公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

文字の大きさ
上 下
41 / 142
冒険者編

41 『戦士』スキルの弱点?

しおりを挟む
 つい大声をあげてしまったが、衆人からの注目を集めるということはなかった。

 食堂の喧騒がひどかったおかげだ。

 しかし、隊長には聞こえていたようで、しっかりと目が合ってしまった。

「小僧……ん? お前は」

 お前のことは知っているぞ、みたいな目で見られているんだけど。

 僕は方は全然知らないよ。

「B級のガルーダさんとやりあった小僧じゃないか!! あれはなかなか面白い見世物だったぞ」

 別に見世物になったつもりはないんだけど……

「まぁ、そう怒るな。しかし、ガルーダさんは結構喜んでいたんだぞ。『ギルドでオレにけんかを売ってくるやつがまだ、いたとはな』って。オレも大したもんだと思うぞ」

 今のはモノマネ?

 なんか、ちょっと似てたかも。
 
 しかし、喧嘩を売られて喜ぶ?

 ちょっと、何言っているか分からない感覚だな。

 それにしても、あの大男はB級だったのか……

 B級と聞くと、どうしても赤き翼のレオンが頭に過る。

「それで? 声を上げたようだが、オレに何か用か?」

 ああ……自分の持っているスキルが使えないと言われて、ビックリしただけで隊長に用があるわけではないんだけど……。

「いや、その……さっきの話の『戦士』スキルが使えないって話をもう少し詳しく……」

「なんだ、聞いていたのか。まぁ、話してもいいが……」

 隊長が何を訴えているのか、分かっているつもりだ。

 すぐにウエイトレスを呼び、彼らが飲んでいる同じものを注文した。

「分かっているじゃねぇか。小僧。きっと、良い冒険者になるぜ……って、そりゃあなんだ?」

 木聖剣を指差し、少し馬鹿にするような目を向けてきた。

 ちょっとイラッとした……。

「まぁ、武器なんて使えればいい。いい冒険者になると、いいな」

 言葉が弱くなっていないか? 

 それよりもスキルだ。

 ……使えないスキル持ちに未来はあるのだろうか?

「『戦士』スキルのことだな。何が知りたい」

「どうして、使えないんですか? こう言っては何ですが、あらゆる武器も使えますし、力や耐久だって……」

「ほお。小僧のくせに詳しいな。もしかして……いや、詮索はタブーだったな。仮にお前が『戦士』スキル持ちだとして、何か変だと思うことはないか?」

 変も何も、スキルを使ったこともないし。

 それに武器だって、さっき手に入れたばかりだ。

 首を傾げていると、隊長が何かを納得したように首を縦に振った。

「詮索しているのと変わらなかったな。それでいいぞ。小僧。まぁ、『戦士』スキルは確かに小僧の言うとおりの性質だ。総合スキルとしても優秀だ。しかし、冒険者となると……話は別だ」

 どうも話が見えてこないな……

「武器が何でも使えるっていうのは聞こえはいいが……冒険者において、意味のあることではないんだ。例えば、ダンジョンだ。そこでモンスターに武器を破壊された。どうする?」

 ……他の武器?

「ああ、そう考えるのは無理はないな。だがな、ダンジョンに武器なんて落ちていると思うか?」

 まぁ、落ちていないかな。

 精々、仲間から借りるくらいだ。でも……。

「それは他のスキルでも同じなのでは? 武器は破壊される可能性は誰にだって……」

「違いない。だがな戦闘系スキルにおいて、武器にかならず特性が付くようになっているんだ。例えば、『剣士』スキルだ。このスキルは剣以外は使えねぇ……だが、剣においては、凄まじい剣技を使えるようになる。それにな、剣そのものの耐久度が上がるって話だ」

 スキルに物の耐久度を上げる効果があるなんて、初耳だな。

 でも、やっぱり話が見えてこないな。

「『戦士』スキルは何でも武器が使えるが、特性がつかないんだ。だから、戦闘系スキルの中では、一番武器破壊が起こりやすいんだ。武器がなけりゃあ、戦闘系スキルなんて無用の長物だ。特に『戦士』は動きが遅いから、逃げにくしな」

 なんてことだ……

「もっと言えば、熟練度が上がりにくいっていうのもあるな」

 んんん?

 なんで?

「『戦士』スキルの特徴は、あらゆる武器が使える以外は高い耐久性だ。そのためパーティなんかやっていると、盾役になることが多い」

 なるほど。

 耐久を利用した優れた戦術と言えるな。

「盾役は熟練度上昇に貢献しないんだ。結局のところ、仲間の代わりにダメージを受けて、突っ立っているだけとも見えるだろ? 熟練度はあくまでも攻撃しかないんだ。でもさっき言ったように、武器破壊が起きやすいから、攻撃役というには安定感がない。つまり……」

 つまり……。

「使えないってことだ。だが、勘違いするなよ。使えないのは冒険者に限っての話だ」

 というと?

「兵士や王国騎士団に所属する場合、『戦士』スキルはずば抜けて優れているんだ」

 どういうことだ?

 冒険者と兵士にどれほどの違いがあるんだ?

 相手が人間かモンスターかの違い?

「そうじゃない。さっきも言ったが、『戦士』スキルの大きな問題は武器破壊の発生のしやすさだ。しかし、戦場には……」

 武器が転がっている可能性が高い。

「分かっているじゃないか。その通りだ。だから、『戦士』スキル持ちは冒険者なんて目指さないで、兵士か王国騎士辺りを目指すのが賢いと言えるな」

 ……これは方向転換が必要な時が来てしまったのか?

「ちなみになんですけど、熟練度がすごく高い『戦士』スキルだったら、冒険者としてどうなんですか?」

「面白いことを聞くな。使えないスキルも熟練度が上がれば、か……それだったら、話は別だ」

 なんだ、それを早く言ってほしかったよ。

 僕には『錬成師』スキルのおかげで、熟練度はかなり早くなると思うんだ。

「『戦士』スキルは耐久と共に力も上がる。熟練度が上がれば、力も飛躍的に上がるだろうな。そうすれば、殴るだけで、そこそこのモンスターとも戦えるんじゃないか?」

 武器、関係ないじゃん!!

 拳闘家みたいになっちゃっているよ。

「まぁ、『戦士』スキルの限界ってやつだな。何度も言うが、冒険者に限っての話だからな」

 ……いい話を聞けると思ったのに、聞けたのは『戦士』スキル、使えないんじゃないか疑惑だった。

 考えようによっては、武器さえなんとかなれば……

 木聖剣か……心もとないな。

 火を使うモンスターが出てきたら、逃げるしかないもんな。
 
 やっぱり、この武器はだめか?

 それとも……。

「馬鹿じゃないの? 忘れたの? 私達はお尋ね者よ。一応、姿は変えているって言っても万能じゃないんだから。兵士と王国騎士団? ありえないわね」

 酒が絡むと随分と饒舌に話すな。

 僕の心は否応なく、切り裂かれていった。

 使えないかもしれない『戦士』スキルに、耐久にかかなり不安な木聖剣。

 冒険者として、活躍する前に暗雲が立ち込めていると思うのは、僕だけだろうか?

「そんな時は私に任せなさい!! 幻影でロスティのそれを立派な聖剣にしてあげるわ」

 うん。それ、意味ないよね?

 なんだか、僕だけ暗くなる食事となってしまった……。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹
ファンタジー
 初代勇者が建国したエルヴァン聖王国で双子の王子が生まれた。  一人には勇者の証が。  もう片方には証がなかった。  人々は勇者の誕生を心から喜ぶ。人と魔族との争いが漸く終結すると――。  しかし、勇者の証を持つ王子は魔力がなかった。それに比べ、持たない王子は莫大な魔力を有していた。  それが判明したのは五歳の誕生日。  証を奪って生まれてきた大罪人として、王子は右手を斬り落とされ魔獣が棲む森へと捨てられた。  これは、俺と仲間の復讐の物語だ――

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

処理中です...