公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

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ダンジョン編

76 新たな仲間

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 なんとかガルーダの助けで戦闘を脱することが出来た。

 空からの攻撃がこれほど厄介なものとは想像もしていなかった。

 やはり、無理をしてでも遠距離攻撃のスキルを得ておくべきだったか。

 いや、弓矢を武器として用意しておくことも考えておくべきだった。

「助かったよ。ガルーダ。相変わらず、土魔法は本当に有用だな。まぁ、造形魔法はどうかと思うけど……」

「こっちも助かった。回復薬が無くて、体力が底突きそうだったんだ。ところで小僧たちは攻略を?」

 攻略は当然目標だが、失踪した冒険者を助けることを主眼に置いていることを説明した。

「小僧……俺はこれほど感動したことはない。冒険者にも血の通ったやつがいたなんてな……口では偉そうなことを言っても、どいつもこいつも金のことばかりだ。よし!! 俺もその行動に加わらせてくれ!」

 ガルーダが仲間になった……。

 いやいやいや、可怪しいんじゃないか?

「ガルーダ、仲間はどうしたんだ?」

「分からねぇ。知らないうちにハグレていたんだ。鉱山入り口までは一緒だったんだがな」

 そんなことがあるのか?

 考えてみれば、前回も一人で彷徨っていたよな?

 もしかして……いや、ガルーダは優秀だ。

 そんな訳はないよな……

「ミーチャはどう思う?」

「ん? 私はいいと思うわよ。さっきの土魔法? は私達のパーティの不足分を補っているもの。これから未知のモンスターが出てくることを考えると戦力は多いほうがいいと思うわ」

 ミーチャはガルーダの溜めの声が気にならないのだろうか?

 まぁ、確かにミーチャの言うことにも一理ある。

「ガルーダは仲間を探すのか?」

「いや、他の冒険者を優先して構わねぇぞ」

 うん。間違いないな。

 きっと仲間と何かあったな。

 ハグレたんじゃなくて……いや、これ以上は考えないようにしよう。

「分かった。ガルーダはとにかくモンスターを僕に集めてくれ。攻撃が当たれば、大抵のモンスターは倒すことが出来るはずだ」

「ああ。分かったぜ。しかし、驚いたもんだぜ。会った時はオークにも苦戦していた小僧だったのによ。実力を隠していやがったんだな!!」

 そんなことはないけど、『錬成師』のスキルを話すことは出来ない以上は頷くしかないな。

「全く……趣味が悪いぜ」

 ガルーダには言われたくないな。

 これから鉱山に向かうが……その前にガルーダの装備の確認だ。

 ガルーダはこう見えてもサンゼロの街では代表的なB級冒険者だ。

 ギルマスからの信頼も篤く、直接の仕事を受けることも多いらしい。

 そんなガルーダの装備品は実に質素だ。

 基本、裸だ。

 いや、正確に言えば裸ではないが、上半身は常に肌を露出している。下は色々。

 しかし、意外と違和感がない。

 それは認めたくはないが、羨むくらいの筋肉をしているからだ。

 さらにタトゥーが全身に描かれており、それが衣服と混同するほどのものなので裸でも違和感を感じないのだ。

「ガルーダは本当に魔法使いなのか? その筋肉に意味なんてないだろうに」

「分からないのか? 美しいからだ。俺は自分を美しいと思っている。この筋肉……もはや芸術の領域ではないか!!」

 前と言っていることが違うような気もしないでもないけど……いっか。

 それ以外は魔法使いらしく、杖を持っている。

 もちろんガルーダ石同様、自分の形を模ったものだ。

 どこを指差しているか分からないポーズだ。

 一応、カバンも見せてもらった。

 回復薬はないと言っていたが、カバン自体はかなり大きく膨れていたからだ。

 ドロップ品でも入っているのかと思ったが……

「これは?」

「ん? おお。よく聞いてくれた。オイルだ」

 オイル? 一体何に使うんだ?

 モンスターに投げると何か効果があるとか?

「そうではない。肉体を美しく見せるためのものだ。どんなときでも、その精神を忘れてはいけない。前にも言ったな。それが美学だと」

 ダメだ……この人は本当にダメな人だ。

「ねぇ、ロスティ。この人、かなり変わった人よね? もしかして、ヤバイ人?」

 ミーチャも段々気付いてきたようだな。

 ガルーダはかなりの変人だ。

 ガルーダのカバンには、そのオイルの瓶が溢れんばかりに入っていた。

 半分は空き瓶だから、すでにかなりの量を消費しているようだ。

 ちょっと気になることが出来た。

 いや、これは聞いておかねばならない。

 本来であれば、こんなことを聞くのはどうかしていると思うが……

「オイルが無くなったら……ガルーダはどうするんだ?」

 しばらく沈黙が流れた。

 ガルーダがすごく悩んでいる。

 なんとなく、こうなることは感じていた。

 きっとガルーダにとってオイルは必要不可欠なものなんだ。

 全く理解できないけど、ガルーダ石にしなければ攻撃を出来ないという不可解な行動をするガルーダならば納得だ。

「小僧……恐ろしいことを言うようになったな……そうだな。そうなれば……」

 撤退だ!! とか言い出すんだろうなぁ。

「スライムを塗りたくるわ!! オイルには劣るがな」

 おお!! すごい斜め上の答えが来たぞ。

 スライムを塗る?

 そんなこと出来るの?

 いや、そんな事よりもやったことあるの?

「あれは……」

 話が長くなるので割愛しよう。

 ミーチャと共にガルーダにかなり不信感……いや、不安を感じながらも共に冒険者を探す旅を始めることにした。

 今、見つかっているだけでも20階層にもなるらしい。

 鉱山の入り口はすぐ目の前だ。

 公国にいた頃、鉱山の視察に出向いたことがある。

 坑道を木枠で固定しながら、掘り進むらしい。

 そのため、入り口からずっと木枠が並ぶような風景が広がる。

 しかし、目の前にある鉱山の入り口はとてもそんなものではない。

 坑道の表面は黒いなにかに覆われており、崩れる心配は感じない。

 どんなに叩いても、反響もしない。土が剥がれるようなこともない。

 独特な臭いと冷気を感じる。

「小僧はダンジョンは初めてだったな。ここから先はさっきまでの場所と一緒と思うなよ。エリアタイプは精々、平原が森に変化するくらいだが、地下タイプは階層が変わるごとに別世界みたいに変わる。だから、絶対に気を抜くんじゃねぇぞ」

「分かった。ここではガルーダのほうが経験が豊富だ。何かあれば、すぐに命令をしてくれ」

「何、言ってやがる。このパーティーのリーダーは小僧だろ? もうちっと自信を持て。小僧なら、どんなことにも対処が出来るだろうよ。それより、さっきのサンドイッチって言ったか? あれをもう一つくれねぇか?」

 ガルーダこそ、気を抜かないか心配になってくるな。

 とにかく鉱山の奥地……ダンジョンの最深部に向け、僕達は足を踏み出した。
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