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ダンジョン編
87 特別クエスト
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ゆっくりとした時間を過ごし、目覚めるとベッドにミーチャの姿がなかった。
ミーチャは早起きだ。
だから、ベッドにいないのはそんなに珍しいことではない。
だけど、部屋にもいないのはかなり珍しい。
どこにいったんだ?
と思っていたら、ミーチャが戻ってきたみたいだ。
「あら? 起こしちゃった?」
「いや、今起きたところだよ。どこかに行ってきたの?」
「うん。ちょっと……」
随分と濁すな。
話を聞いたら、反幻影魔法の練習をしてきたらしい。
「忘れないうちに練習しておこうと思ったの。やっぱり、私は戦力として十分じゃないと思うの。せめて、私にしか出来ないことは確実に覚えていきたいのよ」
自分にしか出来ないことか……。
それを言われると、僕にはあるだろうか?
思いつくのは料理しかないな……。
「そんなことはないと思うわ。ロスティの攻撃力は異常だと思うし……心眼ってやつを覚えたら、すごいことなんじゃないかしら?」
そうかな?
それでもやっぱり、自分にしか出来ないことを見つけたいな……。
料理でもいいんだけど、やっぱり冒険者としてのスキルが欲しいな。
「それよりも外でギルマスの使いって人に会ったわよ。なんでも緊急のクエストについて話があるから、昼に来てほしいって。私達もついにそんな信頼を得るまでになったのね。本当に凄いことよ」
ミーチャはかなり嬉しそうにしている。
なんだか楽しくなってきたな。
「じゃあ、ロスティ。朝ゴハンをよろしくね」
しばらくはミーチャに作ってもらっていたからな。
数日ぶりに包丁を握ることになるな。
さて、何を作ろうかな……。
昼になり、ギルマスのもとに向かうことにした。
「あれ? ガルーダは?」
当然、ガルーダにも声がかかっていると思ったので、探したが姿が見えない。
ミーチャも首を傾げていた。
「ガルーダは今回のことは辞退してきたぞ。本来は緊急クエストは断れないことになっているが……まぁ、理由は本人にでも聞いてくれ」
ギルマスに言われては何も言い返せない。
そうなると、今回の仕事はミーチャと二人っきりってことか?
ガルーダの戦力が無くなることに若干の不安がある。
「ロスティも不安になることがあるのか? 安心しろ。今回の任務は実に重要な仕事だ。もう一組をつけてある。そろそろやって来るはずだが……」
待っていると、ギルマスの言っていたもう一組が姿を現した。
「よく来たな。今回はロスティのパーティーと『オルフェンズ』に仕事を頼もうと思う」
ニーダがこちらをちらっと見てから、ギルマスを睨みつけた。
「ギルマス。一体、どういうつもりだ? オレ達はすぐにでもダンジョン攻略をしたいんだ。どんな仕事か知らないが、断らせてもらうぜ」
「冒険者ギルドの掟を知らないわけではあるまい?」
「ちっ! だったら……」
ニーダは苦々しい顔をこちらに向けてきた。
「こいつらと一緒っていうのは勘弁してくれよ。俺達で確実に仕事を達成してやる。だから……」
そんなに僕達と仕事をしたくないのか?
それとも戦力として不十分ってことか?
「何よ!! 偉そうに。ダンジョンで捕まっていたのを忘れたの? 助けたのは誰よ!! 言ってみなさい!」
やっぱり、ミーチャが怒り出したか。
「確かにロスティ達の実力はA級に匹敵するものだ。しかし、特殊クエストっていうのは腕っ節が良ければいいってもんじゃねぇんだ。経験が物を言う世界なんだよ。お前らみたいな、ひよっ子冒険者には荷が重いって言っているんだ」
経験と言われてしまえば、返す言葉もない。
ダンジョン攻略だって、ガルーダのアドバイスがなければかなり苦戦していただろう。
「ダメだ!! 今回は二つのパーティーでやってもらう。いいか? 今回の任務は、護衛だ。ニーダの言う通り、経験が必要となるが腕っ節も必要なのだ。お前たちの力が合わされば、凄い戦力となる」
護衛か……そういえば、公国にいた頃、護衛がよく付いていたな。
王国から剣術修行で各地を回っている人で、剣術をその人から教わったものだ。
あの人ともう一度会いたいものだな。
名前は……あれ? 思い出せないぞ。
「護衛だと? そんなの現地の冒険者に頼めばいいだろう。なにも、俺達が出向く必要なんてあるのか?」
「ニーダはこのクエストに乗り気ではないのか? いいか? このクエストが達成されれば、サンゼロの街に武器屋と雑貨屋が出来るのだ。ギルドとして、なんとしても達成しなければならない。だからこそ、過剰戦力と感じても、今一番実力のある二組をこのクエストに充てるのだ」
なるほど。
ようやく話が見えてきた。
武器屋がないことが最近、かなり大きな問題になってきている。
実はちらほらとサンゼロの街を離れる冒険者が出始めているのだ。
いくら未踏のダンジョンが魅力的でも、武器がなければ攻略なんて出来るものではない。
命あっての物種ということなのだろう。
「ちっ……」
ニーダは最後まで抵抗をしていたが、ギルマスがそれを許さなかった。
それにしても何からの護衛なんだ?
武器屋と雑貨屋を襲う集団なんているのか?
「それについては詳しくは言えない。冒険者ギルドの政治的な部分が関わってくるのだ。だが、確実に襲撃は来ると思っている。絶対に武器屋と雑貨屋を連れてきてくれよ」
僕とミーチャは力強く頷いたが、ニーダはやはり苦々しい顔を変えることはなかった。
やはりニーダは冒険者のために動くのが嫌いなんだろう。
「話は変わるが……実は教会支部と話がついてな。回復魔法師が通常の価格になった。ロスティのパーティーは回復役がいないだろ? これを機会に加えてみたらどうだ?」
どうしたものかな……とりあえず、様子だけでも見に行ってみようかな。
ミーチャの顔を見ると、「任せるわ」って言っているような感じがした。
「ん? どうしたんだ? ああ、金か……それについては問題はないと思うぞ。あとで換金のところに顔を出してみろ。満足する額を出してくれるはずだ」
そういえば、換金が終わる日だったな。
頷くと一旦、解散ということになった。
次の集合は二日後。
馬車で目的地に向かい、そこからは徒歩で護衛を務めることになっている。
その間に回復魔法師の段取りはつけておく必要があるな。
それとスキル屋で使えそうなスキルも確認しておこう。
やることは多そうだ。
するとニーダが肩を叩いてきた。
「止めるなら今のうちだぞ。今回はかなり危険な臭いがする。ロスティには、助けてもらった借りがある。俺からもギルマスに頼み込んでやるから!! なっ!!」
本当にこの人は僕達と行動を共にしたくないようだ。
借りを返すのが、僕達から仕事を無くす事をギルマスに頼み込むというのか?
ふざけるにも程がある。
「このクエストはここの冒険者にとって必要なことだと思っているんだ。だから、頼まれたからには絶対に成し遂げたいんだ。それを断るなんて……論外だ」
「ちっ!! いいか? どうなっても知らねぇからな? 俺は何度も忠告をしたんだからな。くそ!! おめぇら、行くぞ」
『オルフェンズ』の面々がこちらを睨みつけながら、姿を消した。
僕達も行こう。
なんとも不安を感じさせるクエストになりそうだな……。
ミーチャは早起きだ。
だから、ベッドにいないのはそんなに珍しいことではない。
だけど、部屋にもいないのはかなり珍しい。
どこにいったんだ?
と思っていたら、ミーチャが戻ってきたみたいだ。
「あら? 起こしちゃった?」
「いや、今起きたところだよ。どこかに行ってきたの?」
「うん。ちょっと……」
随分と濁すな。
話を聞いたら、反幻影魔法の練習をしてきたらしい。
「忘れないうちに練習しておこうと思ったの。やっぱり、私は戦力として十分じゃないと思うの。せめて、私にしか出来ないことは確実に覚えていきたいのよ」
自分にしか出来ないことか……。
それを言われると、僕にはあるだろうか?
思いつくのは料理しかないな……。
「そんなことはないと思うわ。ロスティの攻撃力は異常だと思うし……心眼ってやつを覚えたら、すごいことなんじゃないかしら?」
そうかな?
それでもやっぱり、自分にしか出来ないことを見つけたいな……。
料理でもいいんだけど、やっぱり冒険者としてのスキルが欲しいな。
「それよりも外でギルマスの使いって人に会ったわよ。なんでも緊急のクエストについて話があるから、昼に来てほしいって。私達もついにそんな信頼を得るまでになったのね。本当に凄いことよ」
ミーチャはかなり嬉しそうにしている。
なんだか楽しくなってきたな。
「じゃあ、ロスティ。朝ゴハンをよろしくね」
しばらくはミーチャに作ってもらっていたからな。
数日ぶりに包丁を握ることになるな。
さて、何を作ろうかな……。
昼になり、ギルマスのもとに向かうことにした。
「あれ? ガルーダは?」
当然、ガルーダにも声がかかっていると思ったので、探したが姿が見えない。
ミーチャも首を傾げていた。
「ガルーダは今回のことは辞退してきたぞ。本来は緊急クエストは断れないことになっているが……まぁ、理由は本人にでも聞いてくれ」
ギルマスに言われては何も言い返せない。
そうなると、今回の仕事はミーチャと二人っきりってことか?
ガルーダの戦力が無くなることに若干の不安がある。
「ロスティも不安になることがあるのか? 安心しろ。今回の任務は実に重要な仕事だ。もう一組をつけてある。そろそろやって来るはずだが……」
待っていると、ギルマスの言っていたもう一組が姿を現した。
「よく来たな。今回はロスティのパーティーと『オルフェンズ』に仕事を頼もうと思う」
ニーダがこちらをちらっと見てから、ギルマスを睨みつけた。
「ギルマス。一体、どういうつもりだ? オレ達はすぐにでもダンジョン攻略をしたいんだ。どんな仕事か知らないが、断らせてもらうぜ」
「冒険者ギルドの掟を知らないわけではあるまい?」
「ちっ! だったら……」
ニーダは苦々しい顔をこちらに向けてきた。
「こいつらと一緒っていうのは勘弁してくれよ。俺達で確実に仕事を達成してやる。だから……」
そんなに僕達と仕事をしたくないのか?
それとも戦力として不十分ってことか?
「何よ!! 偉そうに。ダンジョンで捕まっていたのを忘れたの? 助けたのは誰よ!! 言ってみなさい!」
やっぱり、ミーチャが怒り出したか。
「確かにロスティ達の実力はA級に匹敵するものだ。しかし、特殊クエストっていうのは腕っ節が良ければいいってもんじゃねぇんだ。経験が物を言う世界なんだよ。お前らみたいな、ひよっ子冒険者には荷が重いって言っているんだ」
経験と言われてしまえば、返す言葉もない。
ダンジョン攻略だって、ガルーダのアドバイスがなければかなり苦戦していただろう。
「ダメだ!! 今回は二つのパーティーでやってもらう。いいか? 今回の任務は、護衛だ。ニーダの言う通り、経験が必要となるが腕っ節も必要なのだ。お前たちの力が合わされば、凄い戦力となる」
護衛か……そういえば、公国にいた頃、護衛がよく付いていたな。
王国から剣術修行で各地を回っている人で、剣術をその人から教わったものだ。
あの人ともう一度会いたいものだな。
名前は……あれ? 思い出せないぞ。
「護衛だと? そんなの現地の冒険者に頼めばいいだろう。なにも、俺達が出向く必要なんてあるのか?」
「ニーダはこのクエストに乗り気ではないのか? いいか? このクエストが達成されれば、サンゼロの街に武器屋と雑貨屋が出来るのだ。ギルドとして、なんとしても達成しなければならない。だからこそ、過剰戦力と感じても、今一番実力のある二組をこのクエストに充てるのだ」
なるほど。
ようやく話が見えてきた。
武器屋がないことが最近、かなり大きな問題になってきている。
実はちらほらとサンゼロの街を離れる冒険者が出始めているのだ。
いくら未踏のダンジョンが魅力的でも、武器がなければ攻略なんて出来るものではない。
命あっての物種ということなのだろう。
「ちっ……」
ニーダは最後まで抵抗をしていたが、ギルマスがそれを許さなかった。
それにしても何からの護衛なんだ?
武器屋と雑貨屋を襲う集団なんているのか?
「それについては詳しくは言えない。冒険者ギルドの政治的な部分が関わってくるのだ。だが、確実に襲撃は来ると思っている。絶対に武器屋と雑貨屋を連れてきてくれよ」
僕とミーチャは力強く頷いたが、ニーダはやはり苦々しい顔を変えることはなかった。
やはりニーダは冒険者のために動くのが嫌いなんだろう。
「話は変わるが……実は教会支部と話がついてな。回復魔法師が通常の価格になった。ロスティのパーティーは回復役がいないだろ? これを機会に加えてみたらどうだ?」
どうしたものかな……とりあえず、様子だけでも見に行ってみようかな。
ミーチャの顔を見ると、「任せるわ」って言っているような感じがした。
「ん? どうしたんだ? ああ、金か……それについては問題はないと思うぞ。あとで換金のところに顔を出してみろ。満足する額を出してくれるはずだ」
そういえば、換金が終わる日だったな。
頷くと一旦、解散ということになった。
次の集合は二日後。
馬車で目的地に向かい、そこからは徒歩で護衛を務めることになっている。
その間に回復魔法師の段取りはつけておく必要があるな。
それとスキル屋で使えそうなスキルも確認しておこう。
やることは多そうだ。
するとニーダが肩を叩いてきた。
「止めるなら今のうちだぞ。今回はかなり危険な臭いがする。ロスティには、助けてもらった借りがある。俺からもギルマスに頼み込んでやるから!! なっ!!」
本当にこの人は僕達と行動を共にしたくないようだ。
借りを返すのが、僕達から仕事を無くす事をギルマスに頼み込むというのか?
ふざけるにも程がある。
「このクエストはここの冒険者にとって必要なことだと思っているんだ。だから、頼まれたからには絶対に成し遂げたいんだ。それを断るなんて……論外だ」
「ちっ!! いいか? どうなっても知らねぇからな? 俺は何度も忠告をしたんだからな。くそ!! おめぇら、行くぞ」
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僕達も行こう。
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