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第157話 エルフの秘術
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「話は聞いた。また、人間の男をこっちに送ってくれるという話じゃが、嬉しい申し出とは思うが、受け入れは出来ないの。すまぬとは思うが、こちらも今、受け入れている男だけで手一杯なのじゃ。それに、順調に妊娠しているエルフが増えたのでな。正直、当分はいらないという状況じゃ。だから、これ以上は」
そうか。前回の罪人の受け入れの時もかなり無理をしていた様子だったから、今回は難しいと思っていたが、やはり断られてしまったか。これでは、お菓子を渡したところで、結論が変わることはないだろう。そういえば、リードがこの話になった時、食料保管庫を見せて、と言っていたな。どうせ、何をしても結論が変わりそうもないなら、ダメ出しでやってみてもいいだろう。
僕は、眷族に食料保管庫を持ってきてもらうことにした。応接室の外から運び込まれた物を見て、さすがは家具職人の頂点に立つ存在だ。リリは、身重の体を起こし、家具の方に近づいていった。手で触り、扉をあけては中を覗き込み、エルフに頼んで、裏を見たりしていた。全てを見定めた後、僕にこの家具について聞いてきた。
「これはリードが作ったものだ。食料保管庫と言っていたが、材料が足りないために使い物にはならないと言っていたな。それと、先程の話が出た時に、この家具をリリに見せれば、きっと気付いてくれるはずだととも言っていたな。僕にはさっぱりわからないが」
それを聞いて、リリはブツブツと僕の言った言葉を復唱しているように聞こえた。そして、何かをひらめいたように、僕に質問してきた。
「先程の人間は、もしかして、魔法を使えたりしないか?」
僕は、参謀が魔法を使えることはリリには伝えていない。受け入れの邪魔になると思って、あえて伏せていたことなのだ。僕は、言おうか迷っていたが、リリがあまりにも真剣な表情をしていたので、僕は正直に頷いた。すると、リリは満面の笑みになり、その男を受け入れようと先程の決定を翻したのだ。僕は流石に疑問があったので、聞くと、リリは渋面を浮かべ、答えたがらない様子だった。すると、何を考えたのか、リリは僕だけを連れて、先程のベッドのある部屋に向かった。その部屋で二人きりとなり、リリが真剣な表情で僕に話しかけた。
「これはエルフの秘術に関わる故、答えたくないのじゃが。喉から手が出るほどその人間が欲しくなった。どうしたものかの……そなたは何人にもこの秘密を守り通せる覚悟はあるかの? もし破れば、たとえ、我が子の父親になる者でも容赦はすることは出来ぬが、それでも知りたいと思うのか?」
エルフの秘術と聞いて、聞きたくないわけがない。僕は、誰にも言わないと誓い、首を縦に振った。リリは、ため息を漏らし、僕の手を握り、目を瞑りだした。なんだか、いい雰囲気だなと思ったが、急激に脱力感に襲われ始めた。何がなんだか分からなかったが、リリに握られた手が物凄く熱く感じる。その熱さが収まると手に何か異物がある感触があった。脱力した体のため、手を広げるのも億劫だが、その異物を見ようと手を広げると、そこには赤くゴツゴツとした石のようなものがあった。サイズは小石より少し大きい。僕が見ていると、リリがその石をすっと取り、光に当ててじっと眺めていた。
「さすが、我が君じゃ。これほどの大きさはなかなかお目見えできない物ぞ。少し、吸い取りすぎたかの? 我が君は少し横になると良いぞ」
すこし脱力感が酷いため、リリの言葉に甘えて、ベッドに横になることにした。ふかふかなベッドに体が包まれていき、油断すると眠ってしまいそうになる。リリがすっとベッドの中に入ってきて、僕を抱きしめだしたのが最後で、眠りについてしまった。僕が目を覚ますと、いるはずのリリがいなかった。部屋の中を見回すと、ベッドの横にある机に着いて、先程の石を丹念に調べていた。
「目が覚めたかの? そなたの寝顔は可愛いの。これほどの石が手に入ったというのに、そなたの顔ばかり見てしまったぞ」
ベッドで寝たおかげで、脱力感もなくなり、頭もスッキリしていた。僕は、寝る前のことを思い出して、その石のことを聞いた。きっと、それがエルフの秘術に違いない。
「ちゃんと教えるから安心するのじゃ。まず、エルフの家具について教えよう。あの家具に不思議な効果があるのは知っているじゃろ? あれは魔術によってなせる技術なんじゃ。家具に魔術を施すと、エルフの家具となる。魔術については言葉では説明が難しいから、実際に見たほうが早いじゃろ。今度見せてやる故、今日は我慢せよ。ここで問題は、魔術には魔力が必要になるということじゃ。魔力がなければ、魔術なぞなんの役にも立たぬ。そこで、この石の出番じゃ。この石には魔力が封じ込められている。家具に特殊な回路と魔術を組み、この石を家具に取り付けると、魔術が常に発動する状態になるというわけじゃ」
なるほど。見えてきたぞ。リリは参謀をこの石を生産するための道具にする気なのか。魔力は寝れば回復する。とすれば、寿命が来るまで、石を搾取し続けることが出来るというわけか。石は、家具作りには必須なもの。そうであれば、喉から手が出るという言葉は頷ける。しかし、ちょっと想像すると恐ろしいな。
「ついでじゃから言うが、そなたから取った石はかなり大きいものだが、普通はこれを取ることは出来ぬ。それ故、家具の大きさというものは必然と決まってしまうものなのじゃ。さっき、リードが持ってきたのは食料保管庫じゃろ? この石ならもう少し大きなものが作れるじゃろうが、そなたが欲しい大きさにはきっとならぬであろう」
そういうことだったのか。石の大きさと家具の大きさは概ね比例するということか。ということは、巨大な食料保管庫も理屈では作れるということなのか? 要は、巨大な石が手に入ればいいということだよな。僕がそういうと、リリはため息を漏らした。
「気持ちは分かるがの。それを手に入れるのは、至難の業じゃ。考えないほうが身のためじゃぞ。一応じゃが、家具には一つの石しか使えるぬからな。複数の石が使えればよいのじゃが、まだ回路が出来上がっていないのじゃ。これは、数百年と研究を続けているのじゃがな」
ん? まるで方法があるみたいな言い方だな。すごく興味が引かれてしまうな。僕は、リリに頼み込んで無理に聞いてみた。エルフの秘術を話してしまったからか、リリは軽い口調で教えてくれた。
「我が君も物好きよの。どうせ、無理なことじゃから教えてもよかろう。魔の森の中央に高くそびえ立つ火山があるのは知っておるかの? そこには、古来よりドラゴンが住んでいる場所なんじゃが、そこには巨大な石がゴロゴロとあると言われておる。真実かもしれぬが、噂かもしれぬ。しかし、過去、巨大な石がドラゴンの巣より持ち帰ってきたという話もあるから、あながち信頼できぬ話でもないのじゃ。ドラゴンは宝石を集める習性があるから、とも言われておるの」
ドラゴンか。そんなものがこの世界にいるのか。僕が想像するドラゴンとは違いそうだが、この世界ではどういう存在なのだろうか。リリが不可能ということは、かなり強力なのだろうとは容易に想像は出来るが。
「ドラゴンを見たものは多いわけではないが、ドラゴンを討伐に言ったものが戻ってきたという話は聞いたことがないの。つまり、それだけドラゴンが強いということじゃろ。なんにしても、我が君は関係のない話じゃろ。興味も大概にせんとな。それよりも、皆が食事を待っておる」
僕は完全にドラゴンに興味津々だったが、食事なら仕方がない。僕は食堂の方に向かい、用意された席に座った。隣にミヤがいたが、僕が少し気だるそうにしていたのを勘違いしたのか、妊婦の体を労りなさいと文句を言われてしまった。
食事も終わり、僕達は大量のお菓子を応接室に置いて、エルフの里を後にした。
そうか。前回の罪人の受け入れの時もかなり無理をしていた様子だったから、今回は難しいと思っていたが、やはり断られてしまったか。これでは、お菓子を渡したところで、結論が変わることはないだろう。そういえば、リードがこの話になった時、食料保管庫を見せて、と言っていたな。どうせ、何をしても結論が変わりそうもないなら、ダメ出しでやってみてもいいだろう。
僕は、眷族に食料保管庫を持ってきてもらうことにした。応接室の外から運び込まれた物を見て、さすがは家具職人の頂点に立つ存在だ。リリは、身重の体を起こし、家具の方に近づいていった。手で触り、扉をあけては中を覗き込み、エルフに頼んで、裏を見たりしていた。全てを見定めた後、僕にこの家具について聞いてきた。
「これはリードが作ったものだ。食料保管庫と言っていたが、材料が足りないために使い物にはならないと言っていたな。それと、先程の話が出た時に、この家具をリリに見せれば、きっと気付いてくれるはずだととも言っていたな。僕にはさっぱりわからないが」
それを聞いて、リリはブツブツと僕の言った言葉を復唱しているように聞こえた。そして、何かをひらめいたように、僕に質問してきた。
「先程の人間は、もしかして、魔法を使えたりしないか?」
僕は、参謀が魔法を使えることはリリには伝えていない。受け入れの邪魔になると思って、あえて伏せていたことなのだ。僕は、言おうか迷っていたが、リリがあまりにも真剣な表情をしていたので、僕は正直に頷いた。すると、リリは満面の笑みになり、その男を受け入れようと先程の決定を翻したのだ。僕は流石に疑問があったので、聞くと、リリは渋面を浮かべ、答えたがらない様子だった。すると、何を考えたのか、リリは僕だけを連れて、先程のベッドのある部屋に向かった。その部屋で二人きりとなり、リリが真剣な表情で僕に話しかけた。
「これはエルフの秘術に関わる故、答えたくないのじゃが。喉から手が出るほどその人間が欲しくなった。どうしたものかの……そなたは何人にもこの秘密を守り通せる覚悟はあるかの? もし破れば、たとえ、我が子の父親になる者でも容赦はすることは出来ぬが、それでも知りたいと思うのか?」
エルフの秘術と聞いて、聞きたくないわけがない。僕は、誰にも言わないと誓い、首を縦に振った。リリは、ため息を漏らし、僕の手を握り、目を瞑りだした。なんだか、いい雰囲気だなと思ったが、急激に脱力感に襲われ始めた。何がなんだか分からなかったが、リリに握られた手が物凄く熱く感じる。その熱さが収まると手に何か異物がある感触があった。脱力した体のため、手を広げるのも億劫だが、その異物を見ようと手を広げると、そこには赤くゴツゴツとした石のようなものがあった。サイズは小石より少し大きい。僕が見ていると、リリがその石をすっと取り、光に当ててじっと眺めていた。
「さすが、我が君じゃ。これほどの大きさはなかなかお目見えできない物ぞ。少し、吸い取りすぎたかの? 我が君は少し横になると良いぞ」
すこし脱力感が酷いため、リリの言葉に甘えて、ベッドに横になることにした。ふかふかなベッドに体が包まれていき、油断すると眠ってしまいそうになる。リリがすっとベッドの中に入ってきて、僕を抱きしめだしたのが最後で、眠りについてしまった。僕が目を覚ますと、いるはずのリリがいなかった。部屋の中を見回すと、ベッドの横にある机に着いて、先程の石を丹念に調べていた。
「目が覚めたかの? そなたの寝顔は可愛いの。これほどの石が手に入ったというのに、そなたの顔ばかり見てしまったぞ」
ベッドで寝たおかげで、脱力感もなくなり、頭もスッキリしていた。僕は、寝る前のことを思い出して、その石のことを聞いた。きっと、それがエルフの秘術に違いない。
「ちゃんと教えるから安心するのじゃ。まず、エルフの家具について教えよう。あの家具に不思議な効果があるのは知っているじゃろ? あれは魔術によってなせる技術なんじゃ。家具に魔術を施すと、エルフの家具となる。魔術については言葉では説明が難しいから、実際に見たほうが早いじゃろ。今度見せてやる故、今日は我慢せよ。ここで問題は、魔術には魔力が必要になるということじゃ。魔力がなければ、魔術なぞなんの役にも立たぬ。そこで、この石の出番じゃ。この石には魔力が封じ込められている。家具に特殊な回路と魔術を組み、この石を家具に取り付けると、魔術が常に発動する状態になるというわけじゃ」
なるほど。見えてきたぞ。リリは参謀をこの石を生産するための道具にする気なのか。魔力は寝れば回復する。とすれば、寿命が来るまで、石を搾取し続けることが出来るというわけか。石は、家具作りには必須なもの。そうであれば、喉から手が出るという言葉は頷ける。しかし、ちょっと想像すると恐ろしいな。
「ついでじゃから言うが、そなたから取った石はかなり大きいものだが、普通はこれを取ることは出来ぬ。それ故、家具の大きさというものは必然と決まってしまうものなのじゃ。さっき、リードが持ってきたのは食料保管庫じゃろ? この石ならもう少し大きなものが作れるじゃろうが、そなたが欲しい大きさにはきっとならぬであろう」
そういうことだったのか。石の大きさと家具の大きさは概ね比例するということか。ということは、巨大な食料保管庫も理屈では作れるということなのか? 要は、巨大な石が手に入ればいいということだよな。僕がそういうと、リリはため息を漏らした。
「気持ちは分かるがの。それを手に入れるのは、至難の業じゃ。考えないほうが身のためじゃぞ。一応じゃが、家具には一つの石しか使えるぬからな。複数の石が使えればよいのじゃが、まだ回路が出来上がっていないのじゃ。これは、数百年と研究を続けているのじゃがな」
ん? まるで方法があるみたいな言い方だな。すごく興味が引かれてしまうな。僕は、リリに頼み込んで無理に聞いてみた。エルフの秘術を話してしまったからか、リリは軽い口調で教えてくれた。
「我が君も物好きよの。どうせ、無理なことじゃから教えてもよかろう。魔の森の中央に高くそびえ立つ火山があるのは知っておるかの? そこには、古来よりドラゴンが住んでいる場所なんじゃが、そこには巨大な石がゴロゴロとあると言われておる。真実かもしれぬが、噂かもしれぬ。しかし、過去、巨大な石がドラゴンの巣より持ち帰ってきたという話もあるから、あながち信頼できぬ話でもないのじゃ。ドラゴンは宝石を集める習性があるから、とも言われておるの」
ドラゴンか。そんなものがこの世界にいるのか。僕が想像するドラゴンとは違いそうだが、この世界ではどういう存在なのだろうか。リリが不可能ということは、かなり強力なのだろうとは容易に想像は出来るが。
「ドラゴンを見たものは多いわけではないが、ドラゴンを討伐に言ったものが戻ってきたという話は聞いたことがないの。つまり、それだけドラゴンが強いということじゃろ。なんにしても、我が君は関係のない話じゃろ。興味も大概にせんとな。それよりも、皆が食事を待っておる」
僕は完全にドラゴンに興味津々だったが、食事なら仕方がない。僕は食堂の方に向かい、用意された席に座った。隣にミヤがいたが、僕が少し気だるそうにしていたのを勘違いしたのか、妊婦の体を労りなさいと文句を言われてしまった。
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