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第88話 魔牛の導入
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春がついに訪れた。雪が溶け始め、屋外でようやく行動が出来る時期となった。今年から、新たに村で導入したことがある。鋼製の農具に魔牛だ。鋼製の農具は、村人にすぐに受け入れられた。刃が欠けるのが減ったり、伸びたり、曲がったりすることが少なくなったと大変評判となった。問題は、魔牛の導入である。
元々魔牛は性質がおとなしく、人の言うことには逆らう魔獣ではない。そのため、村での導入は簡単に行くものだと思っていたが、性質云々ではなく、存在そのものに畏怖を感じているため、難航していた。なにか、村人たちを安心させるようなものがあればと、常々模索していた。
それが、ついに見つかったのだ。僕の従属魔法だ。この魔法を使えば、僕が指定した命令者の言うことを魔牛が素直に聞くという効果が出る。これがあれば、村人の畏怖はかなり薄れるだろうと思った。そこで、農業に従事する村人を集め、魔牛の実演を兼ねて、畑の耕作を行った。百人で一日かかる場所を三頭の魔牛で一日でやってしまうのだ。村人も大いに感心して、魔牛導入には前向きになってくれていた。しかし、魔牛は恐ろしいものだからと、反対の声を上げる者もいた。
「確かにすごいな。でもよ、魔獣はおっかないって昔から言われてるだ。村に魔獣がいて、大丈夫なもんかな。ロッシュ村長の魔法を疑うわけじゃねぇが、おら怖くてな」
僕は、反対する者を止めたりはせずに好きなように発言を許した。そのうえで、魔牛の導入を賛成してくれるものに魔牛の利用をさせるつもりだった。村人の間で、賛成派と反対派で意見がぶつかり合い、ついに決着を見ることは出来ななかった。僕もこうなるのではないかと思っていたが、魔牛の有用性は村人全員が認めるところだ。あとは、恐怖心をどれだけ克服できるかだが……
「皆のもの、話はだいたい分かった。僕は、魔牛導入は推進したいと思っているが、反対する者に無理に使わせるつもりはない。ただ、僕に時間をくれないだろうか。今年、新たに増やす畑がある。まずは魔牛で使ってみて、それからまた意見を聞きたいのだ。それでいいだろうか」
僕の言い方は少し卑怯な気がしたが、時間を貰わなければ魔牛の良さを伝えることは出来ない。そこだけは、反対派の同意を得ておかなければならない。反対派からは、文句は出なかったので、ホッとした。とはいっても、僕だけで魔牛を使って、畑を耕すなど無理なことである。そのため、賛成派の人達に魔牛の管理を任せ、耕してもらうことにした。
「魔牛の管理は、僕が指名する者に管理を任せたいと思っている。皆でも魔牛を管理できることを知ってもらいたいのだ。もちろん、僕が安全を保証する」
魔牛牧場から、魔牛を十頭ほど借りて、それぞれに世話をする村人をつけ、魔法で命令者に設定した。初めて、魔法をかけられた村人は全員不思議そうにしていたが、村人の出す命令をすべて魔牛が従っていたので、ビックリした様子だった。これについても、逐一反対派の人達の耳に入るようにしておいた。
「これはすごいですね。こんな巨大な魔獣が私の言うことを聞いていますよ。あっ、こんなことまで……私はロッシュ村長を信じているので、安心していますよ。この魔獣をうまく管理して、反対派の意見を変えてみせますよ」
「頼もしい限りだ。僕も魔牛の地位向上のためなら何でも協力するつもりだ。何か、問題があればすぐに言って欲しい。出来る限り、対応させてもらうぞ」
魔牛の導入は、農業革命に近いほど衝撃的だった。100メートル × 100メートルの畑が一日で四枚近くが耕されたのだ。人の手でやれば、100人で三日もかかる仕事をだ。今年、新たに増やす畑は、80枚ある。魔牛で20日耕作を続ければできるだろう。水田もやらなければならないので、魔牛には春の間、ずっと働いてもらわなければならないな。
魔牛は、魔牛牧場から朝一でミヤの眷属達に引っ張ってきてもらって、夕方に戻してもらうことを繰り返すことにした。やはり、魔牛だけあって、魔素のない土地に長時間いると体調を崩してしまい、場合によっては人を傷つける恐れがあると言うので、そのやり方をお願いした。
一ヶ月間、ひたすら魔牛は村人の指示に従い、黙々と作業を続け、ついに目標の畑を耕し終えた。ものすごい達成感を感じる瞬間だった。魔牛も心なしか喜んでくれているように見えた。そのときに、反対派だった面々が畑に来ていた。
「ロッシュ村長!! 私の考えは間違えだったようです。ずっと見ていましたが、魔牛が怖がるような存在でないことがよく分かりました。是非とも村に魔牛を導入して頂きたく、お願い申し上げます。恥ずかしながら、私が一番最後の反対者でした。どうも、年を取るといけませんね。考えをなかなか変えられないものですね」
「なかなか考えを変えられないのはよく分かるぞ。魔牛の利用を理解してくれて本当にありがとう。君のおかげで、この村の農業は大きく変わることが出来るだろう。これからも、農業は変わっていくだろう。その時も気になることがあれば、どんどん言ってくれ。君のように意見を言ってくれる人は貴重だ。よろしく頼むぞ」
「ロッシュ村長。若いのに爺臭いことをいいますね。分かりました。しっかりと意見を言わせてもらいます」
これで、魔牛導入の村の総意を得ることが出来た。
魔牛の管理は、引き続き同じ人に任せることにした。耕す工程を省略できることで、種まきや収穫に多くの村人を割くことが出来るようになり、より大きな面積で作物を栽培することができるようになった。新規の畑も順調に終わらせることが出来たので、従来の畑も魔牛で耕すようになった。畑を耕すのが早く終わらせることが出来たので、水田も去年より40枚増やすことが出来たのだ。
元々魔牛は性質がおとなしく、人の言うことには逆らう魔獣ではない。そのため、村での導入は簡単に行くものだと思っていたが、性質云々ではなく、存在そのものに畏怖を感じているため、難航していた。なにか、村人たちを安心させるようなものがあればと、常々模索していた。
それが、ついに見つかったのだ。僕の従属魔法だ。この魔法を使えば、僕が指定した命令者の言うことを魔牛が素直に聞くという効果が出る。これがあれば、村人の畏怖はかなり薄れるだろうと思った。そこで、農業に従事する村人を集め、魔牛の実演を兼ねて、畑の耕作を行った。百人で一日かかる場所を三頭の魔牛で一日でやってしまうのだ。村人も大いに感心して、魔牛導入には前向きになってくれていた。しかし、魔牛は恐ろしいものだからと、反対の声を上げる者もいた。
「確かにすごいな。でもよ、魔獣はおっかないって昔から言われてるだ。村に魔獣がいて、大丈夫なもんかな。ロッシュ村長の魔法を疑うわけじゃねぇが、おら怖くてな」
僕は、反対する者を止めたりはせずに好きなように発言を許した。そのうえで、魔牛の導入を賛成してくれるものに魔牛の利用をさせるつもりだった。村人の間で、賛成派と反対派で意見がぶつかり合い、ついに決着を見ることは出来ななかった。僕もこうなるのではないかと思っていたが、魔牛の有用性は村人全員が認めるところだ。あとは、恐怖心をどれだけ克服できるかだが……
「皆のもの、話はだいたい分かった。僕は、魔牛導入は推進したいと思っているが、反対する者に無理に使わせるつもりはない。ただ、僕に時間をくれないだろうか。今年、新たに増やす畑がある。まずは魔牛で使ってみて、それからまた意見を聞きたいのだ。それでいいだろうか」
僕の言い方は少し卑怯な気がしたが、時間を貰わなければ魔牛の良さを伝えることは出来ない。そこだけは、反対派の同意を得ておかなければならない。反対派からは、文句は出なかったので、ホッとした。とはいっても、僕だけで魔牛を使って、畑を耕すなど無理なことである。そのため、賛成派の人達に魔牛の管理を任せ、耕してもらうことにした。
「魔牛の管理は、僕が指名する者に管理を任せたいと思っている。皆でも魔牛を管理できることを知ってもらいたいのだ。もちろん、僕が安全を保証する」
魔牛牧場から、魔牛を十頭ほど借りて、それぞれに世話をする村人をつけ、魔法で命令者に設定した。初めて、魔法をかけられた村人は全員不思議そうにしていたが、村人の出す命令をすべて魔牛が従っていたので、ビックリした様子だった。これについても、逐一反対派の人達の耳に入るようにしておいた。
「これはすごいですね。こんな巨大な魔獣が私の言うことを聞いていますよ。あっ、こんなことまで……私はロッシュ村長を信じているので、安心していますよ。この魔獣をうまく管理して、反対派の意見を変えてみせますよ」
「頼もしい限りだ。僕も魔牛の地位向上のためなら何でも協力するつもりだ。何か、問題があればすぐに言って欲しい。出来る限り、対応させてもらうぞ」
魔牛の導入は、農業革命に近いほど衝撃的だった。100メートル × 100メートルの畑が一日で四枚近くが耕されたのだ。人の手でやれば、100人で三日もかかる仕事をだ。今年、新たに増やす畑は、80枚ある。魔牛で20日耕作を続ければできるだろう。水田もやらなければならないので、魔牛には春の間、ずっと働いてもらわなければならないな。
魔牛は、魔牛牧場から朝一でミヤの眷属達に引っ張ってきてもらって、夕方に戻してもらうことを繰り返すことにした。やはり、魔牛だけあって、魔素のない土地に長時間いると体調を崩してしまい、場合によっては人を傷つける恐れがあると言うので、そのやり方をお願いした。
一ヶ月間、ひたすら魔牛は村人の指示に従い、黙々と作業を続け、ついに目標の畑を耕し終えた。ものすごい達成感を感じる瞬間だった。魔牛も心なしか喜んでくれているように見えた。そのときに、反対派だった面々が畑に来ていた。
「ロッシュ村長!! 私の考えは間違えだったようです。ずっと見ていましたが、魔牛が怖がるような存在でないことがよく分かりました。是非とも村に魔牛を導入して頂きたく、お願い申し上げます。恥ずかしながら、私が一番最後の反対者でした。どうも、年を取るといけませんね。考えをなかなか変えられないものですね」
「なかなか考えを変えられないのはよく分かるぞ。魔牛の利用を理解してくれて本当にありがとう。君のおかげで、この村の農業は大きく変わることが出来るだろう。これからも、農業は変わっていくだろう。その時も気になることがあれば、どんどん言ってくれ。君のように意見を言ってくれる人は貴重だ。よろしく頼むぞ」
「ロッシュ村長。若いのに爺臭いことをいいますね。分かりました。しっかりと意見を言わせてもらいます」
これで、魔牛導入の村の総意を得ることが出来た。
魔牛の管理は、引き続き同じ人に任せることにした。耕す工程を省略できることで、種まきや収穫に多くの村人を割くことが出来るようになり、より大きな面積で作物を栽培することができるようになった。新規の畑も順調に終わらせることが出来たので、従来の畑も魔牛で耕すようになった。畑を耕すのが早く終わらせることが出来たので、水田も去年より40枚増やすことが出来たのだ。
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