上 下
79 / 408

第78話 裏切り者への罰①

しおりを挟む
 ハイエルフのリリから罪人の受け入れの許可を得たエルフがやってきた。なんと、エルフの里の家具職人のリードだった。

 「ロッシュ殿。お久しぶりです。リリ様より罪人受け入れについて許可する旨を伝えに参りました。リリ様は、大喜びでいらっしゃいましたよ。里に久しぶりに人間の男が、しかも50人も、と興奮していらっしゃいましたよ。里の皆も大騒ぎで、祭りのような騒ぎでしたよ。私も皆の喜んでいる姿を見れて楽しいです。こんなお話を頂けて、本当にありがとうございます。本日、私は説明をするために側にいれば良いと聞いていたのですが、それでよろしいですか?」

 「久しぶりだな。リード。リリの伝言は承った。そんなに騒ぎになっていたか。実に楽しそうだな。ゴードンが聞いたら羨ましがっていただろうに。一応、罪人は一年間、エルフの里に滞在してもらうことにするつもりだ。その間の管理は一切エルフの里に任せる。罪人とは言え、命を奪われては困るからな。それだけは気を付けてくれよ。そうでなければ、基本的に何をしてもよいぞ。これから、罪人の前で説明をするから、横にいてくれるだけで大丈夫だ。リードなら特に大丈夫だろう。君が来てくれて、本当に助かった」

 リードは首を傾げていたが、褒められたせいか、ちょっと頬が赤くなり喜んでいるようだった。エリスに、リードをもてなすように頼み、僕は、ルドと罪人について話をすることにした。罪人の管理は村に一任されているとは言え、元はルドの部下に当たる人達だ。ルドも気にしているだろう。

 ルドが屋敷にやってきた。ルドは、魔牛牧場で働くようになっていた。最初は、魔族と共に仕事をするということで緊張していたルドだが、今では普段と変わらない様子だった。魔族と言っても、普通の女の子と変わらないからな、それが分かってしまうと意外と拍子抜けしちゃうもんだよ。僕だって、最初はミヤにかなり警戒していたしな……懐かしいな。

 「ルド。魔牛牧場ではいい働きをしているそうではないか。魔族と言っても、普通の人間とそうは変わらないだろ? ルドにはそれを分かってもらい、村人に伝えてほしいんだよ」

 「ロッシュ。私は、今となっては不思議に思っているよ。なぜ、あんなにも魔族に対してい忌避感を抱いていたのかと。サヤさんはすごく真面目で、私に仕事を丁寧に教えてくれる。料理も旨いし、魔牛乳というのも飲んだが、最高に美味かった。私も王都で最高級なものを食べてきたと思っていたが、それに匹敵するか、それ以上だった。それに何よりも彼女らは美しい。本当に最高だよ。私は、彼女らの良さを村人に是非伝えてやりたいと思っている」

 ルドは、かなり吸血鬼達に入れ込んでしまったようだな。たしかに、サヤ達は美女ばかりだ。その中で仕事をしていたら、色々と大変だろう。ルドのことを考えると、冬が終わったら、魔牛牧場から離したほうが良さそうだな。そもそも魔牛牧場は、魔の森に作られているため人間が居ていい場所じゃない。サヤたちの負担も考えると、尚更だな。

 「それはありがたいな。僕も魔族と関係は良好に保ちたいと思っている。ルドがサヤ達を恐れない様になったのは大きな収穫だった。冬が終わったら、村に戻ってきてもいいからな。ルドにはやってもらいたい仕事があるからな」

 ルドは、この冬で魔牛牧場の仕事が終わってしまうことに絶望したような顔を一瞬したが、いつもの顔に戻っていた。自分にやってもらいたい仕事というのにかなり興味を示していたが、今回の用件から脱線しすぎていたので、戻すことにした。

 「仕事については追々話すことにしよう。それよりも、今回呼んだのは罪人の件についてだ。説明は長くなるから、省かせてもらうが、エルフの里に送ることに決めた。そこで、一年間、里で働いてもらうことを罰とする。それについて、意見を聞きたいと思ってな」

 ルドはエルフという単語が出たことに驚きを隠せないでおり、さらにエルフの里に罪人を送るということに更に驚いていた。

 「ロッシュ。私は彼らの処分については君に一任しているから、何も言うことはない。しかし、聞かせてほしいが、エルフに送ることがどうして罰になると言うんだ?」

 「それは私から説明します」

 リードが、僕とルドの会話に割って入ってきた。口の周りにクッキーのカスが付いているところをみると、頬張って食べたんだろうな。ルドは、エルフの登場に、体をのけぞって、驚ききった表情をしていた。

 「ロッシュ殿のご厚意で、50名の人間男性をエルフの里に送ってもらうことになりました。それが、罰として成立するのかが疑問だと思います。まず、エルフについて説明します。エルフは女性しかいないので、種を授かるためには男を外部から調達しなければなりません。男でも、人間でなければなりません。今までは、生贄や魔の森に彷徨った冒険者などで調達できていたのですが、最近ではそれが難しくなっていたのです。そこで、ロッシュ殿にお願いして、男を融通してもらう約束を取り交わしたのです」

 「ここからですが、里に来た男がどのような扱いを受けるかというと、種を取り出すのが目的ですから、四六時中、行為を求められます。寝ていようが、何していようがです。不全になる男もいますが、エルフには秘薬があるので問題はありません。従来は、里に来た男は、そうやって使い潰していましたが、今回は一年という期限付きなので、精神異常が少し起こる程度です。男性からすれば、罰と言えるほど過酷なものとなると思いますが」

 僕は、リードの話を聞いて、下半身が凍りつくような恐怖を感じた。ちょっと内股になってしまう。ルドも同じように内股になっていたところを見ると、僕と同じ感覚に襲われているのだろう。

 「ロッシュ。君は恐ろしいことを考える男になったんだな。私でも、この罰は躊躇してしまうだろう。彼らは罰を受けなければならないことをしてしまったが、罰を知ってしまうと、裏切った者共に同情を禁じ得ないよ」

 僕も頷き、同意見だと言った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

転生したら唯一の魔法陣継承者になりました。この不便な世界を改革します。

蒼井美紗
ファンタジー
魔物に襲われた記憶を最後に、何故か別の世界へ生まれ変わっていた主人公。この世界でも楽しく生きようと覚悟を決めたけど……何この世界、前の世界と比べ物にならないほど酷い環境なんだけど。俺って公爵家嫡男だよね……前の世界の平民より酷い生活だ。 俺の前世の知識があれば、滅亡するんじゃないかと心配になるほどのこの国を救うことが出来る。魔法陣魔法を広めれば、多くの人の命を救うことが出来る……それならやるしかない! 魔法陣魔法と前世の知識を駆使して、この国の救世主となる主人公のお話です。 ※カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...