公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

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ダンジョン編

スキル授与

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 スモールバットに囲まれてから、どれくらいの時間が経っただろうか?

 その間に何組かのパーティーに助けられた。

 襲われていると思われたのだろう。

「あの、すみませんけど、放って置いてもらえませんか?」

 スモールバッドは脆弱な生き物だ。

 簡単にその数を減らされてしまう。

 ましてや、天井近くにいるのではなく、僕に群がっているのだ。

 退治するのも簡単だ。

 せっかくの『解呪』スキル発動を満たす攻撃をしてくるスモールバッドと退治されるわけにはいかない。

 しかし、それがあらぬ誤解を招くことになったが、それはさておき……。

「ロスティ!! こんなところにいたのね! 探しちゃったじゃない!!」

「ミーチャ!!」

 急に現れたミーチャに気を取られてしまい、スモールバッドのドレインの集中攻撃を受けてしまい、『解呪』スキルが追いつかず、気を失ってしまった。

 次に気づいた時は、ミーチャに覗き込まれていた。
 
 頭の感触が気持ちいい……。

「ロスティ。大丈夫なの?」

「うん。もう大丈夫だ。まさか、スモールバッドにやられるとは思ってもいなかったよ。奴らもチャンスを狙っていたということか……」

「本当に大丈夫なの?」

 何を心配しているんだ?

 この通り、体はピンピンしているぞ。

「それにしても、よく僕があの場所にいるって分かったね」

 ミーチャが後ろにいるルーナの顔を見てから、不審そうな顔を浮かべていた。

「変な噂が流れていたのよ」

 噂?

「ダンジョン入り口でスモールバッドに囲まれて、笑っている人がいるって……詳しく聞いたら、背格好がロスティそっくりだったから……もしかしてと思ったんだけど」

 笑って? そんなに笑っていたかな?

「それにしても、あんなところで何をしていたの? 内容によっては、ロスティには少し休んでもらおうと思っているんだけど……」

 まるで頭のおかしい人みたいな言い草だな。

 これでも真剣に熟練度向上を考えていたのに。

 といっても、口で説明するよりスキルを渡したほうが良いかも知れない。

「ルーナ。こっちに来てくれ。君から預かったスキルを返すよ」

 なぜか、ルーナが申し訳無さそうな表情を浮かべてきた。

「申し訳ありません。やっぱり、負担になってしまいましたか? 熟練度なんて、そう簡単に上がるわけ無いですものね」

 ん? 何か勘違いをしているようだな。

 まぁいいか。

「それじゃあ、返すよ」

「はい……」

 順番は『状態異常回復』、『解呪』、『水鉄砲』の順だ。

 ルーナが淡く光り、それが霧散した。

 といっても体に変化はない。

 試しに『水鉄砲』スキルを発動しようとしたが、やはり発動しない。

 成功したようだ。

「ルーナはどうだ?」

「信じられません……一体、何をしたんですか? 多分ですけど……熟練度がすごく上がったような感じがします」

 ん? どういうことだ?

 そんな感覚があるのか?

「ロスティは感じたことがないの?」

 あれ? 僕だけ?

「熟練度が上がると、何が出来るかをスキルが教えてくれるっていうか……感覚的に分かるのよ。出来ることが増えたって……」

 これは神からもらったスキルではないからなのか?

 違いがあるとすれば、それくらいだ。

 だけど……『料理』スキルは色々と教えてくれるような気もするけど……

 考えても仕方がないな。

「それで? ルーナは何ができそうなんだ?」

「そうですね……」

 『状態異常回復』は痺れだけではなく、毒、石化、混乱などなど……かなりの数の状態異常を回復することが出来るようになったようだ。

 予想はしていたが、これほどの状態異常が回復できるとは……。

 かなり回復薬の節約ができそうだし、ダンジョンでかなり安心感があるな。 

 『解呪』は効果の範囲が広くなったみたいだ。

 このスキルはどうやら、どんなステータスに対する魔法でも打ち消すことが出来るようだが、熟練度が低いうちは本人か、手で触れられる人にしか効果が出なかったようだ。

「すごいな。これなら回復魔法師として十分に活躍できそうだな!!」

「はい!! 本当に信じられないですけど……やっぱり、ユグドラシルのお導きなんですね」

 そうかもしれないな……。

 『錬成師』スキルは普通のスキルとは思えないものだ。

 何かの導きと思ってしまうのも無理はないな。

「だけど、最後のスキルは残念だけど……」

 最後に『水鉄砲』は期待薄だな。

 実際に僕自身が試してみて、お遊びとしては使える程度だった。

「それは……すみません。私にはよく分からないんです」

 なるほど。確かにそうだ。

「ロスティ!! 聞き捨てならないわね。『水鉄砲』スキルは絶対に使えるわ。ルーナ、ちょっとやってみて」

「ここで、ですか?」

「もちろんよ。とりあえず……そこにある大岩にやってちょうだい」

 あれは……『水鉄砲』スキルでずっと遊んでいた時に使った大岩だ。

 まだ、若干濡れているから間違いない。

「じゃあ、いきます!」

 なんだろう……自分が育てたスキルを他人に譲って、それを自分の目で見るって……なんか変な感じだ。

 ドキドキするな。

 ルーナが『水鉄砲』スキルを楽しいと思ってくれると良いんだけど。

 ルーナの指先から水が迸《ほとばし》る。

 その勢いは大岩を砕くほどだった。

「まさか……そんな馬鹿な。僕が何度も使っても、こんな勢いは出なかったのに」

「やっぱりね。ロスティは魔法を使ったことがないから、操作が上手くないのよ」

 操作?

 どうやら魔法は魔力の出力の他に操作が合わさることで、威力や効果が飛躍的に向上するらしい。

 魔法師はとにかく、この操作に多くの時間を割くらしい。

「ルーナ?」

 魔法を放ってから、呆然としていた。

 もしかして、水でも浴びてしまったのか?

 とりあえず、タオルでも掛けておいてやるか。

 『無限収納』からタオルを取り出し、渡そうとしたら断られた。

「凄いですよ!! 何ですか? この魔法は。岩が……岩が壊れてしまいましたよ!!」

 もうね。現実から目を背けるのに苦労しているよ。

 遊び程度にしか使えないと思っていたスキルが、こんな攻撃力の高い魔法になってしまっているんだから。

「ルーナなら出来ると信じていたわ。やっぱり、すごいスキルだったわね。これで遠距離攻撃魔法使いが一人増えたわ」

「ルーナ。ちなみに、どれくらいの距離を飛ばすことが出来るんだ?」

 思いっきり飛ばしてもらったが、距離だけは僕のほうが長かったようだ。

 ただ、精度と破壊力は比べるまでもないけど……。

 ガルーダで空いた長距離攻撃魔法は、なんとかルーナで埋めることが出来た。

 そうなるともう一つ。

 結界魔法を使える人さえ、仲間に加えることができるのが理想的だったんだけど……。

「ロスティ。そこは私に任せて。思い当たることがあるの」

 ミーチャは冴えに冴えているようだ。

 これは期待できそうだ。

 そんなこんなで、特別クエストを受ける日になった。
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