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第135話 結婚式と収穫祭⑤
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工房は会場から北部に位置する。少し距離はあるが大したことはない。久しぶりに工房に立ち寄ったが、かなり様変わりをしていた。工房に隣接するように大きな倉庫があり、鍛冶設備が大幅に増設されている。最初に居住区として作っていたスペースも鍛冶設備が並んでいた。
カーゴはその片隅の方に僕を案内してくれた。カーゴは置かれている物を取り出し、僕に手渡してきた。両手で抱えられるさほど大きなものではなかった。これは……いわゆるクロスボウと呼ばれるものか? なるほど、これなら弓に長けていない者でも、十分な射程と威力を発揮できるだろう。この村には兵として訓練を受けたものはいない。一応は、ルドの傘下だった兵が武器を扱えるが、正式に訓練を受けたものはいないらしい。更には、聞いた話では弓を扱えるものはいないらしい。そう考えると、訓練を受けていなくとも、この兵器を使えば十分な戦力となる。村にとっては最適な武器だな。
「村長。その顔だと、この武器がなんなのか分かっているみたいですね。実際に使ってみますか? このために試射場も作ってありますから、そちらで使ってみてください」
カーゴは、工房の裏に案内した。約100メートルほど先に的が置いてある場所だった。ここから射つの? ちょっと難易度高くないか? クロスボウの弦を引き、矢を設置した。このクロスボウには照準が取り付けられていた。カーゴに聞くと、照準は調整してあるけど、精度はまだ不十分と言っていた。僕は、とりあえず、的を照準に合わせて、トリガーを引いた。思ったより、軽く引けたのが驚いたが、それよりも、クロスボウから飛び出した矢が放物線を描きながら、的の近くに突き刺さった。当たらなかったが、十分な成果だ。後は慣れれば、精度も上がっていくだろう。それほど、素晴らしいものだ。
「カーゴ。これは素晴らしいものだな。これなら、女子供でも取り扱うことができそうだな。思った以上の成果だ。照準は言う通りだったな」
「村長……すごいですよ。私も何度も試射しましたけど、一回目で的にこれほど近づけるとは。さすがです」
カーゴがなぜか尊敬の眼差しを向けてくるので、少し恥ずかしくなって、数はどれほど用意してあるのか、話を逸した。今は、200丁ほどが製造されており、量産体制はすぐに組めると言っていた。これは驚いた。僕が驚いていると、カーゴが更に見せるものがあると言うので、倉庫に向かった。そこにあったのは、クロスボウを巨大化し、車輪が取り付けられたものだった。これは……なんだ? クロスボウと用途は一緒であることは分かるが、カーゴは攻城戦でもやろうとしているのか?
「村長。さすが、これも分かるんですね。試しに作ってみたんですが、使いみちを考えれば、使えると思うんです。是非、これも採用していただいたいのですが」
僕は、射程や精度を聞くと、たしかに使い途次第では大いに戦力になりそうだ。これは、一基しか製造されていないみたいだが、とりあえず、これを試作機として、改良型を今後作っていくといいだろう。当面は利用する場面は想定できないからな。
カーゴとは、その後も兵器開発について相談をした。ちなみに巨大なクロスボウは、便宜上、バリスタと呼ぶことにした。火薬を利用した武器も考えてもらうことにした。僕は軽い気持ちで言ったつもりだったが、この武器が恐ろしい武器となることを想像できていなかった。
僕からヒントを得たのか、カーゴはすぐに火薬を用いた武器開発を始めていた。花火までの時間が迫っていたので、カーゴに会場に行かなくて良いのか、と聞いたが、作業に夢中になっていたため、僕は一人会場に戻ることにした。辺りは既に暗くなっており、予定よりかなり遅くなってしまった。
会場に戻り、鍛冶工房の展示場に行き、カーゴが戻らない経緯を説明すると、カーゴの弟子も諦めたような顔になり、僕にお礼を言って、花火の準備に取り掛かっていた。僕は、食事スペースに行くと、エリスの姿はなかった。僕がキョロキョロとしていると、ラーナさんが声をかけてきた。
「エリスちゃんかい? 村長のことをずっと待ってたんだよ。そしたら、マーガレットさんが来て、連れて行っちまったよ。多分だけど、主賓席の方に言ったんじゃないかね? まったく、妊娠している奥さんを待たせるなんて、良くないね。さっさと行っておやり」
追い出されるように、その場を離れ、主賓席の方に向かった。途中、ミヤの場所に立ち寄った。そこでは、ミヤとシェラが酒で勝負をしている最中だった。どらちも一進一退でなかなかの好戦を展開しているようだ。二人は僕の存在に全く気づかない様子だったので、その場を離れ、主賓席に向かった。
主賓席は、先程より人数がかなり減っていた。がらんと空いた席に、エリスが食事を摂っていた。マグ姉とリードも一緒だ。三人で仲良く食事を摂っている風景を見ているとほのぼのとしてくる。さっきのミヤとシェラとは大違いだ。すぐにエリスが気付いてくれた。
「エリス。すまなかった。もう少し早く戻るつもりだったが、カーゴの作った兵器が思いの外素晴らしかったので、話が長くなってしまった。その兵器はすごいぞ。女子供でも簡単に使えるものだ。更にその威力が……」
僕が話をしていると、エリスが少し暗い顔になり思いつめるような顔になった。僕がどうしたんだ? と声を掛けた。
「ロッシュ様。その武器を、私達の子供が手にして誰かと戦うのでしょうか? そんな武器のどこが凄いんですか? 私には分かりません」
そういって、僕の前から早足で去っていってしまった。
「ロッシュ。エリスはね、ロッシュがカーゴのところに兵器のことで行ってから、ちょっと神経質になっているのよ。妊娠しているってこともあるけど、戦争でいろんなものを失っているから、色々と考えちゃうんだと思うの。私は、この村を守るために兵器開発は必要と思っているわ。だけど、受け入れられない人もいることを忘れちゃダメよ」
僕はなんて愚かなことを口にしてしまったのだろう。マグ姉に言われるまで気付かなかった。なんとも気まずい雰囲気にしてしまった。すると、ゴードンが戻ってきたみたいで、僕を連れ出して花火の見える一番いい場所に連れて行ってもらった。もちろんエリスも一緒だ。僕がエリスを誘いに行くと、僕にすぐに謝ってきた。
「ロッシュ様。申し訳ありませんでした。ロッシュ様の気苦労も理解しようともしないで、酷いことを行ってしまいました。私、最近、争いの話を耳にすることが増えてきて、また戦争が始まるんじゃないかって、不安で。ロッシュ様がいなくなってしまうんじゃないかって、心配で……」
僕はエリスを優しく抱きしめた。
「僕はいなくならないよ。そうならないために、そして、エリスや皆を守るために僕は頑張っているだ。心配も仕方ないよな。僕が余計な事を言ったばかりに。僕の方こそ謝りたいよ」
エリスは小さく頷くと、いつものように笑ってくれた。僕とエリスは、遅れながらもゴードンが案内してくれた場所に向かった。テーブル席になっていて、僕とエリス、マグ姉、リードが席に着いていた。マグ姉は僕とエリスが仲良く手を繋いでいる姿を見て、ホッとした様子だった。すぐに、コップに入った酒を僕に手渡してきた。
「さあ、せっかくの祭りなんだもん。これから、たくさん飲むわよ。ロッシュも、色々と考えたいことがあるんでしょうけど、祭りなんだから、いっぱい飲みましょ!!」
そのとおりだ!! 祭りであることを忘れかけていた。今日は祭りじゃないか。もう祭りも終盤だが、これからでも十分に楽しめる。祭りに花火。最高の組み合わせが待っているのだから。それからは、最初はマグ姉が注いでいてくれたが、自分の飲みに集中したいようで、エリスとリードが注いでくれることになった。二人の酌のおかげで、酔い始めた頃、一発目の花火が空に舞った。それはきれいな花火だった。単色で展開する火花もシンプルだが、こうして愛する妻たちと共に見る花火は格別だった。
エリスもリードも空を見上げて、花火に見とれていた。すると、ミヤとシェラが僕達のいる席までやってきた。それも大樽を抱えてだ。
「ふふっ。ロッシュもやっと酒を飲み始めたのね。昨日から飲んでるから、相手に飽きていたところなのよ。ロッシュ、私の相手をしなさい」
そういって、魔酒の入ったコップを僕に差し出してきた。仕方がないな。僕は魔酒を口に入れると、あれ? 前に飲んだときよりも強く感じないぞ。それどころか、美味しさが身に沁みて、もっと飲みたくなるな。
「ロッシュもやっと魔酒の虜になるのね。ロッシュが味方に付けば、もっと魔酒を量産できるわ。この時がついに来たのね!!」
ミヤが自分の世界に入っているところに、マグ姉がミヤに話しかけた。
「ミヤさん。私と飲みなさい。いつぞやの再戦をやりましょう。今日は調子が良いから、絶対に負ける気がしないわ。私はウイスキー、ミヤさんは魔酒で勝負よ。いいわね?」
ミヤは好戦的な笑みを浮かべ、いいわよと応じていた。そこに、シェラも加わり、三つ巴で飲み比べが始まったのだ。この中に僕が入らなくて良かった。ミヤとマグ姉は底なしの大酒飲みだ。シェラは分からないけど、かなり飲んでそうなのに、まだ酔っている様子がない。この三人と飲み比べなんてしたら……。
僕は、エリスとリードと三人で花火を楽しみながら、ちびちびと酒を飲んで楽しんだ。最近は、米の酒が量産されるようになったおかげで、甘酒が出回るようになっていた。エリスとリードは、その甘酒を幸せそうに飲んでいた。
最後の花火が打ち上がり、それが祭りの終わりの号令となった。二日間にわたる宴会は、ついに終わりになり、僕が最後の挨拶をするところだったが、その頃にはかなり酩酊状態だったので、ゴードンが代わりにすることになった。そこで一旦、お開きとなった。片付けは後日だ。僕達も引き上げようとするが、三人の飲み比べが終わりが見えない状態だったので、無理やり引き連れていくことになた。マグ姉とシェラは比較的すぐに素直になったが、ミヤは最後まで樽を離さずに抵抗していた。なんとか、魔酒の量産を約束して、ミヤは屋敷に一緒に帰ってくれることになった。
屋敷に戻った僕は、今日一日でかなり汗をかいたので、露天風呂に浸かりに行くと、ミヤ、マグ姉、シェラが入ってきた。その後の展開はいつもどおりだ。順番で言い争っている間に逃げようとしたが、そこは三人仲良く僕を風呂に引きずり込んだ。風呂から上がり、ベッドに入ってからも大汗をかく展開になってしまった。
この三人はあんだけ飲んだのに、なんでこんなに元気なんだよ……。次の日、起きた時、村に激震が走る報告がやってくるのだった。
カーゴはその片隅の方に僕を案内してくれた。カーゴは置かれている物を取り出し、僕に手渡してきた。両手で抱えられるさほど大きなものではなかった。これは……いわゆるクロスボウと呼ばれるものか? なるほど、これなら弓に長けていない者でも、十分な射程と威力を発揮できるだろう。この村には兵として訓練を受けたものはいない。一応は、ルドの傘下だった兵が武器を扱えるが、正式に訓練を受けたものはいないらしい。更には、聞いた話では弓を扱えるものはいないらしい。そう考えると、訓練を受けていなくとも、この兵器を使えば十分な戦力となる。村にとっては最適な武器だな。
「村長。その顔だと、この武器がなんなのか分かっているみたいですね。実際に使ってみますか? このために試射場も作ってありますから、そちらで使ってみてください」
カーゴは、工房の裏に案内した。約100メートルほど先に的が置いてある場所だった。ここから射つの? ちょっと難易度高くないか? クロスボウの弦を引き、矢を設置した。このクロスボウには照準が取り付けられていた。カーゴに聞くと、照準は調整してあるけど、精度はまだ不十分と言っていた。僕は、とりあえず、的を照準に合わせて、トリガーを引いた。思ったより、軽く引けたのが驚いたが、それよりも、クロスボウから飛び出した矢が放物線を描きながら、的の近くに突き刺さった。当たらなかったが、十分な成果だ。後は慣れれば、精度も上がっていくだろう。それほど、素晴らしいものだ。
「カーゴ。これは素晴らしいものだな。これなら、女子供でも取り扱うことができそうだな。思った以上の成果だ。照準は言う通りだったな」
「村長……すごいですよ。私も何度も試射しましたけど、一回目で的にこれほど近づけるとは。さすがです」
カーゴがなぜか尊敬の眼差しを向けてくるので、少し恥ずかしくなって、数はどれほど用意してあるのか、話を逸した。今は、200丁ほどが製造されており、量産体制はすぐに組めると言っていた。これは驚いた。僕が驚いていると、カーゴが更に見せるものがあると言うので、倉庫に向かった。そこにあったのは、クロスボウを巨大化し、車輪が取り付けられたものだった。これは……なんだ? クロスボウと用途は一緒であることは分かるが、カーゴは攻城戦でもやろうとしているのか?
「村長。さすが、これも分かるんですね。試しに作ってみたんですが、使いみちを考えれば、使えると思うんです。是非、これも採用していただいたいのですが」
僕は、射程や精度を聞くと、たしかに使い途次第では大いに戦力になりそうだ。これは、一基しか製造されていないみたいだが、とりあえず、これを試作機として、改良型を今後作っていくといいだろう。当面は利用する場面は想定できないからな。
カーゴとは、その後も兵器開発について相談をした。ちなみに巨大なクロスボウは、便宜上、バリスタと呼ぶことにした。火薬を利用した武器も考えてもらうことにした。僕は軽い気持ちで言ったつもりだったが、この武器が恐ろしい武器となることを想像できていなかった。
僕からヒントを得たのか、カーゴはすぐに火薬を用いた武器開発を始めていた。花火までの時間が迫っていたので、カーゴに会場に行かなくて良いのか、と聞いたが、作業に夢中になっていたため、僕は一人会場に戻ることにした。辺りは既に暗くなっており、予定よりかなり遅くなってしまった。
会場に戻り、鍛冶工房の展示場に行き、カーゴが戻らない経緯を説明すると、カーゴの弟子も諦めたような顔になり、僕にお礼を言って、花火の準備に取り掛かっていた。僕は、食事スペースに行くと、エリスの姿はなかった。僕がキョロキョロとしていると、ラーナさんが声をかけてきた。
「エリスちゃんかい? 村長のことをずっと待ってたんだよ。そしたら、マーガレットさんが来て、連れて行っちまったよ。多分だけど、主賓席の方に言ったんじゃないかね? まったく、妊娠している奥さんを待たせるなんて、良くないね。さっさと行っておやり」
追い出されるように、その場を離れ、主賓席の方に向かった。途中、ミヤの場所に立ち寄った。そこでは、ミヤとシェラが酒で勝負をしている最中だった。どらちも一進一退でなかなかの好戦を展開しているようだ。二人は僕の存在に全く気づかない様子だったので、その場を離れ、主賓席に向かった。
主賓席は、先程より人数がかなり減っていた。がらんと空いた席に、エリスが食事を摂っていた。マグ姉とリードも一緒だ。三人で仲良く食事を摂っている風景を見ているとほのぼのとしてくる。さっきのミヤとシェラとは大違いだ。すぐにエリスが気付いてくれた。
「エリス。すまなかった。もう少し早く戻るつもりだったが、カーゴの作った兵器が思いの外素晴らしかったので、話が長くなってしまった。その兵器はすごいぞ。女子供でも簡単に使えるものだ。更にその威力が……」
僕が話をしていると、エリスが少し暗い顔になり思いつめるような顔になった。僕がどうしたんだ? と声を掛けた。
「ロッシュ様。その武器を、私達の子供が手にして誰かと戦うのでしょうか? そんな武器のどこが凄いんですか? 私には分かりません」
そういって、僕の前から早足で去っていってしまった。
「ロッシュ。エリスはね、ロッシュがカーゴのところに兵器のことで行ってから、ちょっと神経質になっているのよ。妊娠しているってこともあるけど、戦争でいろんなものを失っているから、色々と考えちゃうんだと思うの。私は、この村を守るために兵器開発は必要と思っているわ。だけど、受け入れられない人もいることを忘れちゃダメよ」
僕はなんて愚かなことを口にしてしまったのだろう。マグ姉に言われるまで気付かなかった。なんとも気まずい雰囲気にしてしまった。すると、ゴードンが戻ってきたみたいで、僕を連れ出して花火の見える一番いい場所に連れて行ってもらった。もちろんエリスも一緒だ。僕がエリスを誘いに行くと、僕にすぐに謝ってきた。
「ロッシュ様。申し訳ありませんでした。ロッシュ様の気苦労も理解しようともしないで、酷いことを行ってしまいました。私、最近、争いの話を耳にすることが増えてきて、また戦争が始まるんじゃないかって、不安で。ロッシュ様がいなくなってしまうんじゃないかって、心配で……」
僕はエリスを優しく抱きしめた。
「僕はいなくならないよ。そうならないために、そして、エリスや皆を守るために僕は頑張っているだ。心配も仕方ないよな。僕が余計な事を言ったばかりに。僕の方こそ謝りたいよ」
エリスは小さく頷くと、いつものように笑ってくれた。僕とエリスは、遅れながらもゴードンが案内してくれた場所に向かった。テーブル席になっていて、僕とエリス、マグ姉、リードが席に着いていた。マグ姉は僕とエリスが仲良く手を繋いでいる姿を見て、ホッとした様子だった。すぐに、コップに入った酒を僕に手渡してきた。
「さあ、せっかくの祭りなんだもん。これから、たくさん飲むわよ。ロッシュも、色々と考えたいことがあるんでしょうけど、祭りなんだから、いっぱい飲みましょ!!」
そのとおりだ!! 祭りであることを忘れかけていた。今日は祭りじゃないか。もう祭りも終盤だが、これからでも十分に楽しめる。祭りに花火。最高の組み合わせが待っているのだから。それからは、最初はマグ姉が注いでいてくれたが、自分の飲みに集中したいようで、エリスとリードが注いでくれることになった。二人の酌のおかげで、酔い始めた頃、一発目の花火が空に舞った。それはきれいな花火だった。単色で展開する火花もシンプルだが、こうして愛する妻たちと共に見る花火は格別だった。
エリスもリードも空を見上げて、花火に見とれていた。すると、ミヤとシェラが僕達のいる席までやってきた。それも大樽を抱えてだ。
「ふふっ。ロッシュもやっと酒を飲み始めたのね。昨日から飲んでるから、相手に飽きていたところなのよ。ロッシュ、私の相手をしなさい」
そういって、魔酒の入ったコップを僕に差し出してきた。仕方がないな。僕は魔酒を口に入れると、あれ? 前に飲んだときよりも強く感じないぞ。それどころか、美味しさが身に沁みて、もっと飲みたくなるな。
「ロッシュもやっと魔酒の虜になるのね。ロッシュが味方に付けば、もっと魔酒を量産できるわ。この時がついに来たのね!!」
ミヤが自分の世界に入っているところに、マグ姉がミヤに話しかけた。
「ミヤさん。私と飲みなさい。いつぞやの再戦をやりましょう。今日は調子が良いから、絶対に負ける気がしないわ。私はウイスキー、ミヤさんは魔酒で勝負よ。いいわね?」
ミヤは好戦的な笑みを浮かべ、いいわよと応じていた。そこに、シェラも加わり、三つ巴で飲み比べが始まったのだ。この中に僕が入らなくて良かった。ミヤとマグ姉は底なしの大酒飲みだ。シェラは分からないけど、かなり飲んでそうなのに、まだ酔っている様子がない。この三人と飲み比べなんてしたら……。
僕は、エリスとリードと三人で花火を楽しみながら、ちびちびと酒を飲んで楽しんだ。最近は、米の酒が量産されるようになったおかげで、甘酒が出回るようになっていた。エリスとリードは、その甘酒を幸せそうに飲んでいた。
最後の花火が打ち上がり、それが祭りの終わりの号令となった。二日間にわたる宴会は、ついに終わりになり、僕が最後の挨拶をするところだったが、その頃にはかなり酩酊状態だったので、ゴードンが代わりにすることになった。そこで一旦、お開きとなった。片付けは後日だ。僕達も引き上げようとするが、三人の飲み比べが終わりが見えない状態だったので、無理やり引き連れていくことになた。マグ姉とシェラは比較的すぐに素直になったが、ミヤは最後まで樽を離さずに抵抗していた。なんとか、魔酒の量産を約束して、ミヤは屋敷に一緒に帰ってくれることになった。
屋敷に戻った僕は、今日一日でかなり汗をかいたので、露天風呂に浸かりに行くと、ミヤ、マグ姉、シェラが入ってきた。その後の展開はいつもどおりだ。順番で言い争っている間に逃げようとしたが、そこは三人仲良く僕を風呂に引きずり込んだ。風呂から上がり、ベッドに入ってからも大汗をかく展開になってしまった。
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