上 下
68 / 408

第67話 エルフの呪い騒動④

しおりを挟む
 「それにしても、随分と迷惑な実験をしてくれたものだな。呪いにかかった者に何かあったら、お前、何されても文句言えなかったんだぞ。まぁ、僕としては原因がわかっただけでもよかったが」
 
 一旦、沈黙が流れる。この状況は誰しものが想像していなかったものだけに、整理が出来ないようだ。僕もその一人だが。沈黙を破ったのは、少女だった。

 「まずは、私の自己紹介をしよう。私はスタシャ。一応は錬金術師を名乗っている。錬金術師の究極の目的は不老不死にある。そのために、ここで研究をし続けていた。その過程で若返りの術式を見つけ、術を施したが、結果はこの通り。若返りすぎて子供になってしまい、呪いまで生み出してしまったようだ。それによって、迷惑を掛けてしまった。本当に申し訳なかった」

 子供が淡々と大人みたいに喋る姿はすごく違和感があるな。僕も周りからは同じように見えていたんだろうか。

 「スタシャ。僕は、ロッシュ。魔の森近くの村で村長をしている。エルフから協力を求められて、ここに来た。僕としては、問題は解決したと判断している。スタシャはこのまま、ここにいるつもりか? なんなら、村に来る気はないか? 聞いたところではスタシャは優秀な錬金術師のようだ。きっと、村でも役に立ってもらえると思うのだが。もちろん、対価が必要であれば、最大限努力するが」

 「魔の森の近く。ロッシュ……おまえは、辺境伯領主の倅か? ふむ、面影もあるし、間違いないな。お前の父親には色々と世話をしてもらった。お前の助けにはなっても良いと思っているが、ここを離れるつもりはないな。ここは、貴重な材料が手に入りやすいからな。誘ってい貰って悪いが、村とやらには行けないな」

 僕は、無理に連れていくつもりはなかったので、スタシャが断ったのですんなり引くことにした。すると、リリが話に参加してきた。

 「スタシャと言ったの。そなたの言い分は理解した。しかし、こちらとて、はいそうですかと引き下がるわけにはいかぬ。そなたには、我が里に行き、呪いにかかった者に謝罪をしてもらいたい。そうでなければ、こちらとて満足はいかぬ」

 スタシャは、リリの言葉に対して異議を言うことはなかった。そうして、僕達は、スタシャを連れて、エルフの里に戻ることになった。エルフの里に戻る道中、暇だったので、スタシャに錬金術師について聞いてみることにした。

 「ふむ。そうだな。錬金術は触媒を使い、術式を展開し、物質を変化させたり、性質を変えたりするものだよ。分かりやすく言えば、この土塊には、いろいろな物質が含まれている。これは、物質毎に抽出し、分離することが出来る。実際やってみたいが、ここには道具がないから見せられぬのは残念だ。これが錬金術師の主な仕事になるだろう。だが、錬金術の究極の目的は不老不死だ。私はあと一歩まで迫っているのだ、研究を止めるわけにはいかない。それに、この姿を永遠としているのも嫌だからな」
 
 なるほど。僕は土魔法でやっていることの代わりを錬金術で行うことが出来るのか。いや、土魔法より汎用性は高そうだな。やはり、村に来てもらいたいな。

 「そういえば、触媒にアダマンタイトを使えたら……みたいなことを言っていたが、どういう意味だ? 」

 「そんなこと言ったか? まぁいいか。人間界には魔力と相性のいい金属が存在する。錬金術の触媒には、この魔力と相性のいい金属が必要となってくる。相性が高ければ、触媒としての性能もあがるのだ。アダマンタイトは人間界で手に入る最高の触媒だ。これがあるか、ないかで術式の成功率は全く異なるのだ。前は、金を出せば何とか手に入ったが、今は誰も掘るものがいなからか、手に入らなくなってしまった。度重なる実験のせいで在庫もなくなってしまったしな。しかたなく、アダマンタイトより劣るミスリルを使ったが、結果はこの通りよ」

 アダマンタイトにそんな一面があったとはな。伝説の武具になるという話は聞いていたが……

 「アダマンタイトなら何とかなるかもしれないぞ」

 「本当か⁉ いや、信じられないな。アダマンタイトは、そう簡単に手に入るものではない。ましてや、一領主に手に入れるのは相当難しいはず。持っていたとしても、王都に取り上げられるの落ちだ」

 「信じてもらえなら仕方ないが、屋敷に帰えれば、アダマンタイトのインゴットがあるぞ」
 「俄には信じがたいが、もしあるのであれば、手に入れたい。いくらなら手放してくれるのだ? 」

 「そうだな。いくらと言われれば、ただでもいいと思っている。ただ、村で働いてもらうのが条件になるけど」
 「村で働けば、アダマンタイトを分けてもらえるのだな? 本当にあるなら、なんでもやってもよい。アダマンタイトが手に入らなければ、私の研究は絶対に成就できない。そのためなら、なんだってする。でも、本当にあるんだな⁉ 」

 スタシャは、疑り深いな。まぁ、それくらいでなければ、魔の森で居を構えてなんかいられないか。

 「村の屋敷に戻れば、分かることだ」
 話の流れで、スタシャは村に来ることになった。アダマンタイトがこんな形で使うことになるなんて想像もつかなかったな。

 スタシャとの会話が一段落ついた頃、エルフの里に到着した。

 「私は長い間、魔の森に住んでいたが、こんな場所にエルフの里があったなんて、気付かなかった。さすがは、エルフの術だな」

 スタシャが一人感心していると、リリがこちらにやってきた。

 「この者が、呪いを受けた者だ。我が君に助けてもらわねば、命を落としていたやもしれぬ。さぁ、この者に謝罪を」

 リリに言われて、スタシャは素直に謝罪をした。子供姿なんだけど、中身は100歳を越す婆さんなんだよな。とても信じがたいな。これで、呪いの騒動はひとまず終わった。リリもこれ以上、大事にする気はないみたいだ。

 僕とミヤとその眷属は村に急いで帰る準備を始めた。すでに、日は傾き始め、夜に魔の森を歩くのは危険と判断したからだ。スタシャもアダマンタイトを確認するために村に同行する。リリが僕の方に近づき、小声で、今度、礼をしたいから来てほしいと耳元で言われて、ゾクゾクっとした。なんて、艶めかしい声で囁くんだ。ミヤが目ざとくこちらを見ていたが、特に文句を言うようなことはしないようだ。

 僕らは、村に戻った。長い一日だった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...