爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第93話 染料素材集めとゴブリン②

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 「それだけが分かれば、十分だ。使えないのは残念だが……染色の素材というはなんとかなりそうなものなのか?」

 「それでしたら、なんとかなると思いますよ。大抵は魔の森で採取できるものですから。ただ、青と緑だけは、特定の鉱物なので採掘を必要とするため、難しいかもしれません。場所もわからないですし、採掘の技術が……」

 ふと、僕の方を見る彼女。僕が、採掘に行けば良いのか……よし!! シラー、行くぞ!! ちょっと離れたところから、はぁ~いと気の抜けた返事が返ってきた。すると、トマトジュースに夢中だったミヤが間に入ってきた。

 「えっ⁉ これから行くの? それは流石にダメなんじゃないの? 皆、心配するよ」

 「心配するな。すぐに帰ってくるよ。畑もあるし、すぐに見つからなかったら、戻ってくるから。皆には、それとなくうまく伝えておいてよ」

 僕の熱意に押されて、ミヤは黙ってしまった。これは、了承したと受け取って良いんだよな? 染色が出来る彼女から、いろいろと素材と特徴などについて事細かく教えてもらった。殆どは、シラーが理解していたので、なんとかなりそうだ。シラーの他に、植物や魔獣に詳しい者も同行することになった。採取隊の結成だ。といっても、外は真っ暗だ。話し込んでいたせいで、外を出歩くのは危険な時間帯になってしまっていた。

 とりあえず、今日は魔牛牧場で寝泊まりするしかないようだ。早朝にミヤに屋敷に走ってもらえば、大丈夫だろう……多分。初めて、牧場に泊まることになったが、よく考えてみれば、ここには男一人なんだよな。周りは、美女だらけ……大丈夫だろうか。

 仕事が終わった後の吸血鬼達は、隙の多い格好をしているのが多く、うっかりすると、色々と見えてしまうことがある。彼女たちは何も気にしていない様子なので、僕も平常心を保っているふりをしたが、内心では、少々困ったことになっていた。それでも、一人でベッドに入り込み、明日に備えて早く寝ることにした。

 夜中に、ミヤがこっそりと僕のベッドに入り込んできたのに、気付いたが、何もしてくる様子がないのでそのまま寝ることにした。起きると、目の前にはすやすやと寝息をたてているミヤがいた。僕はミヤのあまりにも可愛いので、ギュッと抱きしてから、ベッドを出た。日が出始めた頃にも関わらず、何人かは起きていて、朝食の支度などをしていた。

 僕とシラーと他の吸血鬼達は、準備を済ませるとすぐに出発した。起きていた吸血鬼には、ミヤ宛のメモを託した。魔の森の奥にどんどん向かっていく。僕にとっては奥に行くのは初めてだ。ミヤの眷属は、狩りのために意外と奥の方まで行っているらしく、この辺りは庭みたいなものだと言って、進んでいく。途中途中で、植物を採取したり、魔獣の死骸から角や骨を採取したりと、順調に素材を集めていった。しかし、肝心の鉱物がなかなか発見できないでいた。

 森を進んでいくと、岩がむき出しになった荒涼とした場所に出た。随分と高い場所のようだ。眼下に大森林が広がっており、その先も見えないほどだ。どれだけ広がっているか見当もつかない。ここからは、大森林に下っていくしかないようだな。崖の縁に沿って歩いていき、下っていった。途中で、切り立った崖に大きな穴が開いていた。大人一人くらいの高さしかないが、幅は数人が横に並んでも余裕があるほどだ。穴は、誰かに掘られたような傷がたくさんあった。シラーは、少し緊張した顔になっていた。

 「この穴は、おそらくですがゴブリンの巣だと思います。今も使われているか分かりませんが、なぜか、ゴブリンの巣は鉱山に作られることが多いのです。この巣を潜れば、鉱脈にぶつかる可能性が高いと思いますが。どうしますか?」

 ゴブリンか。聞いたことがないな。どういう魔獣なのかを聞いた。子供くらいのサイズで、二足歩行。手先が器用で、道具を使って、穴を掘ったり、狩りをしたりしているらしい。女王がいて、全ての命令は女王が出しているため、ゴブリンを退治したいのなら、単体では非常に脆弱な存在だが、数がとにかく多いため、女王を倒すことが重要らしい。普段はおとなしい性質だが、巣に入ってきたものには容赦なく攻撃を仕掛けてくるという。

 ん~この人員では回避したほうが良さそうだな。鉱脈というのは気になるが……。僕達は、踵を返し外に出ようとすると、外には大量のゴブリンが入り口にいた。言語があるのか、なにかをボソボソと話している。僕はゴブリンがどう動くのか、全く分からなかったので、しばらく静観してしまった。あとでそれが悪かったようだ。ゴブリンをかき分け、無理矢理にでも外に出なければいけなかったみたいだ。中に立ち止まった僕達を敵とみなして、攻撃を仕掛けてきた。100匹近いゴブリンが、僕達に押し寄せてきた。しかし、狭い洞窟の中なので、精々四匹くらいしか僕達を攻撃できない。

 ミヤの眷属達は、襲いかかるゴブリンを薙ぎ払うだけで、ゴブリンは壁にぶつかり気絶していく。徐々にゴブリンの数が減ってきたと思ったが、外から次々とゴブリンが湧くように出てくる。なんとか、撃退をしていったが、徐々に張り付いてくるゴブリンが増えてきて、動きにくくなっていた。

 シラーが洞窟の中に逃げましょう、と言ってきたのでそれに従った。走りながら、僕はシラーに中に入って大丈夫なのか? と聞いた。

 「外にあれだけの数のゴブリンがいるということは、この巣は空っぽのはず。巣は複雑に入り組んでいるので、どこかに潜んでいればゴブリンを回避することが出来るはずです」

 洞窟の中を奥へ奥へと走っていった。すると、広くひらけた空洞に行き着いた。空洞内は、まるで星空のように天井がキラキラと煌めいていた。シラーが恍惚とした表情で、天井を見つめていた。シラーに聞くと、この全てが魔宝石で出来ているようだ。やはり、ゴブリンの巣は鉱脈に繋がっているというのは本当のようだった。シラーが壁の方に向かうと、ガリッと魔宝石を取り出した。頭くらいある巨大なものだ。これこそが、今回探していた魔宝石だった。さらに、目的の魔法石を次々と採掘していき、目的を全て達成することが出来た。さらに、物色をしていると、奥の方に仄かに赤く輝く岩があった。シラーが興奮して、その岩の匂いを嗅ぎ始めた。ん~美人なのに、この絵面は少し引くな……

 「ロッシュ殿。これ、ミスリルですよ。魔界でも、なかなか手に入らない貴重な金属です。上級に属するもので、一部の大貴族でしか手に入らない品物なんですよ。本当に運が良いですね。是非持って帰りましょう」

 そんな貴重なものが手に入るなんて、偶然にも巣に入り込んで正解だったな。僕は、岩に土魔法をかけて、ミスリルのみを抽出し、インゴットに精製した。数本程度しかなかったが、これでもかなりの量らしい。本当に運が良かった。僕の魔法で岩が無くなると、しゃがみこんでようやく通れるような穴が姿を現した。中を覗き込んでみると、ここよりも狭いが空洞になっているようだ。そこで、時間を潰せば、ゴブリン達を回避できるだろうと思い、中に入り込んだ。
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