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ダンジョン

第44話 ダンジョンへ出発

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翌朝……。

「ライル、おはよう」
「フェリシラ様!? どうして……」

目を覚ますと、目の前にフェリシラ様の顔があった。

覗き込むように見つめられ、僕は身動きが出来なかった。

それほど、朝から見る彼女の笑顔は刺激的だった。

「そうではないですよ? 朝の挨拶はしっかりと」
「……おはようございます」
「じゃあ、行きましょうか」

ちょっとくらい、フェリシラ様に呆けている時間をくれてもいいだろうに……。

どうやら、一番最後に起きたのは僕だったみたいだ。

皆はすでに食卓に着いて、食事を取っていた。

「お兄ちゃん、おはよう」
「おはよう」

「ライル殿、おはよう」
「ああ、はい」

「ライル、そこに座って。今、朝食を準備するわね」
「えっ!? いや、フェリシラ様にそのようなことは。僕がやりますから!!」

なんか、いつも違う雰囲気にあたふたしてしまうな。

「アリーシャ。ウィネットちゃんは?」
「まだ、寝てるよぉ」

そうか……。

ん?

「アリーシャ殿!」

声でかっ!!

「どうしたの?」
「ウィネット様のこと、本当に感謝しております。今まで、屋敷を出られずに心を痛めておりました。あれほどの笑顔を見たのは……うっううう」

「大丈夫だよ。イディアさん。私、ウィネットちゃんが大好きだから」
「ありがとうございます……」

アリーシャ、成長したな。

まるでお姉さんみたいじゃないか。

「どうぞ、ライル」

結局、準備させてしまった。

「あ、ありがとうございます。いただきます」
「ええ。よく噛んで食べるのよ」

お母さん!!

まるでフェリシラ様がお母さんになっているよ。

「フェリシラ様はきっといい母親になるでしょうね」
「ぶぅぅ! ごほっ……ごほっ……急に何を言い出すんですの?」

僕はフェリシラ様の背中を少し擦りながら、ハンカチを手渡した。

「ごめんなさい。驚かせるつもりで言ったわけでは」
「いいんですよ。それで、どういった点がいい母親になると思ったか、教えて頂けませんか?」

えっ?

怒っているの?

若い女性に、母親っていうのは失礼なのかな?

それからしばらく、詰問され……。

「よく分かりました。それがライルの考えるいい母親なんですね?」
「えっ? ええ、まぁ」

なんか、話が変わっていないか?

「それで、ライルは子供は何人欲しいんですか?」
「……へ? えっと……たくさん、欲しいですね」

「そう……」

あれ? そこ、悩むとこなのかな?

もしかして、体のことを心配しているのかな?

「あの、フェリシラ様なら大丈夫ですよ。いざとなれば、僕も協力しますから」

あの病気が再発しても、また治療をすればいいんだ。

……あれ?

どうして、手を握られているんだろう?

「本当に? ライルは本当にそう思っているんですの?」

何もためらう必要もない。

僕は例え、彼女が別の人と結婚しようとも大切にしたいという気持ちは揺らぐことはない。

「ええ! 一緒に頑張りましょう!!」

フェリシラ様の手を僕はぎゅっと握った。

「ライル……でも、ダメよ。やっぱり、順番があるもの……」

順番?

ああ、それもそうだな。

まるで病気が再発することを前提に話してしまった。

今のままが一番、いいんだから……。

「でも、ありがとう、ライル。とても勇気を貰ったわ」
「それは良かったです」

それからのフェリシラ様はとても上機嫌でした。

……。

冒険者ギルド前……。

ちょっと、早く着いてしまった。

「アリーシャ。その服で本当に行くのかい?」
「うん。だって、動きやすいし」

まぁ、アリーシャは野性的に動くタイプだ。

だけど……。

外套を身に着けているけど、ほとんど中は下着みたいな格好だ。

これでいいのかな?

「何を心配しているのだ? ライル殿」

えっと……この人も露出が多いな。

もしかして、腕に自身がある人は露出が多い傾向でもあるのかな?

その点……。

フェリシラ様は素敵だ。

「それは屋敷から持ってきたものですか?」
「いいえ。ここで調達しましたわ。なんでも魔法力の温存が出来るとかで……」

なんとも怪しげな文句だなぁ。

そんな効果のある服が本当に存在するんだろうか?

僕はそっと『鑑定』メガネを装着した。



品質;C
耐久度:499/500
特性;着ている対象がちょっと可愛く見える


うん……品質は普通の服だね。

これは、きっと騙されたね。

「ちなみにそれはおいくらだったんですか?」
「そうね。金貨10枚かしら? 私好みの特性がついた服ですもの。お買い得でしたわ」

そう、ですね。

ここは黙っておいたほうがいいか。

一応、特性は付いていましたよ。

もっとも、すでに女神級の美しさを手に入れているフェリシラ様には無意味な特性ですけど。

さてと……時間通りだな。

「おはようございます。マリアさん」
「ライル君、おはよう。これで全員かな?」

僕は後ろを振り向き、皆がいることを確認した。

「ええ。全員です」
「そう。じゃあ、早速行きましょうか」

あれ?

僕は一つ疑問があった。

「ダンジョンって誰でも入れるんですか?」
「もちろんよ。冒険者ギルドに登録してあるならね」

……登録してないですけど……。

「はぁぁ?」

あれ?

そんなに変かな?

ん?

マリアさんの表情が少しニヤついた?

……そんなことはないか。

「まぁ、いいんじゃない? どうせ、誰も見ていないし。それにずっと潜ろうとかは思っていないんでしょ?」

潜るというのはダンジョンに、ということだろうか?

まぁ、今回は耐久度の確認とモンスターの強度を調べるために来ている。

耐久度については『鑑定』メガネで調べられるけど……。

モンスター調査も次はあまり考えていないかな。

「ええ。そうですね」
「だったら、登録無しで行っちゃいましょう」

いいのかな?

僕は後ろを振り向いたが、誰も意見はないようだ。

それもそうか……

冒険者ギルドはとても混んでいる。

登録をしなくて済むなら……。

「分かりました。マリアさんに従います」
「そうこなくっちゃ! じゃあ、行きましょう」

僕はこの決断を後で後悔することになる。

その時はダンジョンに入れることにかなり興奮していたから、周りが見えていなかったんだ。
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