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NYCから、1120マイルも離れたメンフィス。

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NYCから、1120マイルも離れたメンフィス。その町のナイト・クラブで、年増の女が、愛だの恋だのと嘆く男の頬を平手で叩いた。そのオゾンの響きで、貴婦人の遊戯が目を覚ます。その遊戯がJFK空港から飛び立ち、島国のウサギの女に伝わる。島国のウサギの女が視線を感じる。マガジン越しに、視線を上げる。ウサギの女は、向かい合わせになった鏡を見つけた。
・映っている、自分の姿。
でも、映っている自分の姿に、違和感を覚える。
「あたしらしくない…。」
鏡の女は、確かにウサギの女にそっくりだった。
・フェイス・ラインの美しさ。
・アイ・メイクの艶(つや)めかさ。
全てがそっくりだ。しかし、とぐろ巻いた悪戯好きな子悪魔に怯える、ウサギの女の姿ではなかった。
・その姿はまるで、蠍(さそり)のような佇まい。
・子猫ちゃんなんて、言えない。
傲慢な英雄オリオンを殺した蠍(さそり)のようだ。白馬の王子様を信じないDNAがあった。
すると、鏡の中の蠍の女が言う。
「期待をしているの?」
鏡の女の口先は尖らせて、言う。その尖がりが、絶望の深さを告げる。
「こんな時間に、誰が来るっていうの?」
蠍(さそり)の女の瞳は、火星のようだ。マントルは酸化鉄に富み、表面が赤色に光っている。
「彼が来るって、期待しているの?」
蠍(さそり)の女は奥歯で、ピルを噛みしめて飲み込んだ。
蠍(さそり)の女は、電話を手に取る。
・電話を見せつける、蠍の女。
・電話を手にする、ウサギの女。
僕に危機感が走る。
「真夜中の電話は危険だ。」
真夜中は道端の海が沈み、何も知らない時計が嘆いている時間だ。
ウサギの女は電話のタッチ・パネルを眺める。期待した男のコール・サインはなかった。迷い落胆するウサギの女がいた。
やはり、僕は思う。
「真夜中の電話は危険だ。」
寂しさや淋しさから、自分をさらけ出してしまう。
彼女の電話のメモリーには、砂を駆けるように、雑多なメッセージが積まれている。
・締め切りを早めたい、クライアントからのメッセージ。
・プレゼンの資料を催促する、ボスからのメッセージ。
でも、その中には、土を濡らし芽吹させる雨のようなメッセージがある。雨のメッセージには、ベルリンの壁を溶かすようなセンスがある。そのセンスは髪の先から、つま先まで、恋色に染めてしまう。それが、ウサギの女にとっての、「彼」という存在なのだろう。
ふっと、僕は指を鳴らす。BGMを「愛しのエリー」に変える。僕はウサギの女が、住むべき場所を示す。ウサギの女の人差し指が、リダイアルのアイコンに触れようとした。
 しかし、蠍(さそり)の女が鼻を鳴らす。
「もう、一目惚れする子供じゃないでしょ?」
真夜中の陽炎(かげろう)が、ウサギの女をジリジリと焦がす。リダイアルへの指が止まる。
・その指は乾いていた。
・期待する彼へのリターンができない、ウサギの女。
スーツ・マンの僕の煙草も、執拗に焦げていった。その頃、ルート17号線では、下り道の渋滞が解消され、テール・ランプが疎(まば)らになっていた。
僕は知らせたい。
・「彼」がくれた温もりは、嘘じゃない。
・「彼」がくれた言葉は、嘘じゃない。
神様は何十億人も創造し、世界というものを構築した。でも、その世界は変わり続ける。でも、その中で、変わらないこともある。ウサギの女が、「彼」と言葉を交わしたことは、偶然ではない。
・あの晩、唇を交わしたことは、気休めじゃない。
・あの晩、雫で肌を溶かしたことは、火遊びではない。
洗礼者ヨハネが、メシアの到来を預言したことと同じだ。2人が出会ったのは、神様が示した1つの道だ。これが新世界での最初の愛なんだ。僕はそれを信じていた。
だから、僕は寄せる波をかき分け、口ずさむ。
「貴女を『好きだ。』と、言ってくれたよ。」
蠍(さそり)の女が高笑いする。
「ただのリップ・サービスよ!」
隙を見せない蠍(さそり)の女は、「彼」をフェイクと呼ぶ。決め付けた出口へ、ウサギの女を誘っていく。
 僕はページをめくり、おとぎ話の魔法を探す。しかし、その隙に、蠍(さそり)の女が総攻撃をはじめる。
「その凍える指を思い出して。」
ウサギの女が乾いた指をさする。欠けた爪が引っ掛かる。
「信じたって、騙されるのがいつもでしょ。」
ウサギの女のイメージの中で、去っていった男たちがコラージュされていく。
・いつからか、さよならのキスが冷たい。
・いつからか、握った手は解けばかり。
ウサギの女は、男にフラれた頃たちへ戻る。
・気がつけば、留守番電話のコールばかり。
・気がつけば、独りで眠るばかり。
レコードの針が、あの頃たちへ落ちていった。
・堕ちる、線香花火の雫。
・落ちる、吐息の純白。
心残りの状況が、めくりめくっていった。
曖昧なあの頃たちを、ウサギの女は考える。
「あのカレとは、何を間違えただろうか?」
届かない場所を、ふっとウサギの女は考える。
「このカレとは、何処ですれ違っていただろうか?」
戸惑う想いばかりが募っていった。
 蠍の女は、細長い煙草を灯す。
「いつも同じでしょ?男なんて。」
煙が背骨のような筋を描く。振り出しに戻る可能性がなくなり、暗闇が開いていった。
「いつも同じでしょ?あんたがオーバー・ヒートするだけ。」
細長い煙草は、夢物語を焦がして、灰としていく。死の灰にまみれたウサギは、怯えだしてしまった。
 困った僕はもがく。ウサギの女の電話をタップする。
・ネットワークに繋げる、ウサギの女の電話。
GPSが、ウサギの女の現在地を、衛星のアンテナにアップ・ロードする。
・でも、やっぱりない、コール・サイン。
・いつまでも、つかない既読のサイン。
ウサギの女は、独りぼっちへ落ちていく。
・夜に飛び込んでも、輝けない。
・夜に沈みこんでも、煌(きら)めかない。
ウサギは迷うだけで、信号待ちの臆病になってしまった。
臆病な痛みに疼(うず)くウサギの女が、時間のネジ回しをまわして、考える。
「なぜ、髪型をカールにしているのだろう?」
ゆらりと巻かれている髪を、ウサギの女は指に巻く。
・彼が好みだと言った、髪型。
大きめのロッドで、巻いた髪を指に巻いた。そして、答えがないまま、彼女は指に巻いた髪を放した。
・星が行先を失ったように、すとんと肩に落ちる巻いた髪。
・眠ってしまえば、忘れてしまう巻いた髪。
ウサギの女は、自分を探すスピードを強くしていく。いや、探す以上に、今の自分を責めだす。暗いビルディングの非常階段を、急降下で堕ちていく。
「どうして、彼の煙草を持っているのだろう?」
ウサギの女は煙草を吸わない。でも、バッグの中に、彼が吸う煙草がある。
・黒と緑のパーケージのマルボロ。
・メンソールを体現しているプライド。
にやける煙草の箱は、冷ややかな色をしていた。
流行りのシンガーは歌う。
「『尽くす女』なんて、流行らない。」
それでも、ウサギの女は、尽くすことしかできない。髪の先からつま先まで、尽くすことしかできない。そんな切ないバブルに、ウサギの女はくるまれている。
・愛される自信が無い、ウサギの女。
自分を探すスピードが加速していく。
「どうして、眉の書き方を変えたのだろう?」
ウサギの女が太めに描いた眉をなぞる。彼が好みだと言った眉の形を変えた。
・やはり、尽くすウサギの女。
・成長しない自分の姿。
ウサギの女の足取りが、さらに冴えなくなった。
 蠍の女は舌なめずりをして、スーツ・ケースを取り出す。
「したいことは、やり尽くしたでしょ?」
ウサギの女の足元には、荷物がつまったスーツ・ケースがある。
・連なっていく、過去と現在、そして、未来。
・終わらない、過去と現在、そして、未来。
蠍の女がパンクした財布から、チケットを差し出す。
「誰もあたしたちを知らないところへ、行きましょ!」
遥かな遠くで、田舎歌が聞こえてくる。チベットの幻惑が、身を任してくる。瞳孔がカモフラージュされる。ウサギの女は、足の踏み場を見失う。
・口を開く、素顔が見えないブラック・ホール。
夜の北風に流されて、ウサギの女は1mmずつ、蠍の女の意のままにへ流されていった。
・その時、街路樹の足元で咲く、シロツメクサの花。
恋の終わりが、最後の言葉を喋り終えていた。
僕は危機感を覚える。僕は願う。
「状況を変えたい。」
僕は塩で、唇を濡らす。指を鳴らして、可憐なウェイトレスを呼んだ。
やってきたウェイトレスは、シリアルしか食べていない体つき。ウェイトレの東欧人らしい白過ぎる肌が、より不幸せを呼んでいた。
・でも、大まかに結んだ黒髪は、大胆なほど美しい。
・真っ黒なアイ・メイクが、無敵なほど強い。
首筋から左肩にかけて、ドラゴンのタトゥーが燃え盛っている。忌まわしきハリエットの過去を暴いていた。
 僕は愛想な笑顔を送る。でも、このウェイトレスは、公共の面前でも、僕を睨む。
「で?」
キツイ視線で、ゴロツキな盛(さか)りをみせつける。隠れて吸った煙が、口の隙間から漏れている。今すぐにでも、僕から去りたい合図を送っていた。
僕は注文の品をサインする。
「アボガド・ディップスと、モヒート。」
注文で、時がゆれて、ウェイトレスが止まる。そこで、僕は続ける。
「それを彼女へ。」
僕はウサギの女を指さす。
でも、ウェイトレスは鼻で笑う。
「そんなサービスはしてないわ。」
そう言いながらも、ウェイトレスの左手は、高いチップを求めている。僕は高い紙幣を厚くして、ウェイトレスに渡した。
僕は至福の食事を、ウサギの女に送る。
・アボガドは、世界で最も栄養価の高い果実。
・モヒートは、イタリアが生んだ爽快な飲料。
僕はそれをウサギの女に送る。つまり、ヴェローナ・シャッフルを彼女に送る。
ヴェローナ・シャッフルとは、退廃したETが故郷の惑星へ戻すため、劇詩人マキューシオが使った魔法だ。僕はこの魔法で、ウサギの女のやるせない感情を、通り雨にしたいと願った。


 待つことなく、ウサギの女に、お祈りのご馳走が並ぶ。ウサギの女は、オーダーしていないことすら、気付かない。
・独り歩いている、無重力のロボトミー。
・誰もいない、ロッポンギ。
ウサギの女は、蠍の女のせいで、夜空に晒(さら)された孤独の中にいる。何も見えなくなっている。それでも、ウェイトレスの支給に、ウサギの女は感謝を言う。しかし、海沿いのような睫毛(まつげ)は伏せていた。
蠍(さそり)の女は、アボガド・ディップスをバリバリと、口に運ぶ。疑うことなく、喉を通していく。蠍(さそり)の女が食べているのを見て、ウサギの女も口に運ぶ。そして、飲み込んだ。
すると、雪空の砂丘に迷い込んでいたウサギの女に、変化が訪れる。悩ましく重い想いが、椿の花言葉に変わる。
・霞の中から流れ出す、控えめな愛。
・追憶の陰影から光り出す、気取らない上品。
ウサギの女に、振り出しに戻る可能性が生まれる。そして、語り手がギリシア物語を語り出した。


ある日、静かにお陽様が目を覚ました。その光は大海の底まで、届いた。揺れながらも、強く届いた。すると、ゼウスの子、アポロンがイルカたちにキスをしながら、深海に桂樹の苗を植えていった。そして、過ぎることのない深海に、女と男を繋ぐ永遠の愛の伝説が生まれた。
 

この伝説がウサギの女へも起こる。積まれたストレスの深海に、アドガボが流れつく。荒廃した土壌に、光が差す。モヒートの爽快が、荒廃したウサギの女に苗木を植える。
・そして、芽吹いた葉っぱ。
その葉っぱたちが、昨日と今日をくっつけて、ウサギの女の明日を形作っていった。
心まで裸にされていく。
・それは恋の魔法。
ヴェローナ・シャッフルで、ウサギの女は大胆に恋の手札を切る。
「踊るためには、何もいらない。」
皮肉たちに、危機のチャイムがなる。甘い涙に絆(ほだ)さられた、恋の魔法が呟く。
「鼓動と鼓動で、遠くまで行ける。」
皮肉屋たちが、光のシャワーの海で、瀕死へと溺れだす。ウェディング・ベールに憧れた、恋の魔法が呟く。
「戯(たわむ)れ歌のように、遊んでしまえばいい。」
散ってしまいそうだった女の恋心に、賛辞が歌われた。
僕はその歌に乗せて、ウサギの女は素顔をデッサンする。
・なぜだか、スローになる世界。
ウサギの女はアリバイを消すように、鬱積(うっせき)に解散宣言を告げる。祈りが、朝日を知らせる。その姿に、僕はウサギの女に耳打ちする。
「彼は貴女が好きなんだ。」
素顔のままで良いことを許されるのだと、ウサギの女に知らせる。
「何年後も、彼は貴女が好きなんだ。」
幸せな流れが、彼女の入江へ行きつく。無礼だった不協和音たちが、絆(ほだ)さられていく。そして、彼女は、怯えた心を投げ捨てる勇気を見つけた。
 心まで裸にされたウサギの女が、真っ白になる。すると、彼女に、美しいフレーズが生まれる。
「あたしは、あの人が好きなんだ。」
行動が近づき、眩しい瞬きが起こる。流行だけじゃ、犯せないフレーズが生まれる。ウサギの女は強く思えてくる。
「あの人も、あたしが好きなんだ。」
だから、ウサギの女は電話をタップした。彼のコール・ナンバーをタップした。
「だから、わがままだって、許されるんだ。」
張り詰めた感情言語の束が、一斉に弾けた。そして、蠍の女はモヒートの泡となり、弾けていった。
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