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ダンジョン編

67 新武器入手

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 魔法剣を手に入れた。

 もちろん、僕には使えない。

 魔法師用の武器ということなので、『戦士』スキルでは魔力を操ることが出来ない。

 ちなみに、魔力は誰にでもあるらしい。

 スキルによって魔力を引き出すことが出来ると言うのだ。

 なんにしても、魔力を扱うには魔法師のスキルが必要ということ。

 とりあえず、店員から使い方を教えて貰い、ミーチャにプレゼントすることにした。

「えっ? なに? プレゼント? 凄く嬉しい……」

 箱を手渡した時は、凄く嬉しそうな顔をしていたが、刀身のない剣を見ると怒られた。

「ロスティ。これはちょっと酷くない? 私には戦う力がないって、暗にそう言っているわけ?」

 とてもご立腹だ。

 魔法剣の事を説明しても、なかなか信じてもらえなかった。

「そんな武器、聞いたこともないわよ……全く。魔力を流しただけで剣が出るわけ……あっ、出た」

 すごい……柄に対して、刀身がやや大きすぎるような気もするが、立派な剣だ。

「ちょ、ちょっと! ロスティ。これどうするのよ!?」

 たしか、店員が言うには……

「イメージを明確にするといいらしいよ」

「明確って言っても……」

 確かにそのとおりだね。

 手にした短剣をミーチャに見せた。

「これをイメージしてみて」

「うん……」

 おお、光り輝く剣が徐々に小さくなって、短剣ほどの大きさになったぞ。

 これなら柄にぴったりな感じだな。

 剣は部屋中にまばゆい光を放つ。

 魔法剣は魔力を大量に使うって聞いたけど……

「ミーチャ、体に何か変化はない?」

「うーん。今のところは。これ、どれくらいの攻撃力があるのかしら? ちょっと試してみたいわ」

 あれ? 店員が言っていたことと違う感じがするな。

 それともミーチャの魔力が凄い?

 ミーチャが急かすので、ダンジョンで試し切りをすることにした。

 うん……すごかった。

 最初は短剣の状態で魔法剣を使っていたけど、命中率がかなり悪い。

 避ける敵に対して、追いつかない感じかな。

 そこで考えたのが、思いっきり長い剣を使ってみること。

 やってみて分かったけど、魔法剣はどんな剣でも重さが変わらない。

 その代わり、大きさに応じて魔力消費量が増えるみたいだ。

 といっても、相当使ってから分かった程度だから、やっぱり大した魔力を使わないのかな?

 長い剣はすごかった。

 振り回すだけ。

 それで大抵のモンスターは真っ二つになる。

「もしかして、僕要らない?」

 そうボヤいてしまうほど、凄かった。

「凄いけど、やっぱり武器の扱いが下手すぎて使いづらいわ。何度もロスティに当たりそうになったし。攻撃というより護身向きにしか使えないわね」

 そうかなぁ?

 全てを切り裂くような勢いで凄かったのになぁ。

「使ってみて分かったけど、これはかなり使いづらい武器よ。常にイメージを流してないといけないから、戦闘に集中が出来ないわ。やっぱり、私は魔法一本でいったほうがいいみたい」

 まぁ、本人がいうなら仕方ないか。

 攻撃が増えたことで戦略が広がると思ったけど、なかなか上手くはいかないな。

「でも、ありがとうね。最初はふざけているのかと思ったけど……私にピッタリの武器だったわ」

 まぁいいか。

 ちなみに、僕も武器を買っておいたんだ。

 持っているのと似たようなものだ。

 値段は500万トルグと結構したけど、刃こぼれ一つない新品同様だから、これから活躍してくれること間違いなしだ。

……どうやら、教会支部が出来上がったみたいだ。

 興味本位というか、野次馬根性で見に行くことにした。

 やっぱり立派な建物だな。

 でも、気になるのはその前にいる人達。

 すごい人数だ。

 しかもその真ん中にいるのは……ギルマス?

 それに法衣服を着た嫌味な感じの男だ。

 おそらく教会支部の関係者だろうが、ギルマスに対してかなり不遜な態度を取っているのだけは分かる。

「ふざけるんじゃねぇ!!」

 どうやらギルマスが叫んでいるようだ。

 取り巻きがすごすぎて、見ることが出来ない。

「ふざけているとは心外ですな。我々は冒険者を助けるためにここに来ていることをお忘れなく。ダンジョン攻略という大きなギャンブル……いえ、挑戦をするためには我々の力が必要なのでは?」

 回復魔法のことを言っているのかな?

 ギルマスが何に声を荒げているのかいまいち分からないな。

「分かっている……分かってはいるが……この法外な値段は何だ? 十倍はするではないか! この値段を出しておきながら、よくも助けるなど言えるものだな」

「はてさて……この値段の理由はギルマスがよくご存知だと思いますが? それとも我々が知らないとでも?」

 ダメだ。さっぱり分からない。

 こんなときは……やっぱり、いた。

「ガルーダ。教えてくれ」

「なんだ、急に。まぁいいけどよ。簡単に言えば、回復魔法師の売値を釣り上げたんだよ。まぁ、売り値はまぁちょっとだったんだけどな。借り賃の方がな、通常の十倍だ。うちも借りようと思ったが……厳しいかも知れないな」

 なるほど。

 相場というものが分からないが、急に値上げされれば冒険者が困るのは目に見えている。

 教会だって、ダンジョンの付き物と言われるほどだ。

 よく熟知しているはずだろうに、その理由は?

「ああ。知っているだろ? 最近、ダンジョンで冒険者が失踪している話は。もっとも長く潜っているなんてザラにある話だが、少し多すぎるんだよ。教会はそれを盾にとって、値段を吹っかけてやがるんだ。本当に金にせこい奴らだぜ」

 たしかにそんな話を聞くかも知れない。

 ギルドに行っても、上級の冒険者の影がかなり少なくなった気もするしな。

「一応、『白狼』が調査に乗り出しているみたいだが……結果が出てくる前に教会支部が乗り込んできたから、ギルマスも困っているだろうよ」

 随分とタイミングがいい気もするけど……

 今は、なんとも言えないか。

 ギルマスと教会支部の人との間には折り合いがなかなか付きそうにないな。

 回復魔法師……興味はあったけど、しばらくは無理そうだな。

 そんな事を考えていると、ふと見知っている人が教会支部の人の横に立っていた。

 あれは……ボリの街で世話になったスキル屋のヤピンだった。

 そういえば、教会支部と一緒にスキル屋も来るって言っていたけど……思いがけない人が来たものだな。
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