爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第173話 畑をさがそう

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 フェンリルを放牧した後、ククルと相談して、フェンリルを護衛として使えるかの実験をしてみることにした。ククルが言うには、実験施設周辺は、森が近い関係でかなりの頻度で魔獣が出没するというので、僕は魔獣が出現するのを待つことにした。しかし、待っても待っても、現われる様子はなかった。仕方がないので、そこで昼食を取ることにしたが、現れない。どうしたものか。森に行ってみるか? とりあえず、僕は、前にククルに相談されていた実験施設周りに畑を作ることにした。といっても、土魔法で土をひっくり返すだけの作業だけど。あとは、肥料をいれて、魔牛に耕してもらえば畑が出来上がるだろう。

 さて、このまま待っていては、日が暮れてしまうな。ククルもすぐに現われると言った手前、かなり申し訳無さそうにしている。そんなに気にしなくていいのにな。ミヤは、暇そうに椅子に座って、トマトジュースを飲んでいて、ちょうど飲み終えた頃、ようやく魔獣が現れた。それも、あの肉が美味しい蛇だ!! ミヤが自ら襲いかかろうとしていたが、なんとか止めて、僕の側にずっと控えているハヤブサに蛇を狩るように命じた。すると、グルッ、と返事のような声を上げると、まっしぐらに蛇に向かっていった。その途中で何度か吠えると、さっきまでのんびりとしていたフェンリル達が一斉に駆け出してハヤブサの後を追っていく。

 そこからはフェンリル達の素晴らしい連携で、蛇の逃げ道を上手く塞ぎ、蛇の弱点を執拗に攻撃して、見事狩りを成功させた。数頭のフェンリルが蛇を引きずってきて、誇らしげに僕の前にやってきた。僕が撫でて褒めると、目を細め、かなり嬉しそうにしていたのだ。

 がうがう……

 ん? なんか、主と言ったような気がしたが、まぁ、気のせいだろう。一応、ククルにフェンリルが言葉を話すことがあるか聞くと、聞いたことがないと言うので、僕の聞き間違いだろうと思い、忘れることにした。さて、蛇をどうしようかと迷っていると、すぐに後ろから刃物を取り出した吸血鬼が、素早く蛇の処理を始めていた。瞬く間に、肉が切り分けられ、山のように重ねられた。今回も、吸血鬼と山分けをして、あとで持ち帰ることにした。

 とりあえず、フェンリルの能力を見ることが出来たので、畑を作る準備に取り掛かることが出来るな。まずは、用地の確保だ。魔の森の草原部分に用地を確保する予定だ。場所は、魔の森の境界線付近がいい。魔獣は境界線を超えることが出来ないので、守るべき範囲が限定的となるのだ。あとは、周囲を見渡せる場所がいいな。高台であれば、魔獣の出現に対して、十分に対処する時間を稼ぐことが出来る。あとは、川の近くといったところか。これは絶対に欲しいというわけではないが、できれば水田も作ってみたいので、一応探すだけしてみよう。

 僕はハヤブサにまたがり、用地探しをすることにした。とりあえず、境界線辺りに向かって、それから川のある東に向かって進むことにしょう。僕が方向を指示すると、ハヤブサは素直に従ってくれる。あとは、猛スピードに振り落とされないように必死に掴まっているだけだ。境界線上に辿り着いたが、そこは窪地になっており、周囲の情報が入りづらい場所だ。ここはないな。

 東に向かい、窪地を抜け出すと、次は高台だが、土地が狭いく、十分に耕作する面積を確保することが出来ない。なかなか、ないものだな。もう少し先に向かってみよう。おお、ここはよさそうだな。そこには、広大な大地が広がり、川がやや下ったところを流れている。魔の森の森も遠目にしっかりと見ることが出来る。ちょうど、魔獣が出入りしていた。ここなら、畑も作れそうだし、水田も出来るかもしれないな。僕は、ハヤブサから降りて、土を軽く掘り返し、土の状態を確認した。石もないし、土も柔らかそうだ。これなら良い畑になりそうだな。

 川の方も確認するため、僕はハヤブサに乗り、ゆっくりと川に向かっていった。この川は、村を流れている大河の下流だ。水量も豊富で、水田を作るのに十分な土地も広がっている。ただ問題があるのだ。それは、川の水の色だ。群青色のような、なんとも不気味な色をしている。一見すると、水質汚染されたような色だ。ちょっと、口にするに抵抗がある。あとでミヤに聞いてみよう。もしかしたら、魔の森の特徴なのかもしれない。

 水の色は意外だったが、それを差し引いても、畑を作る場所として最適だ。僕は、用地を確保するために土壁を作ることにした。この高台は丘のようになっているので、端から端までぐるりと囲むように土壁を作っていった。魔力回復薬を使いながら、数キロメートルにも及ぶ土壁を作ることができた。やはり魔力が上がっている気がするし、心持ち、魔の森に入ってから体の調子が良い。まだまだできそうだな。でも、日が沈みそうな時間帯だ。これ以上は、危険だろう。

 僕はハヤブサの背中に乗り、ミヤの待つ実験施設に向かった。ハヤブサの足はとても早い。馬も早いと感じるか、次元が違う。少なくとも三倍は違うだろう。人の足なら七、八時間はかかるであろう距離が、三十分で辿り着いてしまうのだから。ハヤブサを褒めるように撫でてから、今日はありがとうな、と声を掛けると、バウ、と返事をした。僕の話が分かるのかな?

 眷族達は、すでに解散してしまったようで、小屋の周りには誰の姿もなかった。僕は小屋の中に入ると、ミヤとククル、それと数人の吸血鬼だけがいて、トマトジュースを飲みながら話をしていた。ミヤ達は僕の姿を見ると、話を中断して、こちらを振り向いた。

 「ロッシュ。遅かったわね。もう少しで迎えに行こうか迷っていたところよ。良いところは見つかったかしら? ここに居ても退屈だったから、アナタに付いていけばよかったと後悔していたところよ」

 「ああ、良いところが見つかったぞ。すでに土壁で周りを囲ったから、見ればすぐに分かるぞ。今日は流石に畑まで作れなかったが、明日はすぐに畑を作る予定だ。だから、眷族達に、魔牛と肥料を持ってくるように頼んでくれないか?」

 「分かったわ。ククル、聞いてたわね。すぐに行ってきてちょうだい。それと、魔酒も持ってきてね。私はどうせやることがないんだから、魔酒でも飲んで、時間を潰しているから」

 本当に酒が好きなだな。まぁ、戦に行った時はずっと我慢してもらっていたからな。少しくらいは我儘を言わせてもいいだろう。最近分かってきたが、ミヤは魔酒を飲んでいる間は、僕に絡むことはあっても他の人に迷惑を掛けることはないからな。人に見えない場所で飲んでくれる分には問題ないだろう。

 「そういえば、畑の用地を見つけることが出来たんだが、ちょっと気になることがあったんだ。魔の森の川って変な色をしていないか? 群青色っていうのか、少し不気味な色だ。何か、知っていないか?」

 僕の言葉を聞いて、ミヤはキョトンとした後、ククルと目を合わせ、首を傾げていた。

 「私達からすると、それが普通の水の色よ。村の川の水を見て、不気味に感じたくらいよ。理由はわからないけど、まぁ、毒が入っているとか、そういうわけではないから気にしなくていいんじゃない? たしか、酒造で使われている水って、魔の森の地下水よね? その水と同じよ。村の酒を飲んでて、問題がなければ問題ないわよ」

 そうだったのか。酒にあの怪しい色の水が使われていたとは、知らなかった。確かに、あの水を飲んで、今の所、体調不良を訴える者を聞いたことがないな。ミヤの言う通り、問題ないのかもしれない。とはいえ、慎重に行動だけはしておいたほうが良いだろう。

 そういえば、蛇肉は? と聞くと、眷族達が先に屋敷に運び込んでくれているみたいだった。持って帰ることが億劫だったが助かるな。

 ミヤは、酒が飲みたいから早く帰りたいと急かすので、僕はククルに明日の準備を再度お願いをして、屋敷に戻ることにした。すでに蛇肉の料理が食卓に並んでおり、屋敷に戻ったミヤは、着替えもせずに魔酒を飲み始めたのは言うまでもない。それに便乗するようにマグ姉とシェラ、それとクレイも酒盛りを始めるのであった。

 明日も早い。僕は先に寝ようとしたが、酔っぱらい組に睡眠を散々妨害された挙句、寝るのが朝方となる失態をしてしまった。また、寝不足で畑作りをしなければならないのか。
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