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第3話 決意
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実地調査を終えた、その日の夜。ゴードンが屋敷へと来た。時間も時間なので、「一緒に食事はどうだ」と誘うことにした。
エリスは、非常に料理上手だ。少ない食材で、多くの料理を作ってくれる。僕が料理に不満を漏らさないのは、エリスの料理の腕によるところが大きい。
「本日は、お招きいただき感謝します。ゴードンめは、非常に感動しております」
ゴードンは、感極まっている。先代からずっと、住民をまとめていただけに、周りからの突き上げが辛かったのだろう。今まで、誰にも相談できずに可哀想なことをした。
「まずは、食事をしよう。話はそれからだ。それと……エリス、これからは、一緒に食事をしよう。君も食卓に着きなさい」
これにはエリスはもとより、ゴードンもびっくりしている。人間至上主義だったロッシュの変わり身に、だ。これからは僕も皆と汗水を垂らし、村を良くしていかなければならない。そのためには、亜人だからと区別していては、駄目だ。亜人も村の一員なんだから。
食事を終え、僕はエリスにコーヒーを持ってくるように頼んだ。なぜか知らないが、この屋敷にはコーヒーが大量に保管されている。どうやら父上の仕業らしいのだが、どこかでコーヒーと出会って、すごく気に入ったようだ。それを領都でも流行らそうとしたけど、全く受け入れられず、この屋敷に在庫として大量に保管されている。
この量は、一生分はあるんじゃないかって量だよな。この屋敷に来た人たちには、是非コーヒーの消費にご協力をしてもらいたいな。
コーヒーを飲みながら、話をする準備が出来た。酒といいたいところだが、在庫がないのだ。まぁ、僕は13歳だ。せめて15歳の成人までは我慢しなければならないのは辛いところだ。
「ゴードンよ。すまんな、こう言う時は酒でも出してやりたいところだが……おっと、エリスの顔が怖いな……さて、今日の食事について、どう思った。忌憚のない意見を聞きたい」
ゴードンは話の意味がよく分かっていなかったのか、首を傾げていた。
「どう、とおっしゃられても、とても素晴らしい食事でした。エリスさんの料理は、前々から美味しいと評判でしたから。我が家の食卓にも並んでほしいものです」
……困ったな。皆、現状に満足しようとしている……たしかに、今日の食事は、今の最善と言えるような料理だった。しかし、普通なら、乞食が食べるような料理だ。言い過ぎか?
「僕はね……この料理で満足してほしくないんだ。飢えないというのは大事だけど、美味しい食事を皆が、たくさん食べられる様にすることが僕の宿命だと思っている。そのためにゴードン、そして、エリス……その実現のために協力してほしい」
「もちろんでございます! ロッシュ様……先代の頃のような、皆が笑い、子供が重労働に苦しまないような、そんな時代に戻していただけるのですね」
ゴードンは、男泣きをしてしまった。
「無論だ。先代の時代なんかより、もっと良き時代を築けるだろう。それには、皆の協力が必要だ。さらには、亜人と言われる者たちの協力が不可欠だ。皆の中には、亜人に対してよく思わないものもいるだろう……しかし、そこは、粘り強く説得していかなければならない。ゴードン、頼むぞ」
ゴードンは、泣きながら強く頷いた。
「早速だが、明日の朝、皆をこの屋敷前に集めて欲しい。今後の方針について、皆に報告したいと思う。皆の協力あってこその村作りだ」
エリスもゴードンも頼むぞ……
次の日の朝、ゴードンは約束通り、皆を屋敷前に集めてくれた。
「皆の者、朝からすまなかったな。知らぬ者はいないと思うが、僕はロッシュだ。ここの領主をしている。しかし、王家は形骸化し、何の力もない。そんな中で、辺境伯などの名は無意味だ。我々はこの地を村とし、村長として、皆を引っ張っていきたいと思う。異論はあるか?」
皆は一様に、納得したような面持ちで頷いてくれた。ゴードンが説得してくれていたのだろうか? ゴードンの方を見ると、軽く頷いていた。
「僕が村長となり、やることは一つだ。それは、皆が飢えに苦しまず、笑って過ごすことができる村にすることだ。ただ、この一つが長く険しい道程になることだけは確かだ。そのためには、皆の協力が必要不可欠なんだ。僕に是非協力してくれ!!」
皆が、大きな歓声をあげ、ロッシュ様! ロッシュ様! と口を揃えていた。しばし、僕は場が静まるのを待ち、皆の熱狂する目を眺め回した。
「これから、やらねばならないことを伝える。来月から長雨の時期となる。その前に、皆を旧都の高台に移動してもらいたいと考えている。これは、川が氾濫した場合に備えるためだ。まだ使える建物もあるから、そこを修復して住んで欲しい。しっかりとした住居はおいおい整備していくことを約束しよう。次に、川の氾濫を予防する必要性がある。そのための堤防作りに協力して欲しい。まずは、この二つの事から始めていこう。詳細については、ゴードンと相談して決めたいと思う。意見があるものは、どんどん言って欲しい。皆で、この村を良くしていこう」
また、大歓声があがった。幸先は良さそうだ。しかし、まだまだ不安は尽きないだろう。結果が先延ばしになればなるほど、皆の心は僕から離れていくだろう。なにか、すぐに結果が出せる方法はないだろうか……。優先すべきは、堤防づくりだが、来月までに目処を立てるとして、人員は足りるのだろうか……。
だめだ! 僕が、悩むことを見せるわけにはいかない。
こういうときは、相談するに限る。僕には、エリスとゴードンという力強い味方がいるのだから。
その日の夜……屋敷に戻ってから、エリスに相談してみた。
「堤防を作るのに、どうしても人手が必要となるんだけど、必要な人数を動員してしまうと、どうしても移住や畑の管理に人が割けなくなるんだ。どうしたらいいだろうか」
エリスが悩んでいる。ふと、エリスが僕の顔を見上げた。
「ロッシュ様って……魔法、使えないのですか?」
えっ⁉ 魔法……?
しばらく、沈黙が流れた。
そういえば、婆さんが、魔法を使えるようにした、とか何とか言っていたな。どうやって、使えるんだ?
「使えると思うぞ……ただ、使い方がわからないな……」
「私もそこまでは……前のロッシュ様も使えてたみたいですけど。何か、手をかざしたら火が出てましたけど。それが魔法だと思います」
手をかざすか……やってみるか。……何も起きないなぁ。どうしよう?
ん⁉ そういえば、婆さんが、ステータスを見ろとも言っていたな。
どれどれ……ステータス! と頭の中で考えると、頭の中に変な表示が出てきた。おお、これがステータスというやつか……ふむ……いろいろと表示されているが、いまいちわからないな……今日は、色々あったせいで、眠いな。
「エリス。もしかしたら、何とかなるかもしれない……が、今日は寝よう。明日の朝から、また頑張ろう」
エリスは嬉しそうに、はい! と返事をくれた。
エリスは、非常に料理上手だ。少ない食材で、多くの料理を作ってくれる。僕が料理に不満を漏らさないのは、エリスの料理の腕によるところが大きい。
「本日は、お招きいただき感謝します。ゴードンめは、非常に感動しております」
ゴードンは、感極まっている。先代からずっと、住民をまとめていただけに、周りからの突き上げが辛かったのだろう。今まで、誰にも相談できずに可哀想なことをした。
「まずは、食事をしよう。話はそれからだ。それと……エリス、これからは、一緒に食事をしよう。君も食卓に着きなさい」
これにはエリスはもとより、ゴードンもびっくりしている。人間至上主義だったロッシュの変わり身に、だ。これからは僕も皆と汗水を垂らし、村を良くしていかなければならない。そのためには、亜人だからと区別していては、駄目だ。亜人も村の一員なんだから。
食事を終え、僕はエリスにコーヒーを持ってくるように頼んだ。なぜか知らないが、この屋敷にはコーヒーが大量に保管されている。どうやら父上の仕業らしいのだが、どこかでコーヒーと出会って、すごく気に入ったようだ。それを領都でも流行らそうとしたけど、全く受け入れられず、この屋敷に在庫として大量に保管されている。
この量は、一生分はあるんじゃないかって量だよな。この屋敷に来た人たちには、是非コーヒーの消費にご協力をしてもらいたいな。
コーヒーを飲みながら、話をする準備が出来た。酒といいたいところだが、在庫がないのだ。まぁ、僕は13歳だ。せめて15歳の成人までは我慢しなければならないのは辛いところだ。
「ゴードンよ。すまんな、こう言う時は酒でも出してやりたいところだが……おっと、エリスの顔が怖いな……さて、今日の食事について、どう思った。忌憚のない意見を聞きたい」
ゴードンは話の意味がよく分かっていなかったのか、首を傾げていた。
「どう、とおっしゃられても、とても素晴らしい食事でした。エリスさんの料理は、前々から美味しいと評判でしたから。我が家の食卓にも並んでほしいものです」
……困ったな。皆、現状に満足しようとしている……たしかに、今日の食事は、今の最善と言えるような料理だった。しかし、普通なら、乞食が食べるような料理だ。言い過ぎか?
「僕はね……この料理で満足してほしくないんだ。飢えないというのは大事だけど、美味しい食事を皆が、たくさん食べられる様にすることが僕の宿命だと思っている。そのためにゴードン、そして、エリス……その実現のために協力してほしい」
「もちろんでございます! ロッシュ様……先代の頃のような、皆が笑い、子供が重労働に苦しまないような、そんな時代に戻していただけるのですね」
ゴードンは、男泣きをしてしまった。
「無論だ。先代の時代なんかより、もっと良き時代を築けるだろう。それには、皆の協力が必要だ。さらには、亜人と言われる者たちの協力が不可欠だ。皆の中には、亜人に対してよく思わないものもいるだろう……しかし、そこは、粘り強く説得していかなければならない。ゴードン、頼むぞ」
ゴードンは、泣きながら強く頷いた。
「早速だが、明日の朝、皆をこの屋敷前に集めて欲しい。今後の方針について、皆に報告したいと思う。皆の協力あってこその村作りだ」
エリスもゴードンも頼むぞ……
次の日の朝、ゴードンは約束通り、皆を屋敷前に集めてくれた。
「皆の者、朝からすまなかったな。知らぬ者はいないと思うが、僕はロッシュだ。ここの領主をしている。しかし、王家は形骸化し、何の力もない。そんな中で、辺境伯などの名は無意味だ。我々はこの地を村とし、村長として、皆を引っ張っていきたいと思う。異論はあるか?」
皆は一様に、納得したような面持ちで頷いてくれた。ゴードンが説得してくれていたのだろうか? ゴードンの方を見ると、軽く頷いていた。
「僕が村長となり、やることは一つだ。それは、皆が飢えに苦しまず、笑って過ごすことができる村にすることだ。ただ、この一つが長く険しい道程になることだけは確かだ。そのためには、皆の協力が必要不可欠なんだ。僕に是非協力してくれ!!」
皆が、大きな歓声をあげ、ロッシュ様! ロッシュ様! と口を揃えていた。しばし、僕は場が静まるのを待ち、皆の熱狂する目を眺め回した。
「これから、やらねばならないことを伝える。来月から長雨の時期となる。その前に、皆を旧都の高台に移動してもらいたいと考えている。これは、川が氾濫した場合に備えるためだ。まだ使える建物もあるから、そこを修復して住んで欲しい。しっかりとした住居はおいおい整備していくことを約束しよう。次に、川の氾濫を予防する必要性がある。そのための堤防作りに協力して欲しい。まずは、この二つの事から始めていこう。詳細については、ゴードンと相談して決めたいと思う。意見があるものは、どんどん言って欲しい。皆で、この村を良くしていこう」
また、大歓声があがった。幸先は良さそうだ。しかし、まだまだ不安は尽きないだろう。結果が先延ばしになればなるほど、皆の心は僕から離れていくだろう。なにか、すぐに結果が出せる方法はないだろうか……。優先すべきは、堤防づくりだが、来月までに目処を立てるとして、人員は足りるのだろうか……。
だめだ! 僕が、悩むことを見せるわけにはいかない。
こういうときは、相談するに限る。僕には、エリスとゴードンという力強い味方がいるのだから。
その日の夜……屋敷に戻ってから、エリスに相談してみた。
「堤防を作るのに、どうしても人手が必要となるんだけど、必要な人数を動員してしまうと、どうしても移住や畑の管理に人が割けなくなるんだ。どうしたらいいだろうか」
エリスが悩んでいる。ふと、エリスが僕の顔を見上げた。
「ロッシュ様って……魔法、使えないのですか?」
えっ⁉ 魔法……?
しばらく、沈黙が流れた。
そういえば、婆さんが、魔法を使えるようにした、とか何とか言っていたな。どうやって、使えるんだ?
「使えると思うぞ……ただ、使い方がわからないな……」
「私もそこまでは……前のロッシュ様も使えてたみたいですけど。何か、手をかざしたら火が出てましたけど。それが魔法だと思います」
手をかざすか……やってみるか。……何も起きないなぁ。どうしよう?
ん⁉ そういえば、婆さんが、ステータスを見ろとも言っていたな。
どれどれ……ステータス! と頭の中で考えると、頭の中に変な表示が出てきた。おお、これがステータスというやつか……ふむ……いろいろと表示されているが、いまいちわからないな……今日は、色々あったせいで、眠いな。
「エリス。もしかしたら、何とかなるかもしれない……が、今日は寝よう。明日の朝から、また頑張ろう」
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