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第35話 さよなら、優美さん

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「心の輝きがついに後600人で1万人分集まることになった。早く実体と手に入れたい気持ちもあるが、そのときに戦士がいては邪魔でしかない。実体が復活する前に何とかしろ、いいな!」
大魔王の言葉に従い、ホーフーは再び出撃していった。

 2週間ほどの冬休みはあっという間に過ぎ、3学期が始まった。愛華は冬休み、時間を見つけては希実と夢ちゃんと優美さんのところへ行ったが、ここ数日は会えない日々が続いていた。眠い目をこすりながら愛華が学校に向かっていたとき、少し前に優美さんに似た人がいるのを見つける。不思議に思いつつ愛華は声をかけた。振り返った姿は、やっぱり優美さんだった。
「愛華ちゃん、おはよう」
優美さんは、愛華に言う。愛華も
「おはようございます」
と挨拶を返す。優美さんはどこか悲しそうにも感じる笑顔を浮かべながら、
「もうつらいことは全てなくなったわ。愛華ちゃん、ありがとう」
と言ったように愛華は感じるが、優美さんはいつの間にかいなくなっていた。

 教室に着き、愛華がそれを希実に言うと、
「何か嫌な予感がする」
と希実が言葉を返す。夢ちゃんは今日、ドラマの撮影があって学校には来ていない。愛華は希実の言葉に妙な胸騒ぎを感じ始めながら、放課後優美さんのいる病院に希実と行くことにする。愛華も希実もそわそわした気持ちで授業を終え、放課後病院に着くと廊下で呆然と佇む優美さんのお母さんを見つける。愛華が声をかけると
「愛華ちゃんと希実ちゃんだったわよね? こんにちは、いつも優美と仲良くしてくれてありがとうね」
と言ってくるが、目の焦点はあっておらず泣き腫らしたような雰囲気だ。
「あの…、優美さんへのお見舞い行っても大丈夫ですか?」
優美さんのお母さんの様子を伺いながら、愛華は切り出す。すると、
「ええ、きっとそうすれば優美の笑顔も戻るはず…」
と言いながら泣き崩れる。愛華と希実で優美さんのお母さんを支えながら、優美さんのいる病室に向かうが、そこには誰もいなかった。
「優美はそこにはいないの…」
少し落ち着きを取り戻した優美さんのお母さんが、ぼそっと呟く。そして愛華と希実の手を振り払い、ふらふらとした足取りで先導するように歩き始める。着いた先の部屋に入ると、中で優美さんは眠っているようだった。けれど、その様子にいつもと何か違うような違和感を愛華も希実も覚える。
「今朝、優美はいってしまったの…」
最初、ぼそっと呟く優美さんのお母さんの言う言葉の意味が愛華と希実は分からなかったが、次第にその言葉の意味が心にずっしりとのしかかってくる。それと同時に愛華と希実の目からも涙が溢れていた。今朝の優美さんは、愛華に最後のお別れを言おうとしていたのかもしれない。そう思えば、今朝の出来事は納得できる気がする。愛華が優美さんの側に近づこうとすると、外から何か大きな衝撃音が聞こえ始める。愛華と希実は優美さんのお母さんに一声かけると、病院の外に向かう。涙をこらえながら、
「ルビーパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「トパーズパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「炎と愛の戦士、シャイニールビー」
「光と希望の戦士、シャイニートパーズ」
と変身した。

 外に出ると、そこにはメガトイフルとホーフーがいた。心の輝きを奪われた人々も近くにいる。ルビーもトパーズも必死に戦うが、ルビーたちの力ではメガトイフルを倒すことはできない。あっという間に窮地に追い込まれた。
「ルビー、どうしよう…。 このままじゃメガトイフルすら倒せないよ…。」
トパーズがルビーに言うが、アメジストやプリンセスを呼ぶといった考えが悲しみに支配されたルビーの心では浮かばなかった。そして、メガトイフルとホーフーの攻撃が当たったルビーとトパーズはやり返すことができず、その場に倒れた。
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