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王都トリスタニア
第54話 一次審査
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大勢の鍛冶師とそれを見守る観客で会場は大きな賑わいを見せていた。
品評会は全ての鍛冶師にポイントが割り振られ、自分の作品以外に投票していく。
これはお互いの技能を認めるという風土があるからこそ、出来る審査なのだろう。
僕も与えられたポイントを投票するために、全ての武具に目を通していく。
……さすがは王国中から集められた精鋭の鍛冶師の作品だ。
どれもが素晴らしい。
『鑑定』メガネを装着し、物色する。
品質: B
これがほとんどだ。
いわゆる、一級品と呼ばれるもので武具屋ではなかなか取り扱われない。
これだけでも一財産といったところだ。
それが、ここにはゴロゴロあるんだからな……。
武具屋の親父がいたら、興奮して卒倒しそうだ。
……ん?
これがベイドの作品か。
どれ……。
『鑑定』
■■■■剣
品質: A
耐久度: 305/4500
随分と耐久度の低い剣だな。
だが、やはり品質は高いな。
自信があることはある。
しかし……どこか、既視感がある。
これって……。
「どうだ? 俺の剣は」
ベイドか。
「これは……本当にベイドが作ったのか?」
「あ、あん? お、おめぇ、何言ってんだよ。見ろよ。これを」
確かにプレートにはベイド=ウォーカー作と書いてある。
さすがに鍛冶師を名乗る以上は嘘は言わないよな?
「言っておくけど、嘘を付いたら鍛冶師を名乗れなくなるぞ?」
「マジか?」
何をそんなに驚いているんだ?
鍛冶師の常識だと思うけど。
「まぁ、ベイドが作ったと言うなら問題はないよ」
「お、おう。そうだな。おっ? あそこは凄い人だかりだな。メレデルクの作か?」
メレデルク様も出店しているのか……。
雲の上の人と一緒に競り合えるなんて……なんて、至福の時間なんだろうか。
僕も見に行ってみよう……。
「すみません。通して下さい」
いでっ!
思いっきり人にぶつかってしまった。
「すみません……って、メレデルク様!!」
「おお? なんだ、ウォーカーの倅か」
感激だ。
僕のことを覚えていてくれたなんて。
「見てみろ。この剣を。どうやったら、こんなものが作れるんだ? ライル作……か。聞いたことのない名前だな」
……えっと。
「僕ですけど」
「はぁ? お前……あれ? 名前はライルと言ったか? 信じられないな。お前のような若造が……。で? どうやって、作ったんだ?」
……あれ?
どうして、涙が出てくるんだ?
嬉しい、のかな?
「なんだ、おまえ。泣いてんのか? 男なら涙なんて流すんじゃねぇ」
「すみません。なんだか、嬉しくて……」
「……ほらよ。俺の一票だ。お前の作品は群を抜いている。自信を持て。いいな?」
「はい……」
メレデルク様に認められた。
これだけで僕は満足だ。
もう……悔いはない。
「それでは結果発表に参ります!! 今回も選りすぐりの武具が集まったおかげで……」
長々と司会の話が続く。
正直、あくびが出る。
考えてみれば、ずっと徹夜だったもんな。
順当に名前が呼ばれ始めた。
今回の目標は入賞だ。
上位8人に与えられる。
だから、この十人に入れれば、ほぼ入賞は確定なんだ。
僕は祈るように自分の名前が呼ばれるのを待った。
「ライル。スターコイド公爵付き鍛冶師」
ついに呼ばれた!!
でも、後半のはなんだ?
まぁいいか。
やった!!
これで入賞に一気に近づいたぞ。
「今回の結果は混戦でした。三位はベイド=ウォーカー。さすがはウォーカー家といったところでしょう」
まさか、ベイドが……。
「第二位はメルデルク……これは意外でしたね。一位通過だと思っていましたが……」
メルデルク工房の強さを感じるな。
あのベイドをここまでの職人に育て上げてしまうんだから……
「そして、一位通過の作品は……ダントツでしたね。ライルさんです! いきなり現れた超新星。ダークホースとはまさに彼のことを言うのでしょう」
は?
僕が一位通過?
信じられない……。
でも、あれ?
もしかして……入賞もあり得るのか?
あり得ちゃうのかな?
「良かったな。ウォーカーの倅……じゃないな。ライル。いいライバルになりそうだ」
本当にいい人だ。
「それにしてもベイドの野郎がな。工房を逃げ出したかと思ったら……どこで、あんな修行をしたんだ?」
ん?
逃げ出した?
「どういう事です? メレデルク様の所で、あれほどの技量を身に着けたのでは?」
「まさか。俺のところにいた頃は……目立たない、ちっぽけな存在だったな。ウォーカーも後継者に頭を悩ませているだろうと心配するほどだ」
……わからない。
品質Aを作り出すのは並の鍛冶職人ではない。
メレデルク様だって難しいのだ。
それを短期間でどうやって……。
やはり、何かあるのだろうか……。
「次の審査は実戦形式で行います。こちらにいます近衛騎士見習いの方に実際に剣を握ってもらい、戦ってもらいます」
へぇ……。
そんなことをするのか……。
さすがは実利に特化した武具作成を旨とする我が国らしいな。
「ついに始まるか。これはな、武具の性能がだけじゃなく、運も必要だ」
「運?」
「ああ、見てみろ。近衛騎士見習いと言っても、実力に差がある。剣が優秀でも、使い手がヘボかったらナマクラも同然だろ?」
……確かに。
僕は不安になった……。
なぜなら……
第二王子がこちらを見て、ニヤリと笑っていたから。
品評会は全ての鍛冶師にポイントが割り振られ、自分の作品以外に投票していく。
これはお互いの技能を認めるという風土があるからこそ、出来る審査なのだろう。
僕も与えられたポイントを投票するために、全ての武具に目を通していく。
……さすがは王国中から集められた精鋭の鍛冶師の作品だ。
どれもが素晴らしい。
『鑑定』メガネを装着し、物色する。
品質: B
これがほとんどだ。
いわゆる、一級品と呼ばれるもので武具屋ではなかなか取り扱われない。
これだけでも一財産といったところだ。
それが、ここにはゴロゴロあるんだからな……。
武具屋の親父がいたら、興奮して卒倒しそうだ。
……ん?
これがベイドの作品か。
どれ……。
『鑑定』
■■■■剣
品質: A
耐久度: 305/4500
随分と耐久度の低い剣だな。
だが、やはり品質は高いな。
自信があることはある。
しかし……どこか、既視感がある。
これって……。
「どうだ? 俺の剣は」
ベイドか。
「これは……本当にベイドが作ったのか?」
「あ、あん? お、おめぇ、何言ってんだよ。見ろよ。これを」
確かにプレートにはベイド=ウォーカー作と書いてある。
さすがに鍛冶師を名乗る以上は嘘は言わないよな?
「言っておくけど、嘘を付いたら鍛冶師を名乗れなくなるぞ?」
「マジか?」
何をそんなに驚いているんだ?
鍛冶師の常識だと思うけど。
「まぁ、ベイドが作ったと言うなら問題はないよ」
「お、おう。そうだな。おっ? あそこは凄い人だかりだな。メレデルクの作か?」
メレデルク様も出店しているのか……。
雲の上の人と一緒に競り合えるなんて……なんて、至福の時間なんだろうか。
僕も見に行ってみよう……。
「すみません。通して下さい」
いでっ!
思いっきり人にぶつかってしまった。
「すみません……って、メレデルク様!!」
「おお? なんだ、ウォーカーの倅か」
感激だ。
僕のことを覚えていてくれたなんて。
「見てみろ。この剣を。どうやったら、こんなものが作れるんだ? ライル作……か。聞いたことのない名前だな」
……えっと。
「僕ですけど」
「はぁ? お前……あれ? 名前はライルと言ったか? 信じられないな。お前のような若造が……。で? どうやって、作ったんだ?」
……あれ?
どうして、涙が出てくるんだ?
嬉しい、のかな?
「なんだ、おまえ。泣いてんのか? 男なら涙なんて流すんじゃねぇ」
「すみません。なんだか、嬉しくて……」
「……ほらよ。俺の一票だ。お前の作品は群を抜いている。自信を持て。いいな?」
「はい……」
メレデルク様に認められた。
これだけで僕は満足だ。
もう……悔いはない。
「それでは結果発表に参ります!! 今回も選りすぐりの武具が集まったおかげで……」
長々と司会の話が続く。
正直、あくびが出る。
考えてみれば、ずっと徹夜だったもんな。
順当に名前が呼ばれ始めた。
今回の目標は入賞だ。
上位8人に与えられる。
だから、この十人に入れれば、ほぼ入賞は確定なんだ。
僕は祈るように自分の名前が呼ばれるのを待った。
「ライル。スターコイド公爵付き鍛冶師」
ついに呼ばれた!!
でも、後半のはなんだ?
まぁいいか。
やった!!
これで入賞に一気に近づいたぞ。
「今回の結果は混戦でした。三位はベイド=ウォーカー。さすがはウォーカー家といったところでしょう」
まさか、ベイドが……。
「第二位はメルデルク……これは意外でしたね。一位通過だと思っていましたが……」
メルデルク工房の強さを感じるな。
あのベイドをここまでの職人に育て上げてしまうんだから……
「そして、一位通過の作品は……ダントツでしたね。ライルさんです! いきなり現れた超新星。ダークホースとはまさに彼のことを言うのでしょう」
は?
僕が一位通過?
信じられない……。
でも、あれ?
もしかして……入賞もあり得るのか?
あり得ちゃうのかな?
「良かったな。ウォーカーの倅……じゃないな。ライル。いいライバルになりそうだ」
本当にいい人だ。
「それにしてもベイドの野郎がな。工房を逃げ出したかと思ったら……どこで、あんな修行をしたんだ?」
ん?
逃げ出した?
「どういう事です? メレデルク様の所で、あれほどの技量を身に着けたのでは?」
「まさか。俺のところにいた頃は……目立たない、ちっぽけな存在だったな。ウォーカーも後継者に頭を悩ませているだろうと心配するほどだ」
……わからない。
品質Aを作り出すのは並の鍛冶職人ではない。
メレデルク様だって難しいのだ。
それを短期間でどうやって……。
やはり、何かあるのだろうか……。
「次の審査は実戦形式で行います。こちらにいます近衛騎士見習いの方に実際に剣を握ってもらい、戦ってもらいます」
へぇ……。
そんなことをするのか……。
さすがは実利に特化した武具作成を旨とする我が国らしいな。
「ついに始まるか。これはな、武具の性能がだけじゃなく、運も必要だ」
「運?」
「ああ、見てみろ。近衛騎士見習いと言っても、実力に差がある。剣が優秀でも、使い手がヘボかったらナマクラも同然だろ?」
……確かに。
僕は不安になった……。
なぜなら……
第二王子がこちらを見て、ニヤリと笑っていたから。
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