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少年の覚悟が決まる日に
浮かれ気分で愛して
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「ミノルさん、こっちもお願いします~」
「あ、はいっ……!」
「これは客室用のお茶で、こっちは王様用の紅茶で。それぞれティーカップの使い分けを……」
「は、はいっ……」
「掃除なんて見える所だけ適当にやっときゃいいんですよ。バレないバレない」
「はいっ……。……ん?」
と、先輩達に仕事を教わる日々。幸いにも嫌な人だったりっていうのは殆ど居なくて(変わった人は居るけど)、そういう意味でも安心して働けている今日この頃。
最初はそれこそ、漫画みたいに新人イビりとかあるのかと怖かったけど。入ってみれば案外優しい人が多くて、仕事も丁寧に教えてもらえていた。
「これはゴクヒジョーホーなんですけど、ラフィール様とマサト様は温泉が好きなんですよ。ベッドの下とかに、こっそり温泉ガイドブックを隠してましてね……」
「な、なんでそんな変なとこに隠して……」
「だから何気ない感じで温泉に誘えば、内心めちゃめちゃ喜ぶはず……! そしてそのまま勢いで、温泉の中でしっぽりと押し倒せば……!」
「い、いや……。だから、その……。ボクは元々、そういう積極的な性格じゃ……」
なんだか、仕事に関係ないことまで教わってる気がするけど。ていうか完全になんか別の話に……。全然まだモップ掛け終わってないんですけど……。
「こら、そこっ! 遊んでないでさっさと仕事してくださいよ、まだ色々あるんですから」
「げ、やべ。バレた……」
「ミノルさんも、こんな奴に付き合ってないで。もうすぐお昼なんですから、それまでに一区切り付けちゃいましょうよっ……!」
「は、はい。すみませんっ」
ボクは先輩から離れて、いそいそと自分の仕事に戻る。……とはいいつつも。実のところ、頭の中にはシッカリと刻み込んでいた。二人が温泉が好きというゴクヒジョーホーを……。
「……そのうち、温泉にも誘えたらいいな。……けほっ」
そんな新しい目標を胸に、ボクはより一層仕事に励んだ。沢山の部屋のベッドメイキングをしたり、暖炉用の薪をかき集めて来たり、足りない食材の買い出しに出かけたり……。
大変だけど、その分ボクは充実感に包まれていた。自分のためっていうのもあるけど、何より二人を喜ばせるっていう目標があったから。頑張れば頑張るほどその目標に近づく感じがして、夢中になっていたんだ。
温泉もそうだし、『あっち』の目標のほうも……。お金的には、あっちのほうが早く叶いそうだし……。
「あ、お姉ちゃーん! 待って、待ってってばっ。おれ!」
「あれ、マサト……? どうしたのこんな所で、学校は?」
それから買い物を終えて、屋敷に戻ろうとしている頃。ボクは偶然にもマサトと遭遇した。マサトは道路の反対側から手を振っていて、嬉しそうに駆け寄って来る。
「今日は半日授業だから、お昼で終わりなんだよ~。早めに帰ってお姉ちゃんを手伝おうと思って」
「あ、そうだったんだ。いやでも、悪いよ。これはボクの仕事なんだし」
「いいからいいから、細かい事気にしない! ほら、片方貸してっ。半分持つから……!」
「マサト……。あ、ありがとっ。助かるよ」
そんなわけでボクは、食材が入った紙袋を半分渡し。空いた手を繋ぎながら屋敷まで歩く。それはさながら、同棲した二人が一緒に買い物をしているみたいで……。内心ちょっとドキドキしていた。
「お姉ちゃんの手、やっぱり暖かいね……。なんかホッとする」
「え。そ、そうなの?」
「うんっ。こうしてギュッと握ってると、お姉ちゃんの手がジンワリと暖かくなるんだ。なんていうか、雪が溶けていくみたいな風にさ。それが好きなんだ、おれっ」
「はえー……。でもそれ、ボクも同じだよ。お互いの体温を分け合うみたいで、好き……」
「ね! ああでも、やっぱり一番は抱きしめ合ってる時なんだけど……。正直言えば、あれが一番お姉ちゃんを感じられるから……。へへ」
「もう……。そ、そういうのは夜になってからね」
とか言いながらボクらは、昼過ぎの街中を通り抜けていく。よく見てみると、その中には時おりボクらのことを、ほほえましいような顔で見てくる人達も居たので。ついついボクは顔が赤くなってしまい、それを紙袋で隠そうとした。
「あれ、どしたのお姉ちゃん」
「い、いや……。……なんていうか、周りからボクらってどう見えてるのかなって」
「どう見えてるって、そりゃ仲のいい恋人同士じゃない?」
「そ、そうなのかな……やっぱり……。き、兄弟とかを見る目には見えないんだよね……」
「気にしないでいいって、何も間違ってないんだしさっ。むしろおれは、お姉ちゃんを自慢したいくらいなんだし……!」
するとマサトは、ボクの体をギュッと抱きしめた。そしてそのまま顔を上げて、ニマッとした笑顔を魅せられてしまい。思わずボクも釣られて頬が緩んでしまう。
「にししっ……! んじゃ、さっさと仕事終わらせちゃおうよ。今日の仕事はもうすぐ終わりなんでしょ?」
「う、うんっ。とりあえずこの買い物と、後は細々としたものくらいで」
「よっしゃ! じゃあおれも手伝うからさ、終わったら一緒にお風呂でも入ろうよ。たまには一緒に汗を流すのもさ……!」
「お風呂かあ……、そうだね。確かに汗もかいたし、早いけどそれもいいかも」
「んじゃ決まり! さあほら、そうと決まれば早く早く! 急いだ急いだ……!」
そうしてボクは、マサトに引っ張られるがままに仕事を終わらせた。食材を片づけ、残っていた雑務をこなし。粗方片付いた所で風呂場へと向かう。
そして服を脱ごうとした辺りで、さっき先輩に聴いたゴクヒジョーホーを思い出したので。ふとボクは何気ない感じを装い、マサトに確かめてみた。
「ねえ、マサトってさ……。温泉とか、好き?」
「えっ! あ、うん好きだけど……。ど、どうしたの急に」
「いや、その。ほら、もう冬だからさ。温泉とか入りたいなあって思って……」
「へえー……! いいねいいね、それいいっ! いやー実はおれ温泉好きなんだよ~。近くに無いから中々行けないんだけど、毎年一回は必ず、兄ちゃんと一緒に入るんだよねっ!」
「そ、そう……! そっか、うん。……よしっ」
こうして裏付けを得ることが出来たボクは、半ばウキウキ気分で服を脱いだ。心の奥で、いつか温泉旅行に連れて行くことを誓い。マサトと一緒に風呂場へと。
「さあさあお姉ちゃん、背中向けてっ! 今日はおれが流してあげるから!」
「えっ! い、いや、一人で出来るよっ。大丈夫……!」
「そんなこと言わずに、いつも頑張って貰ってるからさ……! さあほら、遠慮しないで。ほらっ……!」
と、断るに断ることも出来ず。流されるがままに、ボクはマサトの手のひらに身を委ねてしまった。
石鹸で泡立てられた手のひらが、ボクの背中にひたり……と。お湯で温まった体に伝う、マサトの小さな手のひらが……ボクの背中を洗い流そうとしていた。
「んっ……。な、なんか慣れないねこういうの……」
「そう? おれはいつも触れてるから、あまり変わらない気がするけどっ」
「それはそうなんだけど。なんていうか、洗ってもらう形で触れられたことが無いからさ。ちょっと非日常的な感じが……うん……」
「へえ~、そういうものかあ。……って、あれっ! お姉ちゃんこんな所にホクロあるんだ……」
「えっ……!? な、なにっ。うそ……!? どこっ!?」
「へへ、ナイショ! おれだけの秘密にしとく……!」
「ええ~っ……! き、気になる……。どこにあるんだそれ……?」
「あ、はいっ……!」
「これは客室用のお茶で、こっちは王様用の紅茶で。それぞれティーカップの使い分けを……」
「は、はいっ……」
「掃除なんて見える所だけ適当にやっときゃいいんですよ。バレないバレない」
「はいっ……。……ん?」
と、先輩達に仕事を教わる日々。幸いにも嫌な人だったりっていうのは殆ど居なくて(変わった人は居るけど)、そういう意味でも安心して働けている今日この頃。
最初はそれこそ、漫画みたいに新人イビりとかあるのかと怖かったけど。入ってみれば案外優しい人が多くて、仕事も丁寧に教えてもらえていた。
「これはゴクヒジョーホーなんですけど、ラフィール様とマサト様は温泉が好きなんですよ。ベッドの下とかに、こっそり温泉ガイドブックを隠してましてね……」
「な、なんでそんな変なとこに隠して……」
「だから何気ない感じで温泉に誘えば、内心めちゃめちゃ喜ぶはず……! そしてそのまま勢いで、温泉の中でしっぽりと押し倒せば……!」
「い、いや……。だから、その……。ボクは元々、そういう積極的な性格じゃ……」
なんだか、仕事に関係ないことまで教わってる気がするけど。ていうか完全になんか別の話に……。全然まだモップ掛け終わってないんですけど……。
「こら、そこっ! 遊んでないでさっさと仕事してくださいよ、まだ色々あるんですから」
「げ、やべ。バレた……」
「ミノルさんも、こんな奴に付き合ってないで。もうすぐお昼なんですから、それまでに一区切り付けちゃいましょうよっ……!」
「は、はい。すみませんっ」
ボクは先輩から離れて、いそいそと自分の仕事に戻る。……とはいいつつも。実のところ、頭の中にはシッカリと刻み込んでいた。二人が温泉が好きというゴクヒジョーホーを……。
「……そのうち、温泉にも誘えたらいいな。……けほっ」
そんな新しい目標を胸に、ボクはより一層仕事に励んだ。沢山の部屋のベッドメイキングをしたり、暖炉用の薪をかき集めて来たり、足りない食材の買い出しに出かけたり……。
大変だけど、その分ボクは充実感に包まれていた。自分のためっていうのもあるけど、何より二人を喜ばせるっていう目標があったから。頑張れば頑張るほどその目標に近づく感じがして、夢中になっていたんだ。
温泉もそうだし、『あっち』の目標のほうも……。お金的には、あっちのほうが早く叶いそうだし……。
「あ、お姉ちゃーん! 待って、待ってってばっ。おれ!」
「あれ、マサト……? どうしたのこんな所で、学校は?」
それから買い物を終えて、屋敷に戻ろうとしている頃。ボクは偶然にもマサトと遭遇した。マサトは道路の反対側から手を振っていて、嬉しそうに駆け寄って来る。
「今日は半日授業だから、お昼で終わりなんだよ~。早めに帰ってお姉ちゃんを手伝おうと思って」
「あ、そうだったんだ。いやでも、悪いよ。これはボクの仕事なんだし」
「いいからいいから、細かい事気にしない! ほら、片方貸してっ。半分持つから……!」
「マサト……。あ、ありがとっ。助かるよ」
そんなわけでボクは、食材が入った紙袋を半分渡し。空いた手を繋ぎながら屋敷まで歩く。それはさながら、同棲した二人が一緒に買い物をしているみたいで……。内心ちょっとドキドキしていた。
「お姉ちゃんの手、やっぱり暖かいね……。なんかホッとする」
「え。そ、そうなの?」
「うんっ。こうしてギュッと握ってると、お姉ちゃんの手がジンワリと暖かくなるんだ。なんていうか、雪が溶けていくみたいな風にさ。それが好きなんだ、おれっ」
「はえー……。でもそれ、ボクも同じだよ。お互いの体温を分け合うみたいで、好き……」
「ね! ああでも、やっぱり一番は抱きしめ合ってる時なんだけど……。正直言えば、あれが一番お姉ちゃんを感じられるから……。へへ」
「もう……。そ、そういうのは夜になってからね」
とか言いながらボクらは、昼過ぎの街中を通り抜けていく。よく見てみると、その中には時おりボクらのことを、ほほえましいような顔で見てくる人達も居たので。ついついボクは顔が赤くなってしまい、それを紙袋で隠そうとした。
「あれ、どしたのお姉ちゃん」
「い、いや……。……なんていうか、周りからボクらってどう見えてるのかなって」
「どう見えてるって、そりゃ仲のいい恋人同士じゃない?」
「そ、そうなのかな……やっぱり……。き、兄弟とかを見る目には見えないんだよね……」
「気にしないでいいって、何も間違ってないんだしさっ。むしろおれは、お姉ちゃんを自慢したいくらいなんだし……!」
するとマサトは、ボクの体をギュッと抱きしめた。そしてそのまま顔を上げて、ニマッとした笑顔を魅せられてしまい。思わずボクも釣られて頬が緩んでしまう。
「にししっ……! んじゃ、さっさと仕事終わらせちゃおうよ。今日の仕事はもうすぐ終わりなんでしょ?」
「う、うんっ。とりあえずこの買い物と、後は細々としたものくらいで」
「よっしゃ! じゃあおれも手伝うからさ、終わったら一緒にお風呂でも入ろうよ。たまには一緒に汗を流すのもさ……!」
「お風呂かあ……、そうだね。確かに汗もかいたし、早いけどそれもいいかも」
「んじゃ決まり! さあほら、そうと決まれば早く早く! 急いだ急いだ……!」
そうしてボクは、マサトに引っ張られるがままに仕事を終わらせた。食材を片づけ、残っていた雑務をこなし。粗方片付いた所で風呂場へと向かう。
そして服を脱ごうとした辺りで、さっき先輩に聴いたゴクヒジョーホーを思い出したので。ふとボクは何気ない感じを装い、マサトに確かめてみた。
「ねえ、マサトってさ……。温泉とか、好き?」
「えっ! あ、うん好きだけど……。ど、どうしたの急に」
「いや、その。ほら、もう冬だからさ。温泉とか入りたいなあって思って……」
「へえー……! いいねいいね、それいいっ! いやー実はおれ温泉好きなんだよ~。近くに無いから中々行けないんだけど、毎年一回は必ず、兄ちゃんと一緒に入るんだよねっ!」
「そ、そう……! そっか、うん。……よしっ」
こうして裏付けを得ることが出来たボクは、半ばウキウキ気分で服を脱いだ。心の奥で、いつか温泉旅行に連れて行くことを誓い。マサトと一緒に風呂場へと。
「さあさあお姉ちゃん、背中向けてっ! 今日はおれが流してあげるから!」
「えっ! い、いや、一人で出来るよっ。大丈夫……!」
「そんなこと言わずに、いつも頑張って貰ってるからさ……! さあほら、遠慮しないで。ほらっ……!」
と、断るに断ることも出来ず。流されるがままに、ボクはマサトの手のひらに身を委ねてしまった。
石鹸で泡立てられた手のひらが、ボクの背中にひたり……と。お湯で温まった体に伝う、マサトの小さな手のひらが……ボクの背中を洗い流そうとしていた。
「んっ……。な、なんか慣れないねこういうの……」
「そう? おれはいつも触れてるから、あまり変わらない気がするけどっ」
「それはそうなんだけど。なんていうか、洗ってもらう形で触れられたことが無いからさ。ちょっと非日常的な感じが……うん……」
「へえ~、そういうものかあ。……って、あれっ! お姉ちゃんこんな所にホクロあるんだ……」
「えっ……!? な、なにっ。うそ……!? どこっ!?」
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