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クルスの修行
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クルスは寮からほど近い、霊界統括調律師団の修行場と言う場所に案内されジャスパーから説明を受けた。
「ここは霊界統括調律師が自由に使える修行場さ。ここからの時空間移動は時空間管制の統括外になる。修行の度に管制官に連絡を入れてたんじゃ修行にならないからね」
ジャスパーはそう言うとクルスに調律師の登録ナンバーを尋ね、コンクリートに囲まれただだっ広い修行場の入口に設置されたコンソール(入力端末)に何かを入力する。
「これでよし。今日から1ヶ月間君はこの空間からの時空間移動は自由に行える。けど、その扉を一歩でも出て管制官に連絡を入れないと…一発BANだから気をつけなよ」
「この街にこんな所があったなんて…ベースの調律師が使っても大丈夫なんですか?」
「まぁ昔取ったなんとやらだ。元調律師団権限ってやつかな」
ジャスパーは笑いながら体を解すため手足を大きく動かし始める。
ジャスパーの体格はクルスより少し背が低く、一見すらっとしているがしなやかな筋肉がちらりと見える胸元、捲り上げられた腕から見て取れる。
種族は狼族。人界では送り犬、送り狼などと呼ばれる物怪である。
霊界人でもクルスのような元々人界人と同じ様な身なりの種族、人族は変化を行う事は出来ないがジャスパーの狼族は人型から四足歩行の狼型への変化を行う事が出来る。
「クルス君もよく体をほぐしておくんだ。じゃないとすぐに怪我をする事になるよ」
クルスは『すぐに』と言う言葉に少し引っかかったが言われた通り体をほぐす。
「君の獲物は両手大剣だね。少し借りてもいいかい?」
ジャスパーはクルスに確認をとり、壁に立てかけてあるクルスの大剣を手に取った。
「うん、良く鍛えられている。いい剣だな」
そう言うと、クルスの5メートルほど手前で体をクルスの鉛直線ほぼ垂直に足を少し広めに開き、片手で真っ直ぐ前に突き出し構える。
クルスは驚く。クルスの剣は大剣の中でも特段、軽いものではない。しかもクルスの大剣は攻撃力を上げるため、先端部分に重量を持たせているため並の筋力では両手でも前に突き出す所作は長続きはしない。
しかしジャスパーの構える剣先はピクリともせず、空気動きが止まっているかのようにさえ感じるほどだ。
するとジャスパーは重量を確認するように片手で大剣を振るってみせた。
「うん、バランスも素晴らしいな」
クルスはこの所作だけで上級調律師の力量を感じ取り一種の恐怖に襲われた。
ーーその瞬間。
5メートル先で剣を構えたジャスパー姿が一瞬にしてクルスの目の前に移動する。
その瞬間移動に驚いたクルスの体が後ろに倒れ込み、転び、後ろ手をつく。
すると構えた剣の切っ先がクルスの喉元に突き立てられた。
「ぅ、な、何を…」
「俺は狼族だ。次、今と同じように転べばお前を食い殺す…いや、切り殺すか。」
クルスは一瞬の出来事に何が起こり、ジャスパーが何を言っているのか理解出来ずにいた。
狼族は人界では夜中の道を人について歩き、何かの拍子に転んでしまうと食い殺すと言われる、もののけ、妖怪だ。転んでもすぐに立ち上がるなど転んだのではないふりをすれば殺されることはない。
「死にたくなければ死ぬまで立ち向かってくることだな」
クルスは人界で読んだ狼族の昔話を思い出す。好意を装いつつも害心を抱き害を加える者の事を送り狼と呼ぶ事を。
「お前は初めから俺を殺すつもりでいたのか…」
「さぁね、師団長の言いつけなら従わざるをえないが修行中の不慮の事故も有り得なくはないからね」
ジャスパーの瞳からは嘘は感じられない。本気で殺すつもりだ。クルスはそう感じとった。
「さぁ、かかってきな。殺す気でな」
ジャスパーはクルスの大剣を地面に突き立て、自身の武器の腰に下げた片手剣を鞘から抜き出した。
「行くぞ、」
ジャスパーが言葉を発した瞬間、クルスは目の前の大剣を手に取り防御体制に入る。
ーーキンッ!!
ジャスパーの横薙ぎを構えた大剣で受け止める。
「ほう、いい反応だ」
そう言うと立て続けに連撃を繰り出すジャスパー。
致命傷は追わないもののクルスの体にジャスパーの剣の切っ先が襲いかかり、複数の切り傷が一瞬にしてクルスの体に刻まれた。
クルスは頭を切り替え、目の前の自分を殺そうとしている敵に神経を集中する。
そして、大剣を振りかざし間合いを確保する。
ジャスパーがひょうひょうとした面持ちでこちらを見つめ、片足で地面を2度蹴飛ばした瞬間、クルスは全力で地面を蹴り飛ばし、一気に間合いを詰める。
右下に大剣を構えるクルスを見たジャスパーが剣を右上に振りかぶるその瞬間、左回りに体を回転させ大検横薙ぎ技、回転斬りを放つ。
右上に剣を振りかぶるジャスパーのがら空きの左側に大剣がヒットするその瞬間…
ーージャスパーの体が消える。
「なにっ!!?」
渾身の回転斬りの体勢からバランスを崩し、勢いがついた状態のまま床に倒れ込むクルス。
「転んだのか?まだ早いな、立てよ」
後ろから声が聞こえたと感じたその瞬間、背中の激痛と共に体が宙に投げ出された。
回転斬りを先程見せた瞬間移動でかわしたジャスパーが後ろからクルスを蹴りあげたのだ。
うずくまる体勢から必死に起き上がろうとするクルスに対してジャスパーが話しかける。
「お前はまだ自分が死なないとでも思ってるんじゃないか?」
そう発すると立ち上がりなんとか剣を構えたクルスの大剣を片手剣一本でいとも簡単に弾き飛ばし、立て続けの2連撃目にクルスの横腹に深い切り傷をつけた。
「うぐっ、」
倒れ込みそうになるクルスに非情の一言を浴びせるジャスパー
「倒れるんじゃない!!剣を取れ!!」
ジャスパーの言葉に反応したクルスは今にも気絶しそうな痛みを堪え、弾き飛ばされた剣を手に取り、すぐさまジャスパーとの間合いを詰める。
それに反応したジャスパーは剣を正面に構えた。それを見たクルスは地面を全力で蹴飛ばし、宙で一回転し回転の勢いと共に大検をジャスパーの真上から振りかぶる。
「うぉぉぉぉお!」ーアトミックバースト(回転縦切り)
斬撃を片手剣を水平に受け止めるジャスパーだが斬撃の重さに片膝をつく。
クルスはそのまま地面に叩きつけるように全力で剣に力を込めた、その瞬間…目の前のジャスパーが蜃気楼のようにモヤに消え、剣に軽さを覚える。
それとほぼ同時に背中に激痛が走る。
「一体何が起こった…」クルスは頭の中でそう感じたまま、意識が遠のくのを感じ、その場に倒れ込んだ。
「ここは霊界統括調律師が自由に使える修行場さ。ここからの時空間移動は時空間管制の統括外になる。修行の度に管制官に連絡を入れてたんじゃ修行にならないからね」
ジャスパーはそう言うとクルスに調律師の登録ナンバーを尋ね、コンクリートに囲まれただだっ広い修行場の入口に設置されたコンソール(入力端末)に何かを入力する。
「これでよし。今日から1ヶ月間君はこの空間からの時空間移動は自由に行える。けど、その扉を一歩でも出て管制官に連絡を入れないと…一発BANだから気をつけなよ」
「この街にこんな所があったなんて…ベースの調律師が使っても大丈夫なんですか?」
「まぁ昔取ったなんとやらだ。元調律師団権限ってやつかな」
ジャスパーは笑いながら体を解すため手足を大きく動かし始める。
ジャスパーの体格はクルスより少し背が低く、一見すらっとしているがしなやかな筋肉がちらりと見える胸元、捲り上げられた腕から見て取れる。
種族は狼族。人界では送り犬、送り狼などと呼ばれる物怪である。
霊界人でもクルスのような元々人界人と同じ様な身なりの種族、人族は変化を行う事は出来ないがジャスパーの狼族は人型から四足歩行の狼型への変化を行う事が出来る。
「クルス君もよく体をほぐしておくんだ。じゃないとすぐに怪我をする事になるよ」
クルスは『すぐに』と言う言葉に少し引っかかったが言われた通り体をほぐす。
「君の獲物は両手大剣だね。少し借りてもいいかい?」
ジャスパーはクルスに確認をとり、壁に立てかけてあるクルスの大剣を手に取った。
「うん、良く鍛えられている。いい剣だな」
そう言うと、クルスの5メートルほど手前で体をクルスの鉛直線ほぼ垂直に足を少し広めに開き、片手で真っ直ぐ前に突き出し構える。
クルスは驚く。クルスの剣は大剣の中でも特段、軽いものではない。しかもクルスの大剣は攻撃力を上げるため、先端部分に重量を持たせているため並の筋力では両手でも前に突き出す所作は長続きはしない。
しかしジャスパーの構える剣先はピクリともせず、空気動きが止まっているかのようにさえ感じるほどだ。
するとジャスパーは重量を確認するように片手で大剣を振るってみせた。
「うん、バランスも素晴らしいな」
クルスはこの所作だけで上級調律師の力量を感じ取り一種の恐怖に襲われた。
ーーその瞬間。
5メートル先で剣を構えたジャスパー姿が一瞬にしてクルスの目の前に移動する。
その瞬間移動に驚いたクルスの体が後ろに倒れ込み、転び、後ろ手をつく。
すると構えた剣の切っ先がクルスの喉元に突き立てられた。
「ぅ、な、何を…」
「俺は狼族だ。次、今と同じように転べばお前を食い殺す…いや、切り殺すか。」
クルスは一瞬の出来事に何が起こり、ジャスパーが何を言っているのか理解出来ずにいた。
狼族は人界では夜中の道を人について歩き、何かの拍子に転んでしまうと食い殺すと言われる、もののけ、妖怪だ。転んでもすぐに立ち上がるなど転んだのではないふりをすれば殺されることはない。
「死にたくなければ死ぬまで立ち向かってくることだな」
クルスは人界で読んだ狼族の昔話を思い出す。好意を装いつつも害心を抱き害を加える者の事を送り狼と呼ぶ事を。
「お前は初めから俺を殺すつもりでいたのか…」
「さぁね、師団長の言いつけなら従わざるをえないが修行中の不慮の事故も有り得なくはないからね」
ジャスパーの瞳からは嘘は感じられない。本気で殺すつもりだ。クルスはそう感じとった。
「さぁ、かかってきな。殺す気でな」
ジャスパーはクルスの大剣を地面に突き立て、自身の武器の腰に下げた片手剣を鞘から抜き出した。
「行くぞ、」
ジャスパーが言葉を発した瞬間、クルスは目の前の大剣を手に取り防御体制に入る。
ーーキンッ!!
ジャスパーの横薙ぎを構えた大剣で受け止める。
「ほう、いい反応だ」
そう言うと立て続けに連撃を繰り出すジャスパー。
致命傷は追わないもののクルスの体にジャスパーの剣の切っ先が襲いかかり、複数の切り傷が一瞬にしてクルスの体に刻まれた。
クルスは頭を切り替え、目の前の自分を殺そうとしている敵に神経を集中する。
そして、大剣を振りかざし間合いを確保する。
ジャスパーがひょうひょうとした面持ちでこちらを見つめ、片足で地面を2度蹴飛ばした瞬間、クルスは全力で地面を蹴り飛ばし、一気に間合いを詰める。
右下に大剣を構えるクルスを見たジャスパーが剣を右上に振りかぶるその瞬間、左回りに体を回転させ大検横薙ぎ技、回転斬りを放つ。
右上に剣を振りかぶるジャスパーのがら空きの左側に大剣がヒットするその瞬間…
ーージャスパーの体が消える。
「なにっ!!?」
渾身の回転斬りの体勢からバランスを崩し、勢いがついた状態のまま床に倒れ込むクルス。
「転んだのか?まだ早いな、立てよ」
後ろから声が聞こえたと感じたその瞬間、背中の激痛と共に体が宙に投げ出された。
回転斬りを先程見せた瞬間移動でかわしたジャスパーが後ろからクルスを蹴りあげたのだ。
うずくまる体勢から必死に起き上がろうとするクルスに対してジャスパーが話しかける。
「お前はまだ自分が死なないとでも思ってるんじゃないか?」
そう発すると立ち上がりなんとか剣を構えたクルスの大剣を片手剣一本でいとも簡単に弾き飛ばし、立て続けの2連撃目にクルスの横腹に深い切り傷をつけた。
「うぐっ、」
倒れ込みそうになるクルスに非情の一言を浴びせるジャスパー
「倒れるんじゃない!!剣を取れ!!」
ジャスパーの言葉に反応したクルスは今にも気絶しそうな痛みを堪え、弾き飛ばされた剣を手に取り、すぐさまジャスパーとの間合いを詰める。
それに反応したジャスパーは剣を正面に構えた。それを見たクルスは地面を全力で蹴飛ばし、宙で一回転し回転の勢いと共に大検をジャスパーの真上から振りかぶる。
「うぉぉぉぉお!」ーアトミックバースト(回転縦切り)
斬撃を片手剣を水平に受け止めるジャスパーだが斬撃の重さに片膝をつく。
クルスはそのまま地面に叩きつけるように全力で剣に力を込めた、その瞬間…目の前のジャスパーが蜃気楼のようにモヤに消え、剣に軽さを覚える。
それとほぼ同時に背中に激痛が走る。
「一体何が起こった…」クルスは頭の中でそう感じたまま、意識が遠のくのを感じ、その場に倒れ込んだ。
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