爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

文字の大きさ
上 下
84 / 408

第83話 三年目の新年会④

しおりを挟む
 食堂に戻ると、少し状況が変わっていた。ルドとマリーヌの姿が消え、エリスが酔いつぶれて、リードが介抱していた。ミヤは魔酒、マグ姉はウイスキーで飲み勝負をしていた。僕が戻ると、飲み勝負の手が止まり、ミヤが喜び、マグ姉が突っ伏して悔しがっていた。どうやら、僕が戻るまでに多く飲めたほうが勝ちという勝負をしていたようだ。

 勝負が終わっても、ミヤはまた飲み始めた。本当にどんな体をしているのだろうか? 樽の中身も大半がミヤの胃袋に消えていることになるが、ミヤのペースは変わることはなかった。突っ伏していたマグ姉は、顔を上げ、リードに話しかけ始めた。

 「リードさん。貴方に聞いておかなければならないことがあるの」

 リードは、マグ姉に話しかけられて驚いた様子だったが、マグ姉の方に体を向け、話を聞こうという姿勢になった。

 「リードさんは、ロッシュの婚約者になる気はあるのかしら?」

 一瞬、時間が止まったような感覚になった。エリスはすやすやと眠っている。癒やされるなぁ~。現実逃避をしてしまった。

 「マグ姉、何を言ってるんだよ。リードは……」

 僕がリードの方に顔を向けると、顔を赤くして、こちらを見つめていた。あれ、僕が考えているような雰囲気ではなくなっているぞ。

 「やっぱりね。鈍いロッシュに教えてあげるけど、リードさんは貴方に好意を持っているのよ。そうでなければ、きっと村には来てないと思うわ。そうでしょ、リードさん」

 リードは、マグ姉の言葉に一瞬間をおいてから、頷いた。

 「初めて会った時、家具に対して真剣に向き合ってくれて、私を馬鹿にもしないで認めてくれたのが、すごく嬉しくて、ロッシュ殿に興味が湧きました。それから、呪いの騒ぎの時も、自分を犠牲にしてまでも仲間を救ってくれました。私の中で、ロッシュ殿への思いが募り始めて、リリ様に村に行かせてもらえるように頼みました。でも、断られました。それからも思いが募って、気付いたんです。私は、ロッシュ殿とずっと側にいたいのだなと」

 僕は、リードの真剣な言葉を聞いて、リードの気持ちにようやく気付いた。

 「なら決まりね。ロッシュと婚約しなさい。ロッシュもいいわね?」

 僕は……リードのことは嫌いではない。とても美しいし、料理も上手だ。家具も作れるし、性格もいいと思う。こんな女性と結婚できるなら、全てを犠牲にしてもいいと思う人もいるだろう。だけど、まだ、会って間もないのに決めてしまうのは、どうかと思う。他の女性についても同じだけど、もう少し、お互いのことを理解してからでも良いと思うんだ。

 僕は、自分の今の気持ちを素直に話した。僕が話を始めると、さっきまで寝ていたエリスはしっかりとした顔になっており、ミヤも飲む手を止めていた。マグ姉が僕の言葉を聞いて、ため息をついた。

 「それが、ロッシュの気持ちなら尊重するわ。でもね、早く決断しなさいね」

 僕は、真剣に頷いた。僕は正直な気持ちを吐きだせて、スッキリした。これで、どうやらお開きになりそうだった……その時、屋敷の玄関の扉が開く音が聞こえた。数人のエルフが食堂に入ってきて、後ろには、ハイエルフのリリが立っていた。扇情的な衣装が、せっかく落ち着いていた僕の感情が甦り始めていた。

 「我が君。今日で、成人となったであろう。妾の方から出向いたゆえ、種を貰いに来たのじゃ」

 とんでもない客が来た。リリからは甘い香りが漂い、リードが僕の鼻を布で抑えて吸わないようにしてくれたが、遅かった。僕は自分が興奮してくるのを止めることが出来なかった。エリス、ミヤ、マグ姉は、状況を察し、なんとか止めに入ったが、好転しなかった。僕の意識は、そこでぷつっと途切れ、気づいた時は、朝になっていた。

 自分のベッドに横たわっていた僕は、昨日のことを思い出そうとしたが、頭がズキリと痛んだ。ふと、僕が真っ裸であることに気付き、横に誰かいる気配がした。おそるおそるシーツをずらすと、一糸まとわぬ姿のマグ姉とエリスがいた。僕は、動揺して、その場から逃げ出した。

 整理しようとしても、何も思い出すことが出来ない。僕はとりあえず水を飲もうと食堂の方に向かった。テーブルには、ミヤとリードが座って、朝食を摂っていた。ミヤは酒を飲みながらだけど。彼女らなら事情を知っているはずだ。ミヤが少し恥ずかしそうに、僕におはよう、と言ってきた。

 「昨晩は随分と張り切ったわね。皆、あなたのおかげで、女にされてしまったわ。この意味、分かるわよね? 責任をとってもらうからね」

 なんてことだ……僕はリードの方を見ると、彼女は顔を伏せていた。

 「その……昨晩はすごかったです。リリ様もすごくお喜びでした。もちろん……わたしも。リリ様は上機嫌で日が昇る前に里に戻っていきました」

 リードまでも手にかけていたのか……リリが来てからの記憶がないのはなぜだ?

 「言いづらいのですが、ロッシュ殿が本気にならないと思ったリリ様が、エルフの秘薬を使って、強制的に興奮状態にさせたのです。私は、なんとか止めようとしましたが、全て遅かったのです。本当にすみませんでした」

 リリが全ての原因か……不思議と怒りとか湧かないな。ああ、怒りが一周回るとこうゆう風になるのか。そんなことより、この事態をどうするべきか。婚前に僕は彼女らを穢してしまったのだ。責任のとり方は一つしかないだろうな。

 僕は、エリスとマグ姉を起こして、服を着させ、ミヤとリードを呼んで、皆の前で今回のことを謝罪し、責任を取ることを誓った。

 ……エリス、ミヤ、マグ姉、リードと婚約した。皆、喜んでくれて、そんな姿を見て僕はこれでも良かったのかなと思った。それでも、リリに感謝とかする気にはなれない。今度、どうしてくれようか……

 とんでもない新年会になってしまったな

 因みに……マリーヌとルドは、マリーヌの部屋で、紙に埋もれて仲良く寝ていた。多分だけど、そういう行為はなかったと思う……多分ね。
 
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...