夜が訪れて、 カジュアルに、溺れて カジュアルに、1つになって

ウィリアム シェイクスピア ジュニア

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新世界の到来を前にした僕。

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新世界の到来を前にした僕。その頃の僕はヤング・アメリカンだった。しかし、アーバン・ライフに飽き飽きしてしまった。
・気取った女が乗る、高級車。
・元カノを自慢する男が主演する、映画。
こんな過剰なブライト・カラーの競演によるアーバン・ライフに、飽き飽きした僕がいた。
・ユニセックスの潔さを、写真に撮る時。
・ヴィヴィットなライトの中で、踊っている時。
そんな時たちの中でも、僕は体の何所かで、冒険を求めていた。
・人にある、旅に出る理由。
僕はアーバン・ライフに飽き飽きして、デタラメに旅へ出た。
今日はチベットを目指して、ユーラシア大陸まで足を伸ばした。心変りの相手を探して、大陸の山岳まで、やってきた。
今宵のリアリティを求める僕は、夜中の草原を闊歩している。村を出るとき、フィン=ウゴル族の酋長(しゅうちょう)は警告した。
「夜の山は、危険だ。」
酋長(しゅうちょう)の忠告に、僕は首を振る。
「危険も、それは成長だ。僕には、自然も平伏(ひれふ)すさ。」
大仰しく、スーツ・マンの僕は伝える。そして、スーツ・マンの僕は酋長(しゅうちょう)を振り切った。頼ることなく集落を出る僕。酋長(しゅうちょう)は、厚手のポンチョをくれた。
・ポンチョを纏い渡る、大きな川と河。
・ヒラヒラさせて超えていく、高々な山と山。
5つ目の山を越えた時、僕の足は爽やかな風を感じた。僕は地球の草原に着いたのだ。月明かりに、雨露(あめづゆ)が光っていた。
輝く草原で、僕は雌(め)狐(ぎつね)と出会う。
・やましい眼(まなこ)を僕に送る、雌狐。
・野生の輝きを僕に送る、雌狐
雌狐は優秀だった。ビーチの風を纏い、誘惑の才能で、僕を欲望の淵に立たせた。
雌狐は言う。
「心変りは誰のせい?」
雌(め)狐(ぎつね)は僕の足元に絡みつき、LSDのような幻想へ誘う。そして、雌狐はイニシエーションとして、手紙を読む。
「なぜ、あの時、アオヤマドオリで、あたしを独りにしたの?」
僕が置き去りにした恋人が綴った手紙を、雌狐が口ずさむ。
・彼女はシャープな品格を持つ恋人。
・しかし、彼女は27時間だけの恋人。
27時間だけだったけど、僕と彼女はボニーとクラウドみたいだった。その恋話はメッセージだった。繰り返しては去る波のような恋の物語だった。
・一緒に灯した、歩き煙草。
・一緒に眺めた、渋滞のライト。
それらは2人の綺麗な情景だった。過ぎ去った、火花を散らした切ない恋物語だった。だから、狐の言葉で、僕に悲しみが訪れた。
僕は、彼女に27時間後に、「ありのままの2人では、辛いだけだ。」と、告げた。
・僕らが住む世界にある、旅に出る理由。
だから、27時間で、僕は彼女から去った。
雌狐は、スーツ・マンの僕にアーバン・ライフの名残(なごり)雪(ゆき)をもたらす。彼女が「好きだ。」と言っていた、ブルースが心の中で呟かれる。目覚めの休日にキッチンに立つように、名残雪が頭の中をコンフゥージョンさせた。
雌(め)狐(ぎつね)はしっぽを、僕の足に巻きつける。
・恋人の魅惑な香りを撒き散らす、雌狐。
・恋人の素直な眼差しを迎い散らす、雌狐。
愛おしいくらい正直になった僕は、雌狐に虜になってしまった。
スーツ・マンの僕は雌狐に誘導されるまま、夢を支えている丘を越えていく。雌狐と僕は、スキャンダラスな華が咲く、物陰へ行きつく。
・ここは、パトカーのサイレンもない。
・ここでは、お陽様もお月様もない。
「美が永遠なり」と言える、暗闇の場所へ行きつく。雌狐は華美な妖精の鱗粉を、僕を撒き散らす。
・僕は雌狐の思うまま。
・雌狐は僕を意のまま。
もう、シロップも買う必要ない。僕は甘い魅惑に負けている。僕は雌狐の華麗な情事に溺れていた。
すると、雌(め)狐(ぎつね)が、耳を立てる。トウキョウ・タワーの如く、耳を立てる。
・大空を見る、雌狐。
・星たちを伺う、雌狐。
トロけていた大陸の空が、強張(こわば)っていく。スナップを切り取るように、風が変わっていく。
・空を切る、永い一瞬の風。
彷徨(さまよ)える魂が、目を覚ましていく。
・こんな日に王子様に探しても、無駄だ。
・こんな日に出会うのは、才能に満ちた乞食だ。
だから、雌(め)狐(ぎつね)は唇を噛む。そして、僕を残して、そそくさと家路へ向かっていった。


 空を切った、永い一瞬の風。それが冷たい大気となる。
・満月の晴天下に生まれる、冷たい大気。
その大気が、大陸を渡っていく。潮風に乗り、海を渡っていく。物語を始めるには、良い季節になっていった。
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