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オスに抱かれる少年
余韻の中で…… ※修正版
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「――うん。だからこういうヤツの方がまだ……」
「でもこれだと、ちょっと高くない? おれはもう少し安くてもいいと思うけど」
「それはそうなんだけど、材質的にさ。アレかなあって。やっぱりガラス製にしておいた方が」
と、ボクとマサトは……商品を手に取りながら相談を重ねる。手のひらに握っているのは、ガラス製の……【哺乳瓶】。
それが珍しいのか不思議なのかわからないけど、店内に居る何人かの人々が、興味深そうにボクらを見ていた。
「あんちゃん達。弟でも出来たんかい? お母さんに哺乳瓶買ってこいって言われでもしたんか?」
そうしているうちに、店員の人が……掃除をしながら話しかけてくる。それを聴いたボクたちは、意味ありげに……ニシシと笑い。照れ混じりにお互いの顔を見つめた。
「まだ出来てないんだ。だけど、これから出来る予定だからっ。早めに準備しておいて……損はないでしょ?」
「ん? あ、ああ。そりゃまあな?」
「……どっちが産むにせよ。おれはお姉ちゃんのことを大事にしたいから。だから今からちゃんと、準備しておきたいんだよ。いざという時に、慌てなくていいようにさ。……ね?」
ボクはマサトと手を繋ぎ、そっと身を寄せ合う。そして何事も無かったかのように商品を見繕いながら、ただ幸せなひと時を過ごしていた。
……暖かかった。まるで今もなお、ピロートークが続いているかのように。というか実際、そうだった。
ボクとマサトの余韻は、数日が過ぎた今もなお抜けることがなく。ふわふわとした心地よさの中で……ボクらは生きていた。
ボーッとしながら、それでいてハッキリとした充実感の中で。ボクは未来のことを感じている。いつかきっと来る、その日のことを……。
「ねえお姉ちゃんっ。……おれ、幸せにするからね。例えいつか出来る子供が、おれの子供じゃなかったとしても……。お姉ちゃんも、その子供も。……絶対に幸せにするから」
「マサト……。……うん、約束だからね。忘れちゃ駄目だよ?」
「誰が忘れるもんかっ、こんな幸せなこと! ……にししっ。一生忘れられないもんね……!」
ボクらはぎゅっと、手を繋いだ。決して離れることがないような、強く、熱く。
だけどそれは物理的な意味じゃない。そう、まさに例えるなら……運命の赤い糸のような。
決して切れることのない、頑丈な糸。心の奥で繋がる、いわゆる【家族】にも似たそれ。
……幸せだ。そしてそれを噛み締めているうちに、気が付けばボクは……ぽーっとマサトを見つめてしまっていて。それに気がついたマサトは、何か不自然に視線をそらした。
「にっっ!!!!」
「……えっ?」
その時だった。突然マサトが放った、全身全霊の変顔……。それは、眉を緩めて……口を大きく開けて……。目をあらぬ方向に向けた、言うなれば究極の変顔。
そしてそれを理解出来たのは、三秒ほど間をおいた時だった。マサトの表情を理解した瞬間、ボクの中に……ふつふつとした『気持ち』が迫ってきて。ふと、それが爆発した。
「あはははははっっ!! な、なにそれっ……!! ぷっ、ま、まさとっ……あははははは!!」
「にしししっ……! 練習してたんだ、これっ! 最強なんだよ……全員笑っちゃうんだ!」
「はははっ……! そ、そりゃ……そんな変な顔してたら……! くくくっ……ぷはははっ……!」
……ああ。そっか、兄弟なんだ。やっぱり。こうやってボクを笑わせようとする辺りは……、ラフィールとよく似ている。方法は違えど……楽しませようとしてくれてるんだ。マサトなりに。こんな、楽しい方法で……。
「やっぱりお姉ちゃんはさ。笑顔がよく似合うよっ。そんなボーッとした顔してないで、楽しく笑ったほうがいいって。色々あるかもだけどさっ……」
「ふふ。そうだねっ……。……うん、そうだ」
「そうだっ。お姉ちゃん、今度近くで花火があるんだよ。一緒に行かない? 楽しいよっ!」
「花火が? それって……お祭りみたいなこと?」
「そうそう。オークの一族が勢ぞろいするんだ、楽しいよ~! お店もいっぱいあるしっ……、行こうよっ!」
「……うんっ。行くよ、もちろん! へへっ……!」
……あー。やっぱり、ボク……マサトのこと好きだっ。この無邪気で、めちゃめちゃにはしゃぐ感じ……。一緒に居るだけで何だか楽しくなってくる、この感覚。
きっとマサトは、大人になっても変わらないんだろう。こんな風に皆を笑顔にする、立派な王様になって……。立派に皆を導いていく。
好きだなぁ。この感じ。楽しくて、思わず笑顔になっちゃう感じ。これがマサトなんだ。やっぱりこれが、ボクの好きなマサトだ。
……楽しいんだろうなあ。一緒になれば。恋人になって……家族になって。子供が出来たら、凄く楽しいんだろう。きっと、絶対……。
「ねぇ。ところで……。お姉ちゃん、浴衣って……着る?」
「え? うん。あるなら着るけど……」
「そ、そうっ! へへ……。着るんだ……? へへっ。にしししっ……!」
「……な、なんだ? なんか企んでるな君。なんだぁ……???」
「でもこれだと、ちょっと高くない? おれはもう少し安くてもいいと思うけど」
「それはそうなんだけど、材質的にさ。アレかなあって。やっぱりガラス製にしておいた方が」
と、ボクとマサトは……商品を手に取りながら相談を重ねる。手のひらに握っているのは、ガラス製の……【哺乳瓶】。
それが珍しいのか不思議なのかわからないけど、店内に居る何人かの人々が、興味深そうにボクらを見ていた。
「あんちゃん達。弟でも出来たんかい? お母さんに哺乳瓶買ってこいって言われでもしたんか?」
そうしているうちに、店員の人が……掃除をしながら話しかけてくる。それを聴いたボクたちは、意味ありげに……ニシシと笑い。照れ混じりにお互いの顔を見つめた。
「まだ出来てないんだ。だけど、これから出来る予定だからっ。早めに準備しておいて……損はないでしょ?」
「ん? あ、ああ。そりゃまあな?」
「……どっちが産むにせよ。おれはお姉ちゃんのことを大事にしたいから。だから今からちゃんと、準備しておきたいんだよ。いざという時に、慌てなくていいようにさ。……ね?」
ボクはマサトと手を繋ぎ、そっと身を寄せ合う。そして何事も無かったかのように商品を見繕いながら、ただ幸せなひと時を過ごしていた。
……暖かかった。まるで今もなお、ピロートークが続いているかのように。というか実際、そうだった。
ボクとマサトの余韻は、数日が過ぎた今もなお抜けることがなく。ふわふわとした心地よさの中で……ボクらは生きていた。
ボーッとしながら、それでいてハッキリとした充実感の中で。ボクは未来のことを感じている。いつかきっと来る、その日のことを……。
「ねえお姉ちゃんっ。……おれ、幸せにするからね。例えいつか出来る子供が、おれの子供じゃなかったとしても……。お姉ちゃんも、その子供も。……絶対に幸せにするから」
「マサト……。……うん、約束だからね。忘れちゃ駄目だよ?」
「誰が忘れるもんかっ、こんな幸せなこと! ……にししっ。一生忘れられないもんね……!」
ボクらはぎゅっと、手を繋いだ。決して離れることがないような、強く、熱く。
だけどそれは物理的な意味じゃない。そう、まさに例えるなら……運命の赤い糸のような。
決して切れることのない、頑丈な糸。心の奥で繋がる、いわゆる【家族】にも似たそれ。
……幸せだ。そしてそれを噛み締めているうちに、気が付けばボクは……ぽーっとマサトを見つめてしまっていて。それに気がついたマサトは、何か不自然に視線をそらした。
「にっっ!!!!」
「……えっ?」
その時だった。突然マサトが放った、全身全霊の変顔……。それは、眉を緩めて……口を大きく開けて……。目をあらぬ方向に向けた、言うなれば究極の変顔。
そしてそれを理解出来たのは、三秒ほど間をおいた時だった。マサトの表情を理解した瞬間、ボクの中に……ふつふつとした『気持ち』が迫ってきて。ふと、それが爆発した。
「あはははははっっ!! な、なにそれっ……!! ぷっ、ま、まさとっ……あははははは!!」
「にしししっ……! 練習してたんだ、これっ! 最強なんだよ……全員笑っちゃうんだ!」
「はははっ……! そ、そりゃ……そんな変な顔してたら……! くくくっ……ぷはははっ……!」
……ああ。そっか、兄弟なんだ。やっぱり。こうやってボクを笑わせようとする辺りは……、ラフィールとよく似ている。方法は違えど……楽しませようとしてくれてるんだ。マサトなりに。こんな、楽しい方法で……。
「やっぱりお姉ちゃんはさ。笑顔がよく似合うよっ。そんなボーッとした顔してないで、楽しく笑ったほうがいいって。色々あるかもだけどさっ……」
「ふふ。そうだねっ……。……うん、そうだ」
「そうだっ。お姉ちゃん、今度近くで花火があるんだよ。一緒に行かない? 楽しいよっ!」
「花火が? それって……お祭りみたいなこと?」
「そうそう。オークの一族が勢ぞろいするんだ、楽しいよ~! お店もいっぱいあるしっ……、行こうよっ!」
「……うんっ。行くよ、もちろん! へへっ……!」
……あー。やっぱり、ボク……マサトのこと好きだっ。この無邪気で、めちゃめちゃにはしゃぐ感じ……。一緒に居るだけで何だか楽しくなってくる、この感覚。
きっとマサトは、大人になっても変わらないんだろう。こんな風に皆を笑顔にする、立派な王様になって……。立派に皆を導いていく。
好きだなぁ。この感じ。楽しくて、思わず笑顔になっちゃう感じ。これがマサトなんだ。やっぱりこれが、ボクの好きなマサトだ。
……楽しいんだろうなあ。一緒になれば。恋人になって……家族になって。子供が出来たら、凄く楽しいんだろう。きっと、絶対……。
「ねぇ。ところで……。お姉ちゃん、浴衣って……着る?」
「え? うん。あるなら着るけど……」
「そ、そうっ! へへ……。着るんだ……? へへっ。にしししっ……!」
「……な、なんだ? なんか企んでるな君。なんだぁ……???」
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