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追放

第4話 獣人アリーシャ

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僕は強い後悔に苛まれていた。

困ったな……。

後ろにはさっきパンをあげた獣人が付いてくる。

きっと、僕に付いてくればパンをもらえると勘違いしているのだろう。

だが、僕にはそんな余裕はない。

鍛冶工房を作るためにはたくさんの金貨が必要だ。

……はっきりと言わないと!!

「僕に付いてこないでくれないか?」
「……優しい」

ん?

何か言ったか?

「優しい人初めて……嬉しかった」

やめてくれ……

そんなことを言わないでくれ。

「えっと……ほら、これを全部あげるよ。だから、ね?」

買ってきたパンをすべて獣人の子に手渡した。

これでしばらくは飢えに苦しまずに済むだろう。

……どうして、まだ、ついてくる?

「あの……お母さん……いや、家族はどうしたの? はぐれちゃったのかな?」
「家族、いない。私、役立たずだから……捨てられたの」

僕は胸が苦しくなった。

この子も僕と同じ苦しみを背負っているのか……

「行く宛はあるのかい? 親戚の家とか、知り合いとかは?」
「いない。私、ひとりぼっちなの」

どうかしている。

僕は本当にどうかしているよ。

なぜ、あんなことを口にしたのか。

でも、自然と後悔はなかった。

「僕のところに来るかい?」
「いいの? 私、獣人だし……汚いよ。それに……」

何を今更……僕に付いてきた時点で、期待していたんじゃないのか?

といっても、相手は子供だ。

何を言っても仕方がないだろう。

「構わないさ。だけど、タダでご飯が食べられると思わないでくれ。それで良ければ」
「うん。私、なんでもする。役立たずだけど」

僕も役立たずと言われた。

だけど、僕は信じたいんだ。

役立たずなんて、どこにもいないってことを。

「獣人っていうのは力持ちって聞いたことがあるんだけど。本当なの?」
「うん。私、力持ち」

これで仕事は決まったな。

彼女には物持ちをやってもらおう。

あの武具屋の問題はこれで解決だな。

「そういえば、君の名前は? 僕はライル。ライル=ウォーカー……いや、ただのライルでいいかな」
「ん? ライル? ライルって言うの?」

「ああ、そうだよ。それで君は?」
「アリーシャ。私はアリーシャっていうの」

アリーシャか。

いい名前だな。

「行こうか」
「うん」

僕達が宿屋に入った。

「ちょっと! 獣人がなんで入ってきているのよ!」

……僕を案内してくれた優しい女性の面影はなかった。

必死に獣人を手にした箒で追い出そうとしていた。

「待って下さい!! この子は僕の連れなんです」
「お客さん、困りますよ。うちはそういうお店じゃないんですよ? 奴隷ならともかく……」

何を勘違いしているんだ?

まさか、僕がアリーシャを買ったと思っているのか?

それはすぐに弁明を……

ん? 奴隷?

僕はアリーシャを見つめた。

そして、僕はアリーシャを連れ出した。

「アリーシャ。済まないが、しばらく僕の奴隷のふりをしてくれないか?」
「それって美味しいの?」

全く見当違いのことを言っているな。

だけど……

「ああ。奴隷のふりをしてくれたら、美味しいご飯が食べられるよ」

なんだろう……すごく悪い事を言っている気がする。

まるで奴隷商みたいだな。

「わかった。ライルの言うことを聞く。でも、本当に食べられるの?」

これで話はまとまった……のかな?

すごく罪悪感を感じながら、宿屋に戻った。

そして、アリーシャを僕の奴隷とした。

「それなら、そうと早く言ってくださいよ。お客様の物!! に手を出すところでしたよ」
「ごめんなさい。それで悪いんだけど、食事を二人分お願いできるかな?」

「その物にもあげるんですか? いいですけど、味が分かるのかしら?」

とても酷い扱いなんだな。

部屋に入り、剣を立てかける。

「アリーシャは気にならないのか?」
「何がですか?」

こんな事を気にしては、生きていけないのだろうか?

今までも相当酷い仕打ちを受けてきたんだろうな。

「……いや、なんでもない。食事をしたら、これからのことを話そう」
「食事!! 食事!!」

これだけを見ると、本当にどこにでもいる子供なんだよなぁ。

……。

「お待たせしました。すみません、こんなところで」
「いや、僕の方こそ、無理を言って」

獣人がいるから、食堂は利用できないと言われた。

僕だけなら問題はないようだ。

だが、僕がアリーシャをここの人たちのように雑に扱うつもりはない。

彼女と一緒に食事を。

「美味しそう! 食べていいの? 本当に?」
「ああ。ゆっくり食べるんだぞ」

アリーシャの食欲は凄まじかった。

自分の分ではとても足りなかったみたいだ。

「僕の分も食べていいぞ」
「いいの? 本当に?」

言った側から手が伸びて、食べ始めていた。

……あとで何か食べ物を買いに行くか。

食べ終わり、宿屋の女性が食事を片付けていった。

「さて、これからのことを話そう。アリーシャは力仕事が得意。そういう認識でいいかな?」

こくこくと頷きながら、もぐもぐと何かを食べている。

隠し持っていたのかな?

ああ、さっき渡したパンか。

「君には荷物持ちをやってもらうよ。僕は鍛冶師のようなことをやっていてね。たくさんの武具を持ってもらうことになるんだ」

こくこく……。

「給金も渡すよ。月に金貨3枚。それでいいかな?」

ぶーっ!!

汚いな。

「本当にくれるの?」
「ああ。ちゃんと働けばな。食事も三回付けてやる。量は二人前かな?」

アリーシャがバッと抱きついてきた。

「嬉しい!! 私、頑張る」

そうだよな。

認められるって嬉しいよな。

気持ち分かるよ。

だけど……。

「臭っ! アリーシャ。体を洗ってこい!!」
「はい!!」

まったく……。

……。

「さっぱりした」

おいおい。

どうして裸なんだ……なんだ、これ?

アリーシャの体には顔だけではなくて、鱗のようなものが右半身に張り付いていた。

「私、病気なの。竜鱗病……獣人だけの病気。いやだよね」

……。

「アリーシャ、僕は気にしないよ。とりあえず、服を着なさい」

僕は鱗よりも薄汚れた髪はキレイになり、地の青髪が光り輝く方に目が行った。

泥まみれだった顔からはキレイで生き生きとした目が印象的だった。。

「へ? 気にならないの?」
「全然」

病がなければ、美少女だったのではと思った時の僕は誰にも言えないほど動揺していた。
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