爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第106話 ジャガイモの収穫と街道監視計画 後半

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 「ただ、条件を付けさせてもらうが……」

 ルドの顔に少し緊張が走る。ルドの元部下たちは皆貴族の出がほとんどだ。こう言っては何だが、亜人に対して少なからず偏見が残っているし、知識が乏しい者が多い。調査隊として結成しても、満足の行く結果を得ることは難しいだろう。そうなると、同行する者を選ぶしかないな。

 「ルドの言うように主力はルドの部下で構成することにしよう。他に、農業の知識に長けている者と物資に詳しい者を付けてもらうことになるな。それと、部隊の指揮をするものが必要だ。ルドにはそれを頼みたいが、どうだ?」

 ルドは少し浮かない顔をしながら、頷いた。僕は、何か気になることがあるのか? と尋ねると、私が長期間、村を留守にするとマリーヌがなんと言うか……なんて恥ずかしながら答えていた。こっちまで恥ずかしくなるわ。

 「マリーヌが望むなら一緒に行くと良い。女性がいれば、何かと助かることも多いだろう。僕も村作りをする時、エリスがそばにいてくれたおかげで随分と助けられたものだ。ただ、風紀だけは乱すようなことはするなよ」

 そういうと、ルドは苦笑いを浮かべながら、ああ、と頷いた。ミヤは、相変わらずトマトジュースを飲んでいた。僕は、ミヤに何か意見はないかと聞くと、特にない、とにべもなく答えてきた。僕はミヤの眷属を使うことをミヤに相談した。街道から村に最短で移動する場合、魔の森を通る必要がある。その場所に、ミヤの眷属を配置したいと考えていたのだ。ただ配置するだけでは面白くないので、魔の森の魔獣を飼いならすための施設を作ろうと考えていた。ライルも言っていたが、魔獣はそれだけで人間にとって脅威となる。その魔獣が、こちらの戦力として使えるならば人数の違いを覆えすことが出来るかもしれない。そのための実験場を作ってみたいと思ったのだ。それについてミヤに打診すると、ミヤは考えるような仕草をして、了承してくれた。

 「だったら、魔酒を多く作ると良いわよ。魔酒にはね、魔獣の興奮を抑える効果があるの。魔界では魔獣を家畜化するときにやる方法だって聞いたことがあるわ。ロッシュの従属魔法もいいんだけど、それだとロッシュの負担が多くなるだけだもん。なんとか、魔法に頼らないで出来る方法を模索するべきだわ」

 ミヤが嬉しいことを言ってくれる。たしかに、従属魔法は負担が大きい。魔獣となると余計に感じる。ただ、魔酒はミヤの大好物だ。もしかしたら、魔酒を作らせるために嘘を言っているのではないかとちらっと思ったが口に出さないでいた。とりあえず、酒造を任せているスイに相談してみよう。酒蔵の建設も視野にいれないといけないな。

 今回の決定で、農作業に従事できる人はかなり減ってしまうだろう。調査隊の結成、見張り役、鍛冶工房やレンガ工房への人材の派遣が必要となる。農業に魔牛を導入してあるので、今以上の拡大はまだ余地はあるが、もう少し人口が欲しいところだ。それは調査隊に任せることになるが。

 僕達は、一旦解散をし、壁を建設するためにライルとゴードンには残ってもらい、予定地の選定をするために街道を進むことにした。街道を西に進むとライルの街に出るのだが、魔の森を迂回するように北に大きく曲がっている。北には山岳地帯が広がっているため、街道は山岳地帯を均して作られているため、道の両側が切り立った壁になっている箇所が何箇所もあった。その村よりの場所を壁設置の場所に決めた。壁は500メートル程の長さがあれば、進路を妨害することが出来る。崖の上を移動することも出来なくはないが、大人数で移動することは難しいと思われるので、崖の上には壁は設置することはないと判断した。

 壁の候補地を決めたときに、ゴードンには大量の鉄を調達してくるように頼んでおいた。壁の内部に鉄の壁を入れ、その周囲を土で覆い、漆喰で固めるようにすることにした。これなら、どんな攻撃を受けても壁が簡単に崩れることはないだろう。壁の上は小さな小屋と物見櫓を設置し、休憩と遠くを眺められるようにする予定だ。街道を遮断するように設置するため、扉を設置し、街道通行を邪魔しないようにしなければならない。といっても、現在街道を利用して村に来る人などはほぼいないのだが……。

 後日、僕の土魔法で壁を設置し、高さ10メートルを越す大きな壁を作ることが出来た。ライルもゴードンもこんな大きな壁を想像していなかったので、鉄がいくらか不足する事態となったが、なんとか間に合わせることが出来た。

 「ロッシュ村長。これはちょっとやり過ぎなのではないですか? 用心に越したことはないですが、これは王都の城壁より立派なものですぞ。これを維持管理するとなると、少し頭が痛くなりますよ」

 ゴードンからは意外なお説教になってしまった。僕はそんなつもりはなかったが、やり過ぎだったのだろうか。いや、何かあったら大変だ。僕は、なんとかゴードンを説得して、渋々納得してもらった。ライルは結構張り切っていた。やっと、自警団らしい仕事が出来るって喜んでいた。まぁ、自警団って大抵は雑用しかやらせてないからな。周りからは、雑用団って愛称を付けられていたしな。

 物見櫓は、壁の上の他、村までの間に一キロメートルずつ設置することにし、後で鐘を取り付けることにした。これで、壁で敵を発見し鐘を鳴らせば、またたく間に村に伝えることが出来る。鍛冶工房に鐘の製造を依頼し、併せて、壁の上から攻撃できるような兵器の開発を依頼した。また、武器の製造も可能な限り頼むと、さすがにカーゴもげんなりとした顔をしていた。僕は、人数を補充することを話すと、すこしは喜んでくれたが、即戦力となる者がいないので、一から教育しなければならないという厳しい現実があるため、手放しというわけにはいかなかった。

 レイヤにも声をかけた。最近、ようやくルドが連れてきた900人分の家屋を造り終えそうな段階に来ていたので、新たにレンガ工房の建築を頼むことにした。

 「そういえば、成人式の時はいろいろとあったから直接はお祝いを言ってやれてないね。おめでとう。これで、村長も大人の仲間入りだね。そういや、結婚もするんだっけか。私よりもどんどん先に行っちゃうんだね。村長達を見ていると、私も身を固めてもいいかなって少し思うようになってきたよ」

 「ありがとう。レイヤには本当に世話になりっぱなしで、恋愛をするような時間を与えられていないのは申し訳ないと思っている。レイヤには幸せになってもらいたいから、なんでも協力をさせてもらうぞ」

 「だったら、少し人を増やしてくれるとありがたいね。うちの子たちも少し疲れが出始めているからね。休みを与えてやりたいんだよ。ずっと欲しいってわけじゃないから、少しの期間融通の聞く人が欲しいかな。力仕事が出来る人だったらいいな」

 僕は、頷いた。こうゆう時は、ライルに頼むのが良いな

 「それにしても、やっとレンガ工房を作れるのかい。レンガの在庫が心許なかったからお願いに行こうとしていたんだけど、良かったよ。だけど、私は工房の作り方なんて知らないよ。土を焼いて作るんだから鍛冶工房に似ているとは思うんだけど。こればかりは試行錯誤を繰り返しながら作るってことになるから時間がかかっちゃうけど、それでいいかい?」

 「それで構わない。ゴードンには話を通してあるから、必要なものがあったら言ってくれ。何でも用意するからな。まぁ、期待はしないでもらいたいがレンガ工房の知識があるものがいるかもしれないから、いたらレイヤのもとに送るからな。よろしく頼むぞ」

 その後、ライルに頼みに行くと自警団は街道の監視のため出払っているから、自分が行くと言ってレイヤの手伝いを率先してやってくれることになった。それが、レイヤとライルの関係を深めていくことになったようだ。
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