくなったので、もしかしたらグルドに掴まったと思い、威力偵察をするために軍を出させてもらいました。しかし、無事で何より。グルドへの連絡もつかずに、少人数の兵がサノケッソの街周辺に出没しているという怪しい動きの噂もあります。ロッシュ公も十分に警戒を。それで、今まで何処に行かれていたのですか?」
僕とガムドが話をしていると、罰が悪そうに後ろからグルドが現れた。
「そんなに心配しなくてもいいぞ。オレならここだ」
これには、ガムドも驚きが隠しきれなかったみたいで、すかさず剣の柄に手をかけていた。僕は簡単にだが、ガムドに説明をして、とりあえず落ち着いてもらうことにした。ガムドは、軍の出動は必要ないと判断して、副官に命令をし、軍の解散を指示を出した。
「すみません。ここで説明されても話を理解することが出来ません。屋敷に戻ってから整理をさせてもらえないでしょうか。グルドも付いてくるが良い」
未だにガムドとグルドとの間に確執があるようで、なかなか以前の関係になることはなさそうだ。グルドも特に何か言うことはなく、ガムドの指示に素直に従っていた。僕はガムドの頼みに頷いて、皆とガムドの屋敷へと向かっていった。
僕達は酒を酌み交わしながら、出来事の詳細を話すサリルの言葉に耳を傾けていた。酒好きのガムドが一滴も喉に通さずに腕を組みながら、真剣な表情で話を聞いていた。僕はただこの後に出される夕飯のことだけを考えていた。グルドは一体何を考えているのだろか。ガムドに遠慮をすることなく、目の前の酒を旨そうに飲んでいるだけだった。話がようやく終わり、ガムドがしばらく考えた後に言葉がを発した。
「正直、未だに信じられません。私が長年悩んでいた問題が、ロッシュ公がたった一日で解決してしまったのですから。私としては、この地の不安が取り除かれたので安心して、この地を去ることが出来るので良いのですが……まさか、グルドがロッシュ公の下に付くとは」
未だガムドが呆然とした様子で僕に話しかけてきていた。僕もどう返して良いものか考えていると、酒ばかり飲んでいたグルドがようやく手を止め、ガムドに向かって話しかけた。それは、とても優しい口調であったことに驚いてしまった。
「ガムド。今まで済まなかった。オレはロッシュ公と会ってな、この人のために人生を捧げようと思ってしまったのだ。この気持ち、お前なら分かってくれるだろう。オレはロッシュ公に亡き兄上の面影を見た。それだけでオレが命をかける理由は十分だ。これからはガムドの下について槍働きをすることになるだろう。お前がロッシュ公の足を引っ張るようだったら、オレは容赦なくお前を突き落とすからな。覚悟しておけよ」
「ロッシュ公に父の面影……グルド伯父も失礼なことを言うようになったものですな。一体、何歳離れているとお思いか。しかし、なるほど。分からないでもないですな」
ガムドとグルドは僕を見ながら大笑いをしていた。どうやら、二人の関係はいい方向に向かっているようだ。ただ、ガムドの父に似ているとしきりに言われても僕からすれば、ただ気持ち悪いだけなのだが、水を差すようなので黙っておくことにしよう。グイッと酒を飲みながら、ガムドとグルドの軍談義を聞くことにした。
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