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第83話 三年目の新年会④
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食堂に戻ると、少し状況が変わっていた。ルドとマリーヌの姿が消え、エリスが酔いつぶれて、リードが介抱していた。ミヤは魔酒、マグ姉はウイスキーで飲み勝負をしていた。僕が戻ると、飲み勝負の手が止まり、ミヤが喜び、マグ姉が突っ伏して悔しがっていた。どうやら、僕が戻るまでに多く飲めたほうが勝ちという勝負をしていたようだ。
勝負が終わっても、ミヤはまた飲み始めた。本当にどんな体をしているのだろうか? 樽の中身も大半がミヤの胃袋に消えていることになるが、ミヤのペースは変わることはなかった。突っ伏していたマグ姉は、顔を上げ、リードに話しかけ始めた。
「リードさん。貴方に聞いておかなければならないことがあるの」
リードは、マグ姉に話しかけられて驚いた様子だったが、マグ姉の方に体を向け、話を聞こうという姿勢になった。
「リードさんは、ロッシュの婚約者になる気はあるのかしら?」
一瞬、時間が止まったような感覚になった。エリスはすやすやと眠っている。癒やされるなぁ~。現実逃避をしてしまった。
「マグ姉、何を言ってるんだよ。リードは……」
僕がリードの方に顔を向けると、顔を赤くして、こちらを見つめていた。あれ、僕が考えているような雰囲気ではなくなっているぞ。
「やっぱりね。鈍いロッシュに教えてあげるけど、リードさんは貴方に好意を持っているのよ。そうでなければ、きっと村には来てないと思うわ。そうでしょ、リードさん」
リードは、マグ姉の言葉に一瞬間をおいてから、頷いた。
「初めて会った時、家具に対して真剣に向き合ってくれて、私を馬鹿にもしないで認めてくれたのが、すごく嬉しくて、ロッシュ殿に興味が湧きました。それから、呪いの騒ぎの時も、自分を犠牲にしてまでも仲間を救ってくれました。私の中で、ロッシュ殿への思いが募り始めて、リリ様に村に行かせてもらえるように頼みました。でも、断られました。それからも思いが募って、気付いたんです。私は、ロッシュ殿とずっと側にいたいのだなと」
僕は、リードの真剣な言葉を聞いて、リードの気持ちにようやく気付いた。
「なら決まりね。ロッシュと婚約しなさい。ロッシュもいいわね?」
僕は……リードのことは嫌いではない。とても美しいし、料理も上手だ。家具も作れるし、性格もいいと思う。こんな女性と結婚できるなら、全てを犠牲にしてもいいと思う人もいるだろう。だけど、まだ、会って間もないのに決めてしまうのは、どうかと思う。他の女性についても同じだけど、もう少し、お互いのことを理解してからでも良いと思うんだ。
僕は、自分の今の気持ちを素直に話した。僕が話を始めると、さっきまで寝ていたエリスはしっかりとした顔になっており、ミヤも飲む手を止めていた。マグ姉が僕の言葉を聞いて、ため息をついた。
「それが、ロッシュの気持ちなら尊重するわ。でもね、早く決断しなさいね」
僕は、真剣に頷いた。僕は正直な気持ちを吐きだせて、スッキリした。これで、どうやらお開きになりそうだった……その時、屋敷の玄関の扉が開く音が聞こえた。数人のエルフが食堂に入ってきて、後ろには、ハイエルフのリリが立っていた。扇情的な衣装が、せっかく落ち着いていた僕の感情が甦り始めていた。
「我が君。今日で、成人となったであろう。妾の方から出向いたゆえ、種を貰いに来たのじゃ」
とんでもない客が来た。リリからは甘い香りが漂い、リードが僕の鼻を布で抑えて吸わないようにしてくれたが、遅かった。僕は自分が興奮してくるのを止めることが出来なかった。エリス、ミヤ、マグ姉は、状況を察し、なんとか止めに入ったが、好転しなかった。僕の意識は、そこでぷつっと途切れ、気づいた時は、朝になっていた。
自分のベッドに横たわっていた僕は、昨日のことを思い出そうとしたが、頭がズキリと痛んだ。ふと、僕が真っ裸であることに気付き、横に誰かいる気配がした。おそるおそるシーツをずらすと、一糸まとわぬ姿のマグ姉とエリスがいた。僕は、動揺して、その場から逃げ出した。
整理しようとしても、何も思い出すことが出来ない。僕はとりあえず水を飲もうと食堂の方に向かった。テーブルには、ミヤとリードが座って、朝食を摂っていた。ミヤは酒を飲みながらだけど。彼女らなら事情を知っているはずだ。ミヤが少し恥ずかしそうに、僕におはよう、と言ってきた。
「昨晩は随分と張り切ったわね。皆、あなたのおかげで、女にされてしまったわ。この意味、分かるわよね? 責任をとってもらうからね」
なんてことだ……僕はリードの方を見ると、彼女は顔を伏せていた。
「その……昨晩はすごかったです。リリ様もすごくお喜びでした。もちろん……わたしも。リリ様は上機嫌で日が昇る前に里に戻っていきました」
リードまでも手にかけていたのか……リリが来てからの記憶がないのはなぜだ?
「言いづらいのですが、ロッシュ殿が本気にならないと思ったリリ様が、エルフの秘薬を使って、強制的に興奮状態にさせたのです。私は、なんとか止めようとしましたが、全て遅かったのです。本当にすみませんでした」
リリが全ての原因か……不思議と怒りとか湧かないな。ああ、怒りが一周回るとこうゆう風になるのか。そんなことより、この事態をどうするべきか。婚前に僕は彼女らを穢してしまったのだ。責任のとり方は一つしかないだろうな。
僕は、エリスとマグ姉を起こして、服を着させ、ミヤとリードを呼んで、皆の前で今回のことを謝罪し、責任を取ることを誓った。
……エリス、ミヤ、マグ姉、リードと婚約した。皆、喜んでくれて、そんな姿を見て僕はこれでも良かったのかなと思った。それでも、リリに感謝とかする気にはなれない。今度、どうしてくれようか……
とんでもない新年会になってしまったな
因みに……マリーヌとルドは、マリーヌの部屋で、紙に埋もれて仲良く寝ていた。多分だけど、そういう行為はなかったと思う……多分ね。
勝負が終わっても、ミヤはまた飲み始めた。本当にどんな体をしているのだろうか? 樽の中身も大半がミヤの胃袋に消えていることになるが、ミヤのペースは変わることはなかった。突っ伏していたマグ姉は、顔を上げ、リードに話しかけ始めた。
「リードさん。貴方に聞いておかなければならないことがあるの」
リードは、マグ姉に話しかけられて驚いた様子だったが、マグ姉の方に体を向け、話を聞こうという姿勢になった。
「リードさんは、ロッシュの婚約者になる気はあるのかしら?」
一瞬、時間が止まったような感覚になった。エリスはすやすやと眠っている。癒やされるなぁ~。現実逃避をしてしまった。
「マグ姉、何を言ってるんだよ。リードは……」
僕がリードの方に顔を向けると、顔を赤くして、こちらを見つめていた。あれ、僕が考えているような雰囲気ではなくなっているぞ。
「やっぱりね。鈍いロッシュに教えてあげるけど、リードさんは貴方に好意を持っているのよ。そうでなければ、きっと村には来てないと思うわ。そうでしょ、リードさん」
リードは、マグ姉の言葉に一瞬間をおいてから、頷いた。
「初めて会った時、家具に対して真剣に向き合ってくれて、私を馬鹿にもしないで認めてくれたのが、すごく嬉しくて、ロッシュ殿に興味が湧きました。それから、呪いの騒ぎの時も、自分を犠牲にしてまでも仲間を救ってくれました。私の中で、ロッシュ殿への思いが募り始めて、リリ様に村に行かせてもらえるように頼みました。でも、断られました。それからも思いが募って、気付いたんです。私は、ロッシュ殿とずっと側にいたいのだなと」
僕は、リードの真剣な言葉を聞いて、リードの気持ちにようやく気付いた。
「なら決まりね。ロッシュと婚約しなさい。ロッシュもいいわね?」
僕は……リードのことは嫌いではない。とても美しいし、料理も上手だ。家具も作れるし、性格もいいと思う。こんな女性と結婚できるなら、全てを犠牲にしてもいいと思う人もいるだろう。だけど、まだ、会って間もないのに決めてしまうのは、どうかと思う。他の女性についても同じだけど、もう少し、お互いのことを理解してからでも良いと思うんだ。
僕は、自分の今の気持ちを素直に話した。僕が話を始めると、さっきまで寝ていたエリスはしっかりとした顔になっており、ミヤも飲む手を止めていた。マグ姉が僕の言葉を聞いて、ため息をついた。
「それが、ロッシュの気持ちなら尊重するわ。でもね、早く決断しなさいね」
僕は、真剣に頷いた。僕は正直な気持ちを吐きだせて、スッキリした。これで、どうやらお開きになりそうだった……その時、屋敷の玄関の扉が開く音が聞こえた。数人のエルフが食堂に入ってきて、後ろには、ハイエルフのリリが立っていた。扇情的な衣装が、せっかく落ち着いていた僕の感情が甦り始めていた。
「我が君。今日で、成人となったであろう。妾の方から出向いたゆえ、種を貰いに来たのじゃ」
とんでもない客が来た。リリからは甘い香りが漂い、リードが僕の鼻を布で抑えて吸わないようにしてくれたが、遅かった。僕は自分が興奮してくるのを止めることが出来なかった。エリス、ミヤ、マグ姉は、状況を察し、なんとか止めに入ったが、好転しなかった。僕の意識は、そこでぷつっと途切れ、気づいた時は、朝になっていた。
自分のベッドに横たわっていた僕は、昨日のことを思い出そうとしたが、頭がズキリと痛んだ。ふと、僕が真っ裸であることに気付き、横に誰かいる気配がした。おそるおそるシーツをずらすと、一糸まとわぬ姿のマグ姉とエリスがいた。僕は、動揺して、その場から逃げ出した。
整理しようとしても、何も思い出すことが出来ない。僕はとりあえず水を飲もうと食堂の方に向かった。テーブルには、ミヤとリードが座って、朝食を摂っていた。ミヤは酒を飲みながらだけど。彼女らなら事情を知っているはずだ。ミヤが少し恥ずかしそうに、僕におはよう、と言ってきた。
「昨晩は随分と張り切ったわね。皆、あなたのおかげで、女にされてしまったわ。この意味、分かるわよね? 責任をとってもらうからね」
なんてことだ……僕はリードの方を見ると、彼女は顔を伏せていた。
「その……昨晩はすごかったです。リリ様もすごくお喜びでした。もちろん……わたしも。リリ様は上機嫌で日が昇る前に里に戻っていきました」
リードまでも手にかけていたのか……リリが来てからの記憶がないのはなぜだ?
「言いづらいのですが、ロッシュ殿が本気にならないと思ったリリ様が、エルフの秘薬を使って、強制的に興奮状態にさせたのです。私は、なんとか止めようとしましたが、全て遅かったのです。本当にすみませんでした」
リリが全ての原因か……不思議と怒りとか湧かないな。ああ、怒りが一周回るとこうゆう風になるのか。そんなことより、この事態をどうするべきか。婚前に僕は彼女らを穢してしまったのだ。責任のとり方は一つしかないだろうな。
僕は、エリスとマグ姉を起こして、服を着させ、ミヤとリードを呼んで、皆の前で今回のことを謝罪し、責任を取ることを誓った。
……エリス、ミヤ、マグ姉、リードと婚約した。皆、喜んでくれて、そんな姿を見て僕はこれでも良かったのかなと思った。それでも、リリに感謝とかする気にはなれない。今度、どうしてくれようか……
とんでもない新年会になってしまったな
因みに……マリーヌとルドは、マリーヌの部屋で、紙に埋もれて仲良く寝ていた。多分だけど、そういう行為はなかったと思う……多分ね。
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