公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

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ダンジョン編

75 ダンジョン攻略

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 ダンジョンの外縁に到着してから、一応装備品の確認をしよう。

 僕の装備は木聖剣と短剣が武器となっている。

 二刀流ということにしているが、基本的には木聖剣での殴打だ。

 最近はそれで十分にモンスターと渡り歩くくらいには強くなっている。

 防具と言えるものは残念ながらない。

 モンスターの攻撃だけは注意しなければならないが、『戦士』スキルの熟練度が上がっているせいか、身体の強度はかなり上がっている。

 ミーチャに叩かれても、痛みを感じないほどだ。

 一方、ミーチャの装備は杖だ。一応、魔法剣を所持しているがどうしても必要という時以外は使うつもりはないようだ。

 防具はボリの街で買った黒装束だ。

 俊敏性を向上させる効果が付与された高級防具だ。

 網タイツと合わさり、なんともいえない気持ちを与えてくれる。

 さらに褐色の肌と合わされば、闇夜に溶け込む彼女に敵う者はいないだろう。

 装備品以外はすべて『無限収納』に納められている。

 殆どが回復薬や解毒薬となるが……実はキッチン一式が入っている。

 冒険者用に貸し出されている物だが、持っていけるなら持っていってもいいという制度になっていた。

 火が使えるのかが心配だったが、魔道具だったらしく数年は問題なく使えるようだ。

 おかげで現地で温かい食事をすることが出来る。

「最初の食事はサンドイッチで決まりだからね!!」

 ミーチャはかなりサンドイッチが御気に召しているようだ。

 一応、かなりの量の調理済み料理は持ち込んでいるが、この先はどうなるか分からないからね。

「よし、行こうか。地図によれば、この先の鉱山跡地に向かえばいいということだけど、なるべく戦闘は避けたほうがいいと思うんだ」

「そうね。この辺りのモンスターならば倒すのに苦労はないでしょうけど、二人しかいないことと失踪が多いことを考えると遠回りしてでも避けたほうがいいわね」

 決まりだな。

 強敵が多い森を突っ切る、最短距離の北の進路を止め、遠回りになるが森を大きく迂回する東に進路を取ることにした。

 平原ならば、強いモンスターと言ってもオーク程度だ。

 時々、オークキングがやってくるが、まぁなんとかなるだろう。

 ミーチャの幻惑魔法があるおかげで物理攻撃をしてくるモンスターには結構強いパーティになっている。

「早速、お出ましね」

 フォレストドラゴンだった。

 最初っから大物だ。

 だが……幻影魔法で僕の分身体を作っている隙に近づくことが出来れば……

「楽勝だな」

「私の闇魔法のおかげでしょ?」

 何も言えない。

 『戦士』スキルのおかげで攻撃力は飛躍的に向上した。

 防御力もだ。

 しかし、敏捷性は最悪だ。

 とにかく動きが遅い。

 モンスター相手にこの動きの遅さは致命的だ。

 そこを補ってくれるのが分身体。

 モンスターがその分身体に注意を逸しているうちに攻撃を加えることが出来るのだ。

 攻撃が当たれば、大抵の敵は一撃で倒すことが出来る。

「本当に信じられないわ。ただの木の枝にしか見えないんだもの」

 この木聖剣で百を超える戦いをしてきたが、一度も壊れる様子もない。

 それに具合も良くなり、攻撃力が上がっているとさえ思えてしまう。

 本当に『白狼』のルカに売らなくてよかった……

 左に森を見ながら、ひたすら突き進む。

「本当に不気味よね」

 ここには人間は僕達以外にはいない。他の冒険者の影はどこにもないのだ。

 それもそのはずか。こんな時期にダンジョン攻略をする人はいない……いや、正確にはそんな人はすでにダンジョンにいると言った方がいいかな。

 サンゼロの街の上位にいる冒険者はダンジョンに囚われている。

「この先に絶対に失踪した冒険者たちがいるはずだ。とにかく見つけ次第、保護をしよう」

「そうね」

 何度も休憩をしながらも、森に入らずになんとか中心地である鉱山跡地に到着することが出来た。

 そこでも、やはり失踪した冒険者の存在の片鱗でもと期待したが、何もなかった。

 それにしても……モンスターが厄介だ。

 中心に近づいていくにしたがって、見たことのないモンスターが現れるようになった。
 

 空からの襲撃をしてくるガーゴイルというモンスター。

 物理攻撃が効かないゲル状モンスター、スライム。

 高い物理防御を持つ石のモンスター、ゴーレム。

 とにかく戦いづらい。

「ミーチャ。幻影魔法を!!」

「分かっているわ!! ロスティ! 後ろからも来ているわよ!」

 多勢に無勢。

 やっぱり二人での攻略は難しいのか……。

「むう!! ストーンバレット!!」

 この声は!!

「ガルーダ!!」

「まだだ。気を抜くなよ。小僧。俺がガーゴイルを落とす。それを叩くんだ!!」

 ガルーダ石は見事にガーゴイルの羽に直撃した。

 ガーゴイルは飛ぶことを諦めたのか、僕を標的に嘴を立てて、一気に突っ込んできた。

「ぐふっ」

「ロスティ!!」

「大丈夫だよ……ミーチャ」

 ガーゴイルの嘴が突き刺さることはなかった。

 飛んでさえいなければ、こんなモンスターは僕の敵ではない。

 ガーゴイルの頭を押さえつけ、木聖剣で首筋を叩きつけた。

 ガーゴイルは即死だった。すぐにドロップ品に姿を変えた。

「ガルーダ!! ゴーレムにも魔法を。その隙に……」

「小僧。逸るな。ゴーレムはな、高い防御力があると言われているが、こうやって倒すんだ……むう!! 石像変形《ストーントランス》!!」

 信じられない……ゴーレムが……ガルーダ石になってしまった。

「小僧。これを思いっきり殴ってみろ」

 こんな石の塊を殴ったら、手が大変なことになるんじゃないのか?

「やってみろ!!」

 力半分程度に抑えて、殴り掛かるとガルーダ石はすぐに砂と化し、ドロップ品だけが地面に落ちた。

「どういうことだ?」

「これが造形師の真骨頂だ。石系のモンスターならば、どれほどのものでも俺の敵ではない。いいか? スキルは使いようだ。だがな……」

 ガルーダは急に怖い顔になった。

 きっと為になることを言ってくれるはずだ。

「儂の……ガルーダ石を見つけても、殴るんじゃないぞ。今回は特別だからな」

 もう……本当にこの人は嫌だ。

 戦闘に緊張感が全く無い!!

 僕は心に誓った。

 ガルーダ石をダンジョンで見つけたら、片っ端から壊そう、と。
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