公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

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冒険者編

37 ギルド初登録

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 受付までの長い道のりもここまで。

「お待たせしました。登録の変更ですか?」

 若くてキレイなお姉さんだな。

「ぶほっ……」

「ぶほっ?」

 ミーチャの肘鉄が脇腹に決まったせいで、変な声を出してしまった。

「いや……新規でお願いします」

 お姉さんはニコッと笑って、記入項目が書いてある粗悪な紙を差し出してきた。

「これに記載してください。あ、字って書けます」

 もちろんだ。これでも公国の第二公子だ。文字くらい……。

 ちなみに王国の識字率というのは、かなり低い。

 教えてくれる場所というのが学校という場所になるが、それは王都の除けば、数は限られている。

 しかも通えるのは、貴族と一部の平民に限られているという狭き門だ。

 受付のお姉さんが心配するのも無理はない。

「大丈夫ですよ。名前くらいは、書けます」

 嘘だけど、これくらいに言っておいたほうがいいだろう。

 逃亡中の身、これくらいの処世術はお手の物だ。

 成長しただろ!! とばかりにミーチャに視線を送ったが、さっきからずっと睨まれっぱなしだ。

 ボロを出さないか心配でもしているのかな?

 さらさらっと紙に名前とポジションを記載した。

 ポジションとは前衛か後衛かということだ。

 スキルを聞くのはタブーとされているので、こういう聞き方をしているのだろう。

 『戦士』スキルを持っているのだから、当然、前衛だ。

 ちなみに、ミーチャは闇魔法使いで後方撹乱を得意とするから、後衛だ。

 こうやって見ると、なかなかバランスがいいパーティーではないか。

 すっと紙を差し出すと、お姉さんの声が少し漏れた。

「お上手ですね……もしかして、貴族様とか? そんな訳無いですよね」

 再び、ミーチャの肘鉄が脇腹にクリーンヒットした。

「あは……あははは。そんな訳ないじゃないですかぁ」

「ですよね? 私ったら……あはははっ」

 何だ、この空気は。

 さっさと手続きを終わらせて、帰りたいんだけど……。

「あとはパーティの手続きですが、お連れ様と組まれますか?」

「もちろんです」

「分かりました。それでは、これに記載していただければ結構です。一応、当ギルドについての説明をさせてもらいますね」

 それは有り難い……

「お願いします」

「畏まりました。まずは、ダンジョン攻略など危険を伴う仕事をして頂くわけですが、その際に生じた身体へのダメージや金銭の消費に関しまして、ギルドは一切関知しません」

 いきなり夢も希望もないことをいい出したぞ。

 まぁ、それくらいの覚悟を持てということなのだろうか。

「サンゼロのダンジョンは危険指定Aとなりますので、新規会員の方は入ることが出来ませんのでご了承ください」

 えっ!? 入れないの?

「あの、入れないってどういうことですか? 一応、ミーチャが前に登録を済ませているんだけど。それでもダメなの?」

「ええと、ミーチャ様というのはお連れ様のことですよね? 残念ながら、ミーチャ様は現在F級相当ですので、新規会員様と同じ扱いとなります。ちなみに、サンゼロに展開するダンジョンはいわゆるエリアタイプになります。その場合、区域は外郭と深部に別れ、外郭はCランク以上、深部はB級以上となります」

 エリアタイプ?

「はい。地上部に展開するタイプのダンジョンをエリアタイプ、地下に展開するタイプのダンジョンを地下タイプと呼ばれます。エリアは横に広く、地下は縦に広いと思っていただければ」

 なるほどね。

 つまり、サンゼロでは森や山なんかに展開されているようなダンジョンがあるってことなのかな?

「その通りです。かつての鉱山跡地にダンジョンが展開していると考えられております。今後、地下タイプになる可能性は否定できませんが、まだそこまでの調査が進んでいない状態なんです」

 まさに未踏のダンジョンってわけか。

 しかし、外郭と言われる場所でもC級以上か……F級から上がるには……E……D……と来て、Cか。

 先は長そうだな。

「F級からC急に一気に上がる方法ってないんですか? ダンジョンに行ってみたいんですけど」

 受付のお姉さんに笑われてしまった。

「時々いるんですよね。でも、ダメですよ。ギルドは責任を負わないと言っていますが、冒険者は消耗品ではないんですから、守るためにもどうしても線引きだけはさせてもらっているんですよ」

 申し訳無さそうに言いながらも、ハッキリと言われてしまった。

「それに、はっきり言いまして、ダンジョンの深部はB級でも生きて帰れる保証がないような場所なんです。今は地道に実力をつけていってください。実力があれば、必ずB級になれますから」

 どうやら、近道というのはないようだ。

 たしかにお姉さんの言う通り、地道に実力を上げたほうがいいかも知れない。

 さっきの大男。BかC級って話だけど、あの人と互角かそれ以上にならないと話にならないってことだもんな。

「分かりました。それで、仕事ってどうやって受ければ」

「それは、あちらのボードに仕事内容が記載した紙が貼られていますから、受ける仕事の紙を受付に持ってきていただければ、受理となります」

 それは簡単そうだな。

 あとは細かい話を……

 すると、三度目の肘鉄が。

「ミーチャ、何するんだよ」

「そんなにお姉さんと話したいの?」

 何を言って……ここで色々聞いておかないと、後で困るだろ?

「私に聞きなさいよ。仕事も受けてきたんだし……」

 言われてみれば、そうか。

 それなら、あとでゆっくり聞こうか。

「大丈夫ですか?」

 どう言う意味で聞いているのかな? 体のこと? それとも仕事のこと?

 まあ、どっちも答えは一緒か。

「大丈夫です。とりあえず今日は帰ります。明日、仕事に来ますね」

「はい。当ギルドは冒険者のためにある組織です。何なりとご利用してください。本日は登録、ありがとございました」

 お姉さんは深々とお礼をして、僕達を見送ってくれた。

「ミーチャ。ちょっと仕事のボードを見に行ってもいい?」

「いいけど……受けられる仕事が少なくて、ショックを受けるかもよ?」

 まさか……と思ったら、言ったとおりだった。

 F級に任せられる仕事はこの程度なのか。

 薬草採取……ドブ攫い……ドブ攫い……ドブ攫い。

 四件のうち、三件がドブ攫いかよ!! 

 どんだけ、ドブが溢れかえっているんだ?

 想像するだけで臭ってきそうだな……。

 やっぱり、薬草採取以外の選択肢はなさそうだ。

 あわよくば、モンスターに出くわして戦ってみたいものだな……。

「それはないわよ。モンスターって縄張りっていうか、そんなのがあって、そこから出てくることはまずないわ。ちなみにF級の薬草採取はその外側。だから、遭遇はしないわ」

 本当に夢も希望もないな……。

 『戦士』スキル……使える日はいつになることやら。
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