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第79話 裏切り者への罰②

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 ルドも罪人達への説明を見に行くと言って付いてくることになった。罪人は、僕の前では両手両足を縛られ、身動きが取れない状態だった。流石に抵抗は出来ないと思うが、ライルの心配性が出て、自警団が全員警備に就くことになった。

 僕の横にリードが立っていた。リードは、美形が多いエルフの中でも際立つほど美人だ。長く美しい金色の髪に澄んだ緑色の瞳、身長も高くモデルのような姿をしている。胸はちょっと小さいけど、それでも男なら皆が振り向くような女性だ。そんな女性が、僕の横でおとなしく立っている。そんな彼女に大人しくしていられないのは、罪人たちだ。すでに牢ぐらしが一ヶ月近く続き、さらに長い放浪生活で禁欲を強いられてきた者達なのだ。リードを見て興奮しないのは無理からぬことだ。そんな罪人達を見ても、リードは眉一つピクリとも動かさない。なんというか、少し蔑んだような目をしているような気がした。

 「さて、罪人諸君。君たちに与えられる罰が決まった。君たちはこの村に帰属することを望んでいると聞いた。だが、君たちの犯した罪は許しがたいものだ。第一王子を裏切り、手をかけようとしたこと。村を襲おうとしていたこと。本来であれば、死罪を言い渡してもいいと思うが、君たちの境遇を鑑みて、今回の罰を与え、村への帰属を認めることにした」

 罪人達は僕の言うことに固唾を呑んで見守っていた。ただ、罪人たちの視線がちらちらとリードの全身を舐め回すようなものに変わっていることに僕は気付いていた。その高ぶった感情を見ておきたかった。

 「君たちの罰は、僕の横にいるエルフが住む里に一年間、奉仕をしてもらうことだ。といっても、君たちにやってもらうことは唯一つ。夜の営みをしてもらうことだ」

 罪人達がキョトンとしていたが、話が分かってきたのか、興奮がピークに達しようとしていた。小さな声で、どこが罰なんだ? ただのご褒美じゃねえか。あのお姉ちゃんを抱けるなんて最高じゃねえか……などなど、いろいろと妄想を膨らませては、悦に入っていた。

 僕が咳払いをして、静かにするようにいうと、罪人達は流石に自分たちの立場を理解しているのか、静かになった。

 「君たちの表情を見るに、この罰に対して好意的に受け止めてくれていると判断した。僕もこの罰はどうしたものかと悩んだのだが、君たちの顔を見て僕の判断は正しかったと思わせてくれた。本当に感謝する。すぐにでも、エルフの里に連れて行く予定だ。君たちの頑張りに期待するぞ。無事、戻ってきたら、村人として迎えよう」

 これから罰を受けに行くと言うのに、罪人達は大喜びしていた。僕も大喜びだ。リリとの約束で、男を送る話になっていたが、これで解決したし、悩んでいた罰もこれで解消、エルフの里も男が手に入って、男不足解消。まさにリリと僕に得しかない良い取引になった。

 罪人を連れて、エルフの里に向かって出発した。僕はリードと共にエルフの里へ行くことにし、ライル達は魔の森境界まで罪人を連行し、そこからはミヤの眷属達が引き継いだ。罪人達は、ミヤの眷属たちにも下卑た視線を送っていた。これからエルフたちと良い思いが出来るのに、欲張りな奴らだな。

 魔の森に入ってからは、罪人たちの目は塞がれ、里の場所を分からせないようにした。罪人達の手を縄で数珠つなぎをして、隊列を組んで進んでいった。幸い、魔獣に襲われることもなく、里に着くことが出来た。リードと僕は、リリに報告をしに、リリの館に向かっていった。罪人達は、エルフに連れられていった。彼らが、どこに行ったのかは僕が知る由もなかった。最後に見た罪人達の笑顔は忘れることは出来ない。

 僕とリードが館に着くと、リリが僕を抱きしめて歓迎してくれた。リリの女性的柔らかさと香りが僕を包み込んでいく。リリの扇情的な格好に少し恥ずかしくなり、僕はリリと少し距離を取った。リードが少し羨ましそうな顔をしていたが、気のせいかな。

 「久しぶりに会ったのに、そっけないのぉ。今回の我が君からの提案は、渡りに船。これ程嬉しいことは久しくなかったことじゃ。里の者達も喜んでおってな。妾も久しぶりに楽しい気分にさせてもらった。我が君には世話をかけてしまうの。この礼は十分に尽くさせてもらうつもりじゃ」

 「まず、鶏の件は助かった。輸送をしてもらったおかげで、養鶏場への移動も簡単に出来た。ありがとう。僕もリリの世話になっているから、お互い様だ。今回の件だって、僕も得をしている。前にも言ったが、礼は家具でもらうと助かる。それと、やはり家具のメンテナンスを出来るようにしたいから、技術を少しは教えてくれないか? もちろん、それに対して礼はする」

 リリは、技術の要求に対して、すこし嫌な顔をした。少し、調子に乗りすぎたかな。

 「前にも言ったつもりじゃが、技術を教えるつもりはない。これは、エルフの血の掟じゃ。何があろうとも破るわけにはいかぬ。とはいっても、我が君には世話になっておるし、これからも世話になるじゃろう。そんな相手に何もせぬのは不義理となろう。それゆえ、リードをそなたの村に遣わす。メンテナンスもリードにやってもらうといいじゃろう」

 思いがけない提案に僕は驚くばかりだった。もちろん、リードが村に来てくれるのは助かるが、リードはどう思っているのだろうか。さすがに、リードも不服があるのだろうか、リリが割って入ってきた。

 「リリ様。ついに許可してくれるのですね。ありがとうございます。ロッシュ殿の村で精一杯勉強してまいります。ロッシュ殿もよろしくお願いします!!」

 なんか、お願いされてしまった。どうゆうことだ?

 「実はの。リードがそなたを初めて会ったときから、そなたを気に入っておったようなのじゃ。それに、リードは家具作りに限界を感じておった。もしかしたら、そなたの村に行けば可能性が広がるものと思ったのじゃろうな、妾に村に行きたいとせがんできたのじゃ。最初は許さなかったが、そなたの下ならばと、妾も許そうという気になったのじゃ。だからの、リードをよろしく頼むぞ。もちろん、リードに種を授けてくれると、妾はもっと嬉しいぞ」

 「リリ様……」

 リリが最後、とんでもないことを言っていたぞ。リードも流石に顔を赤くして、俯いてしまった。ともかく、リードが村に来てくれることは重畳だ。エルフの家具は、もっともっと可能性を秘めていると僕は思っている。それをリードと共に開発していく楽しみが出来たな。

 僕は、一応リリに対し、罪人達の扱いについて取り決めを設けることにした。といっても、単純なものだけど。一年間の期限があること、罪人を死なせないことだけである。リードの話を聞く限りだと、後者の取り決めを守らせるのが難しい気もするが、リリを信じておこう。リリは、人間の男がたくさん手に入ったことにご満悦だ。

 「そうだ。なにやら、お菓子を大量に貰ったそうじゃな。里の者が迷惑をかけたの。そなたの事じゃ、そんなことは気にせぬだろうがな。それはそうと、妾は卵を使ったお菓子とやらを楽しみに待っているぞ」

 ああ、まかせろ、と啖呵を切ってしまった。といっても、リリのお菓子を食べる顔を見てみたいから、お菓子をあげるつもりではあったけど。

 僕はミヤの眷属たちと村に戻っていった。リードは、準備が出来次第、村に来ることになった。リードのために家具工房を作るつもりだが、しばらくは屋敷に寝泊まりすることになった。リードも恥ずかしながらも了承してくれた。これで、屋敷はもっと賑やかになるだろうな。そんなことを考えながら、屋敷に向かった。

 一年後……

 エルフの里から、預かり期限が過ぎたので受け取りに来るように連絡が入った。僕やルド、ミヤと眷属達を連れて里に向かった。里の入り口では、すでに罪人達が座って待っていた? 待っていたと言うか、完全に放心状態の男たちが座っているという感じか。

 罪人の中の一人が僕に気付くと、ずるずると足を引き釣りながら僕のズボンの裾にすがりつき、泣いていた。

 「もう悪いことはしないので、この罰だけは勘弁してください。村に帰って、真面目に働きます。早く、村に連れて行ってください。もう……エルフが怖いんです。女が怖いんです。この場を早く離れましょう」

 すごい変わりようだな。最初は、あんなに下卑た顔で女性の体中を舐め回すような視線を送っていた男とは思えないな。一体、どんなに酷いことが行われていたのか……想像するのも怖いので止めておこう。

 近くのエルフに、話を聞くと里の半分のエルフが妊娠をしたようで、数十年ぶりに子供が生まれると喜んでいた。こちらとしても、罪人をここまで更生してもらえて非常に助かりました。また、更生が必要な者が現れましたら、是非、エルフの里に送らせてもらいます。

 エルフ帰りの男たちは、それはそれは、真面目に働いた……
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