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大陸の大空の中で出来た冷たい大気
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大陸の大空の中で出来た冷たい大気が、大陸を渡り島国へと、辿り着く。毎日がラッシュ・アワーの島国へと、辿り着く。冷たい大気は港を越えて、使い古された駅の隙間を縫う。お陽様が沈み、冷たい風は氷の風と揉めごとを起こす。段階を踏んで、冷たい風は強い北風となった。そして、島国に寒波がやってきた。
・強い北風は、つまずいたり。
・街を賑わして、ころんだり。
そして、北風が島国のカジュアルなリストランテの窓にぶつかる。その音は、誰かが窓を叩く音に似ていた。
・北風が窓を叩いた音色。
食事と気休めを行う1人の女が、その音色に驚く。女は窓の外を覗く。
・夜の情景には、何もない。
遠くで、バイパスのライトが、オレンジに光っていた。赤いネオンの最終バスが、過ぎ去って行った。今年、最初の雪の結晶が、1つだけ降りてきた。
女はぎこちなく、窓を覗く。白いウサギのように怯えながら、外を覗く。窓を叩くものは誰もいなかった。
・口笛を鳴らしてギターをかき鳴らす、僕。
でも、白いウサギのような女の驚きは、長く続かない。白いウサギのような女の視線は、窓からテーブルに積まれたマガジンへ戻った。水しぶきの天使は、潮騒に降り立たなかった。
僕は天を仰ぐ。僕のブルースの光が弱すぎた。僕には、摩天楼の雪を溶かす力がなかった。それでも、マガジンへ戻ったウサギの女は手を止めた。
・プレイ・バックする、さっきの自分。
・デジャブに感じる、さっきの自分。
逆回して、驚いた自分の姿に疑問をもつ。驚いたことより、胸が躍(おど)った自分がいた自分がいた。新鮮になれないウサギの女は思う。
「なぜ?」
夏を抱きしめた悪戯好きな子悪魔が、指をなぞる。冷たい大気の中でとぐろを巻く。その時、ウサギの女の藍色のアウターが、床に落ちた。
・アクリル素材の床にできる、藍色の湖畔。
向かうところのない誠実さが、なすがままに崩れた。
僕は寒波に耐えられない。リストランテの中に、駆け込む。ウサギの女が見えるテーブルに、腰を下ろす。ウサギの女は、落ちたアウターを拾う。ウサギの女の顔が上がる。僕はその顔をマジマジと、眺める。行く手が塞がっても、眺める。
・女というものは、1冊の本のようなもの。
何冊も読んだ小説。内容を問わず、女とは最初のページから、楽しいと思って読まなければいけない。女とは、そういう生き物だ。だから、僕はウサギの女の顔を知ることにした。
ウサギの女の顔立ちに、華やかさはない。
・レッド・カーペットでは、グルーピーに紛れてしまう。
それでも、センスを刺激するエキゾチックがあった。それでも、緩く巻いた髪が肩に萎れていた。
・フェイス・ラインは、ルイ15世の愛妾(あいしょう)だったポンパドゥール夫人のよう。
僕はカサノヴァの夢の素顔を思い出した。
「男は人生を早く知りすぎ、女は遅く知りすぎる。」
カサノヴァはそう言った。
乾いたお月様が、キューピットを降らせる。乙女の憂鬱を、ウサギの女に降り注ぐ。
「私は見る。そして、語らない。」
ポンパドゥール夫人のデカダンスが、ウサギの女の全てを覆う。彼女は悲しみや苦しさに耐えながらも、純粋に凜とした衝動の中で生きてきた。
ウサギの女を観察していると、探検家という僕の肩書が疼く。僕はLVの鞄をあさる。麻薬や媚薬を投げ捨て、ブックを取り出す。ページをめくり、このウサギの女を調べて出した。
ウサギの女は、真っ赤な連邦がペレストロイカを始めた年に生まれた。
・その年の空では、暴れていたラニーニャ。
・そのせいで、赤道付近で海水温が低下。
だから、島国のトウキョウでは、季節外れの大雪が降った。
その年は、気ままな女の子の年でもあった。
・トウキョウで鳴っていた、強烈な音楽。
・ガラスの10代が響いていた、ビルディング群。
そして、ディスコの女の子たちは、誰しもボディ・コンシャスなヴェルサーチを纏っていた。その年に、白いウサギの女は生まれた。
僕は、さらにウサギの女を探る。バック・ビートが、体の芯を走る。パーソナルな部分をピンチ・アウトする。
・彼女はつまずいては、転んでばかり。
・彼女は街のスピードに、ついていけない。
そして、放課後は、ママのルールに捧げていた。これまでのウサギの女は、世間に背中を押されるがまま生きてきた。その歩みが続けられてきた。
でも、ウサギの女は大人になった。
・今のアイ・ラインは、目尻を長めにリキッド・タイプ。
・今のファッションは、ファスト・ショップよりセレクト・ショップ。
ウサギの女は夢見がちに、スタイルを変えていった。それでも、変わらないこともあった。
・生まれてきた、意味。
・嫌いじゃない、独り。
だから、今も、独りで、真夜中にカジュアルなリストランテで、時間を潰していた。でも、さっきの窓ガラスを叩く音で、誰かを期待してしまった。
「独りには、慣れてるけど…。」
ウサギの女の心は、不思議と熱情が跳ね返る。体が火照っている。誰かが来るのを期待していた。しかし、夜は真夜中へと迫っていた。
・強い北風は、つまずいたり。
・街を賑わして、ころんだり。
そして、北風が島国のカジュアルなリストランテの窓にぶつかる。その音は、誰かが窓を叩く音に似ていた。
・北風が窓を叩いた音色。
食事と気休めを行う1人の女が、その音色に驚く。女は窓の外を覗く。
・夜の情景には、何もない。
遠くで、バイパスのライトが、オレンジに光っていた。赤いネオンの最終バスが、過ぎ去って行った。今年、最初の雪の結晶が、1つだけ降りてきた。
女はぎこちなく、窓を覗く。白いウサギのように怯えながら、外を覗く。窓を叩くものは誰もいなかった。
・口笛を鳴らしてギターをかき鳴らす、僕。
でも、白いウサギのような女の驚きは、長く続かない。白いウサギのような女の視線は、窓からテーブルに積まれたマガジンへ戻った。水しぶきの天使は、潮騒に降り立たなかった。
僕は天を仰ぐ。僕のブルースの光が弱すぎた。僕には、摩天楼の雪を溶かす力がなかった。それでも、マガジンへ戻ったウサギの女は手を止めた。
・プレイ・バックする、さっきの自分。
・デジャブに感じる、さっきの自分。
逆回して、驚いた自分の姿に疑問をもつ。驚いたことより、胸が躍(おど)った自分がいた自分がいた。新鮮になれないウサギの女は思う。
「なぜ?」
夏を抱きしめた悪戯好きな子悪魔が、指をなぞる。冷たい大気の中でとぐろを巻く。その時、ウサギの女の藍色のアウターが、床に落ちた。
・アクリル素材の床にできる、藍色の湖畔。
向かうところのない誠実さが、なすがままに崩れた。
僕は寒波に耐えられない。リストランテの中に、駆け込む。ウサギの女が見えるテーブルに、腰を下ろす。ウサギの女は、落ちたアウターを拾う。ウサギの女の顔が上がる。僕はその顔をマジマジと、眺める。行く手が塞がっても、眺める。
・女というものは、1冊の本のようなもの。
何冊も読んだ小説。内容を問わず、女とは最初のページから、楽しいと思って読まなければいけない。女とは、そういう生き物だ。だから、僕はウサギの女の顔を知ることにした。
ウサギの女の顔立ちに、華やかさはない。
・レッド・カーペットでは、グルーピーに紛れてしまう。
それでも、センスを刺激するエキゾチックがあった。それでも、緩く巻いた髪が肩に萎れていた。
・フェイス・ラインは、ルイ15世の愛妾(あいしょう)だったポンパドゥール夫人のよう。
僕はカサノヴァの夢の素顔を思い出した。
「男は人生を早く知りすぎ、女は遅く知りすぎる。」
カサノヴァはそう言った。
乾いたお月様が、キューピットを降らせる。乙女の憂鬱を、ウサギの女に降り注ぐ。
「私は見る。そして、語らない。」
ポンパドゥール夫人のデカダンスが、ウサギの女の全てを覆う。彼女は悲しみや苦しさに耐えながらも、純粋に凜とした衝動の中で生きてきた。
ウサギの女を観察していると、探検家という僕の肩書が疼く。僕はLVの鞄をあさる。麻薬や媚薬を投げ捨て、ブックを取り出す。ページをめくり、このウサギの女を調べて出した。
ウサギの女は、真っ赤な連邦がペレストロイカを始めた年に生まれた。
・その年の空では、暴れていたラニーニャ。
・そのせいで、赤道付近で海水温が低下。
だから、島国のトウキョウでは、季節外れの大雪が降った。
その年は、気ままな女の子の年でもあった。
・トウキョウで鳴っていた、強烈な音楽。
・ガラスの10代が響いていた、ビルディング群。
そして、ディスコの女の子たちは、誰しもボディ・コンシャスなヴェルサーチを纏っていた。その年に、白いウサギの女は生まれた。
僕は、さらにウサギの女を探る。バック・ビートが、体の芯を走る。パーソナルな部分をピンチ・アウトする。
・彼女はつまずいては、転んでばかり。
・彼女は街のスピードに、ついていけない。
そして、放課後は、ママのルールに捧げていた。これまでのウサギの女は、世間に背中を押されるがまま生きてきた。その歩みが続けられてきた。
でも、ウサギの女は大人になった。
・今のアイ・ラインは、目尻を長めにリキッド・タイプ。
・今のファッションは、ファスト・ショップよりセレクト・ショップ。
ウサギの女は夢見がちに、スタイルを変えていった。それでも、変わらないこともあった。
・生まれてきた、意味。
・嫌いじゃない、独り。
だから、今も、独りで、真夜中にカジュアルなリストランテで、時間を潰していた。でも、さっきの窓ガラスを叩く音で、誰かを期待してしまった。
「独りには、慣れてるけど…。」
ウサギの女の心は、不思議と熱情が跳ね返る。体が火照っている。誰かが来るのを期待していた。しかし、夜は真夜中へと迫っていた。
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