8 / 408
第7話 治療
しおりを挟む
僕は、回復魔法を取得したので、村の一割を占める疫病患者を治療することにした。エリスには先行してもらい、重症患者を優先的に選んでもらった。重症度に応じて、家の入口に色のついた布を縛ってもらった。意識がない者は赤、意識はあるが寝たきりの者は緑、歩行が困難な者は青、初期症状だけが現れている者は黄、といった具合だ。こうしておけば、エリスの案内がなくとも、僕一人でも対応することができる。
エリスと合流して、赤の患者のもとに案内してもらった。家の中は、腐臭が漂い、とても衛生的とは言えない環境だった。エリスに頼んで、空気の入れ替えをしてもらい、清潔な水と手ぬぐいを用意してもらった。
エリスが準備している間に、僕は患者に近づいた。患者は意識もなく、息も荒い様子だった。体はやせ衰え、一部、変色している部位もあった。……これは酷いな。すぐに治療しよう。
患者の体を触り、病変を探り、病原体を駆逐するようなイメージで魔法を使った。すると全身が淡い光りに包まれ、黒ずんだ部位は血色を帯びた肌色となり、息も安定してきた。集中していたから気付かなかったけど、女の子の裸の胸を触っている態勢だった。運悪く、エリスが戻ってくるとその光景を見て、尻尾を逆立てて、すぐに駆けつけてきた。
「何やっているんですか!! 意識がないことを良いことに、変なことをしようとしていたんじゃないですか? まだロッシュ様は子供だから、こういうことには興味がないと信じていたのに。それに、この子もまだ子供じゃないですか。まさか、ロッシュ様にそんな趣味があったなんて……。私ならいつでもいいのに……」
なんか、変なことも聞こえたが……
「ち、ちがっ……!」
状況的には、全く言い訳が出来ない。困ったな。こういう時は……
「ひどいよ! 治療するのに一生懸命やっていたのに! そんな勘違いされるなんて心外だよ! エリスなんて……大ッキライだぁ!!」
「こういう時だけ、子供のふりをして、源吉さんが何をおっしゃってるんですか?」
うわぁ……エリスがすごく冷たい目をしている……
「いや、なんかすみません。でも、本当にそんなつもりはなかったんだ。一生懸命だっていうのは本当だったし……それに子供を愛でる趣味は僕にはない。僕はエリスみたいのがタイプなんだし」
「な、何を言っているんですか! 本当に、もう!! ……わかりました。今回は信じますよ。ただ、こういうのは今回だけにしてくださいね。私も、患者が女の子だって教えなかったのも悪かったですし……」
エリスが顔を赤めて、慌ててる姿がすごく可愛く感じた。とりあえず、今回は回避できてよかった。エリスって怒ると本当に怖いからな。
ちょうど、女の子の意識が回復した。
「だ……だれですか? そこにいるのは? わたしは……あれ? 体が痛くない……どうして?」
「あなたは、ロッシュ様の回復魔法によって、病気が完治したのよ。疫病が体を蝕んでいて、もう一歩であなたは、死ぬところだったのです。ロッシュ様に感謝しなさい」
ん~エリスが僕の立場を考えて、僕をたててくれるのはありがたいんだけど……
「感謝は不要だ。当たり前のことをしただけなんだからな。君の体は疲弊しきっているから、食事をして、体を回復しなければならない。体力だけは、魔法では回復しないんだ。家族はどうした? 家族は見えないけど……仕事か?」
「私には……両親はいないの……隣のおばさんに食事とかもらってたんだ。でも、おばさんもいつからか来なくなったの」
ん~世話をしてくれる人がいないのか……隣のおばさんとやらが、世話をしなくなったのにも何か理由があるのだろう。
「どうだ? うちの屋敷に来る気はないか? 最初は、体力の回復に専念してもらうが、調子が戻ったら、働いてもらうが……どうだ?」
しばらく女の子は考えていたが、決心したのか、こちらを見て力強く頷いた。
「それは良かった。さっき、聞いたと思うが、僕はロッシュ。横にいるのが、エリス。うちのメイドだ。君は彼女の下についてもらう。基本的には家の雑用をしてもらうが、看護師の見習いみたいなことをやってもらおうと思っている」
「看護師ってなんですか?」
「そうだな。僕が治療する時に、一緒に付いてきてもらって、サポートしてもらうことだな。患者の世話も大事な仕事だ。徐々に教えていくから、焦らなくていい。君の名前を聞いてもいいか?」
女の子は自己紹介をしていなかったことを恥じたのか、慌てていた。
「私はココ。八歳です。よろしくお願いします。エリスさんもよろしくお願いします」
八歳なのにしっかりした子だな。この子なら、メイドとしてしっかり仕事をこなしていけるだろう。
「エリス。頼んだぞ」
「わかりました。ロッシュ様」
エリスに、ココを屋敷に運ぶように指示し、患者の治療を続行した。そういえば、ココの治療にどれくらいの魔力を消費したんだろう? ステータスを見ると、30%ほど魔力が減っていた。やっぱりココほど重症だと、消費もすごいな。
確か、最重症患者は10件だったか……一日かければ、終わるか。
今日はもう二件ほど治療をした後、日が暮れそうだったので、屋敷に戻った。治療のために出張するのもいいけど、やっぱり、屋敷に診療所がほしいな。レイヤに相談してみよう。
ココには開いている部屋を割り当て、そこで体力の回復に専念してもらうことにした。
その次の日も治療を行い、更に10日ほどかけて全患者の治療が完了した。まだ、体力の回復が終わってないのがほとんどだが、直に回復して労働に従事してくれるだろう。人口の一割と思っていたが、二割が疫病にかかってたんだから、異常な状態だったよな。正常に戻ってよかった。なによりも疫病が治るという事実が、村人に大きな安堵を与えることが出来た。
ココは、10日も経つと立ち上がることができるようになり、エリスの手伝いも少しずつだがするようになってきた。不幸中の幸いか……ココ以外の患者には、世話をしてくれる人がいてくれて助かった。その後、診療所を作る話をレイヤに相談すると、止めたほうがいいということになった。村長のとこに治療を頼みに来る人なんていないんだと。恐れ多いとのこと。
領主と村民の間には、未だに壁があるようだ。すぐに解決するのは難しい問題なのだろうか。
回復魔法によって労働力が増えることを考慮して、農地拡大を少し早めるかな。
エリスと合流して、赤の患者のもとに案内してもらった。家の中は、腐臭が漂い、とても衛生的とは言えない環境だった。エリスに頼んで、空気の入れ替えをしてもらい、清潔な水と手ぬぐいを用意してもらった。
エリスが準備している間に、僕は患者に近づいた。患者は意識もなく、息も荒い様子だった。体はやせ衰え、一部、変色している部位もあった。……これは酷いな。すぐに治療しよう。
患者の体を触り、病変を探り、病原体を駆逐するようなイメージで魔法を使った。すると全身が淡い光りに包まれ、黒ずんだ部位は血色を帯びた肌色となり、息も安定してきた。集中していたから気付かなかったけど、女の子の裸の胸を触っている態勢だった。運悪く、エリスが戻ってくるとその光景を見て、尻尾を逆立てて、すぐに駆けつけてきた。
「何やっているんですか!! 意識がないことを良いことに、変なことをしようとしていたんじゃないですか? まだロッシュ様は子供だから、こういうことには興味がないと信じていたのに。それに、この子もまだ子供じゃないですか。まさか、ロッシュ様にそんな趣味があったなんて……。私ならいつでもいいのに……」
なんか、変なことも聞こえたが……
「ち、ちがっ……!」
状況的には、全く言い訳が出来ない。困ったな。こういう時は……
「ひどいよ! 治療するのに一生懸命やっていたのに! そんな勘違いされるなんて心外だよ! エリスなんて……大ッキライだぁ!!」
「こういう時だけ、子供のふりをして、源吉さんが何をおっしゃってるんですか?」
うわぁ……エリスがすごく冷たい目をしている……
「いや、なんかすみません。でも、本当にそんなつもりはなかったんだ。一生懸命だっていうのは本当だったし……それに子供を愛でる趣味は僕にはない。僕はエリスみたいのがタイプなんだし」
「な、何を言っているんですか! 本当に、もう!! ……わかりました。今回は信じますよ。ただ、こういうのは今回だけにしてくださいね。私も、患者が女の子だって教えなかったのも悪かったですし……」
エリスが顔を赤めて、慌ててる姿がすごく可愛く感じた。とりあえず、今回は回避できてよかった。エリスって怒ると本当に怖いからな。
ちょうど、女の子の意識が回復した。
「だ……だれですか? そこにいるのは? わたしは……あれ? 体が痛くない……どうして?」
「あなたは、ロッシュ様の回復魔法によって、病気が完治したのよ。疫病が体を蝕んでいて、もう一歩であなたは、死ぬところだったのです。ロッシュ様に感謝しなさい」
ん~エリスが僕の立場を考えて、僕をたててくれるのはありがたいんだけど……
「感謝は不要だ。当たり前のことをしただけなんだからな。君の体は疲弊しきっているから、食事をして、体を回復しなければならない。体力だけは、魔法では回復しないんだ。家族はどうした? 家族は見えないけど……仕事か?」
「私には……両親はいないの……隣のおばさんに食事とかもらってたんだ。でも、おばさんもいつからか来なくなったの」
ん~世話をしてくれる人がいないのか……隣のおばさんとやらが、世話をしなくなったのにも何か理由があるのだろう。
「どうだ? うちの屋敷に来る気はないか? 最初は、体力の回復に専念してもらうが、調子が戻ったら、働いてもらうが……どうだ?」
しばらく女の子は考えていたが、決心したのか、こちらを見て力強く頷いた。
「それは良かった。さっき、聞いたと思うが、僕はロッシュ。横にいるのが、エリス。うちのメイドだ。君は彼女の下についてもらう。基本的には家の雑用をしてもらうが、看護師の見習いみたいなことをやってもらおうと思っている」
「看護師ってなんですか?」
「そうだな。僕が治療する時に、一緒に付いてきてもらって、サポートしてもらうことだな。患者の世話も大事な仕事だ。徐々に教えていくから、焦らなくていい。君の名前を聞いてもいいか?」
女の子は自己紹介をしていなかったことを恥じたのか、慌てていた。
「私はココ。八歳です。よろしくお願いします。エリスさんもよろしくお願いします」
八歳なのにしっかりした子だな。この子なら、メイドとしてしっかり仕事をこなしていけるだろう。
「エリス。頼んだぞ」
「わかりました。ロッシュ様」
エリスに、ココを屋敷に運ぶように指示し、患者の治療を続行した。そういえば、ココの治療にどれくらいの魔力を消費したんだろう? ステータスを見ると、30%ほど魔力が減っていた。やっぱりココほど重症だと、消費もすごいな。
確か、最重症患者は10件だったか……一日かければ、終わるか。
今日はもう二件ほど治療をした後、日が暮れそうだったので、屋敷に戻った。治療のために出張するのもいいけど、やっぱり、屋敷に診療所がほしいな。レイヤに相談してみよう。
ココには開いている部屋を割り当て、そこで体力の回復に専念してもらうことにした。
その次の日も治療を行い、更に10日ほどかけて全患者の治療が完了した。まだ、体力の回復が終わってないのがほとんどだが、直に回復して労働に従事してくれるだろう。人口の一割と思っていたが、二割が疫病にかかってたんだから、異常な状態だったよな。正常に戻ってよかった。なによりも疫病が治るという事実が、村人に大きな安堵を与えることが出来た。
ココは、10日も経つと立ち上がることができるようになり、エリスの手伝いも少しずつだがするようになってきた。不幸中の幸いか……ココ以外の患者には、世話をしてくれる人がいてくれて助かった。その後、診療所を作る話をレイヤに相談すると、止めたほうがいいということになった。村長のとこに治療を頼みに来る人なんていないんだと。恐れ多いとのこと。
領主と村民の間には、未だに壁があるようだ。すぐに解決するのは難しい問題なのだろうか。
回復魔法によって労働力が増えることを考慮して、農地拡大を少し早めるかな。
70
お気に入りに追加
2,661
あなたにおすすめの小説
日没のリインバース ~死んだら転生する世界で生き続ける俺たちの物語~
八夢詩斗
ファンタジー
全60話、完結済みです。
「これは俺が転生するまでの物語。彼女が死んで、俺が死ぬまでの物語だ」
第三次魔導大戦。
後世でそう呼ばれることになる戦いが始まろうとしていた。
魔法学者を目指す高校生の長月トバリは、
不満や疑問を抱えながらも平穏な日々を過ごしていたが、戦争は残酷にも彼の日常を巻き込んでいく。
突如として現れた”涅槃”(ニッヴァーナ)を名乗る強大な力を持った存在。
その戦いで失踪したヒロインを追うトバリは自ら戦いの中へ身を置くことに。
長い年月の末に辿り着いた彼らとの接触が、
この世界の真実へと結びつき、大きな運命を巡って物語は進んでいく。
リインカーネーション × マルチバース
『リインバース』の世界で繰り広げられる魔法ファンタジーSF。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる