166 / 408
第165話 合流
しおりを挟む
公国軍三千人が、王都から十数キロ離れた場所で、救助隊が来るのを待つことにした。予定通りに事が進んでいれば、今日明日には救援隊が到着するはずである。僕はライルに、斥候を放ち、周囲を探るように指示を飛ばしたが、すでにライルは多くの斥候を放ったあとだった。それはそうか……。
ここからは、いつ敵が現れてもおかしくない場所だ。王都から距離があるとは言え、王国の勢力圏内にいることは確実なのだから。僕は道中のことを思い出していた。どうも腑に落ちないことがある。それは、ここまで一人も人を見かけなかったことだ。村や町の形跡はいくつも見かけたにも拘わらずだ。ということは、もしかして、僕達は誘い込まれたのではないだろうか、と考えてしまったのだ。
ライルに僕の考えていることを聞くと、ライルは腕を組み、じっと考えていた。しかし、結論は、多分大丈夫だろうというのだ。
「ロッシュ公の考え通りなら、オレ達は袋のネズミだ。そうなったら、勝ち目はかなり薄くなる。正直言って、クロスボウを装備した三千人の兵と言っても、王国騎士団とは数が圧倒的に違う。しかも、白兵戦となれば、手も足も出ないだろうな。だが、それは考えにくいな。オレが以前王都に行ったときには、既にこの街道の街と村は空っぽだった。おそらく、町や村に住んでいたのは亜人だったんだろうな。町や村の貧しさはかなりのものだったからな。となると、考えられるのは、王都に連行されたからと考えるのが素直だと思うぜ」
なるほど。急に変化したのなら疑わしいが、以前からだったとしたら合点がいく。僕はほっと安心をしたが、ライルは未だ怖い顔を続けていた。
「だが、ロッシュ公の考えが当たっているなら、敵ながら見事な作戦だ。こういうことに高を括るって痛い目にあうのは面白くねぇな。とりあえず、オレらの周辺にも斥候を送ろう。兵がかなり減ってしまうが、囲まれたあとでは遅いからな。また、何かあったら報告するぜ」
ライルと別れ、僕は陣中を歩き、皆の様子を見て回ることにした。ライルが日頃鍛えている兵たちは、落ち着いており、武器の手入れや食事などをして時間を費やしていた。ふむ、以前に比べると体も大きなっている気がするし、なによりも戦場だと言うのにこの落ち着きは大したものだ。今度、ライルの訓練を一度見てみたいものだな。
すぐ近くでは、レントーク王国の元兵達がいたが、彼らは戦いの前に怯えている様子はなく、戦意は高そうだが、いささか興奮がしているようだった。同僚と話をしているのが聞こえたが、同胞の恨みを王国兵士を八つ裂きにすることで晴らすと叫んでいた。その周りにいた亜人たちも同様な感じで、少し危なっかしさを感じた。僕は、クレイのところに赴き、亜人達の様子を伝え、僕の危惧を伝えた。
「ロッシュ様、彼らを許してやってもらえないでしょうか。彼らは、怖いのだ。王都で奴隷として一時でも過ごせば、恐怖が身に刻まれるのです。それを隠すために、大声を上げ、虚勢を張っているのです。彼らは、ロッシュ様に大きな恩を感じていますから、決して、暴挙に出て、ロッシュ様を失望させるような真似はしないはずです。ですから、ご理解をお願いします」
それほど、王都での奴隷生活というのは過酷なものなのか。僕には全く想像がつかないが、クレイが言っているのだから疑う余地はないな。ふむ、ならばこの戦でその恐怖が克服できるといいな、と言うと、クレイは私もそれを望みます、と静かに答えた。僕はクレイの下を離れた
とりあえず、救助隊と合流するまでは、このまま待機だ。僕は自分のテントに向かい、時間を潰すことにした。といってもやることはないので、横になって、この戦の展望を頭の中で思い描くだけだった。それも数分のことで、すぐに眠りに落ちてしまった。どれくらい経っただろうか、僕を起こす声が聞こえる。この声は……ミヤか。ミヤが起こしに来るなんて、珍しいこともあるものだな。と、ぽーっとミヤを見ていると、手をつねられた。
僕が、何するんだよ!! というと、ミヤは、寝ぼけてないで!! と怒鳴り返されてしまった。そうだ、ここは王都の近くではないか。完全に、屋敷にいる気分だった。僕はミヤに謝り、要件を聞いた。すると、ちょっと待って、と言ってテントを出ると、ライルが入ってきた。
「ロッシュ公。斥候からの報告だ。敵に動きがあったぜ。北門からかなりの人数の兵が北に向かっていったって報告だ。ガムド子爵が上手く動いてくれているみたいだ。それと、救助隊がその動きに乗じて、王都を脱出したそうだ。今、こっちに向かっている頃だろう。それと、亜人たちも動きを開始したみたいだが、こっちは動きが遅く、到着が遅れる見通しだ。向こうには指揮するものがいないから無理もないが」
ついに動き出したか。こっちへの到着は日をまたぐ頃になるだろうな。幸い、今夜は月が明るい。逃走するにはうってつけの夜だ。しかし、救助隊はともかく、亜人達の動きが遅いのが気になるな。上手くいっているところに水を差さないか心配だ。僕はライルにレントーク王国の亜人の内、一部を割いて、亜人達の誘導をしてもらうことを提案した。レントーク王国出身のもののほうが、話は早くまとまるだろうからな。
これには、ライルは難色を示した。やはり、ライルもレントーク兵の暴挙を危惧しているようだ。僕は、クレイの言葉を信じ、ライルを説得し、なんとか、ライルの部下を数人つけることを条件に了承してくれた。僕は、すぐにクレイを呼び出し、亜人達の誘導を速やかに行うように指示を出した。これには、クレイは喜び、私が行くと言って聞かなかった。周りは反対していたが、僕は賛成することにした。危険は重々承知だが、時間との勝負であることを考えると、クレイがもっとも適任だ。残りのレントーク兵はクレイの付き人のドゥアに後を任せることになった。
クレイは数人の部下とライルの部下を引き連れ、亜人のもとに急行した。これで、幾分早くこちらに到着するだろう。こちらも準備をしなければな。急な状況に対処するため、千人のクロスボウ隊を王都側の方に配置させ、残りの者達で、この場を撤収する作業に取り掛かった。武器や食料を各々に携帯させ、その他を荷車に積んでいく。最悪のことを考え、放棄しても良いものとそうでないものを区別することにした。こうすれば、荷車を敵に足止めに使うことも出来るだろう。
僕らの撤収の準備を終わり、救助隊を待つだけとなった。すると、ライルがこちらに走ってきた。
「ロッシュ公。敵が動き出した。救助隊に向かって、追手を差し向けたぞ。数は百名程だ。救助隊は妻子を連れているから、追いつかれるのは時間の問題だろう。くそっ、思ったより早すぎだ。クレイ様とはまだ連絡はつかねえ。どうする? こっちから迎えに行くか?」
選択肢はないな。荷車を先に公国に向け、出発を開始してもらい、僕達はすぐに救助隊の応援に駆けつけることにした。救助隊とは目と鼻の先にいるはずだ。僕達は、急ぎ向かっても、救助隊の発見することが出来ない。どこかですれ違ってしまったか? いや、ここは一本道だ。すると、救助隊を探しているもう一つの団体を発見した。王国兵だ。どうやら、向こうはまだ気付いていないようだ。
「ライル。追っ手はあいつらだけか?」
僕の問いにライルは頷いて返した。ならば、ここで足止めをしてもらうしかないな。僕はライルに王国兵をクロスボウで狙撃することを命じた。とにかく、奴らを一人でも王国に帰すわけにはいかない。帰せば、応援を呼ばれ、それだけ逃走が困難になるからだ。ライルは、クロスボウ隊千人に命じ、百人の王国兵を狙撃した。夜陰にも拘わらず、狙撃は見事に成功し、百人の王国兵は一瞬にして沈黙した。
王国兵に近づき、息が絶えていることを確認すると、すぐに来た道を引き返すことにした。王国兵がここにいるということは、救助隊は先に行っているはずだ。しかし、救助隊とはすぐに合流することが出来た。どうやら、岩陰にずっと身を潜めていたというのだ。僕達の存在を確認できなかったので、表に出てこれなかったというのだ。とても正しい判断だ。
僕は、救助隊が連れてきた者に挨拶をしようとした。救助隊が僕の前に連れてきたのは三人。三人? ガムド子爵の妻子だけではないのか? この男は一体。救助隊の隊長が僕に紹介をしてきた。
「こちらは、ガムド子爵の奥方と息女でございます。そして、もう一方は、ルドベック様の弟君、第二王子様です。妻子救助の際、大いに助けてもらいました。第二王子がいなければ、作戦を危うかったでしょう」
第二王子? 死んだと聞いていたが。僕が、妻子に挨拶を交わし、第二王子というものにも声をかけた。
「僕はロッシュだ。第二王子は、亡くなったと聞いていたので驚いている。それにしても、妻子救助の際、協力してくれたことには感謝しよう。第二王子は、これからどうするつもりなのだ? 公国に来るというのなら、我らとこれから王国相手に逃げねばならないが」
「公国? 辺境伯風情が偉くなったものだな。まぁ、妻子を助けたのも何かの縁だ。王都にも興味はないしな。オレも一緒に行ってやろう。精々、私を守ることだな。それと、オレの身の回りを世話する女はいないか? いないなら、子爵の女にやらせるが」
なんだ、こいつは。これほど、無礼なやつに会ったのはいつぶりだ? しかし、子爵の妻子を救助に協力してくれたものを無下にするわけにも行くまい。それに、言動がおかしくとも第二王子だ。ここに捨てていくわけにもいなないだろう。しかし、相手にするのが億劫だ。
「ならば、公国へ案内しよう。第二王子。それと、女はやれない。そんな余裕などないからな。第二王子は武器は使えるのか? 使えないならば、妻子と共にいろ。それと、今後、僕の言うことに従わなければ、いつでも放り出されると思っておけ」
第二王子は明らかに不満な顔をしていたが、ここで荒立てることは良くないと思えるほどの分別はあるようだ。大人しく妻子の側に戻っていった。
「オレのことは特別に、ガドートスと呼んでもいいぞ。辺境伯」
厄介そうなやつが加わった。
ここからは、いつ敵が現れてもおかしくない場所だ。王都から距離があるとは言え、王国の勢力圏内にいることは確実なのだから。僕は道中のことを思い出していた。どうも腑に落ちないことがある。それは、ここまで一人も人を見かけなかったことだ。村や町の形跡はいくつも見かけたにも拘わらずだ。ということは、もしかして、僕達は誘い込まれたのではないだろうか、と考えてしまったのだ。
ライルに僕の考えていることを聞くと、ライルは腕を組み、じっと考えていた。しかし、結論は、多分大丈夫だろうというのだ。
「ロッシュ公の考え通りなら、オレ達は袋のネズミだ。そうなったら、勝ち目はかなり薄くなる。正直言って、クロスボウを装備した三千人の兵と言っても、王国騎士団とは数が圧倒的に違う。しかも、白兵戦となれば、手も足も出ないだろうな。だが、それは考えにくいな。オレが以前王都に行ったときには、既にこの街道の街と村は空っぽだった。おそらく、町や村に住んでいたのは亜人だったんだろうな。町や村の貧しさはかなりのものだったからな。となると、考えられるのは、王都に連行されたからと考えるのが素直だと思うぜ」
なるほど。急に変化したのなら疑わしいが、以前からだったとしたら合点がいく。僕はほっと安心をしたが、ライルは未だ怖い顔を続けていた。
「だが、ロッシュ公の考えが当たっているなら、敵ながら見事な作戦だ。こういうことに高を括るって痛い目にあうのは面白くねぇな。とりあえず、オレらの周辺にも斥候を送ろう。兵がかなり減ってしまうが、囲まれたあとでは遅いからな。また、何かあったら報告するぜ」
ライルと別れ、僕は陣中を歩き、皆の様子を見て回ることにした。ライルが日頃鍛えている兵たちは、落ち着いており、武器の手入れや食事などをして時間を費やしていた。ふむ、以前に比べると体も大きなっている気がするし、なによりも戦場だと言うのにこの落ち着きは大したものだ。今度、ライルの訓練を一度見てみたいものだな。
すぐ近くでは、レントーク王国の元兵達がいたが、彼らは戦いの前に怯えている様子はなく、戦意は高そうだが、いささか興奮がしているようだった。同僚と話をしているのが聞こえたが、同胞の恨みを王国兵士を八つ裂きにすることで晴らすと叫んでいた。その周りにいた亜人たちも同様な感じで、少し危なっかしさを感じた。僕は、クレイのところに赴き、亜人達の様子を伝え、僕の危惧を伝えた。
「ロッシュ様、彼らを許してやってもらえないでしょうか。彼らは、怖いのだ。王都で奴隷として一時でも過ごせば、恐怖が身に刻まれるのです。それを隠すために、大声を上げ、虚勢を張っているのです。彼らは、ロッシュ様に大きな恩を感じていますから、決して、暴挙に出て、ロッシュ様を失望させるような真似はしないはずです。ですから、ご理解をお願いします」
それほど、王都での奴隷生活というのは過酷なものなのか。僕には全く想像がつかないが、クレイが言っているのだから疑う余地はないな。ふむ、ならばこの戦でその恐怖が克服できるといいな、と言うと、クレイは私もそれを望みます、と静かに答えた。僕はクレイの下を離れた
とりあえず、救助隊と合流するまでは、このまま待機だ。僕は自分のテントに向かい、時間を潰すことにした。といってもやることはないので、横になって、この戦の展望を頭の中で思い描くだけだった。それも数分のことで、すぐに眠りに落ちてしまった。どれくらい経っただろうか、僕を起こす声が聞こえる。この声は……ミヤか。ミヤが起こしに来るなんて、珍しいこともあるものだな。と、ぽーっとミヤを見ていると、手をつねられた。
僕が、何するんだよ!! というと、ミヤは、寝ぼけてないで!! と怒鳴り返されてしまった。そうだ、ここは王都の近くではないか。完全に、屋敷にいる気分だった。僕はミヤに謝り、要件を聞いた。すると、ちょっと待って、と言ってテントを出ると、ライルが入ってきた。
「ロッシュ公。斥候からの報告だ。敵に動きがあったぜ。北門からかなりの人数の兵が北に向かっていったって報告だ。ガムド子爵が上手く動いてくれているみたいだ。それと、救助隊がその動きに乗じて、王都を脱出したそうだ。今、こっちに向かっている頃だろう。それと、亜人たちも動きを開始したみたいだが、こっちは動きが遅く、到着が遅れる見通しだ。向こうには指揮するものがいないから無理もないが」
ついに動き出したか。こっちへの到着は日をまたぐ頃になるだろうな。幸い、今夜は月が明るい。逃走するにはうってつけの夜だ。しかし、救助隊はともかく、亜人達の動きが遅いのが気になるな。上手くいっているところに水を差さないか心配だ。僕はライルにレントーク王国の亜人の内、一部を割いて、亜人達の誘導をしてもらうことを提案した。レントーク王国出身のもののほうが、話は早くまとまるだろうからな。
これには、ライルは難色を示した。やはり、ライルもレントーク兵の暴挙を危惧しているようだ。僕は、クレイの言葉を信じ、ライルを説得し、なんとか、ライルの部下を数人つけることを条件に了承してくれた。僕は、すぐにクレイを呼び出し、亜人達の誘導を速やかに行うように指示を出した。これには、クレイは喜び、私が行くと言って聞かなかった。周りは反対していたが、僕は賛成することにした。危険は重々承知だが、時間との勝負であることを考えると、クレイがもっとも適任だ。残りのレントーク兵はクレイの付き人のドゥアに後を任せることになった。
クレイは数人の部下とライルの部下を引き連れ、亜人のもとに急行した。これで、幾分早くこちらに到着するだろう。こちらも準備をしなければな。急な状況に対処するため、千人のクロスボウ隊を王都側の方に配置させ、残りの者達で、この場を撤収する作業に取り掛かった。武器や食料を各々に携帯させ、その他を荷車に積んでいく。最悪のことを考え、放棄しても良いものとそうでないものを区別することにした。こうすれば、荷車を敵に足止めに使うことも出来るだろう。
僕らの撤収の準備を終わり、救助隊を待つだけとなった。すると、ライルがこちらに走ってきた。
「ロッシュ公。敵が動き出した。救助隊に向かって、追手を差し向けたぞ。数は百名程だ。救助隊は妻子を連れているから、追いつかれるのは時間の問題だろう。くそっ、思ったより早すぎだ。クレイ様とはまだ連絡はつかねえ。どうする? こっちから迎えに行くか?」
選択肢はないな。荷車を先に公国に向け、出発を開始してもらい、僕達はすぐに救助隊の応援に駆けつけることにした。救助隊とは目と鼻の先にいるはずだ。僕達は、急ぎ向かっても、救助隊の発見することが出来ない。どこかですれ違ってしまったか? いや、ここは一本道だ。すると、救助隊を探しているもう一つの団体を発見した。王国兵だ。どうやら、向こうはまだ気付いていないようだ。
「ライル。追っ手はあいつらだけか?」
僕の問いにライルは頷いて返した。ならば、ここで足止めをしてもらうしかないな。僕はライルに王国兵をクロスボウで狙撃することを命じた。とにかく、奴らを一人でも王国に帰すわけにはいかない。帰せば、応援を呼ばれ、それだけ逃走が困難になるからだ。ライルは、クロスボウ隊千人に命じ、百人の王国兵を狙撃した。夜陰にも拘わらず、狙撃は見事に成功し、百人の王国兵は一瞬にして沈黙した。
王国兵に近づき、息が絶えていることを確認すると、すぐに来た道を引き返すことにした。王国兵がここにいるということは、救助隊は先に行っているはずだ。しかし、救助隊とはすぐに合流することが出来た。どうやら、岩陰にずっと身を潜めていたというのだ。僕達の存在を確認できなかったので、表に出てこれなかったというのだ。とても正しい判断だ。
僕は、救助隊が連れてきた者に挨拶をしようとした。救助隊が僕の前に連れてきたのは三人。三人? ガムド子爵の妻子だけではないのか? この男は一体。救助隊の隊長が僕に紹介をしてきた。
「こちらは、ガムド子爵の奥方と息女でございます。そして、もう一方は、ルドベック様の弟君、第二王子様です。妻子救助の際、大いに助けてもらいました。第二王子がいなければ、作戦を危うかったでしょう」
第二王子? 死んだと聞いていたが。僕が、妻子に挨拶を交わし、第二王子というものにも声をかけた。
「僕はロッシュだ。第二王子は、亡くなったと聞いていたので驚いている。それにしても、妻子救助の際、協力してくれたことには感謝しよう。第二王子は、これからどうするつもりなのだ? 公国に来るというのなら、我らとこれから王国相手に逃げねばならないが」
「公国? 辺境伯風情が偉くなったものだな。まぁ、妻子を助けたのも何かの縁だ。王都にも興味はないしな。オレも一緒に行ってやろう。精々、私を守ることだな。それと、オレの身の回りを世話する女はいないか? いないなら、子爵の女にやらせるが」
なんだ、こいつは。これほど、無礼なやつに会ったのはいつぶりだ? しかし、子爵の妻子を救助に協力してくれたものを無下にするわけにも行くまい。それに、言動がおかしくとも第二王子だ。ここに捨てていくわけにもいなないだろう。しかし、相手にするのが億劫だ。
「ならば、公国へ案内しよう。第二王子。それと、女はやれない。そんな余裕などないからな。第二王子は武器は使えるのか? 使えないならば、妻子と共にいろ。それと、今後、僕の言うことに従わなければ、いつでも放り出されると思っておけ」
第二王子は明らかに不満な顔をしていたが、ここで荒立てることは良くないと思えるほどの分別はあるようだ。大人しく妻子の側に戻っていった。
「オレのことは特別に、ガドートスと呼んでもいいぞ。辺境伯」
厄介そうなやつが加わった。
0
お気に入りに追加
2,660
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ・21時更新・エブリスタ投
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる