公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

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冒険者編

50 ダンジョンの異変

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 どうやら、大きな勘違いをしていたようだ。

「ドブ攫いだぁ? これのどこが……いや、ドブ攫いか……なかなか面白いことを言うな、小僧」

 いや別に面白いことを言ったつもりはないんだけど。

 ガルーダに事情を聞いても良いものかな?

「構わねぇぜ。ここに前からモンスターが出没している話は聞いているよな?」

 当然。

 そのせいで、ひたすらドブ攫いをする羽目になったんだから。

「小僧は、ダンジョンについてどれくらい知っているんだ?」

 ……全く。

 公国にはダンジョンはないし、話に上がったこともない。

「へっ! それでよく冒険者をやろうと思ったもんだな。少し教えてやる。分かんないことがあったら、質問しろよ」

 初対面は最悪だったけど、話してみると親切な人なんだな。

 ……ダンジョンは、突如として発生するモンスターの密集地域のことを指す。

 そこには不思議と財宝が出現する。

 理由は……

「オレが知るわけねぇだろ」

 だそうだ。

 誰も知らないらしいが、まぁ、財宝が出るんだから攻略する。

 実に単純な話だね。

「エリアタイプのダンジョンは、その範囲がある程度伸び縮みするのは知っているか?」

 知らないけど……まぁ、何となく想像は出来るかな。

「出没するモンスターはダンジョンの境界内にしかいられねぇんだ」

 なんで?

「そんな事、知るわけねぇだろ! いちいち聞くんじゃねぇ」

 なんでも質問しろって言わなかったっけ?

 まぁ、大したことではないから、いいか。

「だから、ここにモンスターが出現するのは可怪しいことじゃねぇはずなんだが……一つ、可怪しなことがあるんだ」

 お! なんか、面白い話になってきそうだな。

「この辺りの植物を見てみろ。何か、可怪しなことはないか?」

 言うのが恥ずかしいんだけど、クエストでこの辺りを見たことがないから……なんとも。

 ドブのことなら、何でも聞いてくれて構わないんだけど……

「ジャイアントウルフを蹴散らしたやつがなぁ。本当に何も知らねぇんだな」

 うん、まぁ……何も言い返せないな……

「ダンジョンの境界を確実に知る方法は、よく分かってねぇ。だがな、ひとつだけ特徴が分かっているんだ。それは植物が変異するってことだ。おっと、理由は聞くなよ」

 いいかけた言葉を喉の奥に引っ込める。

 植物が変異?

 なるほど。この辺りの植物は……よく見かけるものばかりだな。

 変異っていうんだから、変わっているやつがいるんだよな?

「ああ。気持ち悪いやつがほとんどだな。人を食っちまうやつだっているぜ。これで話は全部だ」

 つまり……モンスターが出現するはずがない場所に、出現しているということ……?

 ……だから、どうだっていうんだ?

「小僧にとってはその感覚かもしれなぇがな……モンスターってのは、戦闘スキルを持っていないやつからしたら、これ以上ないほどの脅威になるんだ。モンスターは生きている者を残らず殺しちまうからな。そんなのが……」

 野に放たれれることを想像してみろ、と言われた。

 今まではダンジョンという境界線があるからこそ、ダンジョンの近くで生活することが出来た。

 しかし、その常識がなくなれば、当然、パニックが起こる。

「王国にはダンジョンがいくつもあるが、そのどれもが人家に近いところにある。だから、俺達がこうやって、ここにいるってわけだ」

 ギルマスが冒険者に依頼した内容……。

 一つは、ダンジョン外に出没したモンスターの討伐。

 ニつは、出没理由の調査だ。

 そして、三つは、人為的なものかどうかの見極めだ。

 一つと二つは理解できるが……三つはどういうことだ?

「さあな。俺達はギルマスに依頼されて、ここで戦っているだけだ。だが、調査をする前に俺達が全滅しそうな状況だな。モンスターの量が想像より多すぎる」

 考えてみれば、ガルーダはなんで一人でいたんだ?

 たしか、パーティーを持っていたはずだけど。

「はぐれちまったんだ。ジャイアントウルフの群れと遭遇してな。とにかく、他の冒険者も同じような状況だろう……それで? 小僧はこれからどうするつもりだ?」

 ドブ攫いに来たつもりが、変なことに巻き込まれてしまったな。

 どうするって言われても、僕の力でどうにかなるものだろうか?

 ジャイアントウルフ程度ならなんとかなりそうだけど……

「一つ聞いていいですか? ジャイアントウルフってどの程度の強さなんですか?」

 なぜか大きなため息をされた。

「全く、どうなってやがるんだ? あの強さは明らかに歴戦の猛者に匹敵するものだと思ったんだがな……ジャイアントウルフは単体ではそこまで強くねぇ。一概には言えねぇが、C級なら余裕、D級なら苦戦ってくらいだな」

 ガルーダはB級だよね?

 随分とボロボロになっていたけど?

「単体ならだ。群れともなると、C級じゃあ太刀打ちできねぇ。B級でも連携でなんとか倒せるくらいだ。おめぇはそれを一人で倒しちまったんだから、実力は……なんとも言えねぇが、B級以上は間違いねぇな」

 随分と買いかぶられたものだな。

 昨日までドブ攫いをしていた僕がB級以上に相当?

 冒険者の実力って、想像していたよりも低い?

 いや、そんなことはないはずだ。

 最初に会った時のガルーダは、どう逆立ちしても勝てる気がしなかった。

 そうなると……僕の実力が上がった?

 こんな短時間で?

 戦闘と言っても、ジャイアントウルフと少し戦ったくらいなんだけど……

「そうですか……ならば、僕もこの戦闘に参加します。ただ、モンスターとの戦闘の経験はさっきが初めてなんです。ですから……教えてもらえないでしょうか?」

「信じられねぇことだが、ジャイアントウルフのことをほとんど知らないところを見ると、嘘でもないんだろうな。分かった。オレもどうせ仲間とはぐれているんだ。一時だけでも、オレとパーティーを組もうぜ」

 なりゆきで、ガルーダが仲間になった……
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