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第115話 オリハルコン
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僕達はスタシャに会いに錬金工房に向かっていった。アウーディア石を手に入れたので、今後の状況をどうするべきかを相談するためだ。石に関連する情報を一番持っているのはスタシャだ。この危機敵状況では、彼女の知恵はかなり重要なものになっている。
ミヤと共に錬金工房にたどり着くと、ホムンクルスのアルビノが出迎えてくれた。アルビノが出迎えてくれるのは珍しいことだ。スタシャに何か心境の変化があったのか? まぁいいか。アルビノの案内で屋敷に入ると、スタシャがわざわざ出むかえにやってきた。やっぱり、変だ。スタシャはこれ以上ないほどの笑顔で、僕の帰りをしつこく喜んでいた。なんなんだ? この違和感は。
それからも、僕達を席に座らせ、自ら僕達にお茶を入れてくれた。こんなことを初めてのことだ。それから、すっと手を僕の方に出してきた。今までの歓待ぶりを見ると、握手を求めているのだと感じ、スタシャの小さな手を握ろうとすると、思いっきり払いのけられた。
「何を勘違いしているのだ。お前の手など触りたくないわ。よいから、早く出さないか!!」
僕は何のことかさっぱり分からなかった。アウーディア石のことかと思ったが、ぱっと出せるものでもないし、ここには持ってきていない。僕は首を傾げていた。
「焦れったいな。オリハルコンだよ。持っているんだろ? 私にはホムンクルスの得た情報は筒抜けなんだ。いいから、早く出してくれ。オリハルコンという言葉を聞いてから、私は狂いそうになっているんだ。私のことが大事なら、後生だから」
なにやら、念仏を唱えるように手をスリスリと擦り合わせ始めた。ここまで言われたら、流石に出さないわけにはいかないな。といっても、全部を出す必要はないだろう。僕はカバンの中から爪ほどの大きさのオリハルコンを出し、スタシャの手に届くところにまで持っていった。スタシャは僕の手を強引に開き、中の小粒のオリハルコンを摘み、走って部屋を出ていってしまった。僕達は、仕方がなく、スタシャの後を追うことにした。
魔法陣が展開している部屋にスタシャがいた。スタシャは魔法陣の上に立ち、先程の小粒のオリハルコンとアウーディア石のかけらを用いて錬金術を使おうとしていた。スタシャがなにやら詠唱を唱えると、またたく間に石が液状の物体に変化していった。スタシャはそれを瓶に入れて、僕に手渡してきた。
「このオリハルコンとその瓶と交換しようではないか。決して、ロッシュに悪い話ではない。これだけのオリハルコンがあれば、その瓶程度であれば何本だって作れる。それにしても、オリハルコンとはここまで素晴らしいものだったとはな。もっと早く、ロッシュに出会っておけば良かった」
スタシャが一人で話を進めているので、僕は話を遮り、この瓶が何なのか問いただした。
「相変わらず、勘の悪いやつだな。アウーディア石から作っているんだ。土壌復活剤に決まっているではないか。それも前のとは違うぞ。1000倍近い効果を持っているぞ。この村なら、その一瓶で全体に効力を及ぼすことが出来るだろうよ。もっとも持続時間は数カ月だろうがな」
「この土壌復活剤を大量に生産できると? 信じられないな」
「信じなくても良い。それが事実だ。しかし、まぁ、それはまだ必要なかろう。聞いた話では、かなり大きな石を見つけたのだろ? だったら、ラエルの街は豊かな土壌に戻っているのではないか? もっとも、その石で王領の土壌を元に戻そうとするのだから、すぐに力を失ってしまうだろうがな」
ちょっと待て。僕は大きな勘違いをしていた。石の効力は、この村とラエルの街に限定されるものだと勝手に思っていたが、スタシャの言う通り、効力は街を飛び越していっても不思議ではないんだよな。せっかく、あの大きさのものを手に入れたのに、効力がいくらも続かないんだったら、なにも現状が変わっていないってことじゃないか。
「石の効力を限定する方法を知らないか。村とラエル街だけに及ぶ方法を知りたいんだ」
スタシャは僕の質問に呆れたような顔していた。
「私が何もかも知っていると思うな。そもそも石は神から与えられて、初代様がその力を使って建国したことになっている。どうやって石を手に入れたとか、どうやって石を使ったとか一切記されていないのだ。私が知るわけ無いだろう。知っているとしたら……」
「知っているとしたら?」
「神様くらいだろう」
僕は、絶望してしまった。神様なんかに会えるわけがないだろう。一度だって、神様なんて見たこと……ん? 待てよ。僕は会っているぞ。婆さんだ。確か、婆さん、自分のこと女神って言ってなかったか? 女神って神様だよな? もう一度、あの場所に行けば会えるんじゃないか? でも、あの場所って死なないと行けないんだよな。死ぬわけにはいけないし、どうしよう……
そういえば、婆さん、最後になんか言っていなかったか? 婆さんの御神体を崇めれば、土地を豊かにすると言ってなかったか? つまり、婆さんがこの世界に介入して来るってことじゃないか? その時、会えるんじゃないか? ちょっと無理やり過ぎるか。でも、やるだけやってみよう。ダメだったら別の方法を考えれば良いんだ。
「ちょっと、試したいことがあるんだが、この世界には女神がいるか?」
「なんだ? 急に。神様の話をしだしたから、女神に会いに行こうというのか? 人間、追い込まれると碌なことを考えないな。ロッシュよ。現実を見ろ」
くっ!! 婆さんだが、少女に現実を悟らされるとは、心にグサッと刺さる。
「まぁ、そんな顔をするな。神頼みをするのもいいだろう。確かに、この世界には女神を祀る風習がある。実際いるかどうかは知らんが……貴族の家だったら一体や二体くらい御神体があるんじゃないか?」
それを聞いて、すぐに錬金工房を飛び出し、屋敷に向かった。ミヤも僕が神頼みに必死になっている姿を見て、すこし哀れそうに僕を見ていた。僕は、この視線に耐え、婆さんに会うのを一新に願いながら、走っていった。屋敷についた僕は、御神体を探すべく、屋敷中を探し回った。どこにもない……僕が途方に暮れていると、マグ姉がこちらに近付いてきて、一体の像を持ってきた。僕がそれを受け取り、見ると神聖さを感じる表情をしている女性が象られていた。
「ロッシュが探していたのはこれかしら。この世界で女神像といえば、ロッシュが手にしているものよ」
これが……やっと手に入れた。しかし、どこにあったのだ? 屋敷中を探したはずなのに。マグ姉が言うには、執務室の机に置かれていたらしい。む……たしかにこの像、あったな。なんで気づかなかったんだ。
僕は、像を握って祈りを捧げた。会えることを願って……しかし、何も変化は訪れなかった。ダメだったか。
「ロッシュ。なにしているのよ?」
僕が、この像をご神体として村に置きたいのだと言うと、マグ姉が、それなりに儀式をしないとダメよといい、すぐにゴードンに手配をしてくれた。
ミヤと共に錬金工房にたどり着くと、ホムンクルスのアルビノが出迎えてくれた。アルビノが出迎えてくれるのは珍しいことだ。スタシャに何か心境の変化があったのか? まぁいいか。アルビノの案内で屋敷に入ると、スタシャがわざわざ出むかえにやってきた。やっぱり、変だ。スタシャはこれ以上ないほどの笑顔で、僕の帰りをしつこく喜んでいた。なんなんだ? この違和感は。
それからも、僕達を席に座らせ、自ら僕達にお茶を入れてくれた。こんなことを初めてのことだ。それから、すっと手を僕の方に出してきた。今までの歓待ぶりを見ると、握手を求めているのだと感じ、スタシャの小さな手を握ろうとすると、思いっきり払いのけられた。
「何を勘違いしているのだ。お前の手など触りたくないわ。よいから、早く出さないか!!」
僕は何のことかさっぱり分からなかった。アウーディア石のことかと思ったが、ぱっと出せるものでもないし、ここには持ってきていない。僕は首を傾げていた。
「焦れったいな。オリハルコンだよ。持っているんだろ? 私にはホムンクルスの得た情報は筒抜けなんだ。いいから、早く出してくれ。オリハルコンという言葉を聞いてから、私は狂いそうになっているんだ。私のことが大事なら、後生だから」
なにやら、念仏を唱えるように手をスリスリと擦り合わせ始めた。ここまで言われたら、流石に出さないわけにはいかないな。といっても、全部を出す必要はないだろう。僕はカバンの中から爪ほどの大きさのオリハルコンを出し、スタシャの手に届くところにまで持っていった。スタシャは僕の手を強引に開き、中の小粒のオリハルコンを摘み、走って部屋を出ていってしまった。僕達は、仕方がなく、スタシャの後を追うことにした。
魔法陣が展開している部屋にスタシャがいた。スタシャは魔法陣の上に立ち、先程の小粒のオリハルコンとアウーディア石のかけらを用いて錬金術を使おうとしていた。スタシャがなにやら詠唱を唱えると、またたく間に石が液状の物体に変化していった。スタシャはそれを瓶に入れて、僕に手渡してきた。
「このオリハルコンとその瓶と交換しようではないか。決して、ロッシュに悪い話ではない。これだけのオリハルコンがあれば、その瓶程度であれば何本だって作れる。それにしても、オリハルコンとはここまで素晴らしいものだったとはな。もっと早く、ロッシュに出会っておけば良かった」
スタシャが一人で話を進めているので、僕は話を遮り、この瓶が何なのか問いただした。
「相変わらず、勘の悪いやつだな。アウーディア石から作っているんだ。土壌復活剤に決まっているではないか。それも前のとは違うぞ。1000倍近い効果を持っているぞ。この村なら、その一瓶で全体に効力を及ぼすことが出来るだろうよ。もっとも持続時間は数カ月だろうがな」
「この土壌復活剤を大量に生産できると? 信じられないな」
「信じなくても良い。それが事実だ。しかし、まぁ、それはまだ必要なかろう。聞いた話では、かなり大きな石を見つけたのだろ? だったら、ラエルの街は豊かな土壌に戻っているのではないか? もっとも、その石で王領の土壌を元に戻そうとするのだから、すぐに力を失ってしまうだろうがな」
ちょっと待て。僕は大きな勘違いをしていた。石の効力は、この村とラエルの街に限定されるものだと勝手に思っていたが、スタシャの言う通り、効力は街を飛び越していっても不思議ではないんだよな。せっかく、あの大きさのものを手に入れたのに、効力がいくらも続かないんだったら、なにも現状が変わっていないってことじゃないか。
「石の効力を限定する方法を知らないか。村とラエル街だけに及ぶ方法を知りたいんだ」
スタシャは僕の質問に呆れたような顔していた。
「私が何もかも知っていると思うな。そもそも石は神から与えられて、初代様がその力を使って建国したことになっている。どうやって石を手に入れたとか、どうやって石を使ったとか一切記されていないのだ。私が知るわけ無いだろう。知っているとしたら……」
「知っているとしたら?」
「神様くらいだろう」
僕は、絶望してしまった。神様なんかに会えるわけがないだろう。一度だって、神様なんて見たこと……ん? 待てよ。僕は会っているぞ。婆さんだ。確か、婆さん、自分のこと女神って言ってなかったか? 女神って神様だよな? もう一度、あの場所に行けば会えるんじゃないか? でも、あの場所って死なないと行けないんだよな。死ぬわけにはいけないし、どうしよう……
そういえば、婆さん、最後になんか言っていなかったか? 婆さんの御神体を崇めれば、土地を豊かにすると言ってなかったか? つまり、婆さんがこの世界に介入して来るってことじゃないか? その時、会えるんじゃないか? ちょっと無理やり過ぎるか。でも、やるだけやってみよう。ダメだったら別の方法を考えれば良いんだ。
「ちょっと、試したいことがあるんだが、この世界には女神がいるか?」
「なんだ? 急に。神様の話をしだしたから、女神に会いに行こうというのか? 人間、追い込まれると碌なことを考えないな。ロッシュよ。現実を見ろ」
くっ!! 婆さんだが、少女に現実を悟らされるとは、心にグサッと刺さる。
「まぁ、そんな顔をするな。神頼みをするのもいいだろう。確かに、この世界には女神を祀る風習がある。実際いるかどうかは知らんが……貴族の家だったら一体や二体くらい御神体があるんじゃないか?」
それを聞いて、すぐに錬金工房を飛び出し、屋敷に向かった。ミヤも僕が神頼みに必死になっている姿を見て、すこし哀れそうに僕を見ていた。僕は、この視線に耐え、婆さんに会うのを一新に願いながら、走っていった。屋敷についた僕は、御神体を探すべく、屋敷中を探し回った。どこにもない……僕が途方に暮れていると、マグ姉がこちらに近付いてきて、一体の像を持ってきた。僕がそれを受け取り、見ると神聖さを感じる表情をしている女性が象られていた。
「ロッシュが探していたのはこれかしら。この世界で女神像といえば、ロッシュが手にしているものよ」
これが……やっと手に入れた。しかし、どこにあったのだ? 屋敷中を探したはずなのに。マグ姉が言うには、執務室の机に置かれていたらしい。む……たしかにこの像、あったな。なんで気づかなかったんだ。
僕は、像を握って祈りを捧げた。会えることを願って……しかし、何も変化は訪れなかった。ダメだったか。
「ロッシュ。なにしているのよ?」
僕が、この像をご神体として村に置きたいのだと言うと、マグ姉が、それなりに儀式をしないとダメよといい、すぐにゴードンに手配をしてくれた。
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