Infinity night

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双生の真実は末路を呼ぶ

19.処刑④

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7:30

亜久里が吊れている遠藤の足元に椅子があることを確認した

最上が即座にして報告の口を開こうとする

「死体…」

「言うな!!」

亜久里が声を上げて最上の報告を止めた

「な…!なんでですか!!」

「足元を見ろ…これは自殺だ」

その言葉でその場にいた最上、千鶴、千雛は冷静に口を閉じた

椅子に乗って首吊りをの土台を設置し、輪に首を通して足で椅子を倒す
これは首吊り自殺者の良くする方法だった
偽装にしては初心者すぎるため、これは自殺だ

千鶴が続ける

「でも、、なんで、、」

亜久里が部屋に入り、遠藤よズボンのポケットに白い紙があることに気づき、引き抜く

そこには衝撃の事実が綴られていた


僕が黒木くんを殺しました


この冒頭から始まる文章を読んだ4人が驚き、目を開く

それに続く文章がこれである


僕が黒木くんの飲む、スポーツドリンクにコカインを入れて摂取させました。
動機は嫉妬です。僕はもう走れないのに彼は走っている。そんなしょうもないものでした。
ですが、豊代くんはそれに気づいていたようで僕だけを連れてその場から外れました。
豊代くんは僕を庇ったんです。


遠藤と豊代が黒木を置いて食堂を出た後、彼らは2階のトイレで対面して話していた


「遠藤さん あなた、黒木さんを殺そうとしてますね」

「……!」

「スポドリの中にコカインを入れてましたね」

「す、すまない!!彼が亡くなったら僕も自殺を…!」

「いや、しないでください」

豊代のまさかの言葉に遠藤が止まる

「俺は…」

豊代の一人称が変わり、連合に所属していた時の雰囲気を纏う
その異様さを事情を知るはずのない遠藤も感じる

「俺はあなたに憧れて道を決めてきました」

遠藤が息を飲む

「失礼 とは何なのか説明し忘れていましたね」

遠藤は話の転換を読み取る

「それは僕がコカインをやっていたことで選手生命を終わらせたことだろ」

遠藤はそれを包み隠さずに応えた

「はい 入手しました」

その入手方法はもちろん、人に言えるようなものではない
裏社会で入手したある記事でわかったことだ

陸上 遠藤 新次郎選手は違法薬物の摂取がきっかけで選手を下りたと

「世間はそれを隠蔽して突然の引退として報道した」

何も間違っていない
これは遠藤やそれに携わるものが知る事実である
そのコカインは遠藤専属の医療班から貰った物で衰えていく体で選手を続けるための措置だった

「そう でも僕は反省した だから僕はこの宿泊会が終わったら死のうと思っていたんだ…まさかこんなことになるとは思わずにね」

Infinity night が終われば死ねるが、遠藤はそれよりも前に黒木という嫉妬相手を得てしまった

「だからもういいんだ 僕はもう取り返しのつかないことをした だか大人しく…」

「させません それよりも重いことを俺はしています」

死ぬことを宣言しようとした途端に豊代はそれを止めた

"それよりも重いこと"、、

裏社会で人を殺せるものを研究し続けていたことか、はたまた根本的に裏社会に手を出したことなのか、
いや、それは仲間であったはずの連合のメンバーを自身の作った毒物で大量に殺したことだ

「あなたは確かに選手として最低な行為をしてしまったかもしれない でも、あなたは…」

それに続く言葉は決まっている

「俺の人生の原点だ」

遠藤の目に光が映る

豊代にとって自分の人生は決して褒めれるものではないだろう
薬物に身を染め、命を奪った
それの始まりはあの時にテレビで見た陸上選手
他の者からすればその選手は汚点の始まりであり、憎むものなのかもしれない

しかし、彼はそんな最悪の始まりを自身の原点だと胸を張って言っている

「俺があなたの罪を被ります 人生最後に憧れに力入れできることを嬉しく思いますよ」


その経緯から豊代は遠藤を庇ってあたかも、犯人であるかのように装った

遠藤の持っているコカインを自身の部屋に移し、カフェルームで隔離された時も遠藤に睡眠薬と真部の部屋である8号室の鍵を渡した

遠藤のことを怪しむ参加者が8号室に行き、コカインの跡に気づき、コカインは豊代の部屋から見つかる
こうなれば疑心は遠藤から豊代に向けられ、遠藤は吊るされずに済む

最終的に8号室の調査はされなかったが、豊代の部屋からコカインが発見されたことから結局は豊代が吊るされることとなった
豊代の計画は結果として成功し、参加者はまんまと罠にはまったわけだ

しかし、豊代が庇った遠藤も自虐と責任感から命を絶ってしまったのである


それを理解した亜久里は遠藤の死体を遠藤のベッドに横にして遠藤の部屋である6号室の鍵を鍵穴に突き刺して鍵をかけ、刺したままに放置した


11号室

杉沢は眠ることなく原稿用紙に字を詰めていたが、身体が疲れの限界を迎え、その場でうつ伏せになり、眠ってしまっていた

すると、部屋のドアをノックする音が聞こえた

杉沢はその音で目を覚まし、ペンを机に置いたまま、ドアを開ける

「どうしましたか~」

寝起きの声で挨拶すると千鶴が縦に小さく口を開けた

「眠そうですね」

「さっきまで寝ていたもので、、」

千鶴はその後、遠藤が自室で自殺していたことを伝えると杉沢の眠気は吹き飛び、自分の今いる場所が地獄であることを思い出した

新しい朝が始まり、机上の原稿用紙やペンを直そうと思い、原稿用紙を持つと違和感を覚えた

原稿用紙には自身が書いた物語が癖字で文字としてぎっしり詰まっていた

私…こんなこと書いたっけ…

自分の書いた覚えのない文章だった
しかし、その違和感をそのままにして原稿用紙をファイルに挟んだ


図書室

三鷹は遠藤の死を知らされた後、市島の話を聞くため亜久里の部屋へ向かったのだが、、

「今日は夢見が悪かったんだ 悪いが、あとでそっちに行くから待っててくれないか」

と亜久里に断られた

そしてそのまま、2階の図書室へ向かったのだ

なぜ、ここに来たのか、それは突飛な発想だった

こんな異常なゲームをしている場所の図書室には参加者に関わった異常な物があるのではないかと考えたのだ
市島について早く知りたい三鷹はその宛のない予想でここに来た

しかし、それは当たっている

この図書室には参加者に関係した資料や本がある

黒木や遠藤の陸上記録や杉沢の描いた小説、裏社会に出回っている記録、そして、商店街の大量殺人事件についての資料やそれを元にされた小説がある

三鷹の目に止まったのは『闇に消えた者たち』という雑誌だった

興味本位で手を伸ばし、目次を開いた
そこには表紙のタイトルにあったものに該当するである人物の名前が並べられていた

消えた家族殺し女子中学生 美川 未夢
なぜ、急遽の引退? 遠藤 新次郎
大学中退後に消息不明に? 豊代 竜司
大量殺人事件の容疑者 亜久里 刹那
           林道 千秋
作品の質が低下?本当に同じ著者?  佐和木 春

三鷹は見覚えのある名前が多々あることに驚く

遠藤、豊代、、

それよりも三鷹が突っかかったのは亜久里の名前だった

いても立ってもいられなくなってその雑誌を床に投げ捨て、図書室から走り出た
入れ違いで図書室に来た杉沢がその慌てように驚き、動きを止めたが、それに構うことなく三鷹は階段を上っていった

杉沢はそのまま、図書室に入ると床に落ちた雑誌が目についた

三鷹さんが落としたのかな…

そう思ってその雑誌を拾い、開かれているページを見るとそこに自分の作名である 佐和木 春が眼に映った

作名の前についた『作品の質が低下?本当に同じ著者?』という文言に杉沢は頭を抑えた

「アッ…! ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

そうがなって頭を抑えたまま、うずくまる

脳裏がら酷く揺れて周囲が傾いているように感じる

「な、なに…!!」

平衡感覚を失ったように立とうとしても崩れ落ちてしまう
激しい痛みを伴って死んだ親友の声がする


10年前、

「杉沢ちゃん!」

私が呼ばれて振り返ると目の前には消しゴムがあった
その消しゴムが私の額にぶつかる

どうやら何かの拍子に飛んだ消しゴムが私の方向に行ったから声をかけてくれたのだろう

消しゴムが落ちるとその声の主が私を心配して寄ってきた

「ごめん!痛くなかった?」

手を合わせて謝るそのクラスメイトに私は「全然平気」と言って落ちた消しゴムを手渡した

「そう?ありがとう!」

そのクラスメイトの視線が私の机に向いた
そこには当時から自作していた小説の文章がぎっしり埋められた原稿用紙があった

「それって、、」

クラスメイトが不思議にそうに覗き込んで来たから私は慌ててそれを体で覆い隠した

「小説…?」

遅かったようだ

「う、うん…」

私はぎこちない返事を返した
しかし、クラスメイトはそれと裏腹な反応をみせる

「すごいじゃん!!ねえ!どんなお話書いてるの?」

「恋愛…」

「恋愛? へー!面白そう!見せて!」

「ちょ、は、恥ずかしい…!」

これが柿崎 茜との初めての会話
それからお互いに下の名前で呼び合うようになるほど仲良くなったある日、

「はるかーー!!」

教室で私に大声で話しかけて抱きついてきた

「うー… なに」

座っている私と立っている茜では体が重なっている部位が違う
茜は胸が高校1年生にしては大きかったから私の頭は胸に埋まって少しだけ息しずらくなる

「見て!!」

張り切って見せられたノートにはアニメ風な高校男子のイラストが描かれていた

「これなに…」

じっくりノートを見るとそのイラストの頭の横に小さく名前が書かれていた

「え、このイラスト…」

「そう!!はるかが書いてる小説のキャラ描いてみたんだー!!他もいっぱいあるから見せてあげる!」

私の作品に登場するキャラクターの絵を見せて喜んでいる茜を見てると私も自然と嬉しくなった

あぁ 茜 楽しそう

素直にそう思った時に気づいた
自分は自分の作品で誰かに何かを思わせることが好きなんだと

「小説家になろ…」

呟くように無意識に出た言葉だ
その発言を近くにいた茜が聞き逃す訳もなく、すぐに食いついてきた

「小説家!?はるかならやれるんじゃない!!」

「え、え、あっと、、その、、」

「なにその慌てようw」

「いや!今ノリで言ったことだからその!気変わりするかもしれないから!そんなに過信しないで欲しいかなみたいな」

「ふーん」

頬杖を私の席についた茜の言葉に私は後押しされる

「でも、ホントにはるかならやれると思うよ」

私はその言葉で小説家になることを決心した
そのことを茜に伝えると彼女はノリと勢いでこう言った

「私もなる!!」

正直、茜には無理だと思ったけどそれは杞憂で私が彼女を舐めていたと思う
茜は私が小説を描くコツを教えたら次の日には初めて作ったとは思えないショートショートの物語が返ってきた

この子、、才能しかない、、

その物語は主人公の女の子が幼少期に両親を何者かに殺され、保護された裏社会の人達に技術を教わり、両親を殺した人物に復讐するという実に息苦しい内容ではあったものも、キャラクターの背景をより強く感じる表現で読んでいて損するものではなかった

そして、今から5年前、世間が商店街での大量殺人事件で賑わっていた時、当時、大学生だった私と茜は大学に通いつつも小説家として出版していた

その茜の作品が反響を呼んだ

その作品が『死人の声』だ
小説家 佐和木 春 としての初のヒット、、


そこで杉沢の思考は自身と親友の人生から離れた
頭に強くあるのは違和感だ

私の著者名は 佐和木 春 、、茜の著者名も 佐和木 春、、
『死人の声』の作者は 佐和木 春 、、
え、私、私、、私…!?

杉沢の脳はパニックに陥る

私、私って、、私は!!

杉沢は酷い思考の最後にある思い返したくない真実に至った

「茜を殺したのは、、私だ……」

杉沢が床にうずくまってそう言った瞬間、悪魔の声が館内に響いた

『MerryXmas 03番  小波 千雛が3階 1号室にて 01番 最上 凑 および 02番 小波 千鶴 の死体を発見
60分以内に会議を発令し、処刑人オオカミを吊るせ』
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