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第159話 初めての戦の終わり
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スタシャの工房に顔を出した次の日、僕とミヤ、眷族は、ルドと参謀のエルフの里への引き渡しについて相談するため、ラエルの街に向かうことにした。ラエルの街では、多くの人が新村開拓のために行き来しているため、大変な賑わいを見せていた。物資が、村から街へ、街から新村へと動いていく。そのため、新村には短期的に二万人近い人が滞在していることになる。
僕が街に入ると、眷族が先に連絡をしてくれたため、ゴードンの息子ゴーダが街の入り口まで出迎えに来てくれていた。ゴーダは新村開拓の件で、街の調整をしなければならないのでかなり忙しいはずだ。僕の出迎えに時間を割いてもらうのは、かなり気が引ける。僕がそれとなく謝罪すると、ゴーダは僕を出迎える以上の仕事はないです、と言ってくれたので、謝罪ではなく感謝を言うべきだったと反省をした。
ゴーダの案内で、ルドのいる家に向かった。道中もかなりの賑わいで、僕は最初にこの街に来た時を思い出し、いい方向に変わってくれたと心の底から喜びが湧いてきた。ルドの執務室に入ると、ルドは忙しそうに書類仕事に追われている様子だった。
ルドは、僕の様子を見るや立ち上がろうとするが、僕は制止し、切りの良いところまでやってていいぞ、というとルドは感謝して、仕事をさらに急いで処理していた。僕はソファーに遠慮なく腰掛け、ゴーダに街の様子などを聞いたりして、時間を潰していた。その間に、マリーヌがコーヒーを持ってきてくれたので、マリーヌも一緒になって話をしていた。ミヤは暇そうに髪の毛をいじったりして時間を潰していた。
「ロッシュ、すまなかったな。最近、新村の件で許可申請が多くてな、困ったものだよ。まぁ、発展していることは喜ばしいことだが。街からも五千人近くを新村に派遣していく予定だから、思ったよりも開拓は早く済むだろうな。それと、ガムド子爵から連絡があって、子爵領からも人夫として、数千人を送ってくれるという連絡も入っている。食料支援に大きな感謝と添えられていたぞ」
人的支援があるのは有り難い。新地は、土地が豊かに広がっている。これもアウーディア石のおかげだ。開拓するだけ、農作物の生産が期待できるだろう。それに、海産物を得ることが出来る。新村は、食料の一大産地と変貌していくことだろう。
「ガムド子爵には僕の方から礼を言っておくことにしよう。受け入れについては、大変だろうが、引き続きルドに任せることになる。よろしく頼むぞ。ここでの迅速な行動が、来年の農作物の収穫に大きく影響してくると思ってくれ。とにかく大事なのは、今だ。そこで、早速、例の件の話を進めた」
僕が、そういうと、当然ルドは何の話かわからないということはない。僕はスタシャから譲ってもらった睡眠薬の瓶をテーブルの上に置いた。ルドはこれは? という顔をしていたので、睡眠薬だと答えると、全てを察してくれたみたいだ。
「ロッシュ。助かったぞ。未来永劫、参謀のやつ、苦しむだろうな。それにしても、よくエルフの里が受け入れを認めてくれたな。私にもエルフとの交渉術を教えてほしいくらいだ」
僕は、エルフの秘術には触れることが出来なかったので、リリが僕の子供を妊娠したことを告げると、ルドは勝手に勘ぐってくれたみたいで、私には出来ない交渉術だと、と言って話は終わった。話を聞いていたゴーダもかなり嬉しそうにしていた。なんでも、参謀は牢獄でかなり暴れているらしく、風魔法を使って牢獄を打ち破ろうと何度も脱獄を図ろうとしていたらしい。もっとも、参謀程度の魔力では、牢獄の壁を破壊することも出来ず、徒労に終わっているようだが、監視をしている者が怪我をしてしまうのでは、という心配が常にあったみたいだ。そういうこともあったので、引き渡しはすぐに行うほうが良いだろうという判断で下された。
僕もそれに同意をして、ミヤの眷族を介して、エルフの里に送り届けることにした。エルフの里では、リリに話を通してあるので、受け入れはいつでも出来るということになっている。僕とルド、ミヤと眷族を連れて、参謀がいる牢獄に行くことにした。実質の死刑宣告だ。
この街にある牢獄は、地下にあり、一部屋に数人を押し込める大部屋となっており、今は参謀しか入っていない。参謀以外は全て公国外に釈放している。王国直属の者を受け入れるのは危険だというルドの意見を受け入れたからだ。僕達は階段を降り、地下室に入ると、ひんやりとした空気が漂い、あまり衛生的とは思えない環境だ。 あまり長居はしたくないな。歩く度に排水が悪いのか、水たまりを踏んでしまう。
僕は参謀と思われる男が、一室の隅に座り込んでいた。すでに、睡眠薬入りの食事を摂っていたようで、熟睡しているようにも見えた。僕は、監視者に牢の鍵を開けるように命令をし、中に入った。なるほど、壁には無数の傷があり、脱獄しようとしていたというのは本当だったようだ。監視者が、参謀の体をゆすったが、反応はない。やはり眠っているようだ。これが油断だった。
周囲に風が巻き起こり、参謀が風魔法を使おうとしている。僕は、皆を退避させるために声を上げようとしたが、参謀をうめき声を上げて、ぐったりと倒れ込んでしまった。ミヤが、参謀の腹部に強烈な蹴りを食らわしていたようだ。
「また、ロッシュを傷つけさせるわけにはいかないわ。本当、こういう奴は油断も出来ないのよね」
ミヤの瞬時の判断で僕達は、参謀からの攻撃を回避することが出来た。僕は監視者に参謀を拘束するように命令し、牢屋を離れることにした。ミヤは、皆から感謝され、僕も感謝の言葉を掛けたのだが、すごく不機嫌だった。僕が何度も油断をして危険に晒されることが我慢できないみたいが。それから、僕はコンコンと説教されることになってしまった。その横で、なぜか監視者も一緒になって怒られていた。
ミヤの怒りがようやく落ち着いたところで、参謀がなぜ意識があったのかを監視者に聞くと、たしかに薬を入れた食べ物を与え、目の前で食べていたというのだ。だとすると、スタシャからもらった薬は、睡眠薬ではないということか? 確かに試してもいないから、スタシャが間違って違うものを渡してきたということも考えられるな。
悩んでいると、薬を試してみようという話になった。僕もそれが一番手っ取り早いと思ったが、誰が飲むか……その時率先して手を上げたのは監視者だった。かなり負い目を感じているようで、是非というのでルドが許可を与えて、ほんの微量を飲んでもらうことにした。すると、監視者は飲んで数分もしない内に、大いびきをかいて眠ってしまった。薬は本物だった。とすると、何かからくりが?
ルドが牢屋を調べてくると言って、しばらく経ってから、ルドが戻ってきた。どうやら、参謀の座っていた位置にある石床が外れていることが判明し、その下には穴が掘られていたみたいだ。その穴に、食べたと思われる食物が散乱していたらしい。話をまとめると、参謀は穴を掘って脱出を計っていた? 食べ物に睡眠薬が入っていることを見抜いていた? という疑問が残ってしまった。しかし、この疑問に対してあまり意味はないので、睡眠薬を参謀の口に無理やり流し込み、一見落着ということにしよう。
すぐさま、参謀は、眷族によってエルフの里に送り込まれることになった。ルドも同行したいと言うので、許可を与え、マリーヌと共にエルフの里の近辺まで行かせることにした。近辺まで行けば、エルフが迎えに来る段取りになっている。これで、参謀から端を発したと思われる戦の全ての精算が終わった。
また、戦にならないためにも、軍備を強化し、味方を増やし、食料物資を確保しなければならない。そのために、新村開拓を急がなくては。僕達は、参謀の事を片付けると、休むことなく、新村に向けて出発した。
僕が街に入ると、眷族が先に連絡をしてくれたため、ゴードンの息子ゴーダが街の入り口まで出迎えに来てくれていた。ゴーダは新村開拓の件で、街の調整をしなければならないのでかなり忙しいはずだ。僕の出迎えに時間を割いてもらうのは、かなり気が引ける。僕がそれとなく謝罪すると、ゴーダは僕を出迎える以上の仕事はないです、と言ってくれたので、謝罪ではなく感謝を言うべきだったと反省をした。
ゴーダの案内で、ルドのいる家に向かった。道中もかなりの賑わいで、僕は最初にこの街に来た時を思い出し、いい方向に変わってくれたと心の底から喜びが湧いてきた。ルドの執務室に入ると、ルドは忙しそうに書類仕事に追われている様子だった。
ルドは、僕の様子を見るや立ち上がろうとするが、僕は制止し、切りの良いところまでやってていいぞ、というとルドは感謝して、仕事をさらに急いで処理していた。僕はソファーに遠慮なく腰掛け、ゴーダに街の様子などを聞いたりして、時間を潰していた。その間に、マリーヌがコーヒーを持ってきてくれたので、マリーヌも一緒になって話をしていた。ミヤは暇そうに髪の毛をいじったりして時間を潰していた。
「ロッシュ、すまなかったな。最近、新村の件で許可申請が多くてな、困ったものだよ。まぁ、発展していることは喜ばしいことだが。街からも五千人近くを新村に派遣していく予定だから、思ったよりも開拓は早く済むだろうな。それと、ガムド子爵から連絡があって、子爵領からも人夫として、数千人を送ってくれるという連絡も入っている。食料支援に大きな感謝と添えられていたぞ」
人的支援があるのは有り難い。新地は、土地が豊かに広がっている。これもアウーディア石のおかげだ。開拓するだけ、農作物の生産が期待できるだろう。それに、海産物を得ることが出来る。新村は、食料の一大産地と変貌していくことだろう。
「ガムド子爵には僕の方から礼を言っておくことにしよう。受け入れについては、大変だろうが、引き続きルドに任せることになる。よろしく頼むぞ。ここでの迅速な行動が、来年の農作物の収穫に大きく影響してくると思ってくれ。とにかく大事なのは、今だ。そこで、早速、例の件の話を進めた」
僕が、そういうと、当然ルドは何の話かわからないということはない。僕はスタシャから譲ってもらった睡眠薬の瓶をテーブルの上に置いた。ルドはこれは? という顔をしていたので、睡眠薬だと答えると、全てを察してくれたみたいだ。
「ロッシュ。助かったぞ。未来永劫、参謀のやつ、苦しむだろうな。それにしても、よくエルフの里が受け入れを認めてくれたな。私にもエルフとの交渉術を教えてほしいくらいだ」
僕は、エルフの秘術には触れることが出来なかったので、リリが僕の子供を妊娠したことを告げると、ルドは勝手に勘ぐってくれたみたいで、私には出来ない交渉術だと、と言って話は終わった。話を聞いていたゴーダもかなり嬉しそうにしていた。なんでも、参謀は牢獄でかなり暴れているらしく、風魔法を使って牢獄を打ち破ろうと何度も脱獄を図ろうとしていたらしい。もっとも、参謀程度の魔力では、牢獄の壁を破壊することも出来ず、徒労に終わっているようだが、監視をしている者が怪我をしてしまうのでは、という心配が常にあったみたいだ。そういうこともあったので、引き渡しはすぐに行うほうが良いだろうという判断で下された。
僕もそれに同意をして、ミヤの眷族を介して、エルフの里に送り届けることにした。エルフの里では、リリに話を通してあるので、受け入れはいつでも出来るということになっている。僕とルド、ミヤと眷族を連れて、参謀がいる牢獄に行くことにした。実質の死刑宣告だ。
この街にある牢獄は、地下にあり、一部屋に数人を押し込める大部屋となっており、今は参謀しか入っていない。参謀以外は全て公国外に釈放している。王国直属の者を受け入れるのは危険だというルドの意見を受け入れたからだ。僕達は階段を降り、地下室に入ると、ひんやりとした空気が漂い、あまり衛生的とは思えない環境だ。 あまり長居はしたくないな。歩く度に排水が悪いのか、水たまりを踏んでしまう。
僕は参謀と思われる男が、一室の隅に座り込んでいた。すでに、睡眠薬入りの食事を摂っていたようで、熟睡しているようにも見えた。僕は、監視者に牢の鍵を開けるように命令をし、中に入った。なるほど、壁には無数の傷があり、脱獄しようとしていたというのは本当だったようだ。監視者が、参謀の体をゆすったが、反応はない。やはり眠っているようだ。これが油断だった。
周囲に風が巻き起こり、参謀が風魔法を使おうとしている。僕は、皆を退避させるために声を上げようとしたが、参謀をうめき声を上げて、ぐったりと倒れ込んでしまった。ミヤが、参謀の腹部に強烈な蹴りを食らわしていたようだ。
「また、ロッシュを傷つけさせるわけにはいかないわ。本当、こういう奴は油断も出来ないのよね」
ミヤの瞬時の判断で僕達は、参謀からの攻撃を回避することが出来た。僕は監視者に参謀を拘束するように命令し、牢屋を離れることにした。ミヤは、皆から感謝され、僕も感謝の言葉を掛けたのだが、すごく不機嫌だった。僕が何度も油断をして危険に晒されることが我慢できないみたいが。それから、僕はコンコンと説教されることになってしまった。その横で、なぜか監視者も一緒になって怒られていた。
ミヤの怒りがようやく落ち着いたところで、参謀がなぜ意識があったのかを監視者に聞くと、たしかに薬を入れた食べ物を与え、目の前で食べていたというのだ。だとすると、スタシャからもらった薬は、睡眠薬ではないということか? 確かに試してもいないから、スタシャが間違って違うものを渡してきたということも考えられるな。
悩んでいると、薬を試してみようという話になった。僕もそれが一番手っ取り早いと思ったが、誰が飲むか……その時率先して手を上げたのは監視者だった。かなり負い目を感じているようで、是非というのでルドが許可を与えて、ほんの微量を飲んでもらうことにした。すると、監視者は飲んで数分もしない内に、大いびきをかいて眠ってしまった。薬は本物だった。とすると、何かからくりが?
ルドが牢屋を調べてくると言って、しばらく経ってから、ルドが戻ってきた。どうやら、参謀の座っていた位置にある石床が外れていることが判明し、その下には穴が掘られていたみたいだ。その穴に、食べたと思われる食物が散乱していたらしい。話をまとめると、参謀は穴を掘って脱出を計っていた? 食べ物に睡眠薬が入っていることを見抜いていた? という疑問が残ってしまった。しかし、この疑問に対してあまり意味はないので、睡眠薬を参謀の口に無理やり流し込み、一見落着ということにしよう。
すぐさま、参謀は、眷族によってエルフの里に送り込まれることになった。ルドも同行したいと言うので、許可を与え、マリーヌと共にエルフの里の近辺まで行かせることにした。近辺まで行けば、エルフが迎えに来る段取りになっている。これで、参謀から端を発したと思われる戦の全ての精算が終わった。
また、戦にならないためにも、軍備を強化し、味方を増やし、食料物資を確保しなければならない。そのために、新村開拓を急がなくては。僕達は、参謀の事を片付けると、休むことなく、新村に向けて出発した。
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