上 下
132 / 408

第131話 結婚式と収穫祭①

しおりを挟む
 結局、結婚式に参加するのは、僕とエリス、ミヤ、マグ姉、リードとシェラとなった。それ以外にも村人から30組程度のカップルが参加することになったようだ。その中には、なんと、ライルとレイヤも参加することになっていた。こんなに早く結婚をすることになるとは。僕はまずいことを思い出した。指輪作ってないぞ。 
                                              
 結婚式の日取りまで、いくらも時間がないぞ。僕はすぐに資材置き場部屋に向かい、指輪の材料となる物を集めた。ライルとレイヤは二人共赤い髪をしているから、赤い宝石が良いだろう。リング部分は、銀色がいいだろうからオリハルコンにしよう。本当は銀にしようと思ったのだが、加工のやりやすさで言えばオリハルコンが断然に簡単なのだ。銀は魔力との親和性が低いので、リング状にするだけで魔力を枯渇してしまうだろう。

 オリハルコンに魔力を通し、リングになるようにイメージすると、みるみる変形をしリングの形になった。それに赤い宝石をはめ込めば、完成だ。うむ、なかなかいい出来だ。僕は、指輪を持って、自警団本部の方に顔を出した。どうやら、ライルはレイヤのところにいるようなので、二人のもとに行くことにした。

 二人の他に、数人が家を建築していた。結構寒くなってきたと言うのに、相変わらずのタンクトップ姿か。結婚するんだったら、もう少し落ち着いた格好をした方が良いんじゃないか? と思いながら、ライルをこっそりと呼び出した。ライルもタンクトップ姿なのは、少し面白かった。

 「村長さん。どうしたんだ? こんなコソコソするなんて、らしくないじゃないか」

 「誰のためだと思っているだ。ライルにこれを渡しに来たんだ」
 
 僕はライルに赤い宝石がはめ込まれたリングを手渡した。それが、レイヤに贈るためのものだとすぐに分かってくれたみたいで、指輪を光に透かすようして見入っていた。

 「ありがとうよ。これで、レイヤに正式に結構を申し込めるぜ。これを左手の薬指にはめれば良いんだよな?」

 「その通りだが、一つ問題がある。レイヤの指のサイズを知らないから適当に作ってしまったのだ。だから、ここで微調整をするから指のサイズを測ってきてほしいんだ」

 そこからが面倒だった。普通に測ってくれればいいのに、指輪を内緒にしておきたいから、こっそり測りたいと言い出したのだ。その気持ちはわからないではないので、協力することにしたのだが、なかなか測るタイミングを取ることが出来ず、結局レイヤが寝てからこっそりと測ることでなんとかサイズを知ることが出来た。結局、僕が適当に作ったサイズがぴったりだと分かったときの失望感は物凄かった。このために、一日を潰してしまったのだ。ライルは、申し訳無さそうに謝っていたが、僕はライルを応援だけして屋敷に戻った。

 ついに、結婚式当日を迎えることになった。会場となる中央広場には、女性陣が着替えるための小屋を設置してあり、屋外での挙式となった。僕は祭りの準備のために、彼女らより一足早く会場入りした。しかし、ゴードンに主役がこんな準備の作業なんかしなくていいと言って、新郎用に作られた待機場に押し込まれてしまった。そこには、当然ライルの姿もあった。服飾屋のトールが新調したのか、ガタイの良いライルにピッタリと合うスーツがやけに決まって見えた。

 僕は、ライルに指輪の贈ったときの話を聞こうとしたが、あまり語りたがらなかったので、二人の思い出に僕が口を挟むのはどうかと思い、深くは追求しなかった。そういえば、僕の衣装はどうなっているんだ? 考えたら、準備してなかったな。自分の格好を見ると、まぁ、清潔な格好だし問題ないかと思っていたら、側にミヤの眷族が立っていた。

 「ロッシュ様が、自分の服を見て諦めの表情を浮かべたら、これを渡せとミヤ様から預かっています」

 そういって、手渡してきたのは、上等な生地で作られた衣装だった。諦めの表情なんてしたつもりはなかったんだが、と言おうとしたときには眷族の姿はなかった。何だったんだ、一体。僕は手渡された衣装に袖を通した。なんだ、これは。魔力が吸い取られていくぞ。僕が、ちょっと顔を歪ませているとライルが、村長が光り輝いて見えますぜ、なんて賛辞を言ってきた。ライルもお世辞を言えるようになったかと思っていたが、周りの新郎連中も同じようなことを言ってきた。原因はこの服にあったのだ。性懲りもなくカリスマ+ の特性を付与していたみたいだ。

 なんとか平常に保ちつつ、式が始まるのを待った。すると、ルドが待機室に入ってきた。

 「やあ、ロッシュ。おめでとう。マリーヌがどうしても今日来たいと言うので連れてきたんだ。どうしても、マーガレットのお祝いしたいそうだ。そのせいで、数日前から結構無理して仕事をこなしていたから、体調を崩さなければいいが。これからは、公国を継続するために子供をたくさん産むのが仕事だと思えよ」

 マリーヌも来ているなら、一緒に式に参加していけばいいのに。指輪も渡したことだしさ。僕は、それとなくルドに言うと、断られてしまった。

 「私もそれは考えたさ。しかし、ラエルの街を任せられている身としては、今は街を少しの時間も離れるわけにはいかないのだ。新造の街だけあって、トラブルも多い。それはマリーヌとも相談して決めたことだ。もし、来年もあるのなら、そのときに参加させてもらうよ」

 実は、この祭りには街の住民は参加していない。あくまでも村の祭りとしているからだ。おそらく、ルドはその辺りの事情も考慮して、参加を見送ったのだと話しぶりから、そう感じた。街はまだまだ祭りが出来るような雰囲気ではないようなので、せめて酒だけでも送っておくか。

 「そうか。村から街に祝い酒を送らせてもらうよ。皆の分とまではいかないかもしれないが」

 ルドは、すごく嬉しかったみたいで、僕の手を握って感謝を述べて、そのまま待機場を後にした。ルドに少しでも報いるためにも、来年は盛大に祝いたいものだ。それまでに、正式な街の代官を決めなければな。

 外は大いに賑わい始めていた。どうやら、酒が振る舞われ始めたようだ。僕はライルの方をチラッと見ると、握りこぶしを作って緊張して表情で、俯いていた。ライルも緊張するのだなと、考えていると、僕達の待機場にも樽で酒が持ち込まれた。式の前に飲むのはどうかと思っていたが、隣りに座っていたライルがまっ先に酒を飲み始めていた。それに続けと、新郎達が一斉に飲み始めてしまった。酒で一気に緊張感が解けたのか、さっきまで静かだった待機場が一気に賑やかになっていった。

 だんだんと酒を飲む勢いが増してきたのか、待機場に酒気が漂い始めていた。ライルも少しで止めればいいのに、注がれるままに飲み続けてしまい、ついには眠りこけてしまう者まで出始めていた。流石にこれはまずいと思い、僕が立ち上がり、皆を止めに入ろうとしたところで式の始まりを告げにやってきた者が待機場に入ってきた。係りの者は待機場に漂う酒気に顔を歪ませながら、式場の方に案内をし始めた。素面の者から、酩酊状態の者も様々だが、嫁となる人のことを想像して、歯を食いしばって気丈に振る舞おうとしていた。僕と数人を除き、フラフラと歩きながら会場に向かった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...