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ダンジョン編
84 反幻影魔法
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ギガンテスを倒していないと疑ってしまったが、攻撃が来ないところを見ると間違いはなさそうだ。
それでも慎重にミーチャの側に近づくと、ミーチャの方から手を伸ばしてきた。
「ロスティ。やっぱり幻影魔法が使われていると思うわ」
やはりな……
「でもギガンテスは倒したはずだ。魔法は奴の仕業ではないのか?」
普通、魔法は術者を倒せば解けるはずだ。
しかし、一向に解ける気配がない。
それはつまり……。
ここに幻影魔法を掛けたやつが他にいるってことだ。
「幻影魔法が解けそうなのか?」
「多分……やったことがないから自信はないけど、何となく出来る気がするの」
そういうと、ミーチャは詠唱を始めた。
ん? そういえば、ミーチャって詠唱なんてやったことあったけ?
いつもは一言で魔法が発動していたような気がするけど。
今はいいか。
「反幻影魔法《アンチ・シムークルム》!!」
ミーチャが天に指差すような仕草をすると、指先から波紋が広がるように霧が一気に晴れていくのが見えた。
みるみる階層中に広がっていく。
後ろを振り返ると、突っ立っていたギガンテスがチリのように消えていった。
ミーチャが「ふう……」とため息を付いた。
「凄かったな。こんな魔法が使えるなんて……」
「それだけ私の熟練度も上がってことなのかな? ロスティと冒険できたおかげね」
そんなことはない。
ミーチャはいつだって努力家だ。
「それにしても凄かったわね。ロスティ、あのモンスターの姿が見えなかったんでしょ?」
「俺もそれを驚いているぞ。剣士系のスキル持ちはあのような技を使うと聞いたことがあるが……」
「あの時は無我夢中と言うか……まさか僕に出来るとは思ってもいなかったよ。だけど、姿がハッキリと見えていたわけではないんだ。魔法剣が無かったら、正直、あの作戦も思いつかなかっただろうし……勝てたのはミーチャのおかげだよ」
とにかく幻影魔法が解ければ、ここにいる必要はない。
「小僧。ギガンテスのドロップ品を回収したらどうだ?」
そういえば……ギガンテスはどこで倒したんだ?
……これがそうかな?
そこには巨大な目が落ちていた。
ギガンテスの目?
正直、かなりグロテスクだ。
『料理』スキルが騒々しいが、絶対に食べないぞ。
見えない壁に近づいたが、どうやら壁も消えているようだ。
「ミーチャ。壁もなくっているみたいだ」
「当然よ。この階層すべての幻影魔法は解除してあるんですもの。でも、なんだったのかしら? 実体に近い幻影魔法って、聞いたことないわよ。相当の闇魔法使いの使い手よ」
そういうものなのか……たしかにこんな壁が作れたら、防御結界として使えそうだな。
ガルーダの専売と思っていた防御結界がミーチャでも使えるかも知れないってことか……
なるほど……。
「お前ら! 無事だったか!?」
なんだ?
冒険者の誰かが戻ってきた?
姿を現したのは……S級冒険者の……『ハングドルグ』だったっけ?
しかし、なんで彼らが?
「まさか、こんな場所でお前らに会うとはな。なかなかサンゼロの街にもいい冒険者がいるじゃねぇか」
……S級だったら、幻影魔法が使えてもおかしくないか?
どうもタイミンが良すぎる。
「なんだ、その顔は? 俺が分からねぇのか? 『ハングドルグ』リーダのグラブだぞ」
名前なんてどうでもいい。
「あなた達が幻影魔法を使ったのか?」
「あん? どういう事だ? オレ達はさっき下の階層から上がってきたばかりだ。下の階層は厄介なモンスターが多くてな、ちょいと休むために地上に戻るつもりだったんだ。魔法を使う余力なんてあるわけねぇだろうが」
どうも信じられない。
「それに言っておくが幻影魔法を使えるやつなんて、俺たちのパーティーにはいないぜ。何のスキルを持っているかは教えられねぇけどな。とにかく、下に向かうなら、気をつけるんだな。もっとも、こんな場所で苦戦している奴が下で戦えるとは思えないけどな」
確かに幻影魔法は闇魔法使いしか使えないはずだ。
闇魔法はとにかく使い手が少ない。
パーティーにいないのが当たり前だ。
「たしかにグラブの言う通りかもしれないな。それにしても冒険者の失踪があったのは知らなかったのか?」
「失踪? 何のことだ?」
本当に知らなそうな顔をしている。
こいつらではないのか?
確たる証拠もないから、これ以上は何も言えないな。
「ああ。そういえば、『白狼』もこのダンジョンにいるみたいだな。もしかしたら、あいつらなら知っているかもな。言っておくが、あいつらをあまり信用するなよ。獣人は人間を恨んでいるやつが多いからな。それに怪しい術を使うやつもいる。まぁ、気をつけろよ」
それだけを言って、『ハングドルグ』は階段を昇っていった。
一体、どうなっているんだ?
もしかして、この幻影と冒険者の失踪に『白狼』が関わっているのか?
ダメだ。今は何も分からない。
「ミーチャ。どう思う?」
「分からないわ。今回のことで、私達が本当に何も知らないことが分かったわね。少なくとも冒険者の失踪はモンスターだけの仕業とは思えないってこともね。同じ冒険者を疑いたいとは思わないけど……」
確かにその通りだ。
問題を解決しようにも、僕達は何も知らなすぎる。
いや、ここに詳しい人がいるではないか。
「俺も同じだな。ギガンテスが牢屋の鍵を閉めるとは思えないからな」
使えない……いや、たしかに牢屋は鍵が掛けられていた。
あのギガンテスが鍵を掛けているなんて想像も出来ない。
冒険者の中に、この失踪事件に関係があるのか……。
とにかく、先行した冒険者たちが心配だ。
『ハングドルグ』も後を追うように向かったが、冒険者を助けてくれるような雰囲気はない。
「僕達も一旦、上に向かおう。下にいる『白狼』から話を聞きたかったけど、冒険者が心配だ」
「俺も流石に疲れたぞ。冒険者のやつらも見つかったし。とりあえず、ギルマスに報告をしたほうがいいだろう」
「私もさっきの魔法を解除するのにかなりの魔力を使っちゃったみたい」
下に向かうのを止め、地上を目指すことにした。
途中で冒険者たちの一団と出会い、協力してモンスターを討伐していった。
中には『オルフェンズ』のニーダの姿もあった。
「ニーダ。無事だったか」
「ああ。お前か。本当に変わったやつだな」
どういう意味だ?
「さっき、『ハングドルグ』の連中が上に向かったぜ。俺達なんて当然無視だ。あれが普通の冒険者の姿だ。言っている意味が分かるな?」
「言っただろ? 冒険者は仲間だ。助けるのは当然だろ?」
ニーダは少し笑った気がした。
「本当に変わったヤツだな。だがな、俺はお前みたいな冒険者は認めねぇからな。勘違いするんじゃねぇぞ」
少し表情が暗くなったような気がするが、もしかして腹でも減っているのか?
まぁ、冒険者も色々いるんだろう。
他人は関係ない。
冒険者は仲間……誰に何を言われても変えるつもりはない。
「私もロスティと同じ考えよ」
本当にミーチャの存在は心強いよ。
「ありがとう。ミーチャ」
久々に見た地上は本当に眩しかった。
冒険者たちは大声を上げ、互いの無事を喜んでいた。
それでも慎重にミーチャの側に近づくと、ミーチャの方から手を伸ばしてきた。
「ロスティ。やっぱり幻影魔法が使われていると思うわ」
やはりな……
「でもギガンテスは倒したはずだ。魔法は奴の仕業ではないのか?」
普通、魔法は術者を倒せば解けるはずだ。
しかし、一向に解ける気配がない。
それはつまり……。
ここに幻影魔法を掛けたやつが他にいるってことだ。
「幻影魔法が解けそうなのか?」
「多分……やったことがないから自信はないけど、何となく出来る気がするの」
そういうと、ミーチャは詠唱を始めた。
ん? そういえば、ミーチャって詠唱なんてやったことあったけ?
いつもは一言で魔法が発動していたような気がするけど。
今はいいか。
「反幻影魔法《アンチ・シムークルム》!!」
ミーチャが天に指差すような仕草をすると、指先から波紋が広がるように霧が一気に晴れていくのが見えた。
みるみる階層中に広がっていく。
後ろを振り返ると、突っ立っていたギガンテスがチリのように消えていった。
ミーチャが「ふう……」とため息を付いた。
「凄かったな。こんな魔法が使えるなんて……」
「それだけ私の熟練度も上がってことなのかな? ロスティと冒険できたおかげね」
そんなことはない。
ミーチャはいつだって努力家だ。
「それにしても凄かったわね。ロスティ、あのモンスターの姿が見えなかったんでしょ?」
「俺もそれを驚いているぞ。剣士系のスキル持ちはあのような技を使うと聞いたことがあるが……」
「あの時は無我夢中と言うか……まさか僕に出来るとは思ってもいなかったよ。だけど、姿がハッキリと見えていたわけではないんだ。魔法剣が無かったら、正直、あの作戦も思いつかなかっただろうし……勝てたのはミーチャのおかげだよ」
とにかく幻影魔法が解ければ、ここにいる必要はない。
「小僧。ギガンテスのドロップ品を回収したらどうだ?」
そういえば……ギガンテスはどこで倒したんだ?
……これがそうかな?
そこには巨大な目が落ちていた。
ギガンテスの目?
正直、かなりグロテスクだ。
『料理』スキルが騒々しいが、絶対に食べないぞ。
見えない壁に近づいたが、どうやら壁も消えているようだ。
「ミーチャ。壁もなくっているみたいだ」
「当然よ。この階層すべての幻影魔法は解除してあるんですもの。でも、なんだったのかしら? 実体に近い幻影魔法って、聞いたことないわよ。相当の闇魔法使いの使い手よ」
そういうものなのか……たしかにこんな壁が作れたら、防御結界として使えそうだな。
ガルーダの専売と思っていた防御結界がミーチャでも使えるかも知れないってことか……
なるほど……。
「お前ら! 無事だったか!?」
なんだ?
冒険者の誰かが戻ってきた?
姿を現したのは……S級冒険者の……『ハングドルグ』だったっけ?
しかし、なんで彼らが?
「まさか、こんな場所でお前らに会うとはな。なかなかサンゼロの街にもいい冒険者がいるじゃねぇか」
……S級だったら、幻影魔法が使えてもおかしくないか?
どうもタイミンが良すぎる。
「なんだ、その顔は? 俺が分からねぇのか? 『ハングドルグ』リーダのグラブだぞ」
名前なんてどうでもいい。
「あなた達が幻影魔法を使ったのか?」
「あん? どういう事だ? オレ達はさっき下の階層から上がってきたばかりだ。下の階層は厄介なモンスターが多くてな、ちょいと休むために地上に戻るつもりだったんだ。魔法を使う余力なんてあるわけねぇだろうが」
どうも信じられない。
「それに言っておくが幻影魔法を使えるやつなんて、俺たちのパーティーにはいないぜ。何のスキルを持っているかは教えられねぇけどな。とにかく、下に向かうなら、気をつけるんだな。もっとも、こんな場所で苦戦している奴が下で戦えるとは思えないけどな」
確かに幻影魔法は闇魔法使いしか使えないはずだ。
闇魔法はとにかく使い手が少ない。
パーティーにいないのが当たり前だ。
「たしかにグラブの言う通りかもしれないな。それにしても冒険者の失踪があったのは知らなかったのか?」
「失踪? 何のことだ?」
本当に知らなそうな顔をしている。
こいつらではないのか?
確たる証拠もないから、これ以上は何も言えないな。
「ああ。そういえば、『白狼』もこのダンジョンにいるみたいだな。もしかしたら、あいつらなら知っているかもな。言っておくが、あいつらをあまり信用するなよ。獣人は人間を恨んでいるやつが多いからな。それに怪しい術を使うやつもいる。まぁ、気をつけろよ」
それだけを言って、『ハングドルグ』は階段を昇っていった。
一体、どうなっているんだ?
もしかして、この幻影と冒険者の失踪に『白狼』が関わっているのか?
ダメだ。今は何も分からない。
「ミーチャ。どう思う?」
「分からないわ。今回のことで、私達が本当に何も知らないことが分かったわね。少なくとも冒険者の失踪はモンスターだけの仕業とは思えないってこともね。同じ冒険者を疑いたいとは思わないけど……」
確かにその通りだ。
問題を解決しようにも、僕達は何も知らなすぎる。
いや、ここに詳しい人がいるではないか。
「俺も同じだな。ギガンテスが牢屋の鍵を閉めるとは思えないからな」
使えない……いや、たしかに牢屋は鍵が掛けられていた。
あのギガンテスが鍵を掛けているなんて想像も出来ない。
冒険者の中に、この失踪事件に関係があるのか……。
とにかく、先行した冒険者たちが心配だ。
『ハングドルグ』も後を追うように向かったが、冒険者を助けてくれるような雰囲気はない。
「僕達も一旦、上に向かおう。下にいる『白狼』から話を聞きたかったけど、冒険者が心配だ」
「俺も流石に疲れたぞ。冒険者のやつらも見つかったし。とりあえず、ギルマスに報告をしたほうがいいだろう」
「私もさっきの魔法を解除するのにかなりの魔力を使っちゃったみたい」
下に向かうのを止め、地上を目指すことにした。
途中で冒険者たちの一団と出会い、協力してモンスターを討伐していった。
中には『オルフェンズ』のニーダの姿もあった。
「ニーダ。無事だったか」
「ああ。お前か。本当に変わったやつだな」
どういう意味だ?
「さっき、『ハングドルグ』の連中が上に向かったぜ。俺達なんて当然無視だ。あれが普通の冒険者の姿だ。言っている意味が分かるな?」
「言っただろ? 冒険者は仲間だ。助けるのは当然だろ?」
ニーダは少し笑った気がした。
「本当に変わったヤツだな。だがな、俺はお前みたいな冒険者は認めねぇからな。勘違いするんじゃねぇぞ」
少し表情が暗くなったような気がするが、もしかして腹でも減っているのか?
まぁ、冒険者も色々いるんだろう。
他人は関係ない。
冒険者は仲間……誰に何を言われても変えるつもりはない。
「私もロスティと同じ考えよ」
本当にミーチャの存在は心強いよ。
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久々に見た地上は本当に眩しかった。
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