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台風が来たので、今日で親友を終わります。その3
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「お昼ご飯出来たわよ―」
階下から、母の呼ぶ声がして目が覚めた。
ベッドの脇に座り、ベッドを背にして座るような形でいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
私のすぐ横、こちらの肩にもたれ掛かるようにして眠っている透子を起こすのは忍びない気もするが、
「透子、起きてよ」
あんまりにも顔が近くてビックリして、ちょっと顔が赤くなってしまっているのを自覚はしている。だから、それを誤魔化すように、
「ご飯だってさ。先に行くね?」
透子の目が開いたのを確認して、私は立ち上がる。
いつの間にやら部屋に運び込まれていた布団をまたいで、部屋の外へと。
お昼ご飯は素麺で、つるりさっぱりと頂いた。
食事中、母がやけに楽しそうな顔をして、
「二人とも、仲良く寝てたわね? 二人が小さい頃のことを思い出したわ」
透子用の布団を持ってきてくれた時に見られたのか。
「あの、涼子さん? 私達が小さい頃の話、良かったらして頂けませんか?」
透子がやけに食いついている。私も気にならない聞きたくない、という訳でもないので、特に口を挟むことはしない。
「うん、そうね。透子ちゃんは覚えているかしら? まだ二人が3歳くらいの頃かな、」
そうして母は私を見て、
「いやほんと、あの頃からアンタ、透子ちゃんのこと大好きだったでしょう? いつも後をついて回ってて。寝る時だって一緒で、」
私が透子のことを大好きだったと聞いて、透子が頬を赤くしている。
うん、別に嫌とかじゃないんだけど。なにかこう、くすぐったい気がする。
「そこの居間でね、稔さんのお膝の上に座ってて。それで二人して眠っちゃって。それで稔さん動けなくなっちゃって、そこでウチの人と涼子ちゃんがイタズラをね?」
稔さん、というのは透子の父のことである。
その時の記憶はないが、我が家のアルバムでそれらしき写真を見た記憶がある。
私の父と、それから透子の母である涼子さんが、稔さんが動けないのを良いことにハゲカツラを被せたり顔に落書きしたりと、途轍もない記録写真となっていた。
私の両親と透子の両親との仲の良さが伺える一枚であり、
「その話、母から聞いた覚えがありますね。ウチにもその写真があって、母が大笑いしてた覚えがあります」
「うふふ。稔さんと涼子ちゃんが映ってる写真も一杯あるから、後で一緒に見ましょうか?」
私にしてみれば、とうに見飽きた感のある過去の写真ではあるが、透子にとって見れば新鮮に映るのだろう。
嬉しそうに頷く透子に対して何も言えず、むしろ私もそれに付き合うのは吝かではない、くらいの腹積もりでいると、透子が不意に私に耳元に口を寄せて、
「お泊りそうそう、小さい頃の写真を見せて貰えるイベントなんて、私、悶え死にそうよ?」
いやあの透子さん? いきなり何を言っていらっしゃるのか?
「透子のお父さんとお母さんの写真が、そんなに気になるの?」
「違うわ。私の家のアルバムにはない、小さな頃の写真が見られるのが楽しみなのよ?」
それは、誰の話なのか。
いや、聞くまでもなく確認するまでもないことだった。
たぶんこの後、私の方が悶え死ぬ。その自信がある。
そんなことを思いつつ、昼ご飯を終えて、母も加えた三人でアルバム鑑賞を開始して。
――結果として、二人とも死んだ。
私はどちらかと言うと恥ずかしくて悶え死んで。
そしてたぶん透子は、小さな頃の私に対する萌え死にだと思われる。
階下から、母の呼ぶ声がして目が覚めた。
ベッドの脇に座り、ベッドを背にして座るような形でいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
私のすぐ横、こちらの肩にもたれ掛かるようにして眠っている透子を起こすのは忍びない気もするが、
「透子、起きてよ」
あんまりにも顔が近くてビックリして、ちょっと顔が赤くなってしまっているのを自覚はしている。だから、それを誤魔化すように、
「ご飯だってさ。先に行くね?」
透子の目が開いたのを確認して、私は立ち上がる。
いつの間にやら部屋に運び込まれていた布団をまたいで、部屋の外へと。
お昼ご飯は素麺で、つるりさっぱりと頂いた。
食事中、母がやけに楽しそうな顔をして、
「二人とも、仲良く寝てたわね? 二人が小さい頃のことを思い出したわ」
透子用の布団を持ってきてくれた時に見られたのか。
「あの、涼子さん? 私達が小さい頃の話、良かったらして頂けませんか?」
透子がやけに食いついている。私も気にならない聞きたくない、という訳でもないので、特に口を挟むことはしない。
「うん、そうね。透子ちゃんは覚えているかしら? まだ二人が3歳くらいの頃かな、」
そうして母は私を見て、
「いやほんと、あの頃からアンタ、透子ちゃんのこと大好きだったでしょう? いつも後をついて回ってて。寝る時だって一緒で、」
私が透子のことを大好きだったと聞いて、透子が頬を赤くしている。
うん、別に嫌とかじゃないんだけど。なにかこう、くすぐったい気がする。
「そこの居間でね、稔さんのお膝の上に座ってて。それで二人して眠っちゃって。それで稔さん動けなくなっちゃって、そこでウチの人と涼子ちゃんがイタズラをね?」
稔さん、というのは透子の父のことである。
その時の記憶はないが、我が家のアルバムでそれらしき写真を見た記憶がある。
私の父と、それから透子の母である涼子さんが、稔さんが動けないのを良いことにハゲカツラを被せたり顔に落書きしたりと、途轍もない記録写真となっていた。
私の両親と透子の両親との仲の良さが伺える一枚であり、
「その話、母から聞いた覚えがありますね。ウチにもその写真があって、母が大笑いしてた覚えがあります」
「うふふ。稔さんと涼子ちゃんが映ってる写真も一杯あるから、後で一緒に見ましょうか?」
私にしてみれば、とうに見飽きた感のある過去の写真ではあるが、透子にとって見れば新鮮に映るのだろう。
嬉しそうに頷く透子に対して何も言えず、むしろ私もそれに付き合うのは吝かではない、くらいの腹積もりでいると、透子が不意に私に耳元に口を寄せて、
「お泊りそうそう、小さい頃の写真を見せて貰えるイベントなんて、私、悶え死にそうよ?」
いやあの透子さん? いきなり何を言っていらっしゃるのか?
「透子のお父さんとお母さんの写真が、そんなに気になるの?」
「違うわ。私の家のアルバムにはない、小さな頃の写真が見られるのが楽しみなのよ?」
それは、誰の話なのか。
いや、聞くまでもなく確認するまでもないことだった。
たぶんこの後、私の方が悶え死ぬ。その自信がある。
そんなことを思いつつ、昼ご飯を終えて、母も加えた三人でアルバム鑑賞を開始して。
――結果として、二人とも死んだ。
私はどちらかと言うと恥ずかしくて悶え死んで。
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