爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第156話 リリが体調不良?

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 村に戻ると、予想通り、ハイエルフのリリから連絡が入っていた。眷族がずっと屋敷で待機していたようだが、玄関にずっといたようだ。エリスは何度も居間に来るように促したが、絶対に譲らなかったらしい。ミヤも特に何も言わないし、そういうものなのかと思い、僕が居間に呼ぶと素直に従ってくれた。

 眷族が言うには、僕の方から提示した参謀の受け入れについては賛成とも反対ともいわずに、直接、話がしたいということらしい。エルフの里には、こっちの都合でかなり送り込んでいるから、リリから不満でも出てくるのかな? そう考えると、ちょっと行くのが嫌になってくるな。とりあえず、お菓子を大量に持っていけば、少しは機嫌が良くなるだろうか。

 エリスに僕が夕飯後にお菓子作りをするから、準備をしておくように頼んでおいた。エリスは僕が久しぶりにキッチンに立つことにかなり喜んでいる様子で、すぐに準備しますねと先走って急いで行こうとしていたので、夕飯を作ってからでいいぞ、というと恥ずかしそうにしていた。マグ姉も戻ってきたばかりだが、エリスを手伝うためにキッチンに向かっていった。

 夕食後、ミヤとマグ姉とシェラは相変わらず、蛇の魔獣肉をつまみに酒を飲み始めていた。リードは、エルフの里に持っていってほしいというものがあるといって、工房の方に向かっていった。どうやら、最終調整をするというのだが、僕には何のことか分からない。とりあえず、あとで聞こうと思い、僕はキッチンに向かった。

 今回は、プリンを作ろうと思う。ぼくがそういうと、首を傾げて小声でプリンという姿が物凄く可愛い。つい見惚れてしまうが、気を取り直して、プリンを作ることにした。この村でお菓子を作ろうと思ったら大抵のものが手に入るようになった。もちろん、フルーツ全般やココナッツ、ココアなどがないため、彩りに欠けるものがあるが、焼き菓子ならば、何でも作れるだろう。村周辺の森には木の実が豊富に取れたりする。今回は、プリンの他に、ケーキも作る予定だから、木の実を加えたものを作る予定だ。

 材料である牛乳と卵と砂糖を用意し、混ぜ混ぜして、蒸したら出来がり、粗熱がなくなったところで、皆に試食をしてもらうことにした。まずは、エリスからだ。粗熱を取っている間から、ずっと虎視眈々と狙っていたので、僕が許可を出すと、すぐに飛びついていった。一口食べるごとに幸せそうに食べる姿を見ると、幸せな気分になる。感想を聞くと、言葉にも出来ないようで、首を縦に振るだけだった。とりあえず、夢中で食べているようなので、僕は人数分を持って、皆に配り食べてもらうことにした。かなりの高評価だったが、感動という点では薄かった気がする。

 話を聞くと、お菓子のレベルは、ラーナさんの食堂によって、否応なく上がっているみたいで、ハードルがかなり上がっているみたいだ。でも、プリンは村でも流行るとマグ姉から太鼓判を得たので、エリスにレシピを教えて、広めてもらうことにした。これも、しばらくするとかなりレベルアップしているんだろうな。あとは、ラーナさんの食堂でも出されているケーキをいくつか作り、調理を終えた。リードは、工房に引き篭もっているようでお菓子も食べずに何かをしているようだった。

 翌朝、僕がエリスに起こされ、居間に向かうとリードが、僕の手を急に引っ張って、工房まで連れてこられた。そこにあったのは、小さな箱のようなものだ。扉が取り付けられていて、一見すると収納箱と言った感じか。リードは、その箱を見てほしいという顔をしているように感じたので、扉を開け中を覗いたり、外見を見たりしたが、特に何も感じるようなものではなかった。僕は見ても、これが何なのか分からなかったので、リードに聞くと、どうやら食料保管庫のようだ。

 僕は以前、品質が落ちない食料保管庫がなぜ実用化されないのかという話をしていたのを思い出した。なるほど、これほど小さいものでは実用化しても意味を感じないな。ただ、食料保管庫と聞いても、箱にしか見えない。実際に作物が入っていれば別なんだけど。リードにこれは使えるものなのかと尋ねた。

 「ロッシュ殿。残念ながら、この食料保管庫は使えません。私はリリ様よりエルフの家具作りの許可をもらっていませんから、必要な材料がないのです。ただ、その材料さえ手に入れば、これは品質の下がらない食料保管庫になります」

 たしかに、リリからはリードを預かる時に、家具のメンテナンスだけと言う約束だった。でも、なぜ、リードはこんなものを作ったのだろうか? 僕には見当も付かないな。

 「この家具をリリのところに持っていくと、何か意味があるのか? 向こうで完成品を作ってくるとか?」

 「リリ様でしたら、これを完成してくれると思いますが、私が意図するところではありません。私が直接行ければ良いのですが、とりあえず、あの人間の処分をする話の時に、これを見せれば、リリ様は意図を理解してくれると思います」

 さっぱり分からない。あの人間というのは参謀のことだよな。食料保管庫を見せれば、いい方向に進むということなのか。リードはこれ以上のことを聞こうとすると、それ以上はエルフの秘密に関わるとして、言おうとしなかった。すこし諦められない気持ちもあったが、リードは僕や村にとって利益になると確信している様子なので、信じることにした。

 僕は朝食を済ました後、ミヤと眷族を連れて、エルフの里に向かうことにした。食料保管庫と大量のお菓子と共に。道中は至って、平和だった。魔の森に入るが、魔獣の様子は見られなかった。僕が最初に入った時もあまり見かけなかったから、こんなものなんだろうか? 眷族に聞くと、今日はたまたまらしい。僕はなかなか運が良いようだな。しかし、傍から見れば、僕達は変な団体なんだろうな。森の中に家具とお菓子を持って歩いてるんだかな。などと、考えている内に、エルフの里に到着した。本当にこんなに近くに里があるなんて、今でも信じられないな。

 エルフの里はあいかわらず、ほのぼのとした光景だ。エルフたちも僕達の姿を見ても、あまり驚くような様子がなく、普段通りのような感じがした。よくよく見ると、おなかが少し大きくなっているエルフの姿をよく見かける。これは、僕が罪人達を送り込んだ結果というやつかな。皆が幸せそうにしているので、僕はほっと心をなでおろした。リリの希望とは言え、女性だけのエルフの里に男共を送り込んだことに少なからず罪悪感があったが、それは僕の杞憂だったようだ。

 僕達もこの里に何度も来ているおかげで、案内もなくリリの屋敷にたどり着くことが出来た。すると、案内役のいつものエルフが僕達の前に現れた。僕に軽く挨拶をし、僕達が持ってきた大きな荷物を見て、その中身を察したのか、頬が完全に緩んだのを僕は見逃さなかった。エルフは、澄まし顔に戻ったが、僕がお菓子の入った小袋を差し出すと、再び緩んだ。さっと、僕から小袋を奪い取り、小脇に挟んで、僕らを案内してくれた。心なしか、エルフの足取りが軽そうだ。

 僕らは、いつも通される部屋ではなく、ベッドがある部屋に案内された。ベッドには、エルフに介助を受けながら、上体を起こして、ベッドに座っているリリの姿があった。

 「リリ。具合でも悪いのか? 今日は出直したほうが良さそうだな」

 僕がそう言うと、リリは笑って、不要じゃと答えた。

 「妾は別に病気ではない。ちょっと、気分が優れぬ故、横になっていたまでよ。もう気分は戻ったから、応接室に移ろうかの」

 リリがそういうと、エルフたちが甲斐甲斐しく補助しながら、応接室の方に向かっていった。どうみても、普通の様子ではない。僕達が来て、無理をしているのではないか? とも考えたが、リリがそんなことをするだろうかとも思い、なかなか結論が出ないまま、応接室に着いてしまった。

 僕が再三、リリの体を心配すると、病気ではないとしか答えようとしないのだ。

 「我が君も心配性じゃの。妾に子が出来たのじゃ。それゆえ、体調を崩しただけじゃ。もちろん、そなたの子じゃが、残念ながら、産まれても、我が君の面影はないのじゃ。だから、そなたがショックを受けないかと思い、あまり伝えたくなかったのじゃが」

 リリが僕の子供を? 僕とはたいして回数をしていないはずだったが、エルフの秘術というやつか? 妊娠率を上げられるものだったら、是非欲しいが……ではない。今は、リリに言葉を掛けなければ。

 「それでも、僕の子供なんだろ? 僕はとっても嬉しいよ。ただ、そうなった以上、僕としては、リリと一緒に住みたいと思っているんだが、その気は前から変わらないのか?」

 以前も一緒に住むことを誘ったのが断られたことがあったのだ。

 「とても魅力的な誘いじゃが、妾にはこの里を守る使命があるのじゃ。といっても、永遠というわけではない。妾に子が出来たのならば、その子もハイエルフとなるはず。きっと、その子がこの里を引っ張っていくことになる。そうなったら、妾は安心してそなたの元に参ろう。その時は妾をかわいがっておくれ」

 それは一体いつのことなんだ? ハイエルフは悠久の時を生きると聞いたことがある。その者にとっては一瞬でも、僕はとうに寿命を迎えているなんてことになるんじゃないのか? 

 「ふふっ。そんなに長くはかからないと思うぞ。この子次第じゃが。それに、我が君は、そんなに短い命とは思えないのじゃ。じゃから、そんなに妾を求めずとも、いずれは参ろう。それまでは、他の女を大切にしてやるとよい。ミヤも子が欲しいそうな顔をしていおるからの」

 僕はミヤの顔を見ると、リリを睨んでいるが顔が真っ赤だ。その光景をリリは笑っていた。そのすぐに、リリは厳しい表情に戻り、参謀についての話になった。
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