公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介

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公国追放編

05 side タラス①

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 親父の執務室から飛び出した。

「ふざけやがって。なんで、一年も待たねぇといけねぇんだ!!」

 誰も居ない廊下で一人叫ぶ。

 親父が急に後継者選びを一年延期すると言い出しやがった。ガキの頃から、俺が当主になることが当たり前だと思っていた。もっとも俺自身は面倒な公主になるのは、ゴメンだから、好き勝手やって来たが。

 勝手が随分と変わってきた。ロスティが後継者候補だと!? ふざけやがって。公主になるのは嫌だが、ロスティの下につくのだけはもっと嫌だ。それだけは絶対許せねぇ。

「くそ!! くそ!! くそ!!」

 側に居た使用人をぶん殴って、少しはスッキリした。鼻血を出して、ビクついている使用人を見て、いいことを思いついたてしまった

「そうだ。ロスティもこうやって、毎日痛めつければ、俺にビビって後継者候補を諦めるかも知れねぇな」

 俺は『剣士』スキル持ちだ。いくら、ロスティの身体能力が高いと言っても、大したことねぇだろ。あと一年もあるんだ。ゆっくりと甚振って、心を砕ききってやるぜ。

 次の日からさっそく、作戦を決行した。

 ロスティは親父の期待に応えるために、毎日剣を振っている。馬鹿なやつだ。てめぇの人生はてめぇのためにあるんだ。親父に媚び売って何になるんだ。

 まずは剣だな。剣はロスティの自慢のひとつだ。その自信をまず、へし折ってやらねぇとな。

「おい。ロスティ。今日はお前に俺様自ら剣の修行をつけてやる。ありがたく思え」

 甚振れると思うと自然と笑みが浮かんじまうぜ。

 ロスティは俺の顔を見ると、あからさまに嫌な顔をしてくる。

「タラス兄上……申し訳ありませんが、今は魔法の訓練をしている最中ですから、明日にしてもらえませんか?」
 
 相変わらず、イラッとすることを言うやつだ。気に食わねぇ。俺に向かって言っていい言葉ではないはずだ。

 まずはその憎たらしい口を塞いでやる。ロスティの顔をめがけて、軽く蹴りを入れた。避けられるはずはねぇと思ったが、ロスティには身軽に躱されてしまった。ちっ!! めんどくせぇね。

「避けるんじゃねぇよ。後継者の俺様の優しさが聞けねぇっていうのか?」
「いや、ですから……」

 こいつの俺を馬鹿にしたような視線がムカついてしょうがねぇ。何でも見透かしたかのように見やがって。

「タラス兄上。昨日も父上に言われたばかりではないですか。もう少し後継者候補らしく、身の振り方を考えるべきです」

「ああ? 弟の分際で兄である、この俺に指図するつもりか? 頭に乗るんじゃねぇよ!! この無能者《スクルー》が!!」

 決まったな。これでこいつの心はずたずただ。こういうプライドの高いやつはこういう言葉に弱いもんだぜ。

「タラス兄上!! 公家の者がそのような言葉を使うべきではない!!」

 相変わらずのいい子ちゃんだぜ。

「うるせぇ。無能者が。だったら無能者でないことを証明してみせろよ」
「なに?」

 ちょろいな。こんな言葉で食いついてきやがる。評価がいいだか何だか知らねぇけど、所詮はガキだな。

 俺はわざわざ持ってきた木剣をロッシュに投げ与える。丸腰相手にやっちまったら、自信をへし折れねぇからな。

 木剣勝負なら、俺の勝利は揺るがねぇはずだ。なにせ、『剣士』スキルがあるんだからな。『剣士』スキルは剣を持ったときの身体能力向上が凄いだけじゃねぇ。相手の剣の動きを読む能力も飛躍的に上がるんだ。

「分かりました。ただし僕が勝ったらこれ以上付きまとわないでください」

「ほお。勝つつもりか? まぁいいだろう。俺が勝ったら……そうだな。俺は優しいからな。毎日剣の修行に付き合ってやるよ。もちろん実戦形式でな」
 
 馬鹿だ。やっぱり、こいつは今でも自分のほうが強いと勘違いしてやがる。俺もスキルを得る前は馬鹿にしてたが、はっきり言ってスキルなしの奴には何があっても負ける気がしねぇよ!!

「へっへっへ。バカが。ほら、行くぞ!!」

 十分に力を抑えて軽く剣を振った。一発で決まったら面白くねぇもんな。甚振ってやんねぇと。

「ぐっ……」

 ロスティの必死な顔が笑えるぜ。オレの軽く奮った剣に一生懸命すぎるだろ!!

「ほお。今の一撃を受けるか。やるな。でも、これならどうだ?」

 笑いそうになるのを我慢するのが大変だぜ。ちょっと力を入れただけで、必死な顔が悲壮になってやがる。こりゃあ、本気で殴ったら、死んじまうかも知れねぇな。

「うっ……うっ……」
 
 気分がいいな。雑魚を甚振るのは最高だぜ。

「分かったか? 無能者。これが実力差ってやつなんだよ。まぁ、これから一年間毎日相手してやるからよ。俺と対等という思いが勘違いであることを体に叩き込んでやるからな。有り難いと思え。ハッハッハ!!」

 最後にずっと気に食わなかかった顔をボコボコにした。こんだけスッとしたのはいつぶりだ? オレを振った女を甚振った時以来か?
 
 それから毎日のように顔を出して、ロスティをボコボコにする。特に顔を重点的にな。不思議と顔の腫れがいつも引いていることに疑問は持ったが、綺麗な顔がボロボロになるのを毎日見れるのは悪くなかった。

 ロスティは雑魚だ。全力の半分も出していないのに、簡単にボコボコに出来てしまう。

「俺はこんな雑魚を何で気にしてたんだ? こんなことよりも女を抱いていたほうがよっぽど楽しいじゃねぇか」
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