爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介

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第53話 巨石祭り

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 イルス領の領都は、一万人を超えるほどの民が住んでおり王国でも指折りの都として栄えていた。僕が来た時は、その大半が焼け野原と化し、南と西にいくらか廃墟が残っていたぐらいだった。現在では、西に住宅街が広がり、1000人ほどが居住している。南の廃墟はほとんどが解体され、資材として利用されていた。

 僕は最近になって人口が緩やかに伸びているのを受けて、都市計画をすることにした。中央区は商業地区とし、それ以外を居住区に、郊外に畑や倉庫、鍛冶などの工房が広がるように設計することにした。僕の屋敷は、このままの場所にすることにした。現状、不満があるわけではないしね。

 僕は、村の中央に、村の象徴となるような物を置こうと考えている。その象徴に、と考えたのが、領都の北部にある王国でも随一の大きさを誇る巨石だ。巨石は、不思議な煌めきを持っており、陽が当たるとキレイに輝くのだ。この鉱物がどうゆうものなのかは、誰も分からなかったが、村の象徴としては十分役割を果たすだろう。

 予定地は、すでに土魔法で整地をしており、後は巨石を移動してくるだけだ。夏の盛りなので、暇している者も多い。せっかくなので、祭りにすることにした。もちろん、ゴードンの企画だ。ゴードンは、よく気付いてくれました、と大喜びで準備をしていた。

 巨石を移動する当日になった。村人は、巨石のある旧領都の北に行き、移動するのを見守っていた。僕は、最初、村人で引っ張って移動することを考えたが、石の重量を考えると、とても無理だとわかったので、僕の土魔法で移動することになった。僕の土魔法で、巨石が浮き上がると、村人から喝采が上がり、ゆっくりと目的地まで移動することになった。

 村人は、目的地に移動している間は、ずっと、楽器を鳴らし、歌を歌ったりして、盛り上がりながら行進していった。目的地に到着するまで一時間を要したが、ずっと賑やかなままだった。村人も久しぶりの祭りで盛り上がっていたようだ。

 目的地に到着し、巨石を設置した。整地した土地に石を積み上げ、少し高台にしたところに巨石を設置した。その瞬間、盛り上がりはピークを迎えた。

 「皆の者、今日はよく集まってくれた。これが、この村の象徴となる巨石だ。この巨石を中心にこの村を栄えさせようと思っている。この村から餓えはなくなったと思っている。皆の努力で、畑はよく耕され、作物はよく実り、倉庫に食料が山積みになっている。僕は知らなかった。ラエルの街のような土地があることを。僕は、もっと多くの者を救ってやりたいと思っている。この土地には、それだけの事が出来ると信じている。皆も、外の人が来ることに不満があるだろう。トラブルが増えることは否定できない、しかし、人が増えれば、やれることが増える。作物の種類が増える。食べられるものが増える。僕は、人が増えたほうが、いい循環を生むことが出来ると思っている。だから、皆も僕を信じ、村作りに邁進してもらいたいと思っている。頼むぞ」

 僕は、今思っていることを素直に言った。ラエルの街のように、村に助けを求めてくる人はこれからも出てくるだろう。助けを求めているものは、村人になる以上は助けてやりたいと思っている。それが、婆さんとの約束。ばあさんの願いなのじゃ。
 
 「今までは、餓えをなくすためだけの行動だった。これからは、村の住みやすさを求める行動にやっと移れることが出来る。この巨石設置は、その第一歩だと思っている。今後は、公園を設置したり、商業施設を増やしたり、もちろん宿泊施設もだ。とにかく、皆が住みやすい村を作っていこう」

 「話はこれくらいでいいだろう。とにかく、今日は祭りだ。大いに楽しんでくれ。料理も酒も用意した。ゴードンが早くしろと急かしてくるな。皆、今日は盛り上がるぞ!! 」

 村人は、怒号のような声を上げ、興奮を隠せない様子だった。村人は、すぐに料理や酒に群がり、大いに食べ、大いに飲んでいた。今回、用意した料理のすべて、ラーナさんが作ったものだ。もちろん、エリスや村の娘達も手伝っていたが、なんとも大量の食事だ。これだけあれば、村人全員の胃袋を満たすことが出来るだろう。酒も酒造工房のスイが去年の冬に仕込んだエールとウイスキーだ。

 僕ももう少しで飲める歳となる。その時を僕は今か今かと待っているのだ。しかし、エールはともかく、旨いウイスキーになるためには、まだまだ醸造に時間がかかるだろう。それまでは、じっくり待とうではないか。村人もウイスキーよりエールだろうな……ん? ウイスキーに長蛇の列が出来ているぞ。スイの助手であるルドットが配るのが間に合っていないようだ。

 ウイスキーはまだまだのはず……ただのアルコールの高い酒に過ぎないはずなのに……僕は、ウイスキーの樽に近づき、匂いを嗅ぐと、まるで、何十年も熟成させたような芳醇な香りが漂っていた。どういうことだ?

 僕は、ルドットに詰め寄ると、ルドットもこういうものだと思ってたみたいで、不思議に感じていなかったようだ。これが普通? なにか、あるはずだ。僕は、スイに近づき、同じ質問をすると、こういうものでは? と同じような回答が返ってきた。どう言うことだ? 全く分からない。

 僕が、ウイスキーの樽の前で腕を組んで、首を傾げていると、樽工房のハナがやってきた。

 「ロッシュ様。お酒が飲めなくて、残念そうですね。私も、さっき飲ませてもらいましたが、いい出来でした。魔の森の木で作った樽だったので、熟成が遅れるのではないかと不安に感じていましたが、満足の出来で安心しました」

 ちょっと待て。熟成が遅れる? 木によって熟成速度が変わるというのか? ハナに聞いてみた。

 「そうですね。魔界にいた頃は、魔酒用にサーザーという木を使って樽を作っていました。その樽で作ると、熟成がとても早く済むんですよ。ただ、魔の森には、サーザーがなかったのですが、近種の木があったので、それで樽を作ったのは正解だったみたいです」

 原因は、樽にあったのか。しかも、魔の森の木だとは……これを知ったら、村人は驚くだろうな。言うべきかどうか、悩むところだが。ところが、村人はあまり気にしていなかった。理由は簡単だった。魔の森の木は、意外と領都では使われていたらしい。そんなに手に入らないが、薪に使うと火持ちがすごくいいとかで。だから、魔の森の木だからといって、忌避感とはないらしい。

 ん~。村人の魔の森の認識がよく分からなくなってきたぞ。一度、整理したほうが良さそうだな。

 とりあえず、気を取り直し、周りを見渡すと、ウイスキーほどではないが、小さな樽が置いてあった。樽には、僕には読めない字が書かれていた。そこには、ミヤが鎮座し、ガバガバ飲んでた。村人が周りにいないが……村人に聞くと、ミヤが独占して、飲めないと言う。僕は、ミヤをその場から引き剥がし、村人にも飲ませるように説教した。

 「だって、あれ、魔酒なのよ。ずっと、飲みたくて飲みたくて。やっと飲めたんだもん。いいじゃない!! 」

 まるで、子供だ。僕は、村人の方に目を向けると、何人かが、興味本位で魔酒に手を出した。しかし、口に含んだ途端、吐き出してしまった。どうゆうことだ?

 「ふふっ。あれは、魔族でなければ飲めないわよ。魔酒は、人間が飲むと、だたの強烈なアルコール水なのよ。だから、あれは全部私のものよぉ!! 」

 なんてことだ。魔酒は、魔族だけが飲める酒だったとはな。僕は、すぐに魔酒を片付けるようにスイに指示した。魔酒は、ミヤの眷属達が飲むだけの量を作るようにしよう。

 ミヤは、魔酒を片付けると絶叫を上げて、魔酒を追いかけていった。
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