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第76話 製材所と空師
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ルドが率いていた900人分の住居を確保するために、製材所と空師を募集したところ多くの人が応じてくれた。僕は、彼らを集めて仕事の割り振りを決めていった。製材所は木がなくては話にならないが、木があっても道具がなければ仕事にならない。それは、空師も同じことだ。そのため、まずは鍛冶工房のカーゴに道具を調達してもらい、人数分を集めてもらうことにした。
彼らには、森の木を伐採してもらうのだが、適当に伐られては困るので伐採計画なるものを作り、それに従ってもらうことにした。木材がとにかく大量に必要なため、彼らの行動開始まで待つことは出来なかったので、僕が風魔法で木を伐採し、彼らに運んでもらうことにした。製材も、現場で行うことにし、細かい調整は後日ということにした。建材については、当面は、ラエルの街の住居を解体して賄う予定なので、時間的には余裕がある。
それに、雪も振り始めてきた時分なので、薪の需要も格段に上がっている。薪の調達をさせることで、彼らの技術を底上げさせる予定だ。本格的に、稼働するのは春になるだろう。製材所は、20名すべてが人間の男だ。元は貴族の次男三男であったため、意外と仕事の飲み込みが早い。というのも、継承権のない貴族は平民となるため、手に職を求めるものが多く、技術を学んでいたりする。
その中でも、モスコという人物は重宝した。モスコは、40歳手前の男で、製材で有名な領主の次男で、幼少の頃から製材に精通していたという。そのため、領内の製材所の代表を務めており、王都でも製材に関しては、彼に右に出るものはいないと言われるほどの技術を持っている。そんな彼が、何の因果か、この村にやってきたのだ。彼には、製材所の責任者を務めてもらい、技術指導をしてもらうことにした。
「そういう訳だ。モスコ、この製材所を頼んだぞ。当面は薪作りに専念してもらうことになるが、建材もすぐに作ってもらうことになる。その前に、部下の教育をよろしく頼むぞ」
「ロッシュ様。このモスコを責任者として任じていただきありがとうございます。私は、製材に関しては、命の次に大切なものと思っております。その製材の仕事を与えてくれるなんて、夢のようです。もちろん、ロッシュ様のご要望にお応えできるように、部下たちを鍛え上げて、この国一番の製材所にしてみせますよ」
さすがは、モスコだ。実に頼もしい限りだ。急拵えの製材所となってしまったが、モスコならなんとか形にしてくれるだろう。
空師については、猿系の亜人が多くを占めていた。猿系は、敏捷性が高く、高い場所を得意とするものが多いという。彼らには、うってつけの職といえる。しかし、彼らには経験がないため、一から教えていく必要がある。村には、木こりと呼べるものはいないが、木を切ることができる者は少なからずいる。その者たちに指導をお願いすることにした。とにかく重要なのは、経験を重ねることだ。空師の代表を決めるとき、一人の亜人が選ばれることになった。彼は、クラッカー。猿系の亜人で30歳位で頬に大きな傷をあるのが特徴だった。どうやら、彼は亜人たちのボス的な存在らしく、皆が彼を推薦してきたのだ。僕は悩んだ。技術がない者を責任者にすることに抵抗があったからだ。そのため、指導役の亜人を責任者にし、その後に責任者を決めるということにした。
「クラッカー。お前の人望は、僕が羨むほどだ。だからこそ、お前に期待するところは大きい。分かっていいると思うが、代表を務めるだけの技術は今はない。これから学び、成長して欲しい。僕の期待通りになれば、代表として君を迎え入れよう。よろしく頼むぞ」
「こんな俺にそこまで期待してくれるなんて感激するぜ。ロッシュ村長を裏切らないように、精一杯勉強します。そのうえで、認められ、代表になってみせる。待っててくれよ。ロッシュ村長」
数カ月もすると、すっかり空師の仕事を覚え、伐採も問題なくこなせるようになっていた。クラッカーの存在は、目立ち、彼の的確な指示や仲間をいたわる姿がよく映っていた。僕は、クラッカーを呼び出し、改めて責任者になってもらうことをお願いすると、了承してくれた。ただ、もう少し人数が欲しいとお願いされたので、募集を出すことになった。
話は戻って、僕は、森林に行き、薪用の木材を伐ることにした。風魔法で、刃状の圧縮した空気を放つと、数十本の木が一度に倒れてきた。なんとか、回避することが出来たが、かなり冷や汗が出る事態となってしまった。こういうことがあるから、素人の木の伐採は避けたほうが良いんだな。倒れた木を角材にするため、風魔法で加工していく。直線状に切るだけなら、風魔法でも簡単に出来る。しかし、大量ともなると僕の魔力では心もとなくなってくる。とりあえず、当分の薪になる木材は確保できたと思う。一応、乾燥させるために、水魔法で木材から水分を抜き取った。すると、角材のあちこちがひび割れを起こしてしまった。やはり、急激な乾燥は角材の品質を著しく落としてしまうようだな。これが、魔法の限界なのだろう。薪ならともかく、建材には利用できないだろうな。
そういえば、魔の森の木材は、薪に適していると聞いたことがあったな。僕はそちらに興味があったので伐採に行ってみることにした。しかし、亜人とはいえ魔の森に連れていくことは危険であったため、ミヤの眷属を同行させることにした。魔の森の木は、かなり太く容易に切れそうになかった。森で木を切った要領で風魔法を行使したが、数回の魔法で一本切るのがやっとだった。角材にするのもかなりの魔力を消費してしまった。
やっとの思いで、薪として使えるだけのサイズにし、実際に使ってみることにした。屋敷に持って帰り、暖炉に焚べると勢い良く燃え、部屋中を暖かくしながら、一晩中燃え続けた。翌朝もまだ燃え続けており、半日以上燃え続けたことになる。たしかに、この薪の火持ちは素晴らしい。薪として使うなら、魔の森の木が一番だ。しかし、欠点は調達するのが非常に困難ということだ。簡単に魔の森の木が切れる方法がないものかと考える日々を送った。
彼らには、森の木を伐採してもらうのだが、適当に伐られては困るので伐採計画なるものを作り、それに従ってもらうことにした。木材がとにかく大量に必要なため、彼らの行動開始まで待つことは出来なかったので、僕が風魔法で木を伐採し、彼らに運んでもらうことにした。製材も、現場で行うことにし、細かい調整は後日ということにした。建材については、当面は、ラエルの街の住居を解体して賄う予定なので、時間的には余裕がある。
それに、雪も振り始めてきた時分なので、薪の需要も格段に上がっている。薪の調達をさせることで、彼らの技術を底上げさせる予定だ。本格的に、稼働するのは春になるだろう。製材所は、20名すべてが人間の男だ。元は貴族の次男三男であったため、意外と仕事の飲み込みが早い。というのも、継承権のない貴族は平民となるため、手に職を求めるものが多く、技術を学んでいたりする。
その中でも、モスコという人物は重宝した。モスコは、40歳手前の男で、製材で有名な領主の次男で、幼少の頃から製材に精通していたという。そのため、領内の製材所の代表を務めており、王都でも製材に関しては、彼に右に出るものはいないと言われるほどの技術を持っている。そんな彼が、何の因果か、この村にやってきたのだ。彼には、製材所の責任者を務めてもらい、技術指導をしてもらうことにした。
「そういう訳だ。モスコ、この製材所を頼んだぞ。当面は薪作りに専念してもらうことになるが、建材もすぐに作ってもらうことになる。その前に、部下の教育をよろしく頼むぞ」
「ロッシュ様。このモスコを責任者として任じていただきありがとうございます。私は、製材に関しては、命の次に大切なものと思っております。その製材の仕事を与えてくれるなんて、夢のようです。もちろん、ロッシュ様のご要望にお応えできるように、部下たちを鍛え上げて、この国一番の製材所にしてみせますよ」
さすがは、モスコだ。実に頼もしい限りだ。急拵えの製材所となってしまったが、モスコならなんとか形にしてくれるだろう。
空師については、猿系の亜人が多くを占めていた。猿系は、敏捷性が高く、高い場所を得意とするものが多いという。彼らには、うってつけの職といえる。しかし、彼らには経験がないため、一から教えていく必要がある。村には、木こりと呼べるものはいないが、木を切ることができる者は少なからずいる。その者たちに指導をお願いすることにした。とにかく重要なのは、経験を重ねることだ。空師の代表を決めるとき、一人の亜人が選ばれることになった。彼は、クラッカー。猿系の亜人で30歳位で頬に大きな傷をあるのが特徴だった。どうやら、彼は亜人たちのボス的な存在らしく、皆が彼を推薦してきたのだ。僕は悩んだ。技術がない者を責任者にすることに抵抗があったからだ。そのため、指導役の亜人を責任者にし、その後に責任者を決めるということにした。
「クラッカー。お前の人望は、僕が羨むほどだ。だからこそ、お前に期待するところは大きい。分かっていいると思うが、代表を務めるだけの技術は今はない。これから学び、成長して欲しい。僕の期待通りになれば、代表として君を迎え入れよう。よろしく頼むぞ」
「こんな俺にそこまで期待してくれるなんて感激するぜ。ロッシュ村長を裏切らないように、精一杯勉強します。そのうえで、認められ、代表になってみせる。待っててくれよ。ロッシュ村長」
数カ月もすると、すっかり空師の仕事を覚え、伐採も問題なくこなせるようになっていた。クラッカーの存在は、目立ち、彼の的確な指示や仲間をいたわる姿がよく映っていた。僕は、クラッカーを呼び出し、改めて責任者になってもらうことをお願いすると、了承してくれた。ただ、もう少し人数が欲しいとお願いされたので、募集を出すことになった。
話は戻って、僕は、森林に行き、薪用の木材を伐ることにした。風魔法で、刃状の圧縮した空気を放つと、数十本の木が一度に倒れてきた。なんとか、回避することが出来たが、かなり冷や汗が出る事態となってしまった。こういうことがあるから、素人の木の伐採は避けたほうが良いんだな。倒れた木を角材にするため、風魔法で加工していく。直線状に切るだけなら、風魔法でも簡単に出来る。しかし、大量ともなると僕の魔力では心もとなくなってくる。とりあえず、当分の薪になる木材は確保できたと思う。一応、乾燥させるために、水魔法で木材から水分を抜き取った。すると、角材のあちこちがひび割れを起こしてしまった。やはり、急激な乾燥は角材の品質を著しく落としてしまうようだな。これが、魔法の限界なのだろう。薪ならともかく、建材には利用できないだろうな。
そういえば、魔の森の木材は、薪に適していると聞いたことがあったな。僕はそちらに興味があったので伐採に行ってみることにした。しかし、亜人とはいえ魔の森に連れていくことは危険であったため、ミヤの眷属を同行させることにした。魔の森の木は、かなり太く容易に切れそうになかった。森で木を切った要領で風魔法を行使したが、数回の魔法で一本切るのがやっとだった。角材にするのもかなりの魔力を消費してしまった。
やっとの思いで、薪として使えるだけのサイズにし、実際に使ってみることにした。屋敷に持って帰り、暖炉に焚べると勢い良く燃え、部屋中を暖かくしながら、一晩中燃え続けた。翌朝もまだ燃え続けており、半日以上燃え続けたことになる。たしかに、この薪の火持ちは素晴らしい。薪として使うなら、魔の森の木が一番だ。しかし、欠点は調達するのが非常に困難ということだ。簡単に魔の森の木が切れる方法がないものかと考える日々を送った。
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