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第66話 エルフの呪い騒動③

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 村に戻ると、すぐにゴードンを呼び出し、事の顛末を説明した。やはり、ゴードンはリリの協力要請には反対みたいだ。ミヤの一言があっても、すぐには意見を変えなかった。それでも、説得を繰り返して、ようやく納得しないながらも協力すること賛成してくれた。この話の中で、ミヤは眷属も連れていくことになった。少しでも、僕の身の安全を確保したいかららしい。

 鶏についての話は、ゴードンの反対はなかった。すぐに受け入れの準備をすることで決まり、場所や設備については、養鶏を行っていた者を中心に検討することで決まった。養鶏の経験者がいてくれて良かった。鶏の受け入れは、それらが終わってからになるだろう。

 僕とミヤとその眷属は、再びエルフの里に向かった。エリスに頼んで、多めのお菓子を作ってもらった。エルフの里は、いつもの雰囲気とは違って、緊張感があるように感じた。僕らは、リリの館に案内されると、十数名のエルフが武装をして待機していた。エルフの武装姿は、武器に弓矢を持ち、ショートパンツ姿だ。きれいな長い足を拝むことが出来た。リリは、いつもの姿だった。

 「我が君。よく来てくれたの。皆も用意は既に済んでおる。すぐに出発するが、大丈夫かの? 」

 僕は、頷く。持参したお菓子をリリの側にいるエルフに渡した。休憩の時にでも、食べてくれと言って。渡されたエルフは耳がピクピクと動いており、嬉しそうな顔を必死に隠そうとしていた。やはりエルフのお菓子好きは本物のようだな。武装しているエルフたちも、手渡したお菓子に釘付けになっていた。

 リリと僕とミヤを先頭に僕達は出発した。総勢30名ほどになった。里の外に出て、目的地に向かっていった。途中で、魔獣に遭遇しながらも、エルフ達の連携によって、難なく撃退していく。さすがは魔の森に里を構えるほどはあるな。魔獣に対して的確な行動をとっている。おそらく、ミヤの眷属も強いだろうが、魔の森に関して言えばエルフに勝つことは難しいかもしれない。

 休憩を挟み、目的地に向かっていく。お菓子を食べたエルフたちは、意気揚々と歩いていく。目的地の近くに来た時、リリが皆を止めた。

 「ここじゃな。ここだけ、雰囲気が違うようじゃ。なんと禍々しい気なんじゃ。里の近くにこんな場所があるなんて、妾が気付かぬはずがないはずじゃ……一体、何があるというのじゃ」

 リリは何かを感じているようだ。僕は、集中して辺りを警戒したが、何も感じることが出来なかった。リリは、警戒するあまり、行動を移せないでした。ここから、どうするか。ミヤに相談したが、やはりミヤも何かを感じているようだ。皆が、警戒する中、僕だけは歩き始めた。リリやミヤは止めようとしたが、僕がそれよりも先にすすんでいたため、諦めてしまったようだ。僕は、どんどん奥に進んでいくと、後ろからミヤが走って付いてきた。

 「ちょっと、待ちなさい。私は皆にロッシュを守るって約束してきたんだから。先に行かないでよ」

 すごく思い詰めた顔で、僕を追ってきたようだ。僕は感じないけど、ミヤ達はすごい恐怖を感じているようだ。本気で僕を守ろうとしている、ミヤの気持ちがすごく嬉しかった。しばらく歩いていたが、特に変化はなかった。呪いを受ける条件みたいのがあるのだろうか? 歩き続けると、小さな小屋を発見した。森の中にすごく場違いな建物だった。

 ミヤが言うには、この小屋から嫌な雰囲気が溢れている様に感じるようだ。この小屋がどうやら元凶の場所らしい。僕は警戒しながら、小屋に近づくも物音一つ聞こえない。中に何かがいるような気配もなかった。本当にここが元凶なんだろうか?

 僕は、小屋のドアノブを掴み、ギーッと音を出しながら、ドアを開けた。そこには、人が住んでいたような形跡があり、テーブルには乾燥した何かがこびりついたコップが置かれていた。隣の部屋に続くドアを開けると、そこには、部屋の中央に大きな鍋が置かれており、床には魔法陣が描かれていた。そして、その鍋の前で、少女が倒れていた。

 ミヤがその少女を見ると、目を見開き、指差し、これが間違いなく元凶よ、と声を震わしながら言った。ミヤの顔色は悪く、状況はあまり良くないみたいだ。僕は、少女の生存を確認すると、微かに息をしているのを確認すると、回復魔法を使った。少女の体は淡く光り、濃い黒い靄が漂い、一気に霧散した。すると、ミヤが小さい声で、消えた、と言った。どうやら、状況は改善されたようだ。

 少女はまだ、目を覚まさない。僕は、少女を抱き上げベッドに横たえた。その間に、僕達は小屋を物色することにした。この少女の正体が分かる何かを見つけるためだが、何かの実験をしていたのか、大量の書き込みがされた紙片が散らばっているだけで、これと言ったものはなかった。その間に、エルフたちも小屋に到着したようで、リリが僕達の下にやってきた。

 「急に外の嫌な雰囲気がなくなったので、我が君がなにかをしたのだと思ってきたのじゃ。何があったのじゃ? 」
 僕はリリに状況を説明すると、リリは少女の顔を覗き込むが、知らないみたいだ。この少女は一体何者なんだ? 少女の顔を改めてみると、肩くらいの長さの白髪で、きれいな顔立ちをしている。年齢はココと同じくらいだろうか? 10歳そこそこと言った感じだ。とても、魔の森の真ん中に居ていいような子供じゃない。

 しばらくすると、少女が目を覚ました。少女は、勢い良く起き上がり、僕達を見たが、気にする様子もなかった。

 「鏡はないか!? そこの男、棚にある鏡を取ってくれぬか」

 呆気にとられてしまったが、僕は少女の言うとおりに棚から鏡を取り出し、少女に渡した。少女は、鏡で自分の顔をマジマジと見て、何度も顔のいろいろな箇所を触っていた。一通り触った後、ため息をついた。

 「若返りすぎてしまったか。実験は成功したが、これではまだまだだな」

 少女はさっきから一人の世界に入り込んでいる。状況を聞き出すためにも、僕は少女に声を掛ける。

 「おい。そろそろこっちの話を聞いてもらおうか。この森に近づいた者が呪いにかかり、目を覚まさなくなった。お前、何か知らないか? 」

 少女は、こっちをじっとみつめ、う~んと唸りながら考え事をしていた。少女は何も関係していなかったということか?

 「それはきっと、私の魔術の副作用みたいなものかな。私の実験は若返りの秘術だ。こう見えても、100歳を超えているんだ。うまく行けば、20歳位になる予定だったんだけど、うまくいかないものだね。触媒にミスリルを使ったのがまずかったな。アダマンタイトがあれば、きっと成功したはずだ。とにかく、術が失敗した反動で、呪いの魔術が発動してしまったんだと思うよ。まさか、魔の森に呪いを受けるような者が周りにいるとは思ってなかったよ。本当にごめんね。でも不思議。呪いが発動してたなら、私も呪いにかかっているはずなのに……」

 「それは僕が呪いを解除したからだ」

 少女は信じられないという様子で、僕を訝しんでいた。
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