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第2話
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それから今までの約十年と少し、俺は全力で駆け抜けてきた。
ナンパに出会い系に友達の紹介に、あと最近は婚活パーティなんてのにも出てみた。
それで色んな女の子と出会い、付き合い、けれどもすぐに別れる。最長で持って半年くらいだっただろうか。
どの娘も悪くはなかったけれども、でも何かが違った。
涼子のことを忘れようと決めて、けれども結局涼子以外の誰にも本気になれなかった。
けれども。
俺は涼子がいつも俺に言う言葉を思い出す。
――自分の心に正直に生きるべき。
そう出来たなら、きっと俺のこれからの人生は楽しくて明るいはずである。
だから俺は、ベッドですやすやと寝息を立てているこの幼馴染を、口元からちょっとヨダレが垂れている、女子として見せちゃ駄目な姿を曝け出してしまっている女の子との一線を越えようと、
「――――ッ」
伸ばした手を引っ込めて、代わりにそっと頬に口づけして、それで満足する。
焦ることはない、と思う。
まかり間違って今手を出して、それで嫌われでもしたら俺はもう生きていけない。
頑張って外堀を埋めるか、少しずつでも意識させて行けばいいのだ。
うん、そうだな。
俺のこれからの人生が上手く行くように、新たな目標を定めた。
それは、――。
*
翌朝。
忙しい忙しいと騒ぎながらも、俺の分まで朝食を用意してくれた涼子に感謝の意を伝える。
「ありがとう涼子愛してる結婚してくれー」
「はいはい、寝言は寝てからね?」
朝ご飯を手早く掻き込んで、スーツに着替えて軽く化粧を済ませて、さあ出社だと意気込む涼子を引き止めて、
「俺さ、決めたんだ。涼子と結婚する為に、涼子似の地味めな女の子と付き合うことにする!」
「お、おぅ……? そうか頑張れ稔。私も応援するよ。……っと、もう出ないと遅刻しちゃう。行こ、稔?」
「いや、今日は月曜だからこそ、朝はゆっくりしたいんだが」
「じゃ、一人でゆっくりしとれ。私は行く。鍵はいつものとこに隠しておいてくれればいいから」
「涼子も一緒じゃなきゃ意味ねーじゃん。しゃーない、俺も出るよ」
「もー、ワガママ言わない面倒掛けさせないの。ほら行くよ?」
涼子に手を引かれ、部屋を出る。
うむ、この貴重な朝の時間をゆっくり出来ないのは寂しいが、しかし俺の真摯な気持ちは伝わったようで良かった。
朝日が眩しく、けれどもこれまでの人生で一番輝かしく清々しい。
駅まで他愛もない話をしつつ、歩く。
そして駅で別れる。涼子と俺とでは乗る電車の方向が違う。
今回の休日は、実に充実していた。
正確には日曜の夜から今朝に掛けて、だ。
これだけ完璧に上手く行ったのだから、きっとこれからの一週間が上手く行くし、その先も同様に違いない。
――よし、今週も頑張ろう!
そう気合を入れると、会社に向かう。
朝をゆっくりしたこの時間では遅刻確定なのは、まあ仕方がないと目をつむろう。
ナンパに出会い系に友達の紹介に、あと最近は婚活パーティなんてのにも出てみた。
それで色んな女の子と出会い、付き合い、けれどもすぐに別れる。最長で持って半年くらいだっただろうか。
どの娘も悪くはなかったけれども、でも何かが違った。
涼子のことを忘れようと決めて、けれども結局涼子以外の誰にも本気になれなかった。
けれども。
俺は涼子がいつも俺に言う言葉を思い出す。
――自分の心に正直に生きるべき。
そう出来たなら、きっと俺のこれからの人生は楽しくて明るいはずである。
だから俺は、ベッドですやすやと寝息を立てているこの幼馴染を、口元からちょっとヨダレが垂れている、女子として見せちゃ駄目な姿を曝け出してしまっている女の子との一線を越えようと、
「――――ッ」
伸ばした手を引っ込めて、代わりにそっと頬に口づけして、それで満足する。
焦ることはない、と思う。
まかり間違って今手を出して、それで嫌われでもしたら俺はもう生きていけない。
頑張って外堀を埋めるか、少しずつでも意識させて行けばいいのだ。
うん、そうだな。
俺のこれからの人生が上手く行くように、新たな目標を定めた。
それは、――。
*
翌朝。
忙しい忙しいと騒ぎながらも、俺の分まで朝食を用意してくれた涼子に感謝の意を伝える。
「ありがとう涼子愛してる結婚してくれー」
「はいはい、寝言は寝てからね?」
朝ご飯を手早く掻き込んで、スーツに着替えて軽く化粧を済ませて、さあ出社だと意気込む涼子を引き止めて、
「俺さ、決めたんだ。涼子と結婚する為に、涼子似の地味めな女の子と付き合うことにする!」
「お、おぅ……? そうか頑張れ稔。私も応援するよ。……っと、もう出ないと遅刻しちゃう。行こ、稔?」
「いや、今日は月曜だからこそ、朝はゆっくりしたいんだが」
「じゃ、一人でゆっくりしとれ。私は行く。鍵はいつものとこに隠しておいてくれればいいから」
「涼子も一緒じゃなきゃ意味ねーじゃん。しゃーない、俺も出るよ」
「もー、ワガママ言わない面倒掛けさせないの。ほら行くよ?」
涼子に手を引かれ、部屋を出る。
うむ、この貴重な朝の時間をゆっくり出来ないのは寂しいが、しかし俺の真摯な気持ちは伝わったようで良かった。
朝日が眩しく、けれどもこれまでの人生で一番輝かしく清々しい。
駅まで他愛もない話をしつつ、歩く。
そして駅で別れる。涼子と俺とでは乗る電車の方向が違う。
今回の休日は、実に充実していた。
正確には日曜の夜から今朝に掛けて、だ。
これだけ完璧に上手く行ったのだから、きっとこれからの一週間が上手く行くし、その先も同様に違いない。
――よし、今週も頑張ろう!
そう気合を入れると、会社に向かう。
朝をゆっくりしたこの時間では遅刻確定なのは、まあ仕方がないと目をつむろう。
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